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第八章①「疑惑と逃亡編」
お前は今を生きているのか?
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俺は失敗した。
まさかこんな事になるとは思わなかったんだ……。
「だってよぅ~、人間てのは寿命が短けぇじゃねぇか~。ババアだって後50年もしねぇうちに死んじまうんだぞ?!ヒックっ!」
ジョッキ片手に、えぐえぐと滝の涙を流しているのはボーンさんだ。
同じ席に座るほぼ全員が呆気に取られている。
俺は頭を抱えた。
「泣き上戸……泣き上戸とか!嘘だろ……っ?!」
俺はマダムとボーンさんの睨み合いが収集がつかないので、まあまあ、とりあえず飲めやと半ば無理やり酒を飲ました。
その結果がこれである。
たいして飲ませた訳じゃない。
あの手に持っているジョッキの1/3ほど飲ませただけだ。
だって、誰がドワーフが酒に弱いと思う?!
普通ザルだろ?!
まぁドワーフで大魔法師であるボーンさんは元々色々規格外なのかもしれないが……。
「若けぇ時はブイブイ言わせてたけどよぉ~。好きな男には一途でやがって~。でもそいつは別の女を選んじまってよ~。」
何か、聞いたらいけない事まで話し出している気がするんだが、大丈夫だろうか?!
俺達はマダムの過去を知れた事より、マダムにエライ目に合わされないかと青くなった。
当のマダムは涼しい顔で聞き流している。
ちなみに泣き出した自分の先生にビビって固まったアレックは、もう子供の起きてる時間でもないのでマダムが部屋を貸してサーニャさんが寝かしに行った。
子供じゃないと散々駄々をこねたので、何故かトムさんがついて行った。
「でもアイツは~そいつだけって決めてやがったからぁ~、その後も誰とも一緒にならなくてよぉ~。寂しいじゃねぇかぁ~!!だからって死にかけのジジイのドワーフに何かしてやれることなんかねぇしよぉ~。」
ボーンさんのグダグダは終わらない。
ええと……これどうしたら良いんだ?!
やっぱ俺が責任取らないとまずいのか?!
「ババアになって~ギルド一つ持って~楽しく安泰な老後を過ごしてるって聞いてたのによぉ……!それを何だ?!所在地政府離脱をやるだと?!何考えてんだよ?!せっかくの安定した老後を棒に振りやがって!!この先どうすんだよ?!後50年も生きやしねぇのに!!老体に鞭打って死に急いでどうすんだよ?!色々苦労したんだからよぉ~老後ぐらいゆっくり楽しく過ごせばいいじゃねえかよぉ~っ!!なのによぉ~っ!!」
ここでまた、どわ~と泣き出す。
そして謎な事に周囲が何故かもらい泣きしはじめている。
酒場のまわりの席では、何故か皆がしんみりしている。
この席ではレダさんがティッシュで鼻をかみながら、ボーンさんにもそっとティッシュを渡した。
お礼を言って、ボーンさんも派手に鼻をかんでいた。
「あ~ハイハイ。」
マダムは頭を掻きながらそう言った。
本当、どうでも良さそうだ。
俺は恐々その顔色を伺う。
それを面倒そうにあしらわれた。
「あぁ、気にするんじゃないよ、サーク。こいつは昔からこうなんだよ。飲むとべらべらベラベラ。泣きながらぐじぐじ言うんだよ。ちなみにこうなってる時の事は本人覚えちゃいないからね。」
「……は?!マジですか?!」
「あぁ。明日には全く覚えちゃいないよ。本当はた迷惑なジジイだろ?!」
「あ、はい……。」
長い付き合いらしいマダムはこの状態のボーンさんも見慣れているようで、相手にしても仕方がないと割り切っている様だった。
ボーンさんはもう、こっちの話は聞こえていないようで、何だかわからない事をぐにゃぐにゃ言いながら居眠りをし始める。
多分、このまま寝てしまって、明日には覚えていないのだろう。
言いたいだけ喋って寝てしまって覚えてないとか、めちゃくちゃ面倒くさい人だな。
「でもマダム!ボーンさんはマダムを心から心配してるじゃないですか!!」
レダさんが鼻を垂らしながら言った。
まぁ、怒り狂って怒鳴り込んで来たと思ったら、これが本音だと思うと可愛いよな。
だがマダムは特に気にしていないらしい。
「まぁ、死にかけのジジイに心配かけたのは申し訳ないけどね。でもあたしゃまだ、すぐ死ぬってほど年じゃないんだけどね?こいつの感覚だとそうなっちまうのさ。」
確かにマダムは老後を楽しんでるってほどの歳ではまだないんだよな。
ただ寿命の長いドワーフから見たら、あっという間に死んでしまうって感じてしまうのだろう。
「ジジイに同情する気はないけど、周りより寿命が長いってのも、酷な話だよ。」
マダムはボソリと呟いた。
その言葉も何だかしんみりさせられる。
ボーンさんはすっかり眠ってしまい、ちょうど階段から降りてきたトムさんがそれを見て担いで2階に連れて行った。
「まぁ、そんな事はどうでも良いんだよ。」
マダムはスパンとボーンさんの件を切り捨てた。
本当に竹を割った様な人だな、この人。
切り替えが早いってのも、人をまとめるには大事なポイントだろう。
何だかんだでもうだいぶいい時間だ。
たった数時間だったが、物凄くたくさんの事がありすぎた。
少し頭がパンクしそうだ。
ボーンさんを部屋に置いてきたらしく、トムさんはすぐに戻ってきた。
それを見たレダさんは、魔術を使ってヒースさんを起こす。
半分寝ぼけている彼を立ち上がらせ、挨拶をして3人は宿に帰って行った。
酒場にも、もうチラホラとしか人がいない。
いつもの顔に戻ったマダムは、俺とシルクの前に無言のまま署名用紙を置いた。
「あんたら2人はどうするんだい?」
じっと俺の目をマダムが覗く。
署名用紙には、おそらくここに所属している冒険者の3/4以上の署名がすでにされているのだろう。
シルクは何も迷わず、それに署名しようとした。
俺は署名用紙に手を翳しそれを止める。
マダムが黙ってそれを見ていた。
「本気なんですね?」
「あたしゃまだボケちゃいないよ。」
「……俺には荷が重すぎます。」
「誰もアンタみたいな小僧に背負わす気はないよ。誰もがそれぞれ思う所があり、自分の意志で選んだ道だ。それはあたしも同じだ、サーク。」
「…………。」
「未来に何かを見たからやるんじゃない。ここでやらなきゃ自分じゃないと思ったらからやるだけだ。だからあんたが署名しようがしまいが関係ない。あたしがやると言ったらやるんだ。……未来なんて糞くらいだ。やりたいからやる。そうやって生きてきたのさ。ここまでね。」
じっとマダムの眼を見る。
その眼は、今を生きていた。
突然、パシっと手が弾かれる。
何かと思ったら、シルクが俺の手を退けて、スラスラ署名していた。
全くこいつは…俺は苦笑した。
シルクはニッコリ笑ってペンを置く。
「俺も自分の生きたい様に生きる。だから主を主に選んだんだ。」
俺は署名用紙を見つめた。
多分、俺がサインしようがしまいが何も変わらないだろう。
だが、署名するかしないかで、俺自身のけじめが変わってくる。
『何でお前はいつも躊躇するんだ?』
トムさんに言われた言葉。
俺は皆の様に踏ん切りが良くない。
考えて考えて、たまにタイミングを逃してしまう。
大事な事だから、適当には出来ないから、だから考える。
必死に考える。
考え過ぎだとウィルもシルクも言う。
でも大事なら考えるだろ??
いや、違うか。
俺は臆病なんだ。
今を壊すのが怖い。
今を失うのが怖い。
今に疑問を持ちながら、それを変える事を恐れる。
動かなければ今を変える事なんてできないのに躊躇する。
だから大きなチャンスも怖いのだ。
良い変化を望むのに、良くても悪くても今が変化する事を恐れる。
だから掴まなければならない幸運も、恐れて掴めないのだ。
だが、そのままで良いのか?
俺はそのままで良いのか?
全てはタイミングなんだ。
良くも悪くも、全て。
「その時」が来るのだ。
俺の心に風が吹いた。
竜の谷に吹いていた風だ。
その時なんだ。
そう思った。
俺はペンを取った。
ゆっくり、覚悟を決めてその名を印す。
新しく得た、俺だけの名前を。
考えてみればここまで重みのある書類に新しい名前を書くのは、これが初めてかもしれない。
書き終わって、ゆっくり息を吐く。
そしてマダムにそれを返した。
マダムの眼が静かに俺を見ている。
その眼に何が見えていたかはわからない。
だが何が見えていても関係ないのだ。
未来なんて糞くらいだ。
大事なのは、今、自分が何を選択し、生きるかなのだ。
まさかこんな事になるとは思わなかったんだ……。
「だってよぅ~、人間てのは寿命が短けぇじゃねぇか~。ババアだって後50年もしねぇうちに死んじまうんだぞ?!ヒックっ!」
ジョッキ片手に、えぐえぐと滝の涙を流しているのはボーンさんだ。
同じ席に座るほぼ全員が呆気に取られている。
俺は頭を抱えた。
「泣き上戸……泣き上戸とか!嘘だろ……っ?!」
俺はマダムとボーンさんの睨み合いが収集がつかないので、まあまあ、とりあえず飲めやと半ば無理やり酒を飲ました。
その結果がこれである。
たいして飲ませた訳じゃない。
あの手に持っているジョッキの1/3ほど飲ませただけだ。
だって、誰がドワーフが酒に弱いと思う?!
普通ザルだろ?!
まぁドワーフで大魔法師であるボーンさんは元々色々規格外なのかもしれないが……。
「若けぇ時はブイブイ言わせてたけどよぉ~。好きな男には一途でやがって~。でもそいつは別の女を選んじまってよ~。」
何か、聞いたらいけない事まで話し出している気がするんだが、大丈夫だろうか?!
俺達はマダムの過去を知れた事より、マダムにエライ目に合わされないかと青くなった。
当のマダムは涼しい顔で聞き流している。
ちなみに泣き出した自分の先生にビビって固まったアレックは、もう子供の起きてる時間でもないのでマダムが部屋を貸してサーニャさんが寝かしに行った。
子供じゃないと散々駄々をこねたので、何故かトムさんがついて行った。
「でもアイツは~そいつだけって決めてやがったからぁ~、その後も誰とも一緒にならなくてよぉ~。寂しいじゃねぇかぁ~!!だからって死にかけのジジイのドワーフに何かしてやれることなんかねぇしよぉ~。」
ボーンさんのグダグダは終わらない。
ええと……これどうしたら良いんだ?!
やっぱ俺が責任取らないとまずいのか?!
「ババアになって~ギルド一つ持って~楽しく安泰な老後を過ごしてるって聞いてたのによぉ……!それを何だ?!所在地政府離脱をやるだと?!何考えてんだよ?!せっかくの安定した老後を棒に振りやがって!!この先どうすんだよ?!後50年も生きやしねぇのに!!老体に鞭打って死に急いでどうすんだよ?!色々苦労したんだからよぉ~老後ぐらいゆっくり楽しく過ごせばいいじゃねえかよぉ~っ!!なのによぉ~っ!!」
ここでまた、どわ~と泣き出す。
そして謎な事に周囲が何故かもらい泣きしはじめている。
酒場のまわりの席では、何故か皆がしんみりしている。
この席ではレダさんがティッシュで鼻をかみながら、ボーンさんにもそっとティッシュを渡した。
お礼を言って、ボーンさんも派手に鼻をかんでいた。
「あ~ハイハイ。」
マダムは頭を掻きながらそう言った。
本当、どうでも良さそうだ。
俺は恐々その顔色を伺う。
それを面倒そうにあしらわれた。
「あぁ、気にするんじゃないよ、サーク。こいつは昔からこうなんだよ。飲むとべらべらベラベラ。泣きながらぐじぐじ言うんだよ。ちなみにこうなってる時の事は本人覚えちゃいないからね。」
「……は?!マジですか?!」
「あぁ。明日には全く覚えちゃいないよ。本当はた迷惑なジジイだろ?!」
「あ、はい……。」
長い付き合いらしいマダムはこの状態のボーンさんも見慣れているようで、相手にしても仕方がないと割り切っている様だった。
ボーンさんはもう、こっちの話は聞こえていないようで、何だかわからない事をぐにゃぐにゃ言いながら居眠りをし始める。
多分、このまま寝てしまって、明日には覚えていないのだろう。
言いたいだけ喋って寝てしまって覚えてないとか、めちゃくちゃ面倒くさい人だな。
「でもマダム!ボーンさんはマダムを心から心配してるじゃないですか!!」
レダさんが鼻を垂らしながら言った。
まぁ、怒り狂って怒鳴り込んで来たと思ったら、これが本音だと思うと可愛いよな。
だがマダムは特に気にしていないらしい。
「まぁ、死にかけのジジイに心配かけたのは申し訳ないけどね。でもあたしゃまだ、すぐ死ぬってほど年じゃないんだけどね?こいつの感覚だとそうなっちまうのさ。」
確かにマダムは老後を楽しんでるってほどの歳ではまだないんだよな。
ただ寿命の長いドワーフから見たら、あっという間に死んでしまうって感じてしまうのだろう。
「ジジイに同情する気はないけど、周りより寿命が長いってのも、酷な話だよ。」
マダムはボソリと呟いた。
その言葉も何だかしんみりさせられる。
ボーンさんはすっかり眠ってしまい、ちょうど階段から降りてきたトムさんがそれを見て担いで2階に連れて行った。
「まぁ、そんな事はどうでも良いんだよ。」
マダムはスパンとボーンさんの件を切り捨てた。
本当に竹を割った様な人だな、この人。
切り替えが早いってのも、人をまとめるには大事なポイントだろう。
何だかんだでもうだいぶいい時間だ。
たった数時間だったが、物凄くたくさんの事がありすぎた。
少し頭がパンクしそうだ。
ボーンさんを部屋に置いてきたらしく、トムさんはすぐに戻ってきた。
それを見たレダさんは、魔術を使ってヒースさんを起こす。
半分寝ぼけている彼を立ち上がらせ、挨拶をして3人は宿に帰って行った。
酒場にも、もうチラホラとしか人がいない。
いつもの顔に戻ったマダムは、俺とシルクの前に無言のまま署名用紙を置いた。
「あんたら2人はどうするんだい?」
じっと俺の目をマダムが覗く。
署名用紙には、おそらくここに所属している冒険者の3/4以上の署名がすでにされているのだろう。
シルクは何も迷わず、それに署名しようとした。
俺は署名用紙に手を翳しそれを止める。
マダムが黙ってそれを見ていた。
「本気なんですね?」
「あたしゃまだボケちゃいないよ。」
「……俺には荷が重すぎます。」
「誰もアンタみたいな小僧に背負わす気はないよ。誰もがそれぞれ思う所があり、自分の意志で選んだ道だ。それはあたしも同じだ、サーク。」
「…………。」
「未来に何かを見たからやるんじゃない。ここでやらなきゃ自分じゃないと思ったらからやるだけだ。だからあんたが署名しようがしまいが関係ない。あたしがやると言ったらやるんだ。……未来なんて糞くらいだ。やりたいからやる。そうやって生きてきたのさ。ここまでね。」
じっとマダムの眼を見る。
その眼は、今を生きていた。
突然、パシっと手が弾かれる。
何かと思ったら、シルクが俺の手を退けて、スラスラ署名していた。
全くこいつは…俺は苦笑した。
シルクはニッコリ笑ってペンを置く。
「俺も自分の生きたい様に生きる。だから主を主に選んだんだ。」
俺は署名用紙を見つめた。
多分、俺がサインしようがしまいが何も変わらないだろう。
だが、署名するかしないかで、俺自身のけじめが変わってくる。
『何でお前はいつも躊躇するんだ?』
トムさんに言われた言葉。
俺は皆の様に踏ん切りが良くない。
考えて考えて、たまにタイミングを逃してしまう。
大事な事だから、適当には出来ないから、だから考える。
必死に考える。
考え過ぎだとウィルもシルクも言う。
でも大事なら考えるだろ??
いや、違うか。
俺は臆病なんだ。
今を壊すのが怖い。
今を失うのが怖い。
今に疑問を持ちながら、それを変える事を恐れる。
動かなければ今を変える事なんてできないのに躊躇する。
だから大きなチャンスも怖いのだ。
良い変化を望むのに、良くても悪くても今が変化する事を恐れる。
だから掴まなければならない幸運も、恐れて掴めないのだ。
だが、そのままで良いのか?
俺はそのままで良いのか?
全てはタイミングなんだ。
良くも悪くも、全て。
「その時」が来るのだ。
俺の心に風が吹いた。
竜の谷に吹いていた風だ。
その時なんだ。
そう思った。
俺はペンを取った。
ゆっくり、覚悟を決めてその名を印す。
新しく得た、俺だけの名前を。
考えてみればここまで重みのある書類に新しい名前を書くのは、これが初めてかもしれない。
書き終わって、ゆっくり息を吐く。
そしてマダムにそれを返した。
マダムの眼が静かに俺を見ている。
その眼に何が見えていたかはわからない。
だが何が見えていても関係ないのだ。
未来なんて糞くらいだ。
大事なのは、今、自分が何を選択し、生きるかなのだ。
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