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第三章「砂漠の国編」
褐色のシルク
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ハーンの屋敷を出て三歩歩いたところで、俺はシルクの飛び蹴りを食らった。
派手につんのめるが、そのまま襟首捕まれて凄まれる。
「オーナー……あんた、俺が発情期真っ最中で薬で押さえてんの、十分わかってるよな!?なのに変なもんで欲情させやがってっ!!また薬飲ませて!!過剰摂取って言葉知ってるか!?オーバードーズって理解できてるか?!ぶちのめすぞ!?糞ッタレ!!おまけに昨日、恋人いるって俺をフったくせに!愛人とか抜かしやがって!!ミンチにすんぞ!!」
やべぇ……シルクの目が座ってる……。
俺はシルクに出会ってから初めて命の危険を感じた。
「お、お怒りはごもっともです。シルクさん。返す言葉もありません。ごめんなさい。許して下さい……。」
「許さん!!」
殺気のオーラを背負ったシルクが、俺の両頬をむんずと掴むと、力一杯つねって引っ張った。
何気に握力強いな?!おい?!
「……ごめんにゃひゃい。」
剥がそうとしても剥がせないそれに涙目の俺。
ハムスターみたいになりながら謝ると、シルクはブッと吹き出した。
「なにそれ!?変な顔~!!」
「……お前がやったんだろ?」
「オーナー不細工ぅ~。」
ゲラゲラ笑われる俺。
やっと離してもらった両頬はじんじん痛いし腫れぼったい。
でももう少し痛め付けられるかと思っていたので、この程度で済んで良かった。
「……許してくれるのか?」
「え?許さないよ?でもやり方はムカついたけど、あのおっさんにギャフンと言わせてたから、その分だけ許す。」
「まぁ一応、一発キメてこれたよな~。何も与えずに挨拶だけして、商業許可書もぶんだくれたし。」
「あれって計画的犯行!?」
「想像にお任せします。」
俺がそう言うと、シルクは笑った。
そんな感じで話ながら歩いていたが、俺は後ろからくる気配に気を配っていた。
「……シルク、このまま町を出るぞ。」
「え?マジ?!何か大丈夫な感じだったのに!?」
「あれはお互いの建前だ。本性は違う。」
「マジで!?」
「ああ、歩みを止めるな。慌てるな。普通にしてろ。このまま歩いて外に出る。」
「何か急だな~。」
俺の唐突な提案に、シルクはのんきに伸びをする。
流れの踊り手だった事もあるせいか、シルクは自由気ままなのかもしれない。
「お前のそう言う自由な能天気さ好きだよ。臨機応変に動けてありがたい。」
「す!好きとかやめてくれる?!わかっててもまだどぎまぎするから!!」
「ごめんごめん。」
ムスッと赤くなったシルクに俺は小突かれる。
それに俺は笑って応えた。
駄弁りながら少しずつ町外れに向かい、俺達は街道に出た。
「オーナー……。」
「まだ歩いてろ。合図したら走れ。」
俺達が外に近づくのに合わせて、追っ手は隠れなくなり、だんだんと人数を増やしていった。
シルクもその異様さに押し黙る。
だが反応を見せては駄目だ。
向こうもこちらが気づいているのはわかっているだろうが、動きを見せないからおとなしくしている。
できるだけこれで距離を取りたい。
戦いになるなら、街の目から離れた場所がお互い都合がいいだろう。
暫く街道を行くと、道の先に人影が見えた。
その数、数十人。
向こうはシルクを連れ帰る事も考え、この辺りで決着をつける気のようだ。
俺は自分の中の魔力に意識を集中させた。
「……シルク!走れ!!」
挟み撃ちになったところで、後ろの男たちが迫ってくる。
俺の合図で、シルクと俺は振り返らずに前に向かって走る。
「走れって!?オーナー!前!!」
「わかってる!!退かすから走り抜けろっ!!」
俺は公式を解し、魔方陣を作った。
前方目掛けて人を吹き飛ばせる突風を放つ。
その人垣の一部が吹き飛んだ。
「ええっ!?嘘?!オーナーって!?」
「いいから突っ切れ!!」
シルクがぎょっとして俺を見た。
驚くのも無理はない。
魔術師である事はあの街で明かしてなかったからな。
まぁ向こうも魔術を使ってくるとは、微塵も思ってはいなかったのだろう。
いるのはただのごろつき集団だ。
異国の商人と踊り子なら、その程度でイケると踏んだのだろう。
ただ急いで集めた割には数が多い。
ハーンは思ったより力のある豪族なのだろう。
吹き飛ばした人垣の穴を、俺とシルクは駆け抜けた。
「……シールド展開っ!!」
つい外壁警備の癖で思わず声にだし、俺はシールドを張った。
崖の上から、矢が降ってくる。
魔術などではないただの矢なのでどうって事ない。
とはいえ、予想以上に人数がいる。
あのおっさん、どんだけごろつき集めてんだよ!?
挟み撃ち程度は予想していたが、まさか三部隊編成だとは思わなかった。
「良かったな、シルク!お前、金持ちのおっさんをその気にさせたぞ!」
「こんな思いするんなら!もう踊らない!」
「踊らない躍り手って何になるんだ!?」
「知らないよ!!」
走りながら馬鹿な事を叫び合う。
俺は後ろを振り返り、まだ突風を吹かせた。
「先に行け!シルク!!」
「オーナー!!上っ!!」
矢と共に、崖の低くなっている所からごろつき達が滑り降りてくる。
見上げればなかなかの数だ。
少し読みが甘かったかもしれない。
俺は真剣な顔をして叫ぶ。
「行け!」
俺はそう命じたが、元々ボロボロで行き倒れていた男だ。
ここの所、自信を取り戻したりして気力は取り戻しているが、体力はそんなすぐに戻るものじゃない。
シルクはもう、まともに走れなかった。
ごろつきの腕がシルクに迫る。
駆けつけたいが、こっちも後から後から沸いてくるごろつきの対応に追われる。
どうする!?
俺は魔術師だ。
正直、全員殺していいなら何とかできる。
ずっと外壁警備をしてきたんだ。
この人数を相手にできなくはない。
だが相手はただの街のゴロツキ。
鎧兜も身につけていない相手なのだ。
無造作に魔術を使えば全員殺してしまう。
しかし俺は王族付きの騎士魔術師。
それをした場合、下手をすると国家間の問題になる。
状況がどうであれ、他国の宮仕えの魔術師が非武装の国民を大量に殺した事になるのだから。
どうする……。
今、俺にあるのは自分の魔術とシルクだ。
そして俺に魔術という武器があるように、シルクにも武器はある。
俺は一つ、掛けてみることにした。
近くのごろつきの腰にあった三日月刀を鞘ごと奪い取り、それをシルクに向けて投げた。
「シルク!!踊れっ!!」
踊れ、の言葉に、シルクが強く反応する。
なぁシルク?
お前、ただ守らるだけのお姫様な踊り子じゃないよな?
だってお前は俺に「躍り手」と名乗ったのだから……。
ごろつきを振り払い、反射的にシルクが三日月刀をキャッチした。
その顔が少し俯き、スッと無表情になる。
「踊れって、言っちゃうんだ……俺に……。」
シルクはゆっくり鞘から刀を抜いた。
その細い眼が切っ先鋭く開く。
次の瞬間、シルクの周囲にいたごろつきは赤く染まった。
何の音もしない。
表現するならそんな感じだった。
シルクは踊った。
刀を手に。
それは優雅で、鋭く、残忍な程だった。
本当に踊っているのだ。
静かに、美しく。
「うーん。どうすっかな~。」
とうとうごろつきどもが逃げていくのを眺めながら、俺は少し困ってしまった。
いや、ちょっと読みはあったんだけどさぁ~。
「どうしたの?オーナー?」
「いや、予想以上にお前の踏ん切りが良かったんで、これをどうしようかと……。」
目の前に残るいくつかの死体。
もちろんシルクだけがやった事じゃない。
俺のやった分も含まれてる。
困る俺にシルクは何でもない事のように言った。
「そのままでいいんじゃない?」
「明日、通る人がびっくりするだろ?」
「しないよ。みんなこれぐらい慣れてるもん。それにたぶん夜のうちに獣が食べてくれるよ。ハゲタカとか。」
あっけらかんと言われ、俺は間の抜けた顔でシルクを見上げた。
「……そう言うもん?」
「ここではそう言うもん。」
なにそれ、怖……。
国が違えば文化も常識も違うもんだけど、ちょっとカルチャーショック……。
唖然とする俺を他所に、シルクは渡した三日月刀を腰に結んでいた。
その動作がとても自然だった。
そして少し黙った後、口を開いた。
「……何でわかったの?俺が戦えるって?」
少し警戒するような目で俺を見るシルク。
う~ん、懐いたと思った野良猫にまた威嚇されてる……。
ちょっと寂しい……。
俺は嘘を言っても仕方ないので、種明かしした。
「まずお前は俺に「踊り子」ではなく「躍り手」だと名乗った。何の躍り手とも言ってない。あの場であえて踊り手と名乗るお前には強い意思があった。ステージに立って踊るだけの踊り子じゃないんだという。お前は踊り手だ。なら何の踊り手だ?そんでもって今日、ハーンの屋敷の警備を見た。やり手な男だけあって、隙がなかった。何もできないヤツが抜け出せるところじゃない。」
俺の説明を聞き、シルクは俯いた。
そして力なく言った。
「……そっか。」
その答えにどんな含みがあるのか、俺にはわからなかった。
俺の方はといえば、シルクの戦い方に思うところがあって、そっちに意識が行ってしまっていた。
「なぁ、お前のそれ、演舞か?」
「……知らない。」
「知らない??」
「昔、護身術みたいな感じで教わっただけ。」
「そうか、なるほど……。まぁいいや。とりあえず早く休める場所を探そう。何か疲れたし腹が減った。」
俺はそう言って、死体をほっぽりだして重い腰を上げた。
派手につんのめるが、そのまま襟首捕まれて凄まれる。
「オーナー……あんた、俺が発情期真っ最中で薬で押さえてんの、十分わかってるよな!?なのに変なもんで欲情させやがってっ!!また薬飲ませて!!過剰摂取って言葉知ってるか!?オーバードーズって理解できてるか?!ぶちのめすぞ!?糞ッタレ!!おまけに昨日、恋人いるって俺をフったくせに!愛人とか抜かしやがって!!ミンチにすんぞ!!」
やべぇ……シルクの目が座ってる……。
俺はシルクに出会ってから初めて命の危険を感じた。
「お、お怒りはごもっともです。シルクさん。返す言葉もありません。ごめんなさい。許して下さい……。」
「許さん!!」
殺気のオーラを背負ったシルクが、俺の両頬をむんずと掴むと、力一杯つねって引っ張った。
何気に握力強いな?!おい?!
「……ごめんにゃひゃい。」
剥がそうとしても剥がせないそれに涙目の俺。
ハムスターみたいになりながら謝ると、シルクはブッと吹き出した。
「なにそれ!?変な顔~!!」
「……お前がやったんだろ?」
「オーナー不細工ぅ~。」
ゲラゲラ笑われる俺。
やっと離してもらった両頬はじんじん痛いし腫れぼったい。
でももう少し痛め付けられるかと思っていたので、この程度で済んで良かった。
「……許してくれるのか?」
「え?許さないよ?でもやり方はムカついたけど、あのおっさんにギャフンと言わせてたから、その分だけ許す。」
「まぁ一応、一発キメてこれたよな~。何も与えずに挨拶だけして、商業許可書もぶんだくれたし。」
「あれって計画的犯行!?」
「想像にお任せします。」
俺がそう言うと、シルクは笑った。
そんな感じで話ながら歩いていたが、俺は後ろからくる気配に気を配っていた。
「……シルク、このまま町を出るぞ。」
「え?マジ?!何か大丈夫な感じだったのに!?」
「あれはお互いの建前だ。本性は違う。」
「マジで!?」
「ああ、歩みを止めるな。慌てるな。普通にしてろ。このまま歩いて外に出る。」
「何か急だな~。」
俺の唐突な提案に、シルクはのんきに伸びをする。
流れの踊り手だった事もあるせいか、シルクは自由気ままなのかもしれない。
「お前のそう言う自由な能天気さ好きだよ。臨機応変に動けてありがたい。」
「す!好きとかやめてくれる?!わかっててもまだどぎまぎするから!!」
「ごめんごめん。」
ムスッと赤くなったシルクに俺は小突かれる。
それに俺は笑って応えた。
駄弁りながら少しずつ町外れに向かい、俺達は街道に出た。
「オーナー……。」
「まだ歩いてろ。合図したら走れ。」
俺達が外に近づくのに合わせて、追っ手は隠れなくなり、だんだんと人数を増やしていった。
シルクもその異様さに押し黙る。
だが反応を見せては駄目だ。
向こうもこちらが気づいているのはわかっているだろうが、動きを見せないからおとなしくしている。
できるだけこれで距離を取りたい。
戦いになるなら、街の目から離れた場所がお互い都合がいいだろう。
暫く街道を行くと、道の先に人影が見えた。
その数、数十人。
向こうはシルクを連れ帰る事も考え、この辺りで決着をつける気のようだ。
俺は自分の中の魔力に意識を集中させた。
「……シルク!走れ!!」
挟み撃ちになったところで、後ろの男たちが迫ってくる。
俺の合図で、シルクと俺は振り返らずに前に向かって走る。
「走れって!?オーナー!前!!」
「わかってる!!退かすから走り抜けろっ!!」
俺は公式を解し、魔方陣を作った。
前方目掛けて人を吹き飛ばせる突風を放つ。
その人垣の一部が吹き飛んだ。
「ええっ!?嘘?!オーナーって!?」
「いいから突っ切れ!!」
シルクがぎょっとして俺を見た。
驚くのも無理はない。
魔術師である事はあの街で明かしてなかったからな。
まぁ向こうも魔術を使ってくるとは、微塵も思ってはいなかったのだろう。
いるのはただのごろつき集団だ。
異国の商人と踊り子なら、その程度でイケると踏んだのだろう。
ただ急いで集めた割には数が多い。
ハーンは思ったより力のある豪族なのだろう。
吹き飛ばした人垣の穴を、俺とシルクは駆け抜けた。
「……シールド展開っ!!」
つい外壁警備の癖で思わず声にだし、俺はシールドを張った。
崖の上から、矢が降ってくる。
魔術などではないただの矢なのでどうって事ない。
とはいえ、予想以上に人数がいる。
あのおっさん、どんだけごろつき集めてんだよ!?
挟み撃ち程度は予想していたが、まさか三部隊編成だとは思わなかった。
「良かったな、シルク!お前、金持ちのおっさんをその気にさせたぞ!」
「こんな思いするんなら!もう踊らない!」
「踊らない躍り手って何になるんだ!?」
「知らないよ!!」
走りながら馬鹿な事を叫び合う。
俺は後ろを振り返り、まだ突風を吹かせた。
「先に行け!シルク!!」
「オーナー!!上っ!!」
矢と共に、崖の低くなっている所からごろつき達が滑り降りてくる。
見上げればなかなかの数だ。
少し読みが甘かったかもしれない。
俺は真剣な顔をして叫ぶ。
「行け!」
俺はそう命じたが、元々ボロボロで行き倒れていた男だ。
ここの所、自信を取り戻したりして気力は取り戻しているが、体力はそんなすぐに戻るものじゃない。
シルクはもう、まともに走れなかった。
ごろつきの腕がシルクに迫る。
駆けつけたいが、こっちも後から後から沸いてくるごろつきの対応に追われる。
どうする!?
俺は魔術師だ。
正直、全員殺していいなら何とかできる。
ずっと外壁警備をしてきたんだ。
この人数を相手にできなくはない。
だが相手はただの街のゴロツキ。
鎧兜も身につけていない相手なのだ。
無造作に魔術を使えば全員殺してしまう。
しかし俺は王族付きの騎士魔術師。
それをした場合、下手をすると国家間の問題になる。
状況がどうであれ、他国の宮仕えの魔術師が非武装の国民を大量に殺した事になるのだから。
どうする……。
今、俺にあるのは自分の魔術とシルクだ。
そして俺に魔術という武器があるように、シルクにも武器はある。
俺は一つ、掛けてみることにした。
近くのごろつきの腰にあった三日月刀を鞘ごと奪い取り、それをシルクに向けて投げた。
「シルク!!踊れっ!!」
踊れ、の言葉に、シルクが強く反応する。
なぁシルク?
お前、ただ守らるだけのお姫様な踊り子じゃないよな?
だってお前は俺に「躍り手」と名乗ったのだから……。
ごろつきを振り払い、反射的にシルクが三日月刀をキャッチした。
その顔が少し俯き、スッと無表情になる。
「踊れって、言っちゃうんだ……俺に……。」
シルクはゆっくり鞘から刀を抜いた。
その細い眼が切っ先鋭く開く。
次の瞬間、シルクの周囲にいたごろつきは赤く染まった。
何の音もしない。
表現するならそんな感じだった。
シルクは踊った。
刀を手に。
それは優雅で、鋭く、残忍な程だった。
本当に踊っているのだ。
静かに、美しく。
「うーん。どうすっかな~。」
とうとうごろつきどもが逃げていくのを眺めながら、俺は少し困ってしまった。
いや、ちょっと読みはあったんだけどさぁ~。
「どうしたの?オーナー?」
「いや、予想以上にお前の踏ん切りが良かったんで、これをどうしようかと……。」
目の前に残るいくつかの死体。
もちろんシルクだけがやった事じゃない。
俺のやった分も含まれてる。
困る俺にシルクは何でもない事のように言った。
「そのままでいいんじゃない?」
「明日、通る人がびっくりするだろ?」
「しないよ。みんなこれぐらい慣れてるもん。それにたぶん夜のうちに獣が食べてくれるよ。ハゲタカとか。」
あっけらかんと言われ、俺は間の抜けた顔でシルクを見上げた。
「……そう言うもん?」
「ここではそう言うもん。」
なにそれ、怖……。
国が違えば文化も常識も違うもんだけど、ちょっとカルチャーショック……。
唖然とする俺を他所に、シルクは渡した三日月刀を腰に結んでいた。
その動作がとても自然だった。
そして少し黙った後、口を開いた。
「……何でわかったの?俺が戦えるって?」
少し警戒するような目で俺を見るシルク。
う~ん、懐いたと思った野良猫にまた威嚇されてる……。
ちょっと寂しい……。
俺は嘘を言っても仕方ないので、種明かしした。
「まずお前は俺に「踊り子」ではなく「躍り手」だと名乗った。何の躍り手とも言ってない。あの場であえて踊り手と名乗るお前には強い意思があった。ステージに立って踊るだけの踊り子じゃないんだという。お前は踊り手だ。なら何の踊り手だ?そんでもって今日、ハーンの屋敷の警備を見た。やり手な男だけあって、隙がなかった。何もできないヤツが抜け出せるところじゃない。」
俺の説明を聞き、シルクは俯いた。
そして力なく言った。
「……そっか。」
その答えにどんな含みがあるのか、俺にはわからなかった。
俺の方はといえば、シルクの戦い方に思うところがあって、そっちに意識が行ってしまっていた。
「なぁ、お前のそれ、演舞か?」
「……知らない。」
「知らない??」
「昔、護身術みたいな感じで教わっただけ。」
「そうか、なるほど……。まぁいいや。とりあえず早く休める場所を探そう。何か疲れたし腹が減った。」
俺はそう言って、死体をほっぽりだして重い腰を上げた。
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