Love Potion

煉彩

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魔法のカクテル 7

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「はぁ……」
 孝介に隠しているお金で何かを買って凌ぐことは簡単だ。
  しかし孝介が帰ってきた時、急にスイッチが入り
「何を食べてたんだ?」
 なんて詮索をされた時に答えようがない。


「お米はあったよね」
 昨日見た時はあったはず。
 キッチンへ行き、再度確認をする。

「良かった。少しある。水は出るし、調味料もあるから。お粥とか作れる」
 こんな高級マンションに住んで、家具は全てブランド物、夫は次期社長。
 なのに、実際はこんな生活だなんて誰が想像するだろう。
 
 孝介はしばらく帰ってこない。
 息が詰まるような会話をしなくても良い。
 それだけが救いだ。

 あれっ?
 また電話が鳴っている。

 リビングに戻り、着信相手を見る。
 
 深呼吸をし
「もしもし?」
 電話に出た。

<なんだ。元気そうだな>
 電話の相手は、加賀宮さんだった。

「元気じゃないですけど。キスマーク、どうしてくれるんですか?」
 昨日の今日でこんなに普通に話せている自分に驚く。

<どうにかなっただろ?>

「えっ」
 孝介の出張が延びたおかげで、確かに帰って来る頃にはこの痣は消える。
 どうしてそんなこと知ってるの?

<だから、契約違反にはならない。今日はこれから教える住所に来てほしい。二十一時くらいにマンション前で待ってて。亜蘭あらんが迎えに行くから。これは命令な。じゃあ>

「ねぇっ!ちょっと!」
 一方的に電話が切れてしまった。
 
 加賀宮さんは何を考えているの?
 やっぱり、夫が帰って来ないことを知ってる。
 だからそんな要求ができるんだ。
 どこからそんなことを?

 疑問が晴れないまま、買い物に行き、必要最低限の食材だけを購入した。
 孝介からの電話だったり、加賀宮さんからの電話だったりでお昼ご飯を食べる気にもなれなかった。夕方にお粥を作って食べた。
 
 シャワーを浴び、彼が指定した時間にマンション前で待っていた。
 
 すると黒いセダンが近くに停まった。

「お待たせしました」
 車から降りて来たのは、先日会った
<亜蘭>と加賀宮さんが呼んでいた秘書さんだ、

 なんて挨拶をすればいいの?
 そう思いながらも
「こんばんは。よろしくお願いします」
 そう言って彼が開けてくれた後部座席へと座る。
 車内は無言だった。

 亜蘭さんが話しかけてくれることもないし、私もなんて声をかけていいのかわからない。
 聞きたいことはたくさんあるけど、この人、教えてくれなさそう。
 なんとなくそう思った。

 三十分くらい乗っていたら、とある住宅街へ車が入って行った。
 こんなところに何があると言うの?
 数分ほど走ったところで車が停車した。

 「こちらです」

 こちらって。
 車から降り、亜蘭さんが歩いて行こうとしている先には、暗くても分かる古い木造アパートがあった。

 一室しか電気がついていない。
 とても不気味。怖い。逃げた方が良いんじゃ。  

「ここの二階、202号室に加賀宮さんがいます」

 アパートの前から歩かない私を見て、亜蘭さんが教えてくれた。

「あの、何が目的なんですか?ここは、彼の家なんですか?」

 この木造アパートが彼の家だとは思えなかった。
 お金がなかったら秘書なんて雇えないし、こんな高級車には乗れない。

「すみません。俺の口からは何も話せないので。本人から聞いてください」

 やっぱり何も教えてはくれないよね。

「ただ、殺そうとかお金を巻き上げようとか、そういう目的ではありません。安心してください」

 ストレートな言葉。安心なんてできるわけない。
 彼の契約に従わないと、家族が……。
 みんなが苦しい思いをすることになる。

「わかりました」

 返事をし、二階の202号室へ向かう。
 私の後ろには亜蘭さんがいるから、どちらにしろ逃げられない。
 
 インターホンを押す。
 しばらくしても返答がない。

「あの……」

 亜蘭さんに声をかけると、彼は<トントントン> 慣れた手つきで直接ドアをノックした。

「開けてください」

 彼がそう伝えると、ドアが開いた。

「どうぞ」

 加賀宮さんだ。

「じゃあ。俺はこれで」

 亜蘭さんは一言挨拶をし、スタスタと階段を下りて行く。
 帰るんだ。

「早く入って」

 加賀宮さんにそう言われ、室内に入る。

「なにこれ……」

 思わず呟いてしまった。
 六畳一間に大きなベッドが一つ。
 あとは物が散乱している。
 片付けられない男の人って感じの部屋。
 
 ベッドに座った加賀宮さんと目が合った。
 
 昨日みたいなメガネはしていなくて、髪の毛は少しハネている。
 部屋着だろうか、黒いスウェット姿だ。
 スーツやワイシャツを着ている彼ではないけど、どこか品があるような気がする。部屋は相当散らかっているけど。

「何の用ですか?」
 加賀宮さんに問う。
 
 彼はフッと笑い
「そう急ぐなよ。昨日はお疲れ様。身体、大丈夫?あんなに乱れてたけど」
 昨夜の自分を思い出し、一気に顔が赤くなった。

 そして思わず<パンッ>と彼を引っ叩いてしまった。

「あれは!あなたが変なカクテルを飲ませるから!最低!」

 彼は驚いていた。
 そして私が叩いてしまったところに触れている。
 あっ。ヤバい。
 私の方が脅されている立場なのに、これで逆ギレでもされたら。どうしよう。
 
 しかし彼はハハっと笑った。

 笑って……る?

「おい。立場を考えろよ。ま、お前らしくて良いけどな。それに、一言余計だった。ごめん」

 お前らしいって、私の何を知っているの?
 でも謝ってくれた。

「私の方こそ、いきなり引っ叩いちゃってごめんなさい」

 私だって手を出すっていけないよね。
 孝介にはもっと酷いこと言われているけど、我慢できているんだから。

「ねぇ。ここ、あなたの家?」
 話題を変えてみよう。

「そうだよ。俺の家」
 その返答に、また加賀宮さんの謎が深まる。

 お金持ちなのか、そうじゃないのか、どっちなの?
 細かく詮索しても、きっと彼ははぐらかす。

「あなた、何者?私のこと、どうして知っているの?私を呼び出して何がしたいの?こうやって指示に従って今日はここへ来たの。一つは教えてくれたっていいじゃない?」

 一気に伝えてしまったけど、彼はどんな反応をするんだろう。

「そうだな。じゃあ、一つだけ教るよ」
 私は真っすぐに彼を見据える。

「お前をここへ呼んだのは……」

 次の瞬間、手を引かれ、ベッドに引き寄せられた。

「キャッ」

 彼の力により、ベッドに飛び込む形になってしまった。

「えっ……」

 あっという間に反転させられ、目の前に彼の顔があった。
 両手は彼によって塞がれ、馬乗りになられているため、身動きが取れない。

「ちょっと!何をする気?」

「お前をここに呼んだ理由は、昨日の続きをしたいから。ただそれだけ」

 昨日の続き……って。まさか!

「いや!」
 
 拒否しても強引にキスをされた。

「んっ……。……んん」
 昨夜の記憶が甦る。

「はっ……。もうあのカクテルの効果は切れてるんでしょ?昨日みたいにはいかないから!」

「どうだろうな。おい、これは命令だから。抵抗するなよ」

 加賀宮さんは言葉や態度とは違って、優しく私の身体に触れていく。
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