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それぞれの行方 6
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イタリアンレストランで食事を済ませた後
「どこか行きたいところある?」
車の中で迅くんに訊ねられた。
プラネタリウムにも行ったし、ショッピングも楽しかった。
洋服を選んでもらうことなんて初めてだったし。
「迅くんとならどこでもいい」
任せてしまう発言になっちゃったかな。
「本当?」
「うん」
「じゃあ、美月。今日、うち泊って?」
うちって、あのアパート?
「うん。いいよ」
「俺、やりたいことあるんだ」
なんだろう、迅くんのやりたいことって。
荷物を取りに私の泊っているホテルへ寄ってもらう。
車に戻った私に彼が一言
「ね、お願いがあるんだけど……」
「迅くんからのお願い?」
嫌な予感半分に聞いてみる。
「夕飯、美月の作った飯が食べたい!」
夕ご飯!?なんだ、そんなことか。
「いいよ。スーパーとか寄ってくれる?迅くん何食べたいの?」
「マジ!?嬉しい」
子どもみたいに笑う彼に思わずホッとしてしまう。
スーパーへ寄ってもらい、迅くんからの<和食>という宿題に少しだけ悩みながらも彼のアパートへ帰宅した。
冷蔵庫に買ってきた物を入れ、二人でベッドの上に座る。
「なんかあっと言う間だよな。こんなにプライベートが充実してるって初めてかも」
天井を見上げながら彼が呟いた。
「そんな、大袈裟だよ」
そんな言葉をかけておきながらも、私もこの時間がとても幸せすぎて、孝介から支配されていた時間がずっと前のように感じられた。
「私、夕ご飯の下準備してくるから、迅くんちょっと休んで。疲れているでしょ。運転もしてもらったから」
いろいろ作ってあげたいと思うけど、コンロが一つだし、古いアパートだからキッチンも広くはない。何品か作るだけで結構時間がかかりそうだ。
「ありがとう。んー。そうだな。ちょっと横になる。何かあったら起こして。目が覚めたら美月が居なくなってるってこと、ないよな」
「一人でどこかに出かけたりしないし、大丈夫だよ」
ベッドに横になっている迅くんの髪の毛をサラっと撫でた。
髪質、柔らかいな。
私の様子にフッと笑い、彼は目を閉じた。
睫毛長いな、相変わらず綺麗な顔。
さて、喜んでもらえるようなご飯を作らなきゃ。
「迅くん!そろそろ起きて」
「んっ……。うん。あー。俺、何時間くらい寝てた?」
迅くんが部屋の中の時計を見る。
「っ!マジッ!?十九時すぎてんじゃん。ごめん」
時間を知った瞬間、上半身をバッと勢いよく起こした。
「ぐっすり気持ちよさそうに寝てたから、そのままにしてた。休みなんだもん、たまにはゆっくりしても良いと思うよ」
「美月と一緒に過ごせる時間なのに。なんか損した気分」
口をへの字に曲げ、ムスッとした表情を浮かべる迅くんはなんだか子どもみたいだ。
夕ご飯、喜んでくれるかな。
ちょっとだけ不安を感じながら、小さなテーブルに作った物を並べていく。
「すごいな。マジ感動」
迅くんはすでに<いただきます>を準備しているかのように手を合わせている。
「本当にこんなので良かった?」
「あぁ。理想」
二人で
「いただきます」
そう声を揃える。
彼が一口、お味噌汁を飲んだ。
口に合うかな?
ドキドキしながら彼の顔色を伺う。
一旦、箸を置く彼。
えっ?どっちなんだろう?
「ヤバい、美味い」
良かった。息を吐いてしまった。
「これから毎日美月の料理が食べられるかと思うと、普通に嬉しい。あっ、言ってなかったけど、ハウスクリーニング終わったから、明日もう引っ越しだから」
もう?また急な話だ。
「明日引っ越しって!聞いてないよ」
「ごめん。忘れてた。でも、イヤなの?」
先ほどまでとは違う彼の鋭い眼光がイヤなんて言わせてはくれない。
「イヤじゃないよ。心の準備ができてなかっただけ。いつまでもホテルってわけにはいかない。ごめん。感謝しなきゃいけないのに」
「毎日、朝、美月が起こしてくれて、夕ご飯も作ってくれて、夜は隣に居てくれるなんて。夢のようだな」
はい?待て待て待て。
夕ご飯は作るって言ったけど、朝と夜のことは聞いていない。
それじゃあ、同棲しているようなものじゃない!?
「ねっ!迅くん、そんなこと言ったっ……」
「あー。美月のご飯、美味いなー」
全然聞く耳を持たない。
はぁ。ここで反抗しても、また言い包められるだけだよね。
迅くんと一緒に居たいって思ってしまった時から、こうなるって理解しておかなきゃいけなかったかも。
夕ご飯を食べ終え、それぞれ早めのシャワーを浴びることになった。
「美月、先にシャワー良いよ」
「ありがとう」
やっぱりこのあとって、迅くんとあんなことをする雰囲気になるのかな。
そんなことを考えながらのシャワーだから、時間がかかってしまった。
「ごめん。遅くなって」
パソコンを開いていた彼に声をかける。
「いや。大丈夫。じゃあ、シャワー浴びてくる。その後、美月としたいことがあるから」
したいこと?
やっぱり……。
でもそんなこと事前に言う?
「わかった」
私が返事をすると彼は珍しくニコッと笑い、浴室へと向かった。
私、もう離婚したんだから、迅くんとシテも良いんだよね?
自分自身に問いかけながら、彼が出てくるのを待った。
しばらくして――。
「ごめん!美月、バスタオル忘れた。持って来て」
そんな彼の言葉が聞こえ、バスタオルを持って浴室へ向かう。
あまり正面を見ないようにしていたが
「ありがとう」
浴室から出ようとして髪の毛をかきあげる彼の姿が綺麗すぎて、思わず見惚れてしまった。
「どこか行きたいところある?」
車の中で迅くんに訊ねられた。
プラネタリウムにも行ったし、ショッピングも楽しかった。
洋服を選んでもらうことなんて初めてだったし。
「迅くんとならどこでもいい」
任せてしまう発言になっちゃったかな。
「本当?」
「うん」
「じゃあ、美月。今日、うち泊って?」
うちって、あのアパート?
「うん。いいよ」
「俺、やりたいことあるんだ」
なんだろう、迅くんのやりたいことって。
荷物を取りに私の泊っているホテルへ寄ってもらう。
車に戻った私に彼が一言
「ね、お願いがあるんだけど……」
「迅くんからのお願い?」
嫌な予感半分に聞いてみる。
「夕飯、美月の作った飯が食べたい!」
夕ご飯!?なんだ、そんなことか。
「いいよ。スーパーとか寄ってくれる?迅くん何食べたいの?」
「マジ!?嬉しい」
子どもみたいに笑う彼に思わずホッとしてしまう。
スーパーへ寄ってもらい、迅くんからの<和食>という宿題に少しだけ悩みながらも彼のアパートへ帰宅した。
冷蔵庫に買ってきた物を入れ、二人でベッドの上に座る。
「なんかあっと言う間だよな。こんなにプライベートが充実してるって初めてかも」
天井を見上げながら彼が呟いた。
「そんな、大袈裟だよ」
そんな言葉をかけておきながらも、私もこの時間がとても幸せすぎて、孝介から支配されていた時間がずっと前のように感じられた。
「私、夕ご飯の下準備してくるから、迅くんちょっと休んで。疲れているでしょ。運転もしてもらったから」
いろいろ作ってあげたいと思うけど、コンロが一つだし、古いアパートだからキッチンも広くはない。何品か作るだけで結構時間がかかりそうだ。
「ありがとう。んー。そうだな。ちょっと横になる。何かあったら起こして。目が覚めたら美月が居なくなってるってこと、ないよな」
「一人でどこかに出かけたりしないし、大丈夫だよ」
ベッドに横になっている迅くんの髪の毛をサラっと撫でた。
髪質、柔らかいな。
私の様子にフッと笑い、彼は目を閉じた。
睫毛長いな、相変わらず綺麗な顔。
さて、喜んでもらえるようなご飯を作らなきゃ。
「迅くん!そろそろ起きて」
「んっ……。うん。あー。俺、何時間くらい寝てた?」
迅くんが部屋の中の時計を見る。
「っ!マジッ!?十九時すぎてんじゃん。ごめん」
時間を知った瞬間、上半身をバッと勢いよく起こした。
「ぐっすり気持ちよさそうに寝てたから、そのままにしてた。休みなんだもん、たまにはゆっくりしても良いと思うよ」
「美月と一緒に過ごせる時間なのに。なんか損した気分」
口をへの字に曲げ、ムスッとした表情を浮かべる迅くんはなんだか子どもみたいだ。
夕ご飯、喜んでくれるかな。
ちょっとだけ不安を感じながら、小さなテーブルに作った物を並べていく。
「すごいな。マジ感動」
迅くんはすでに<いただきます>を準備しているかのように手を合わせている。
「本当にこんなので良かった?」
「あぁ。理想」
二人で
「いただきます」
そう声を揃える。
彼が一口、お味噌汁を飲んだ。
口に合うかな?
ドキドキしながら彼の顔色を伺う。
一旦、箸を置く彼。
えっ?どっちなんだろう?
「ヤバい、美味い」
良かった。息を吐いてしまった。
「これから毎日美月の料理が食べられるかと思うと、普通に嬉しい。あっ、言ってなかったけど、ハウスクリーニング終わったから、明日もう引っ越しだから」
もう?また急な話だ。
「明日引っ越しって!聞いてないよ」
「ごめん。忘れてた。でも、イヤなの?」
先ほどまでとは違う彼の鋭い眼光がイヤなんて言わせてはくれない。
「イヤじゃないよ。心の準備ができてなかっただけ。いつまでもホテルってわけにはいかない。ごめん。感謝しなきゃいけないのに」
「毎日、朝、美月が起こしてくれて、夕ご飯も作ってくれて、夜は隣に居てくれるなんて。夢のようだな」
はい?待て待て待て。
夕ご飯は作るって言ったけど、朝と夜のことは聞いていない。
それじゃあ、同棲しているようなものじゃない!?
「ねっ!迅くん、そんなこと言ったっ……」
「あー。美月のご飯、美味いなー」
全然聞く耳を持たない。
はぁ。ここで反抗しても、また言い包められるだけだよね。
迅くんと一緒に居たいって思ってしまった時から、こうなるって理解しておかなきゃいけなかったかも。
夕ご飯を食べ終え、それぞれ早めのシャワーを浴びることになった。
「美月、先にシャワー良いよ」
「ありがとう」
やっぱりこのあとって、迅くんとあんなことをする雰囲気になるのかな。
そんなことを考えながらのシャワーだから、時間がかかってしまった。
「ごめん。遅くなって」
パソコンを開いていた彼に声をかける。
「いや。大丈夫。じゃあ、シャワー浴びてくる。その後、美月としたいことがあるから」
したいこと?
やっぱり……。
でもそんなこと事前に言う?
「わかった」
私が返事をすると彼は珍しくニコッと笑い、浴室へと向かった。
私、もう離婚したんだから、迅くんとシテも良いんだよね?
自分自身に問いかけながら、彼が出てくるのを待った。
しばらくして――。
「ごめん!美月、バスタオル忘れた。持って来て」
そんな彼の言葉が聞こえ、バスタオルを持って浴室へ向かう。
あまり正面を見ないようにしていたが
「ありがとう」
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