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004 食事①
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「アーシャちゃん、今日もご苦労様」
「はいなの!」
薬草の入った籠と交換で、クエスト報酬を受け取るアーシャ。
報酬は質素な生活が2・3日送れそうな程の金だった。
「それにしても可愛いドラゴンね。
見たことないけど、何の子供なのかしら?」
「分からないの!
シロ君は珍しいドラゴンさんなの!
可愛くて、強くて、アーシャの頼れる家族なの!」
「シロ君っていうんだ?
どこで見つけたの?」
「ゴブリンさんの森なの♪」
「へぇー、あの森に居たんだ!?
そんな珍しいことがあるんだねー」
「アーシャもびっくりしたの!」
アーシャは、俺について受付嬢と話した。
その間、俺はアーシャの頭の上で身体を丸めている。
「シロ君がゴブリンを倒せるなら、
今後はゴブリン退治のクエストを受けてみたらどう?」
「ゴブリンさんを?」
「薬草採取より楽だし、報酬もたくさん貰えるよ?」
「はいなの!」
このやり取りには驚いた。
俺はてっきり、アーシャが断ると思っていたからだ。
森でゴブリンを見かけた時、アーシャは戦闘を避けようとしていた。
イタイイタイは嫌だからあっちに行け、とゴブリンに言ったのだ。
だから、魔物との戦闘が嫌なタイプなのかと。
実際、そういう人間は存在していて、アーシャのような子供に多い。
しかし、アーシャはそのようなタイプではないみたいだ。
幼いが故に独特の倫理観があるのだろう。
「それでは受付のお姉さん、ありがとぉーございました♪」
「はーい! またね、アーシャちゃん!」
受付嬢との会話が終わると、アーシャはそそくさと冒険者ギルドを出た。
◇
「シロ君は何を食べるの?」
「アーシャはねぇ、お魚さんが好きなの!」
「美味しくて熱々のお魚さんを食べて、はふはふするの!」
少し早い夕食を食べる為、飲食店に向かって歩くアーシャ。
どうやら馴染みの店があるらしく、既にいくつかの店をスルーしていた。
「おっとっと!」
アーシャが躓く。
彼女の頭上で身体を丸めて眠る俺は、意表を突かれて驚いた。
慌てて飛ぼうとするも、背中に何かがのしかかる。
アーシャが両手で押さえているのだ。
「大丈夫? シロ君」
「ギャオーン(俺のことより自分の心配をしな)」
「よかったぁ!」
まるで会話が成立していない。
だが、アーシャが大丈夫なのでよしとしよう。
「えへへっ、アーシャ、おっちょこちょいなの」
にしし、と笑うアーシャ。
それから、前方をビシッと指した。
「ここがアーシャのお気に入りのお店!」
やってきたのはどこにでもある酒場だ。
特筆するほどの個性はない。
立地条件は決して良くなくて、人通りは少なめだ。
いわゆる通好みの店とか、常連で成り立っているような店といった感じ。
そんなイメージを裏付けるかのように、店内の客は少なかった。
時間が早いとはいえ、空席が目立つ。
「らっしゃい!
――おお、アーシャちゃんじゃないか!」
暇そうにグラスを磨いていたマスターが、アーシャを見て声を弾ませる。
「おじちゃん! こんにちは!」
「えらく可愛いドラゴンを連れているなー!」
「シロ君なの!」
アーシャがカウンターに向かって歩いて行く。
俺はカウンター席で大丈夫なのか不安になった。
というのも、カウンター席の椅子は座面が高いのだ。
テーブル席よりも高くて、アーシャの顔に近い位置にある。
幼女が座るには難しい気がした。
そんな不安を、アーシャが軽やかに一蹴する。
椅子を引いた後、テーブルに両手をつき、身体をグイッと上げて座った。
俺を膝の上に置き、足をブラブラさせている。
「へぇ、シロ君っていうのか!」
マスターがテーブルにグラスを置く。
中にはただの水が入っていた。
幼女だからお酒は飲めないのだ。
アーシャはマスターにお礼を言ってから水を飲む。
両手で持ったグラスにアヒル口をつけて、チビチビと。
そんなアーシャを見て微笑むマスターと周囲の客。
俺にしたって微笑ましい気分だ。
「で、そのドラゴンは何を食べるんだい?」
アーシャが飲むのを止めたところで、マスターが尋ねる。
「あっ」
アーシャが表情をハッとさせる。
それから、表情を曇らせて俯いた。
「はいなの!」
薬草の入った籠と交換で、クエスト報酬を受け取るアーシャ。
報酬は質素な生活が2・3日送れそうな程の金だった。
「それにしても可愛いドラゴンね。
見たことないけど、何の子供なのかしら?」
「分からないの!
シロ君は珍しいドラゴンさんなの!
可愛くて、強くて、アーシャの頼れる家族なの!」
「シロ君っていうんだ?
どこで見つけたの?」
「ゴブリンさんの森なの♪」
「へぇー、あの森に居たんだ!?
そんな珍しいことがあるんだねー」
「アーシャもびっくりしたの!」
アーシャは、俺について受付嬢と話した。
その間、俺はアーシャの頭の上で身体を丸めている。
「シロ君がゴブリンを倒せるなら、
今後はゴブリン退治のクエストを受けてみたらどう?」
「ゴブリンさんを?」
「薬草採取より楽だし、報酬もたくさん貰えるよ?」
「はいなの!」
このやり取りには驚いた。
俺はてっきり、アーシャが断ると思っていたからだ。
森でゴブリンを見かけた時、アーシャは戦闘を避けようとしていた。
イタイイタイは嫌だからあっちに行け、とゴブリンに言ったのだ。
だから、魔物との戦闘が嫌なタイプなのかと。
実際、そういう人間は存在していて、アーシャのような子供に多い。
しかし、アーシャはそのようなタイプではないみたいだ。
幼いが故に独特の倫理観があるのだろう。
「それでは受付のお姉さん、ありがとぉーございました♪」
「はーい! またね、アーシャちゃん!」
受付嬢との会話が終わると、アーシャはそそくさと冒険者ギルドを出た。
◇
「シロ君は何を食べるの?」
「アーシャはねぇ、お魚さんが好きなの!」
「美味しくて熱々のお魚さんを食べて、はふはふするの!」
少し早い夕食を食べる為、飲食店に向かって歩くアーシャ。
どうやら馴染みの店があるらしく、既にいくつかの店をスルーしていた。
「おっとっと!」
アーシャが躓く。
彼女の頭上で身体を丸めて眠る俺は、意表を突かれて驚いた。
慌てて飛ぼうとするも、背中に何かがのしかかる。
アーシャが両手で押さえているのだ。
「大丈夫? シロ君」
「ギャオーン(俺のことより自分の心配をしな)」
「よかったぁ!」
まるで会話が成立していない。
だが、アーシャが大丈夫なのでよしとしよう。
「えへへっ、アーシャ、おっちょこちょいなの」
にしし、と笑うアーシャ。
それから、前方をビシッと指した。
「ここがアーシャのお気に入りのお店!」
やってきたのはどこにでもある酒場だ。
特筆するほどの個性はない。
立地条件は決して良くなくて、人通りは少なめだ。
いわゆる通好みの店とか、常連で成り立っているような店といった感じ。
そんなイメージを裏付けるかのように、店内の客は少なかった。
時間が早いとはいえ、空席が目立つ。
「らっしゃい!
――おお、アーシャちゃんじゃないか!」
暇そうにグラスを磨いていたマスターが、アーシャを見て声を弾ませる。
「おじちゃん! こんにちは!」
「えらく可愛いドラゴンを連れているなー!」
「シロ君なの!」
アーシャがカウンターに向かって歩いて行く。
俺はカウンター席で大丈夫なのか不安になった。
というのも、カウンター席の椅子は座面が高いのだ。
テーブル席よりも高くて、アーシャの顔に近い位置にある。
幼女が座るには難しい気がした。
そんな不安を、アーシャが軽やかに一蹴する。
椅子を引いた後、テーブルに両手をつき、身体をグイッと上げて座った。
俺を膝の上に置き、足をブラブラさせている。
「へぇ、シロ君っていうのか!」
マスターがテーブルにグラスを置く。
中にはただの水が入っていた。
幼女だからお酒は飲めないのだ。
アーシャはマスターにお礼を言ってから水を飲む。
両手で持ったグラスにアヒル口をつけて、チビチビと。
そんなアーシャを見て微笑むマスターと周囲の客。
俺にしたって微笑ましい気分だ。
「で、そのドラゴンは何を食べるんだい?」
アーシャが飲むのを止めたところで、マスターが尋ねる。
「あっ」
アーシャが表情をハッとさせる。
それから、表情を曇らせて俯いた。
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