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3章
勇者 その11
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さて、フウジンを見送ってからどうしようかと思った時、さっきまで人の頭の上で大騒ぎをしていたミズチが森の方をジーっと見ている。
いつも何かに興味を持ってウロウロしているミズチが大人しいので声をかけてみた。
「ミズチ、どうした?」
「あ、え?なに?ご主人様?」
「あ、いや、何か静かだからどうしたのかなと思って」
「いまねぇ、フウジンを見てたの」
ミズチはそう言うとまた森のほうを向いて続ける。
「あ、もうキャリー姉ちゃんに会えたみたい」
え?はやっ、さっき出て行ったばっかりなのに。
って、この子達もゲン達と同じ様にキャリー姉と呼んでいるのか。
そんな事よりそのまま状況を報告してもらおう。
「それで?ケヴィンさん達に事情を話してるのかな?」
俺がミズチに聞くとミズチは首をかしげながら答えた。
「うーん?多分今何か話してるみたい。私、見る事は出来ても聞くことはできないもん」
ん、俺が前に教えた望遠魔法の改良版か?
俺がそんな事を考えていたらミズチが独り言の様に話し出した。
「うわっ、速い。あの勇者スゴイ速い。みんな置いてけぼりにしてすっ飛んでいった」
その後、ミズチの擬音交じりの戦闘実況を聞いていたのだが。
どうやらそんな苦も無く倒せたようだ。その後、ケヴィンさんのテレポートで消えたらしい。多分この村に戻って来るだろう。待ってればここに来るかな?
それよりやっと治療?というか解呪?が出来る。
そう思って患者さんの近くに戻って魔力を目に込めてみてみると、先ほどの糸から出ていた禍々しいオーラが消えていた。
しかし、糸はなんか太いまんまだった。
俺はスキルを発動させて訊いてみる。
《禍々しいオーラがなくなったけどなんか糸が太いまんまなんだけど?》
『‥‥‥なにかまだいやな魔力の流れを感じます』
《え?でも元凶の病魔は今倒したみたいだよ?》
『あ、ハイ。一番強い魔力の流れは無くなっています。なにか固定しているというか強化の様な術式を感じるのですが‥‥‥」
《え?ちょっと待ってよ。まさか解呪出来ないの?》
『いえ、出来ます。マスターなら出来ます。少し分析をしたいので解呪をしてもらえますか?』
俺は診断スキルにもう少し詳しく聞きたかったのだが、苦しそうな患者さんを早く治す事の方が先だと思い解呪を先にする。
糸の前に右手をかざして右から左へと動かし糸を切断するイメージで呪文を唱える。
「ブレイクスペル」するとカシャーンとガラスが割れるような感じで糸が粉々になっていく。
魔力は通常の力で問題なかったようだ。
苦しそうにしていた年配の狩人の息が落ち着いてきた。そして、首筋に出ていた数字が消えていった。
周りにいた奥さんと兵士から歓喜の声が上がる。
俺はすぐさま隣で寝ている若い狩人にも同じ様に解呪をする。こちらも同じ様に首の数字が消えていった。
俺は奥さんに解呪が済んだ事と熱で体力が落ちているので安静にして休んでもらってくださいと伝えるとその家を出た。狩人の奥さんは何度も頭を下げありがとうございます。と言って送り出してくれた。
家を出ると丁度勇者PTの人達とキャリーさんとフウジンがこちらに向かって走って来た。
俺はみんなに解呪が成功した事と少し気になる魔力の流れについて話した。
解呪が成功したと聞いた時のケヴィンさんの顔は凄く嬉しそうだった。
その時頭にいつもの診断スキルの声が聞こえる。
『マスター先ほどの答えがわかりました。どうやら病魔が魔法陣で術の強化をしていたようです』
《魔法陣?どういう事?それがあるとやっぱりまずいの?》
『いえ、マスターにとってはそれほど障害にはならないでしょうが、その魔法陣を壊せば現状より解呪が楽になります』
うーん、楽になるのは助かるけど、その魔法陣がどこにあるかもわからないし。
取りあえずみんなにこの事を話してみよう。
「ケヴィンさん少しいいですか?さっき解呪してわかったんですがどうやら病魔が魔法陣を残していったらしいのです」
俺の魔法陣という言葉に反応してビャッカさんが少し離れた位置からスゴイ勢いで近寄って来た。
「今、魔法陣って言った?どこにあるの?」
うわっ、ビックリした。本当に魔術の事になると目の色が変わるな。あ、後お菓子の時もか。
「あ、いえ、ここじゃなくて何処かは分からないんですが病魔が残した魔法陣がどこかにあるらしくて」
俺がそこまで話すとビャッカさんは目を閉じていつもより抑揚のない声で訊いてきた。
「効果は?」
あまりにも唐突だったので少し焦ってしまった。
「え?えっと、この呪いの強化です」
「病魔が消滅したのにこうかがきえてないのね?」
「はい、病魔が消滅して大分弱まったんですが何か別の魔力の流れがあるらしくて」
俺がそこまで答えるとブツブツと聞き取れないくらいの声で何か言いながら考えているようだ。
しばらく待っているとケヴィンさんがビャッカさんに話しかけた。
「ビャッカ何か解ったかい?」
ビャッカさんは瞑っていた目を開け誰を見るわけではなく空を見上げながら話し出した。
「強化型の魔法陣の多くは強化した物や自分を中心に置いて魔法陣を広げる。ただ中心にいた病魔が消滅したのに術がいまだに動いているという事は魔法陣に使っている法具が残っている。それらをすべて壊せば完全に止まるはず」
「法具ってどんなものかわかりますか?」
ビャッカさんは俺の問いにこちらを一切見ず答える。
「多分、ケヴィンが最初に病魔に接敵した場所に一つはあるはず」
ん?一つは?さっきのビャッカさんの話ですべて壊すって言っていたから、何か所に分かれているのだろうけどいくつくらいあるんだろ?そこら辺の事聞こうかと思った時ビャッカさんが先に答えた。
「おそらく病魔を中心に五芒星を描いている中心の一つと5個の頂点にある法具を壊さないとこの魔力の流れは止まらない」
俺はケヴィンさんに向いて話す。
「どうします?このままでも俺は解呪が出来ますが、この先何があるかわからないので出来れば壊してしまった方が良い気がします」
自分の意見も付けてケヴィンさんに訊いてみた。
ケヴィンさんは即決で答える。
「すべて壊そう。ヒデ君の言う通り何があるかわからないし、フウジン君の力を借りればそんなに難しい事じゃない」
いつも何かに興味を持ってウロウロしているミズチが大人しいので声をかけてみた。
「ミズチ、どうした?」
「あ、え?なに?ご主人様?」
「あ、いや、何か静かだからどうしたのかなと思って」
「いまねぇ、フウジンを見てたの」
ミズチはそう言うとまた森のほうを向いて続ける。
「あ、もうキャリー姉ちゃんに会えたみたい」
え?はやっ、さっき出て行ったばっかりなのに。
って、この子達もゲン達と同じ様にキャリー姉と呼んでいるのか。
そんな事よりそのまま状況を報告してもらおう。
「それで?ケヴィンさん達に事情を話してるのかな?」
俺がミズチに聞くとミズチは首をかしげながら答えた。
「うーん?多分今何か話してるみたい。私、見る事は出来ても聞くことはできないもん」
ん、俺が前に教えた望遠魔法の改良版か?
俺がそんな事を考えていたらミズチが独り言の様に話し出した。
「うわっ、速い。あの勇者スゴイ速い。みんな置いてけぼりにしてすっ飛んでいった」
その後、ミズチの擬音交じりの戦闘実況を聞いていたのだが。
どうやらそんな苦も無く倒せたようだ。その後、ケヴィンさんのテレポートで消えたらしい。多分この村に戻って来るだろう。待ってればここに来るかな?
それよりやっと治療?というか解呪?が出来る。
そう思って患者さんの近くに戻って魔力を目に込めてみてみると、先ほどの糸から出ていた禍々しいオーラが消えていた。
しかし、糸はなんか太いまんまだった。
俺はスキルを発動させて訊いてみる。
《禍々しいオーラがなくなったけどなんか糸が太いまんまなんだけど?》
『‥‥‥なにかまだいやな魔力の流れを感じます』
《え?でも元凶の病魔は今倒したみたいだよ?》
『あ、ハイ。一番強い魔力の流れは無くなっています。なにか固定しているというか強化の様な術式を感じるのですが‥‥‥」
《え?ちょっと待ってよ。まさか解呪出来ないの?》
『いえ、出来ます。マスターなら出来ます。少し分析をしたいので解呪をしてもらえますか?』
俺は診断スキルにもう少し詳しく聞きたかったのだが、苦しそうな患者さんを早く治す事の方が先だと思い解呪を先にする。
糸の前に右手をかざして右から左へと動かし糸を切断するイメージで呪文を唱える。
「ブレイクスペル」するとカシャーンとガラスが割れるような感じで糸が粉々になっていく。
魔力は通常の力で問題なかったようだ。
苦しそうにしていた年配の狩人の息が落ち着いてきた。そして、首筋に出ていた数字が消えていった。
周りにいた奥さんと兵士から歓喜の声が上がる。
俺はすぐさま隣で寝ている若い狩人にも同じ様に解呪をする。こちらも同じ様に首の数字が消えていった。
俺は奥さんに解呪が済んだ事と熱で体力が落ちているので安静にして休んでもらってくださいと伝えるとその家を出た。狩人の奥さんは何度も頭を下げありがとうございます。と言って送り出してくれた。
家を出ると丁度勇者PTの人達とキャリーさんとフウジンがこちらに向かって走って来た。
俺はみんなに解呪が成功した事と少し気になる魔力の流れについて話した。
解呪が成功したと聞いた時のケヴィンさんの顔は凄く嬉しそうだった。
その時頭にいつもの診断スキルの声が聞こえる。
『マスター先ほどの答えがわかりました。どうやら病魔が魔法陣で術の強化をしていたようです』
《魔法陣?どういう事?それがあるとやっぱりまずいの?》
『いえ、マスターにとってはそれほど障害にはならないでしょうが、その魔法陣を壊せば現状より解呪が楽になります』
うーん、楽になるのは助かるけど、その魔法陣がどこにあるかもわからないし。
取りあえずみんなにこの事を話してみよう。
「ケヴィンさん少しいいですか?さっき解呪してわかったんですがどうやら病魔が魔法陣を残していったらしいのです」
俺の魔法陣という言葉に反応してビャッカさんが少し離れた位置からスゴイ勢いで近寄って来た。
「今、魔法陣って言った?どこにあるの?」
うわっ、ビックリした。本当に魔術の事になると目の色が変わるな。あ、後お菓子の時もか。
「あ、いえ、ここじゃなくて何処かは分からないんですが病魔が残した魔法陣がどこかにあるらしくて」
俺がそこまで話すとビャッカさんは目を閉じていつもより抑揚のない声で訊いてきた。
「効果は?」
あまりにも唐突だったので少し焦ってしまった。
「え?えっと、この呪いの強化です」
「病魔が消滅したのにこうかがきえてないのね?」
「はい、病魔が消滅して大分弱まったんですが何か別の魔力の流れがあるらしくて」
俺がそこまで答えるとブツブツと聞き取れないくらいの声で何か言いながら考えているようだ。
しばらく待っているとケヴィンさんがビャッカさんに話しかけた。
「ビャッカ何か解ったかい?」
ビャッカさんは瞑っていた目を開け誰を見るわけではなく空を見上げながら話し出した。
「強化型の魔法陣の多くは強化した物や自分を中心に置いて魔法陣を広げる。ただ中心にいた病魔が消滅したのに術がいまだに動いているという事は魔法陣に使っている法具が残っている。それらをすべて壊せば完全に止まるはず」
「法具ってどんなものかわかりますか?」
ビャッカさんは俺の問いにこちらを一切見ず答える。
「多分、ケヴィンが最初に病魔に接敵した場所に一つはあるはず」
ん?一つは?さっきのビャッカさんの話ですべて壊すって言っていたから、何か所に分かれているのだろうけどいくつくらいあるんだろ?そこら辺の事聞こうかと思った時ビャッカさんが先に答えた。
「おそらく病魔を中心に五芒星を描いている中心の一つと5個の頂点にある法具を壊さないとこの魔力の流れは止まらない」
俺はケヴィンさんに向いて話す。
「どうします?このままでも俺は解呪が出来ますが、この先何があるかわからないので出来れば壊してしまった方が良い気がします」
自分の意見も付けてケヴィンさんに訊いてみた。
ケヴィンさんは即決で答える。
「すべて壊そう。ヒデ君の言う通り何があるかわからないし、フウジン君の力を借りればそんなに難しい事じゃない」
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