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3章

勇者 その12

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 ケヴィンさんがすべての法具を壊すと、即断で決めてからの行動も早かった。

「今戻って来たばかりだがもう一度森の中に入ろう。残念だがモンスター達がいる近くにテレポートは出来ないから走って行くしかないな。フウジン君悪いがまた我らと来てくれないだろうか?」

そう言われたフウジンが俺の方をチラリと見る。俺は頷いてフウジンに頼む。
「フウジン、ケヴィンさん達と一緒に行って法具の探知と破壊をおねがいできるか?」

「承知、完璧にこなしてきます」
俺の言葉に凄く嬉しそうにどこで覚えてきたのか敬礼までして答え、俺の頭の上にいるライジンとミズチを見てドヤ顔していた。

「主殿、俺も早く命令してほしいぞ」
「私だって」
ライジンとミズチがそう言いながら俺の頭の上で暴れ出した。

 暴れ出した二人は放っておいてケヴィンさんに話しかける。

「俺達はこのまま集会場に向かってこの呪いが発症している人達を治しに行きます」
「わかった。こちらもそんなに時間はかからないと思うので終わったらそちらに向かう。じゃあ、また後で」
そう言うと森の方に駆けていく。
「お師匠様あまり無理な事しないでくださいね。行ってきます」
キャリーさんが早口でそう言ってケヴィンさん達の後を追って森に向って行く。
「キャリーさんも気を付けてねー」
チラッとこちらに振り返って手を振ってくれた。

「よし、俺達も急いで集会場に行こう」
おれがそう皆に声をかけると最初からずっと一緒だった兵士さんが先頭に立って案内をしてくれた。

兵士さんが「もう少しです」と言って指をさして他の家の倍ぐらいある大きな建物を指差す。

集会場というくらいだからデカいとは思っていたが思ったより大きかった。兵士さんの話では元々は村の倉庫だったものを改造しているらしい。

 もう少しで到着というところで馬に乗り甲冑を着た騎士がこちらに声をかけてきた。

「待てー、そこの兵士聞きたい事がある」
急いでいるのか馬から降りずそのまま話し続ける。

「ここに、勇者殿がきたそうだがどこにいるか知らんか?」

兵士さんは甲冑騎士が現れてからずっと膝をついてる。

ん?この人達は兵士さんの上司なのかな?それとも貴族様とか?俺も膝まずいた方が良いのか?とか思ってザルドさんを見ると腕を組んで立っていた。

「ザルドさん跪かなくていいのかな?」
小声で訊いてみた。
「あ?なんで何の世話にもなってねえ貴族に跪くんだよ?」
あーそう言うものなのか??まあ、いいや俺も立ってよ。

馬の上の甲冑騎士がこちらをもの凄くにらんで舌をチッと鳴らしてから兵士さんの話を訊く。
「勇者様はこの村にいらして直ぐに森に向かわれ、病魔を倒し一度戻られましたが病魔が、残した法具とやらを破壊するために先ほどまた森に向かわれました」
最初の膝をついた状態から顔だけを上げて報告をする兵士さん。

「そうか、勇者殿はこの病気に対して何か薬のようなものを持っていなかったか?」
「え?薬ですか?そう言ったものは聞いておりません。しかし、こちらにいる回復師様が病魔の原因を解明して、治す事に成功しております」
 
 甲冑騎士は兵士さんの言葉を聞くと苦虫を噛み潰したような渋い顔になったが、後半の言葉をきいてこちらを凝視している。

「あー、はい、俺は今回勇者様に依頼されてこの病気を治しに来たヒデと言います」
取りあえず自己紹介だけは済ました。

 なんか絡まれるのも嫌だったので勇者様から依頼とかわざわざつけて言っておいた。

「丁度良い、貴様我らと一緒に来い」
馬上から俺に命令をしてきた。

あー、やっぱりなー薬が云々言ってたからそう言う展開になるかなーとか思って勇者様の依頼とか言ったのに全然聞いてないや、まあいいか、取り合えず聞いておかなければならない事を訊いておくか。

「その前にお聞きしたい事があるのですが良いでしょうか?」
「なんだ?」

甲冑騎士がめんどくさそうに答える。

「えっと、病気にかかった方の年齢と首の辺りに浮かんでいる数字はいくつだったでしょうか?」
「なぜそんな事を訊く?そんな事より早く一緒に来んか」
「ち、ちょっとお待ちください。首の数字が5や4ならそんなに急がなくても平気なんでこの中にいる人達を先に‥‥‥」

 俺が説明をしようと話している途中で甲冑騎士が大声を上げた。

「貴様、領主様のご子息が病気に侵されているのにそれを放っておくきかー」
「いや、放っておきはしませんよ?首の数字が1とかなら今すぐ行きますが違うのなら少しだけお待ちくださいと言っているだけです」

 俺も大きな声で言い返したかったがなるべく感情込めない様に話す。

「もういい、こいつを拘束しろ」

甲冑騎士は後ろの二人の部下に命令をしている。一人は困ったようにキョロキョロしていたがもう一人はやる気満々だ。なんか笑いながら剣を抜いている。

 なんかやばいかな?とか思っていたらザルドさんが俺の前に立って両手斧をかまえてる。

「ヒデ少し離れていろ」
「え?ちょっと、ザルドさんこんな所でまずいですよ」
「と言っても向こうはやる気満々だぞ」
ザルドさんは目線を逸らさず話す。

うん、そして、俺の頭の上のライジンとミズチもやる気マンマンだった。

「主殿、アレはやっちゃってもいいよね?」
「ご主人様、いいよねー?」

 ああ、どうしよ?理由はどうであれ貴族とかケガさせたらマズイよなー?あ、証拠が残らない様に綺麗さっぱり治しちゃえばいいのか?

 などとくだらない事を考えていたら甲冑騎士達がやって来た方から馬車が向かって来た。




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