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まさちち

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3章

勇者 その17

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 俺とザルドさん以外の人が洞くつの中に入ってからそこそこ経つのだが、何も変化がなかった。
「ザルドさんみんなどうしたんだろ?大丈夫かな?」
「ん?大丈夫だろ?あんなバケモンみたいに強い奴らが如何かなるとはおもえん。まあ、こういう盗賊の根城には罠が結構あるんだよ。中の奴らを全員捕縛するから解除に手間取っているのかもな」

ああ、なるほど。罠とかあるんだ。そりゃ時間もかかるよな。そんな事を考えていたらドイルさんが洞穴の入り口からこちらに向かって声をかけてきた。

「おおーい、ヒデちょっといいかー。嬢ちゃんが呼んでいるんだー」

え?キャリーさんが?どうしたんだろ?
急いで洞穴まで行くとドイルさんがこれまでの事を説明してくれた。

 最初のビャッカさんの眠りの魔法でほぼ鎮圧は成功していて、マローマさんが罠の解除をして進んだそうだが、罠らしい罠は無かったようだ。それより俺が呼ばれたのは患者の多さと首の数字が一になっている患者が5人もいて解呪が上手くいかないそうだ。
治療してたから時間がかかってたのか。

もっと早く呼んでくれればよかったのに。

 30人位盗賊がいてその半分以上が呪いにかかっていた。もし呪いにかかって無ければ村を襲っていたかもしれないとの事。悔しいがそこは呪いのおかげになるのか?不幸中の幸いってやつだな

 呪いを解除した盗賊と呪いにかかって無かった盗賊は捕縛して部屋に監禁してあって。ケヴィンさんが近くの街まで運ぶそうだ。

数人ずつに分けて飛ばすらしいけどケヴィンさんの魔力も結構凄いな。

 そんな事より自分の仕事をこなさなければ。大見得切っといて解除できませんだなんて言えないもんね。

俺が奥に進んで行くと俺に気が付いたキャリーさんが近寄って話す。
「お師匠様すいません。数字が減るごとに強力になるのは解っていましたが、一になった患者は他のとまた違うような感じでして」

「わかりました。俺も少し診てみますね」
そう言っていかつい顔を苦し気に短い間隔でハァハァと息をしている男に近づく。

俺は診断スキルを発動させてスキルに訊いてみる。
《どう?なんか呪いの糸が太くなって凶悪な感じになってるけど、何これ?》
『マスターいつもの様に解呪をしてみてください。ああ、少し魔力を流すくらいでいいです。分析をしますので』
俺は言われた通りにすると、目の前のコンソールに何かの数値や記号などが凄いスピードで流れていく。

『解りました。一に達した個体は身体の中で呪詛の核が構成され次の個体に向けて呪いが発動される仕組みになっています。ですのでその核も一緒に破壊しないといくら解呪しても再度呪いが構成される仕組みになっています』

それを聞いた俺は頭に血が上るのが自分でもわかるくらいカッとしてしまった。
「クソッ!何なんだこの呪いは、知れば知るほど胸糞が悪くなって来る」
そう言いながら地面を殴っていた。

キャリーさんは俺の声と行動に驚いて急いで俺の手を掴みヒールをかけてくれた。
「お師匠様落ち着いて下さい。何か解りましたの?」
その声でハッとして自分が何をしたか気付いた。

地面をたたいた拳は皮膚が裂けて血がにじんでいる。

キャリーさんのヒールが優しく癒してくれていた。

「す、すいません。ついカッとしてしまって。はい、解りましたよ。この呪いにかかって死に至ると、次に一番かかってほしくない人に呪いがうつると説明したじゃないですか。その為の呪詛の核が身体の中で構成されているそうです。なのでその核もろとも解呪しないとダメみたいです」

後ろで聞いていたビャッカさんが小声で何か言っている。
「人体の中で新たに呪詛の構成?そんな事が可能なの?呪いが自分で成長している?いやそれなら……」
 最後の方は何を言っているのかわからなかった。

「ケヴィンが盗賊どもを街にテレポート中でよかったぜ。今の話を聞いたら、また暴走しそうだったな」
ドイルさんがやれやれと肩をすくめる。

 そう言えばケヴィンさんとマローマさんが居ないのは街に盗賊達をテレポートで運んでいるからか。

それより解呪の方法は解った。あとは実行するだけだ。
「キャリーさん解呪を始めます。時間をかけたくないので力押しに行きます」
キャリーさんがわかりました。と言って斜め後ろに下がる。

俺は頭の中でスキルに話しかけた。
《お待たせ。それじゃその核とやらを壊しちゃおう。さっき魔力を流した時にある程度の場所と大きさは掴んだからサポートよろしくね》
『かしこまりました。ただこの核は力任せに消すとなると魔力の消費が少し多くなりそうです』
《そうだね。ただ今は時間が惜しいから時間をかけて解除する暇は無いよ。一気に行く》
『かしこまりました』

俺は深呼吸を一つすると目を瞑って、核に向かって一気に魔力を送り込むイメージをして唱える。
「ブレイクスペル」
ガラスが割れるような音と共に呪いが粉々になって霧散していく。

残り四人も同じ様に解呪をして行く。

 最後の一人を解呪し終わって立ち上がろうとして立ち眩みを起こしてよろけてしまった。
「お師匠様」
「ヒデ君」
キャリーさんとケヴィンさんの二人に支えられた。

「ああ、すいません。少し魔力を使い過ぎたみたいで。もう大丈夫です」

 そう言って自分の足で立つがこめかみのあたりがじんわりと痛くなってきた。

最後に解呪した患者が目を覚まして周りを見渡し、自分が捕縛されているのを見るとため息を一つついてから話し出す。

「こんな状態って事はまだ俺は死んでないみたいだな。お前が治してくれたのか?こんな事頼める筋合いじゃない事は重々承知だが、俺の子分たちも治療してやってくれないか?」
「ん?ここの人はみんな治したよ。貴方が最後だよ」
「そうかい、ありがとよ。これで心置きなく地獄に行けるぜ」

俺が言葉を発するより先にマローマさんが怒声を上げる。

「ああ?簡単に行けると思うなよ。盗賊が」
「わかっている。だがよ流石に流行病で逝くのはねえよ」
「フン、お前たちは街まで連れていって衛兵に引き渡す。残りの余生を償いに当てな」
マローマさんはそう言い捨てるとその場から立ち去った。
いつの間にか戻っていたのか。全然気が付かなかった。そう言えばケヴィンさんがさっきいたもんね。

ケヴィンさんはため息をつくと俺に話しかける。

「さて後はここの奴らで最後だ。チャッチャッと街の牢屋に運んじゃおうか」

そう言い終わると最後の盗賊たちが全員ケヴィンさんとともに消えた。



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