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まさちち

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3章

勇者 その24

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 女神様の降臨で興奮冷めやまない人達が、また勇者ケヴィンを取り囲んでワイワイやっている。

その横でブノワさんとカドルさんが額を突き合わせて険しい顔をして話し合っていた。

何この構図?

などと考えていたら突然名前を呼ばれて我に返った。
「ヒデ君、何かこう決め手になる様な物は無いものかのう?」
少し疲れた顔のブノワさんが訊いてきた。

何にも考えてなかったのだが、さもずっと考えてました。みたいな顔をして話し出す。
「うーん、そうですねー」
うーん、何も思いつかねー。何かないか。ん?

 キョロキョロと周りを見ながら考えていると、少し離れた飲食店の軒先に小さな植木鉢が並んでいるのが目に入った。
へ?植木鉢?この世界に来てから初めて見る気がする?少し聞いてみるか?

「ブノワさんあの店先にあるのは何ですか?植木鉢に見えるんですが?」
「ん?あれか、そうじゃよ植木鉢じゃな。ここいらは昔から土の恵みがいいのか、作物や植物がよく育つのじゃよ。それで店先や庭なんかではよく、ああやって花を飾っとるんじゃよ。こう見えてもワシの趣味も土いじりじゃ。よかったらヒデ君に自慢の庭園を見せてやろう」

そこまでを一気に話すブノワさん。
自分の好きな事だけあってなんか嬉しそうに話している。ってか普通に植木鉢あるのか。

その時カドルさんも少し興奮気味に話し出した。
「おお、私も植物の事なら多少ですが知っていますよ。まあ、センリョウガランを咲かせたことがあるくらいですが」

センリョウガラン?なんだそれ?花の名前か?きっと咲かせるのが難しい花なのかな?とか考えていたら。ブノワさんが驚愕の声を上げていた。
「なっ、何じゃと?あのセンリョウガランを咲かせたじゃと」
あ、やっぱりそうなんだ。カドルさん、何かちょっとドヤ顔してるし、でもいいこと思いついた。

俺が少し考えをまとめている間に話は様々な花の話になっていった。
「ああ、お二人ともよろしいですか?このスラムを変えるのに少し思いついた事があるんですけど」
そう言って話し始める。
まあ、花を街おこしに使うという事なんだけどね。

 焦らずに周りの人達にも浸透させるようにしましょう。あとスラムの人達の協力は絶対必要になりますから道を綺麗にして壊れそうな建物は撤去して更地にする事。

そしてそれが浸透してきたら道に花壇を作って雰囲気を良くして治安をよくする事。そこまですると理にさとい商人なんかは必ず食いついてくる。

あと、うちの工場で働いている人達が住んでいる寮の作り方と言うか発想だけ伝えておいた。ここの大工さんに話してもらえばいい感じに作ってくれるだろう。
寮があれば少ない土地でそれなりの人数が暮らせるからね。

そしてある程度街の人達に花の事や商人が寄ってきた事などが周囲に認知されてきたら、聞いた話だと土いじり好きな人が多いいみたいだし、大きな公園を作ってそこで花のコンテストとかやるとかどうですか?。

と、ここまでを一気に話すと二人に顔が思案顔になって、俺の話にいくつかの疑問点や自分の考えを付け加えて話をしていく。

そして、ある程度の目安が着くと今度はキラキラした目になって俺の手を握りお礼を言ってきた。

「ありがとうヒデ君、素晴らしい話し合いだった。必ず成功して見せますぞ。そして、コンテストを必ず開きますぞ」

ブノワさんの話にカドルさんも嬉しそうに頷く。
「そうですな。先ほどの話の様に焦りは禁物ですが、必ずコンテストを開きこのスラム街を変えていきますぞ」
ブノワさんとカドルさんが固い握手を交わしている。きっとこの二人なら出来るだろう。

それと、野菜の保存魔法があるのだから、それを花とかの保存に出来ないだろうか?それが出来るなら城下街や大きな街に商売が出来るのではと付け加えておいた。

 最後の話は二人とも笑っていた。花を保存する魔法は野菜ので変わりになるらしいが花などどこでも咲いているしそんなものが商売にはならないだろうという事らしい。
それでも知り合いの商人がいるなら話だけでもして下さいと付け加えておいた。

さて、俺が出来る事はここまでかな?そんな事を考えていた時、キャリーさんが声をかけてきた。
「お師匠様、ケヴィンさんが王様に報告に行く前に街に送って下さるそうです」
「あ、はい。わかりました。じゃあ、挨拶だけしてきますね」

キャリーさんにそう断ってブノワさんとカドルさんに再度近づいて話しかける。
「ブノワさん、カドルさん、必ずスラムを立て直して立派な街にしてください。お二人の情熱があれば必ず出来ると思います。ただ、焦らないでくださいね。花を咲かせる時の様に気長にゆっくりやっていってください」
「ハハ、ジジー達ですからな、あまりゆっくりは出来ませんと思っていましたが、そうですな花を咲かせる時に焦ってやるといつも失敗をしておりましたなカドル殿はどうですかな?」
「ハハハ、これは上手い事を言われましたな、確かにそうじゃった。結果を早く出そうとした時は失敗してましたな。ヒデさん肝に銘じておきます。ありがとうございます」
そう言って三人で固く手を握り合う。

そう言えば、こないだのゴムを改良してビニールハウスみたいなものが出来ないかとか思いついたが口にはしなかった。出来なかったらガッカリさせちゃうからね。上手く出来たら送ってあげようかな。
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