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4章

王都へ その3

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 なんか疲れているギルマスの後ろ姿を見ていたら若様が話しかけてきた。

「それで出発の事だけど急がせて申し訳ないのだけど今日の昼過ぎ頃にしたいのだけど良いだろうか?」
え?今日行くの?
ま、まあ、出発って言っても若様のテレポートで行くから出発してすぐ到着なんだけど、何日間くらい向こうに居るのかな?着替えっとか‥‥‥など考えているとゲンが俺に向かって話す。


「ヒデ兄、俺達は孤児院に戻って院長先生に暫らくクエストで戻れないって伝えてくるね」
そう言うと席を立ちあがり始めたので、急いでゲン達に向かって話す。
「ああ、待った待った。俺も一緒に行くよ。時間があるなら工場も回って王都に行く事を話しておきたいから」
俺がそう言うと若様が席を立って話す。
「急がせて悪いね。こちらの用事は2,3日もあれば終わると思うんだけどね。ヒデ君の用事もあるのだろうから滞在する期間は後で教えてくれ?もちろん王都での滞在には部屋を用意するから、そこら辺の心配はしないでいいよ。僕は一回戻らないといけないから昼過ぎにまた来るよ」
そう言ってギルドの入り口から出ていった。

あれ?診療所に入ってテレポートじゃないのか?そんな事を思って見ていたらキャリーさんに話しかけられた。
「お師匠様?王都での滞在は何日くらいになりますか?」
「どうだろ?若様の方は2,3日で終わるみたいだけど。せっかくの王都だし見学とかもしたいし五日くらいかな?」
俺が指折り数えているとキャリーさんが話す。
「わかりました。まあ、行き先が王都ですからね足りないものは向こうで揃えればいいですから。でわ、私は準備がありますので、こちらには昼前には戻りますわ」
そう言って優雅に一礼するとギルドの出入り口に向かって行った。

俺もゲン達と共に孤児院に向かう。
前はここがスラムだったとか言っても誰も信じないだろうと思うくらい綺麗になった道並みを歩きながらゲン達と話す。

「誰か王都って行った事あるか?」

まあ、答えはあまり期待してないでどんな所かみんなで話し合おう位に考えて話しを振ったのだが意外な答えが返って来た。
「あ、俺が赤ん坊の頃王都にいたらしいけど、全然覚えてないよ」
「「「「‥‥‥」」」」
ゲンがそう答えると他の子供達と俺はみんな同じような顔をしてゲンを見て言葉を失っていた。

俺が話し出そうとした時ハルナが先頭を切って話し出す。
「えええー、ゲンって王都生まれだったの?初めて聞いた」
「前に聞いた時田舎の村で育ったって言って無かったっけ?」
「私もそう聞いたよ」
ハルナ、トラン、ミラが順々にゲンに話す。
「いや、だから生まれたのが王都だってだけ。俺の記憶があるのは田舎でじいちゃんとばあちゃんと暮らしてたところからだし。王都で生まれたって話も聞いたのは一回だけだったし」

物心ついた時におじいさんとおばあさんしかいなかったのか。あまり突っ込んで聞かない方が良いな。

「むう、そうか。じゃあ誰も王都って知らないのかー。なあなあ、どんな所かな?」
ワザと少しおどけた感じで話す。

「王都って物凄い人がいっぱいいるって聞いたよ」
「この間のお祭りみたいな人通りが毎日あるんだって」
「えー?あの人通りが毎日?じゃあ、毎日お祭りしてるの?」
「王都は色んな国から人が集まるって聞いた」

俺の質問にゲンにトランにハルナ、ミラが一斉に話し出す。

フフ、まああの程度の人通りなど通勤ラッシュを毎日経験していた俺にとっては何て事無いのだがな。
そんなつまらん事を考えているうちに孤児院に着いた。

孤児院の中に入ると外で遊んでいた子供達がワッと集まって来た。

「「「「「あー、ゲン兄ちゃんだ。お仕事おわったの?」」」」」
「「「「「トラン兄ちゃんやハルナ姉ちゃんにミラ姉ちゃんもいる。遊んでー」」」」」」
「「「「「ヒデ兄ちゃまもいるー」」」」」

うわ、なんかまた人数が増えてないか?工場に努めている人だけじゃなくて街の子供達も預かってるって言ってたけどこれ何人いるんだ??

そんな子供達に驚いていると聞きなれた声が聞こえた。
「ハイハイ、みなさん。お客様が来たらまず、挨拶をしましょう」
ハッキリとしてどこか優しい院長先生の一声で子供達が一斉に挨拶をし出す。
「「「「「こんにちはーー」」」」」
 
「はい、こんにちは。みんな元気があるねー」
俺がそう答えると子供達は嬉しそうに笑っている。そこに他のお手伝いの先生たちが来て子供達を遊び場や部屋の中に連れていってくれた。

少し残っていた子供達もゲンやトラン、ハルナ、ミラ達に他の子共達の場所に行くように言い聞かせている。
その光景を横目で見ながら院長先生に挨拶をする。
「院長先生、ご無沙汰してます。また、子供達の数が増えたみたいですけど無理しないでくださいね」
「ヒデさん、お久しぶりです。子供達から聞きましたよ。大変なクエストをやり遂げたそうですね。お疲れ様でした」
「い、いや、お恥ずかしい。俺はついて行っただけのようなもんですから」

様々なクエストをやってきた元冒険者の院長先生に”大変なクエスト”とか言われるとなんか気恥ずかし。

「ホホホ、ヒデさんらしい答えですね。それで今日はどうなさったのですか?よろしければ客間の方に行きましょう」
「あ、少し急いでますのでここでいいです。実は‥‥‥」
少し急ぎ早に話し出し、王都に行く事、ゲン達も護衛のクエストで一緒に王都に行く事を話す。

「まあ、そうでしたか。わかりました。ヒデさん四人の事お願いします」
院長先生はそう言って頭を下げる。

「違うよ院長先生、俺達がヒデ兄を守るんだから」
「そうだよ、今回はちゃんとしたクエストなんだから」
「ギルマスから渡されたクエストなんだから」
ゲンとトラン、ハルナが順番に話し出す。

「ふう、護衛のクエストはそうかもしれないですが、王都に行って何やらと世話を焼いてくれるのはヒデさんです。ヒデさんの言う事をキチンと守るのですよ。わかりましたか?」

「「「「はい」」」」

流石は院長先生だ。
最後の”わかりましたか?”は強い感じでなく優しく言い聞かせるように話している。子供達が院長先生になつくのもわかる気がする。



+++++++++++++++
いつもお読みいただきありがとうございます。_(_^_)_

新しい話を書くなどと言っておきながら未だそんなに進んでいないのですが‥‥‥

”生産系チートが生き残るのは大変すぎる。”

を書いています。お暇でしたら読んで感想などを書いていただければ嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
_(_^_)_


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