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4章
王都へ その2
しおりを挟む朝ご飯を食べ終わって少しのんびりとしているとトランが話しかけてきた。
「あ、ヒデ兄フウジン達って今どうしてるの?ヒデ兄に魔力渡して力がまだ戻ってないとは聞いたけど」
「うん、昨日話した通りだ。今俺の中でMP充電中みたいな感じだ。MP戻れば普通に出て来るよ」
そうなのだ、女神降臨なんかした為に俺のMPだけじゃ足りなくて勇者ケヴィンとかそのお仲間のMP、キャリーさん、そして連れていった守護獣の子達と(離れていたベンテンはそこまで衰弱はしなかったのだが俺が返って来た途端他のみんなと同じ様に俺の中に戻っていった)のMPを使って何とか女神様の降臨が成った。
まあ、別にチョロイン女神さまを呼ぶつもりはなかったんだけどね。出てきたのがチョロイン女神さまで呼び出した自分が一番驚いたけど。
トランの話にゲンもハルナ、ミラも興味津々に聞いている。ハルナが俺に訊いてきた。
「ねえねえ、ヒデ兄どれくらいでミズチは復活するの?」
「うーん、ハッキリと分かんないけど。明日くらいには大丈夫じゃないかな?」
俺の答えに満足したのか四人とも笑顔で頷いた。
横に座っていたキャリーさんが少し顔を引きつらせて独り言の様に呟く。
「ホホ、さ、流石はお師匠様ですわ。あの巨大な魔力の塊のような守護獣の四体を復活させるのに二日程度で済ませてしまうなんて」
ボソボソと聞こえてきたけどスルーしておく。
そんな話をしていると珍しく診療所の方からではなく、冒険者ギルドの入り口から若様がヴァネッサさんを伴って入って来た。
若様は診療所に向かわずに酒場の方に迷わず向かってくる。
「やあ、ヒデ君先日はご苦労様だったね。本当は昨日来ようと思ったのだけど、ヒデ君が疲れで倒れたと聞いて今朝まで待っていたんだ」
俺は近くまで来た若様に立ち上がって挨拶をする。
「ああ、それはスイマセン。全くお恥ずかしい、自分の体力の無さを痛感させられましたよ」
「フフ、いやいや、聞いた話だけだがかなりの大立ち回りだったそうじゃないか。色々聞いているよ」
「う、まあ、最後が余計だった感じですがね。最後のが一番疲れましたよ」
若様は全部知ってるんだろうな。とか思いながら話す。
それを知ってか知らないがいつもの笑顔で話し続ける。
「それでね、ヒデ君僕の家に来て呪いの治療法、女神様に関する事、それとその時の話などをきかせてほしいんだ」
へ?若様の家?若様の家ってお城でしょ?王都に行くって事なの??
若様は困惑している俺を置いていって話を続ける。
「今回の出来事は隣の国の事だが、いつ我が国に降りかかってもおかしくない事案だ。なのでその対処法や今回の事を正式に文章にして後世に残したいんだ」
若様は最後に強制ではないけど協力してほしいと言った。
そこまで言われては断るに断れない。まあ、最初から断るなんてことは無いけどね。
「はい、もちろん協力しますよ若様。ただ、俺の名前が表に出ない様にして下さいね」
若様は若干ホッとしたような顔になり答える。
「ああ、その事はわかっているよ。それと他に何か要望はないかい?」
要望?うーん、他になんかあるかな?と考えているとミラが俺の服を引っ張る。
俺が顔を向けるとミラには珍しく少し仏頂面で訊いてくる。
「ヒデ兄師匠またどこかに行っちゃうの?」
その言葉に周りを見渡すとゲンもトランもハルナも同じ様な顔をしていた。
あー、前の時は結構、無理矢理おいて行っちゃったしな。ダメもとで若様に訊いてみる。
「若様、今回の聞き取りみたいなのってやっぱり時間かかります?」
「うーん、そうだね。話を聞いて裏付けを取ったりと時間はかかるね。もしかしてミラさん達の事かい?ヒデ君が良いのなら同行するのは構わないよ」
「え?いいんですか?子供を連れていっちゃって」
俺の子供発言にゲン達が抗議する。
若様はその様子を見て笑いながら話す。
「ハハ、寧ろゲン君たちが来てくれるのは嬉しいかな。こちらでもヒデ君の護衛はつけるけどやっぱり気心が知れている人の方が良いだろ?」
確かに知らない人とずっといるならゲン達の方が気が楽だな。
「聞いていてわかったと思うけど王都に行くけど行けるかい?」
俺の問いにゲン、トラン、ハルナ、ミラが答える。
「もちろんだぜ。今度こそついて行くからね」
「ヒデ兄と離れている方が心配だよ」
「おお、王都だって初めて行くよ」
「今度こそ一緒に行くもん」
喜んでいる子共達に向かって話す。
「ああ、喜ぶのはいいけど若様にキチンとお礼を言いましょう」
「「「「若様、ありがとう」」」」
「ハハハ、いえいえ、どういたしまして。それより今回の事はヒデ君を守るクエストだからね。キチンとギルドにクエストを出しておくからね。しっかり頼むよ」
若様のクエストを出すの一言に緩んでいたゲン達の顔が引き締まる。
おお、若様スゲーな。人を使うという事を熟知しているのか?それとも素でこういう事が出来るのだろうか?
隣にいたキャリーさんが少し思案顔で話す。
「そうしますと私は今回留守番でしょうか?」
その答えに俺が答えるより早く答えた人がいた。
「いや、キャロラインもついて行ってやってくれ。こっちは何とかしておくから」
その声の方に顔を向けるといつの間にかギルマスが何か書類みたいなものをもって、俺達の近くまで来ていた。
ギルマスが続けて話す。
「そもそも、護衛のクエストはゲン達のランクでは受けられないしな。キャロラインのPTってことにすれば問題ない。それと今回の事でお前が王都に行くのはわかってたしな、こっちから頼もうと思ってたよ」
「ギルマスこっちは何とかするって回復師いなくて大丈夫なの?」
「さっき回復師の要請を出しておいた。それより王都に行ったら冒険者ギルドの本部にこの書類を持っていってほしい」
そういって結構分厚い手紙を預かった。
「うん、わかった。冒険者ギルドに持ってけばわかるのかな?」
「ああ、このクエストの紙を渡せばわかるようにしておいた。そっちの都合で構わないから頼むぞ」
少し疲れた顔のギルマスはそれだけ言うと戻っていった。
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