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2章

呪い

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奴隷商館からの帰り道でキャリーさんに呪いについて訊いてみた。
「キャリーさん呪いの事って知ってる?」
「学生の時に授業で習ったくらいですわ。呪いを人にかけるのは禁止されていますので呪いをかける事が出来る人は限定されますわね」

「うーん、独学で勉強をしてる人とか?」
「そうですわね。この手の本は図書館などでも持ち出しは禁止ですが閲覧は出来ますから」
「えっ、閲覧は出来るの?」

「国によって違いますけど私の国では特別閲覧権を買えば出来ました」
「ん?つまりお金を出せば誰でも読めるの?」
「そうですね。ただ、魔導書って古代文字で書かれていたりわざと言い回しを解りにくくしたりしてますので慣れてる人じゃないと読み解くのも大変なんですの」

「じゃあ、犯人は魔法の研究をしてる人って事かな?」
「その考え方が妥当ですわね」
「うーん、何かしっくりこないなー。魔導書を読み解くような人が酒場のお姉ちゃんに呪いかけたりするかな?」

「確かにそうですわね。呪いは使うだけで衛兵に捕まるのは研究者なら知っているはずですわ」
「新しく発見して試したくてなんて、あるわけないよな?バレたら捕まるし」

「お師匠様、この分野の研究には人にかける様な事はむしろ副産物なのですわ。呪いの研究者達はモンスターからの呪いの回避、もしくは解呪の研究が本命なんですのよ」

「あ、やっぱりそっちが本命なんだ。考えてみれば当たり前だね。解呪の薬とかお札なんかを売り出せば儲かるしね。そう言えば貴族の道楽以外なら、後は出資者の商人なんかを探すくらいしか個人で研究なんかやってられないって前にポールさんから聞いた事がある」

「まあ、単純に魔術の研究をしたいのでしょうけど、出資者が居ないと研究者はやっていけないですからしかたないですわ」

「じゃあ、やっぱりしらみつぶしに呪いにかかっている奴を探すしかないのかな?」
「お師匠様が解呪した呪いは三つ。これが同じ人間によるものなら相当な呪いを背負っていることになりますわ。解呪されると呪いは大きくなって術者に帰りますから」

「症状が同じなら肌にウロコみたいな後のある人かな……ん?」
「どうしましたの?お師匠様?」

「あれ?ゲンか?こっち向かって走って来る」
「あら?本当ですわ。診療所で何かあったのかしら?」

「え?大変だ急ごうキャリーさん。おーいゲンこっちこっち」
大きな声を出してゲンを呼んで駆け寄る。

「ヒデ兄、お仕事は終わり?ちょっと大変な事になってヒデ兄を迎えに来たんだ」
「大変な事?まさか、ミラや他の子に何かあったのか?とりあえずギルドに向かいながら話そう」

「えっと、ミラやトラン、ハルナには怪我もないよ大丈夫。ミラの事を襲おうとした奴から守れたから。でーー」

「なに!?襲われた?誰にだ?怪我はなかったか?あ、守れたって言ってたか。犯人はどうした?ギルドのみんなは動かなかったのか?そんな極悪人を逃したのか!」

「お師匠様落ち着いて下さい。今はゲンの話しをキチンと最後まで聞きましょう」

「う、そうだった。それでどうなったんだ?」

「えっと、どこまで話したっけ?」
「お姉様が襲われそうになって、貴方が守った。まで聞きましたわ」

「そうそう、それでその犯人はゴメン逃げられちゃった」
「いや、深追いしてお前達に被害が出なくて良かったよ。怪我した人はいないんだな?」
「うん、それは大丈夫」

「よし、ミラを守ってくれてありがとうゲン」
 頭をなでながらお礼を言った。
「なんだよ、仲間なんだから当然だろ」

「でも心配だ。走って戻るぞ」
 そう言うと全速力で走りだす。


 まあ、到着したのは俺が最後なんだけどね。

 ギルドに戻ると急いで診療所に飛び込む。

「みんな、怪我はないか?」

「わっ!ビックリした」
「なんだ、ヒデ兄か」
「あいつが戻って来たかと思ったよ」

「……見た感じは変わりないけど、みんな大丈夫か?」

 ミラが俺の顔を見ながら頷く。
「ゲン、どこまで話したの?」
「えっと、襲われて追い返したってとこまで」

「えっと、最初から話すね。昼過ぎにローブを被った男が来て。症状を見たら前にヒデ兄師匠から聞いた呪いと似てたからヒデ兄が解呪した事を話したの。そしたら急に襲ってきて。ゲンが守ってくれたから怪我はなかったけど診察台の上から何か拾い上げて持っていったの」

「診察台から?拾い上げる?なるほど、そいつが呪いをかけていた奴なら俺の髪の毛か身体の何かってとこかな?」

「帰り際に前に買った呪いよりもっと高額のとっておきで、呪ってやるって言ってたよ」

「買った?買ったって言ってたのか?」
「うん、そう言ってたよ。ねえ?」
「「「うん!」」」

「キャリーさん、呪いって買えるの?」
「いえ?そのような事は聞いた事無いですわ」

「買ったって間違いなく言ってたの?」
「「「「うん」」」」

 四人がそろって頷いた。

「フム、まずはそいつを捕まえて色々聞き出した方が早そうだね。呪いを売っているならそこを抑えないと無くならないしね」
「どうやって捕まえるの?ヒデ兄師匠」

「えっ?それはこれから考える」
「でも、早くしないとヒデ兄師匠が呪われちゃうよ!」

「うーん、あ、そうだ確率的に言えば俺だろうけど診察台の近くにいた人達。つまりお前達も可能性があるんだからな。身体の調子が悪くなったら直ぐに言うんだぞ。あ、もちろん、キャリーさんもですよ」

「な、な、な、何を言ってやがりますの?ま、まさか、わ、私誰もいない間にお師匠様が横になっているベッドにねころんだとでもいうのですわ?」

「「「「……」」」」

「ん?いえ、ここの部屋に出入りした事のある人なら誰でもあり得るって事ですから」

「へ?ゴホン。そ、そうですわね。今日はギルドから出ないようにしましょう。皆さんも良いですわね」

(今のキャロライン姉のあれって?)
(チョ、待てってそれ以上はいけないよハルナ)
(キャリーちゃんいつの間に……)

「ゴホン、わかりましたね。み・な・さ・ん!」

「「「「はい!」」」」
(((目がヤバイ剣の鍛錬の時より殺気がこもってる)))

「あ、ヒデ兄師匠、今日ね診察台でケイトさんの治療したんだけどーー」
「きゃーーーーー」
ミラが俺に話をしている時に診療所の外から悲鳴が聞こえてきた。
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