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まさちち

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2章

人を呪わば

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 悲鳴の聞こえてきたドアから飛び出して辺りを見回す。ギルドの受付の職員達が奥に向かって驚いた顔をしていた。

急いで人をかき分けて行くと想像していた通りの光景が目に入ってきた。ケイトさんが倒れていてニーナさんが膝をついてケイトさんに呼び掛けている。ケイトさんは意識がないのか、激しい息遣いを繰り返すだけだった。

 急いでニーナさんの向かいに膝をついてケイトさんを診る。
 【診断
『間違いなく呪いです。今、身体は高熱が出て意識を失っています。とても危険な状態です』
≪えっと、とりあえずヒールで一時的に状況見よう≫
《ヒール》

少しだけ呼吸が落ち着いたと思ったらまたすぐにうめき声と共に息が荒くなってくる。よく見ると首筋にウロコの様なものが見えている。
「クソッ」
 悪態をついてからケイトさんをお姫様抱っこをして診療所に連れて行く。ケイトさんの肌にこの醜いウロコの様なものがあるのを人に見せたくなかったからだ。

 中に入るとミラとキャリーさんも入って来る。
「ゲン、外で誰も入ってこない様に見張っていてくれ」
「わかった。トラン、ハルナ手伝ってくれ」
「「わかった」」

子供達がドアを閉めるのを確認してから診察台に寝かせたケイトさんを診る。

首の辺りしかなかったウロコが顔の方まで広がっている。

 【診断】

≪解呪をしよう早くしないとマズイ気がする≫
『同感です。この呪いは前回より厄介ですが解呪は出来ます』
≪うん、よろしくね。後、解呪した時に呪いが戻った場所を特定できないかな?≫

『少しお待ちください。……出来ます。マスターの魔力を紛れ込まして後からマスターの魔力を探知する様なものになりますが』

≪わかった。特定出来るなら何でもいいよ。早くケイトさんを回復してあげないと≫
『了解です。やり方は前回と変わらないですがマスターの魔力を多く消費しますのでその心づもりでお願いします』
≪わかったよ。始めて≫
『了解です』

言い終わると目の前にケイトさんの身体から前回見たより少し太い魔力の線が見えた。

『マスター解呪を発動させてください』
《ブレイクスペル》

 青白い光が呪いの部分を包み込むとガラスが砕ける音がして呪いが消えた。小さな破片の青白い光が逆再生のように集まると勢いよく魔力の線に引っ張られていく。前回とは違い飛んでいく魔力線の先端に風船の様なものがくっついていた。

……あ、あれが目印なのか?

 それよりも今はケイトさんの事だ。頬の辺りまであったウロコも綺麗に無くなっていて、荒かった呼吸もゆっくりと規則正しい物に代わっていった。

「ふー、良かった。呼吸も落ち着いてきたしウロコも消えたね」

「凄い。ヒデ兄師匠の呪文一つでケイトさんの状態が一瞬で快復した」
「お見事ですわ。ここまで見事な解呪が出来る人は数人もいないでしょう」
ミラとキャリーさんが目を丸くしてケイトさんを凝視している。

「ありがとう。ケイトさんは大丈夫だと思うけど、念の為にミラが付いててあげて」
「うん、わかったよ」
力強く頷くミラを見てからドアの前のゲン達にも声をかけてケイトさんの警護を頼む。

「キャリーさん、これから呪いをかけた奴を捕まえに行くので付いてきてもらっていいですか?」
「もちろんですわ。女性の肌にあのような不埒な事をする輩は許せませんわ」 

 なんかキャリーさんからゾクッとするような感じがした。これが殺気ってやつなのか?それよりもう何人かいないかな?そう考えていた時後ろから声をかけられた。

「オイ、ヒデ、ケイトさんは無事なのか?」

 声のした方を見るとザルドさんとギルマスが心配そうに診療所の方を見ながら話しかけてきた。
「ちょうどよかった。ギルマス中にケイトさんを休ませているんで看ててあげて下さい。ザルドさんは手が空いているならこの原因を作った犯人を捕まえに行くので手を貸してもらえないですか?」
そう言うとザルドさんより先にギルマスが聞いてきた。

「ケイトの看病はわかった。しかし犯人を捕まえるとは何だ?何か事件でもあったのか?」
「ギルマス今は時間がないから戻ったら話すよ。早くしないと逃げられちゃうかもしれないから」
「わかった。戻ったらキッチリ話してもらうぞ」

「俺もよくわからんが道すがら教えてくれ。ヒデの頼みなら断る事は出来ねえよ」

「ハハ、ありがとう。じゃあ行きましょう。道すがらに話しますんで」
そう言って二人を連れてギルドから飛び出した。

 外に出てから周りを見渡すと左の方から何か感じる。
【診断】小声でスキルを発動し確認をとる。

≪こっちの方角であってる?≫
『はい、感じてるままに進んでください』
≪わかった。ありがとう≫

「こっちです、行きましょう」
 先頭に立って速足で進む。その道すがらザルドさんとキャリーさんに花街での出来事から話す。

「そうすると、今向かってる場所にはその三件の呪いをかけた犯人がいるのか?」

「うーん、もしくは、花街の女の子に呪いをかけた奴かな?何となくだけど犯人は同一人物じゃない気がするんだよなー」
「どういう事ですの?」
「うん、ミラが言っていた呪いを買ったっていうのが引っかかってさ。例えば持ち運びが出来るくらいの瓶に呪いの薬品だの素材だの詰め込んで、最後に呪う相手の髪の毛や何かを入れれば出来る様にして売る事って出来るのかな?とか考えちゃって」

「はあっ?俺は魔法とか全然わかんねえけど、そんな事出来るのか?」

「いや、俺もわかんないですよ。呪いを買うって言葉から連想したのがそれだったし。それと呪いを使うほどその子に惚れてたのなら失敗してもまた、同じ子にかけるんじゃないかなって思っただけなんだけど」

「瓶に分けて呪いを売るのは情報が少なすぎてわからないですが。呪いを同じ子に使うのはわかる気がしますわ」

話し合いながら、早足で歩いていると目的地が見えてきた。
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