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2章

お祭りの準備 ポールさん

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 ブルースさん達と別れて商店街の奥にあるポールさんの店に向かう。

店のドアを開けると鐘の音が鳴って来店を知らせる。カウンターの中にいるモニカさんがこちらを見て挨拶をしてくれた。

「いらっしゃいませ。あら、ヒデさんこんにちは」
「こんにちは、モニカさん‥‥‥そして、また来てたのかよお前、早く帰って仕事しろよモブ」

露骨に嫌な顔をして言葉を吐く。
「チッ、お前こそ何しに来たんだよ」

「仕事だよお前と違ってな。ばあちゃん大切にしろよ。モブが」
「お前が俺の名前を呼ぶ時にスゲーむかつくんだけど何でかな?」

「モブはモブって事だ。サッサと帰ってばあちゃんと仕事代わってこい」
 そしていつもの様にモニカさんが加わって来る。
「そうね、おばあちゃんの薬が出来たから店番代わって来なさい」

モニカさんの言葉に少し慌てて答える。
「え?じゃ、じゃあ、おれがもっていくからもうすーー」

 その言葉を遮る様に店のドアが勢いよく開き、来店の鐘が大きな音を立てた。
「このアホ息子がいつまで遊んでるんじゃい。サッサと戻って仕事せんかーー」

「ゲッ、母ちゃんやべー、今帰るとこだったんだよ。薬は出来てるみたいだから受け取ってからもどってくるといいよ」
 モブはそこまで言うとドアから急いで出て行った。

「まったく、誰に似たんだかねー、うちの人は真面目で誠実な人だったんだけどねーまったく」
ブツブツと独り言を呟くばあちゃんに向かって挨拶をする。

「こんにちは、おばあちゃん相変わらず元気ですねー」
「ん?なんだい?確か少し前にジジイのとこによく来ていたジジイ2号だったね」
「いやいや、ヒデですよ。名前覚えて下さいよ」

「ああ、確かそんな名前だったね。まったく、そんな事よりうちのバカ息子をもう少し真面目にさせる事は出来ないもんかねー?」

「そんな事って。まあいいや、あれじゃないですか?嫁さんでも貰えばおちつくんじゃないですかね?」
おばあちゃんが渋い顔をする。
「嫁ねー、モブはちっとも女っけがないからねー、モニカちゃん誰かイイ人いないかね?」

「フフ、私のお友達はみんな結婚しちゃってますしねー」
少し思案顔して答える。この手の質問は前からされているんだろうな、答えがテンプレートな感じがした。おばあちゃんがこっちを向いて話しかけてきた。

「そうだ、あんたこないだ別嬪さんを連れていたじゃないか、あの子はあんたの彼女なのかい?」
「え?この前ってまさかミラ?エルフの小さい子ですか?ダメですよあの子は見た目通りでまだ十歳なんですから」

「そっちの子じゃないわい!あんたと同い年くらいで別嬪な子がいたろう?」

「‥‥‥分かってて言ったんですよ。キャリーさんは彼女じゃないですがダメです。モブ君には勿体ないです」

おばあちゃんは苦笑いを浮かべながら答える。
「まあ、わかっていたけどね。しかし親の目の前で勿体ないとかハッキリ言うとわね」

「会うたびに仕事サボってるんですからそれは仕方ないですよ」
今度は少し楽しそうに笑いながら答える。
「ハハハ、それじゃあ仕方ないね。でもどこかにいないもんかね嫁さん」

「嫁さんかー、んーー、そうだ、今度お祭りやるんですよ」

「「お祭り?」」
モニカさんとおばあちゃんが声を揃えて聞いてくる。

「あ、もしかして昨日主人が言っていたヒール通りでやるやつかしら?」
「それです。そのお祭りで合コンみたいなのが出来ないかなー」

「「合コン」」
仲いいなこの二人。

「えーっと、合同で今度お茶しませんかの略語です」
目をそらして答える。

 おばあちゃんが何となく疑っている目で見ながら話す。
「それでその合なんちゃらは何するんだい?」
「合コンですよ。えーっと、簡単に言うと未婚の男女を集めてみんなでお茶を飲むんですよ」

「はあ?そんな事してどうすんだい?」
「フフ、そこで自分の結婚相手を探してもらうんですよ」
「そんなんで見付かれば苦労しないわい」

「まあ、ただお茶飲んで終わりじゃないですよ。自己アピールタイムやフリートークの場、それに話しやすいようにあの手この手を考えてますから」

「ほほー、それは良さそうじゃないか。うちのバカ息子も参加できるのかい?」
「もちろんですよ。本人の承諾なしでも参加させますよ」
良い笑顔で返す。

「よっしゃあ!モブを頼んだよ。必ず祭りの時は連れて行くから、日時が決まったら知らせておくれよ」

「ええ、その時は必ずお知らせします」
その答えを聞くとおばあちゃんは薬を片手に店を出て行った。

モニカさんに笑顔で突っ込まれた。
「ヒデさんなんか顔が悪戯を考えてるラウラそっくりですよ」

う、しまった。モブに何やらせようかとか考えていたら。
「ハハ、ヤダナーモニカサン、ナニモカンガエテイナイデスヨ」

「フフ、おじいちゃんならいつもの部屋にラウラといるはずですよ」

「あ、はい、お邪魔しますねー」
急いでいつもの部屋に向かってドアにノックをする。

「こんにちは、ヒデです。お邪魔してます」
「おお、ヒデ君か開いているぞ入っておいで」
ドアを開けて中に入るとお手伝い用のエプロンをしたラウラとポールさんが迎えてくれた。

「あ、ヒデ兄ちゃんだ。ミラちゃんとか、ゲ、ゲンも来てるのか?」
「残念今日は一人で来たんだよ」

「そ、そうか。べ、別に残念じゃないし」
「え?ミラに会えなくて残念じゃないの?」
「そ、それは残念だけど‥‥‥う、うるせー。母ちゃんに言ってお茶もらってくる」
そう言って俺の足をけってから出て行った。

「ハハ、あんまりやると嫌われるぞヒデ君」
「いやー、反応が可愛くてついからかっちゃうんですよね」

孫の事を褒められていつもの笑顔よりさらに甘い顔で笑う。
「フォフォ、それより今日はどうしたのじゃ?」

「はい、今日来たのはですねー今度やるお祭りの時に使う物で、何かいいアイデアないかなーと思いまして」
今日来た目的をポールさんにつげた。
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