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まさちち

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2章

お祭りの準備 スライム風船

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色々と回った日から数日が経った。

 あれから、ポールさんの研究を手伝ったり、衛兵の詰め所の場所を決めたり、各自の店が個別にやるセールと通り全体で行なうキャンペーン的な物を提案したりと中々忙しかった。


「ヒデ兄師匠、何か忙しそうだね?」
朝いつもの二日酔い連中を治して、朝ご飯を食べに酒場に向かっている時に一番弟子のミラが少し心配そうに話しかけてきた。

「ん?そうだねー、もう少し忙しいのが続きそうかな?診療所の方を二人に任せっきりでゴメンね。キャリーさんもありがとうね」

 二番弟子のキャリーさんが柔和な笑みを浮かべながら答える。
「いえ、それは構いませんわ。それよりミラお姉様がおっしゃりたいのはお師匠様の健康状態ですわ」
 逆側にいるミラに視線を移すとしきりにうんうんと頷いている。

 ミラの小さな頭に手を置いて撫でながら話す。
「ハハ、ありがとう。でも大丈夫だよ。このお祭りが終われば暇になるからね、また前の様にゆっくり出来るよ‥‥‥たぶん」

 ミラは撫でられたのが嬉しいのかこっちを向いてニコニコしている。

 それを羨ましそうに見ていたキャリーさんが急いで付け加える。
「も、もちろん私も心配してますわ」

「ありがとう。キャリーさんとミラのおかげで診療所の心配をしないで動けるから、気持ち的に余裕が持てるから助かってるよ」

 そう言ってキャリーさんに頭を下げた。下げた頭を上げるとキャリーさんが何やら複雑そうな顔をしていた。なんかキャリーさんの頭が近かったけど、まさか頭を撫でて欲しかったとか?いやいや、それは無いな立派なレディーに失礼過ぎるだろー。


「あれはダメね。ヒデ兄全然気が付いてないね」
「だねー。キャリー姉ちゃんに口止めされてなきゃ話したいとこなんだけどねー。まあ、これ見てるのも楽しいんだけどね」
 何やらトランとハルナがコソコソ話しているみたいだがよく聞こえなかった。

「みんなお待たせ。ママさんの所に行って朝ごはん食べよー」
少し離れた所にいるゲン、トラン、ハルナに声をかけてみんなでママさんの店に向かう。

 朝ご飯を食べてからゲン達はいつも通りクエストに向かって行った。
ミラとキャリーさんに留守番を頼むと俺も診療所がある冒険者ギルドを出て商店街の方に足を向ける。

 最初にブルースさんの所に衛兵の詰め所の場所の了承を貰いに行った。
「こないだは居なかったからな。まあ、孤児院から近い場所にしたから問題は無いと思うけど」

 もう衛兵の詰め所は作り始めてるので、事後承諾でいいと言われているが報告は早い方が良いだろう。そう思ってブルー商店に向かった。

ブルー商店は相変わらずの賑わいを見せていた。受付のお姉さんに尋ねたが、ブルースさんは来てないそうだ。

 居ない方が多いので期待はしてなかったがまたの機会にしよう。
そのままポールさんの店に向かう。

 ポールさんには、ゴム風船じゃなくて、スライム風船
の改良とかをお願いしてある。
いつもの様にモニカさんに挨拶をしてポールさんの部屋に向かう。

「こんにちは、ヒデです」
「おお、ヒデ君か良い所に来た。こないだ言っていたのが完成したところじゃ」
満足そう髭をなでながらいつもの笑顔で話す。

「おお、見せて下さい」
そう言ってポールさんの横にある丸い物体を手に取る。
大きさは直径15センチ位のボールである。子供時に使っていたドッチボールとかをやる時に使った物と同じものだ。持った感触も弾力も申し分なく完璧だ。

「凄いですねー、注文していた通りじゃないですか。流石ポールさんです」
「フォフォ、そう褒める出ない。ワシはヒデ君が発明した風船を改良しただけじゃ」
そう言ってくれるポールさんに申し訳ないが俺は似た素材を探しただけなのだ。

「それと、スライム風船の色付けも出来たぞ。耐久もかなり上がっておる」
 そう言って他の机から赤や青、黄色などの風船も見せてくれる。そうなのだ、俺が作った最初の風船は数時間するとしぼんでいってしまったのだ。

「実験では一日くらいは持ったじゃがな。しかし、もう一度膨らませば膨らむのじゃが耐久はドンドン落ちて行くのう」
「うーん、それは仕方ないですね、その場限りの物として売り出しましょう」
 この風船は膨らませる時に微量の魔素を流すとガスで膨らましたように浮くのだ。それにその場の見た目が良ければいいし、あまり耐久は必要ないだろう。

「そうかの?丈夫な方がいいのではないか?」
「フフフ、いいんですよ。こうやって‥‥‥出来た」
風船を膨らませて縛り近くに合った糸を結ぶ。

「風船の表面にお店の名前とか書けば良い宣伝になるでしょ?」

「フォフォ、なるほどのう。子供の遊び道具と言うだけでなくこんな使い方まで考えているとはのう。宣伝用かそれなら低価格で作れるこれは持ってこいじゃ」

「あ、わかっちゃいました?これってうちの工場で出来ませんかね?」
「そうじゃのうー、価格などの話はわからんが設備さえあれば問題ないじゃろ。素材を溶かすのは現状アル道具で出来るしのう。色付けや耐久付けの薬品もそんなに難しい物ではないからのう。ただ、こっちのデカいのは今のままでは大量生産は難しそうじゃ」

まあいいか、風船だけでも工場に持っていこうかな。
「わかりました。使う素材とか分量とか教えてもらえますか?今から工場に持っていって皆に聞いてきますので」
「ホム、わかった。少し待っておれ」
そう言うと机の上に置いてあったメモにスラスラと書き始めた。

「ほれ、これを息子のウィルに渡せばわかるはずじゃ」
 そう言ってメモを渡された。メモを見たのだが見慣れない素材とかが書かれていて俺にはよくわからなかった。

「ありがとうございます。それとこのボールの耐久を見るのに何個か孤児院に持っていっても良いですか?」

「おお、それはいい考えじゃな。耐久はかなりあるが実際使う子供達に使ってもらった方が実戦に近い結果がでるからたすかるのう」

 大き目の袋にボール数個と風船を入れてもらってポールさんの家を出て、孤児院に向かった。




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