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2章
お祭りの準備 孤児院 その2
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いつも通りヒール通りに出てから孤児院に向かって歩いていくと、門にたどり着くと同時に中から声をかけられた。
「この孤児院に御用ですか?」
その女性の声に聞き覚えがなかったので、声の聞こえてきた方向に顔を向けると、歳は二十歳くらいの長い髪を少し高い位置でまとめたポニーテールの小柄な女性が立っていた。
きっと、この時の俺の顔は間抜けな顔をしていたと思う。見た事のない女性から声をかけられた事もそうだが、それよりもっと驚いたのは、声をかけられるまで門の近くに人の気配をまったく感じなかったからだ。
黙っていたのが不信感を強めたのか、少し腰を落としていつでも動けるような体制をとってもう一度同じ質問をしてきた。
「この孤児院に何の御用ですか?お預りしている子供達の保護者様とも違うようですが?」
ヤバイ、これ以上呆けていると何かヤバそうだ。そう思って取りあえず何か言葉を発しようと思った時、院の方から声が聞こえた。
「シャーリー先生、その方は大丈夫ですよ。ヒデさんいらっしゃいませ」
院長先生が門に向かって歩いてきた。
「「院長先生」」
驚いた声のシャーリー先生と、安堵した俺の声が重なった。
「え?この方がヒデ兄ちゃま!?」
シャーリー先生は院長先生の顔を見てから、俺の方にビックリした顔を向ける。
うっ、子供達に聞いたんだろうなー、大人の女性にヒデ兄ちゃまとか言われるのは流石に恥ずかしい。
そんな空気を読み取ったのかシャーリー先生が急いで謝罪してきた。
「ス、スイマセン。子供達からヒデさんのお話をたくさん聞いていたので‥‥‥」
最後の方は聞こえないほどの小さい声になっていった。
「いえ、気にしていないですから、ハハ‥‥‥」
「ホホホ、失礼しましたわ。それよりヒデさん今日はどの様な御用でいらしたのですか?」
二人のやり取りを楽しそうに見ていた院長先生が話を進めてきた。
「あ、はい、今日はですねー、子供達に使ってもらおうと思ってボールを作ってもらって持って来たんです」
そう話しながら大きな袋の口を解き中からボールを取り出す。
「まあ、子供達の為に?いつもありがとうございます」
院長先生がいつもの柔和な笑みを浮かべてお礼を言う。
「いえ、似たようなボールはありますが、なんか硬くて危なかったので気になっていたんですよ」
シャーリー先生が驚いた顔をしてこちらをジーっと見ながら話し出した。
「あの?ボールを子供達の為にわざわざ作ったのですか?」
「へ?いえ、実際作ったのは俺じゃないですけどね。作ってくれと頼んだのは俺ですけど‥‥‥」
何を驚いているのかがわからなかったが聞かれた質問に答えた。
「ホホホ、シャーリー先生ヒデさんはこういう方なんですよ。何よりも子供の事を一番に考えてくれる方なんです」
「話には聞いてましたが本当にそんな人がいるのかと疑問に思ってました。子供の為に安全な遊具を考えてくれる人がいるとは信じられなくて」
えっと?そこまでの事してないと思うんだけど??
「ホホホ、そんな驚かれるほどので事はしてないって思っているでしょヒデさん。まったく貴方といいあの人といいそっくりですわね‥‥‥みなさん自分が生きていくので精いっぱいですからね。仕方ない事ですわ。権力やお金を持っている貴族達も余裕が有り余っているわけではありませんし。いざという時の備えも必要ですしね」
「私は、難しい事はわかりません。ただ、私が子供の頃そんな事を考えてくれていた人はいませんでした。そして私自身もここで雇ってもらうまでそんな事を考えもしませんでした」
これも最後の方は声が小さくなっていった。
「さっきも言ったように仕方ない事です。そう考えられる人の方が珍しいのですよ」
これ以上二人の話を聞いていたら恥ずかしくてここにはこれなくなりそうだったので話を進める事にした。
「そ、そんな事よりこのボールはあのビッグスライムの皮で出来てるんですよ。まあ、改良してもっと柔らかくしたり弾力を付けたりしてますけどね」
「この感触がビッグスライム?凄くやわらかな感じですね?」
シャーリー先生はビッグスライムの事を知ってるのかな?ボールの表面を触りながら話す。
「フフ、これなら子供達も怪我しないでしょ?それに今度やるお祭りの時にこれを使って的当てとかやろうと思ってるんですよ」
「大きい子たちは投げられるでしょうが小さな子たちは無理そうですね」
シャーリー先生はボールの弾力が気にいったのか、ずっと手にもってギュギュっとしながら話している。
「あ、小さい子はボウリングじゃなくて、少し離したところに棒を立ててボールを転がしてもらって棒が倒れた数を競うみたいなのを考えてますよ」
「ホホ、ヒデさんの考える遊びはとても楽しそうですね。子供達の喜ぶ顔が目に浮かびますわ」
また、さっきの話しの流れみたいになりそうだったので先手を打って話をそらした。
「えっと、そういえばシャーリー先生とは初めてお会いしましたよね?今更ですがヒデといいます。冒険者ギルドで診療所を開いています。何かあれば直ぐに来てくださいね」
いつもの自己紹介のテンプレを言う。
「あ、はい、私はシャーリーといいます。三日前からここで働かせてもらってます」
やっぱり最近か、って事はブルースさんに言われてきたとかかな?こないだブルースさん人を入れるだ何だってブツブツ言ってたし。ブルースさんの事だから院長先生に気付かれたくないだろうしな、今は聞かないでおこう。
などと考えていたら、院の方から子供達がワンサカやって来た。
「あ、ヒデ兄ちゃまだ。ヒデ兄ちゃまこんにちは!」
「「「こんにちは!」」」
「はい、こんにちはー。今日はねー、みんなにボールを持って来たんだ」
「え?でも、ボールって硬いから小さい子がいる時は危ないからダメって先生に言われてるよ?」
子供達の中で年長の男の子が教えてくれる。
「フフ、はい、どうぞ、触ってみて」
そう言って袋の中のボールを渡す。
「わっわっ、なにこれ?硬くない。それなのにぺっちゃんこにならない」
ボールの周りに集まってみんなでペチペチ叩いている。
ボールに近づけない小さな子達にも一つ渡してあげる。目の前に出されたボールに驚いていた様子だが、オズオズと手を伸ばしてくる。そこにも小さな子共達が集まって来る。
そんな様子をいつもの笑顔で見ていた院長先生は子共達に向かって声をかける。
「みなさん、ヒデさんにお礼を言いましょう」
「あ、そうだ。ヒデ兄ちゃまありがとうございます」
「「「ありがとーヒデ兄ちゃま」」」
「「「「「ありがとーー」」」」
「あいあとー」
袋に入っているボールを全部出して皆に渡してあげる。
喧嘩しない様になど言わなくてもここの子達は小さな子の面倒をよく見るのは知っているのだが、一応付け加えて渡していく。
案の定、大きな子達は小さな子達に使い方や気を付ける事を話しながら遊んでいる。
今度来た時にはドッチボールやろくむしとか教えてあげようかな。
「この孤児院に御用ですか?」
その女性の声に聞き覚えがなかったので、声の聞こえてきた方向に顔を向けると、歳は二十歳くらいの長い髪を少し高い位置でまとめたポニーテールの小柄な女性が立っていた。
きっと、この時の俺の顔は間抜けな顔をしていたと思う。見た事のない女性から声をかけられた事もそうだが、それよりもっと驚いたのは、声をかけられるまで門の近くに人の気配をまったく感じなかったからだ。
黙っていたのが不信感を強めたのか、少し腰を落としていつでも動けるような体制をとってもう一度同じ質問をしてきた。
「この孤児院に何の御用ですか?お預りしている子供達の保護者様とも違うようですが?」
ヤバイ、これ以上呆けていると何かヤバそうだ。そう思って取りあえず何か言葉を発しようと思った時、院の方から声が聞こえた。
「シャーリー先生、その方は大丈夫ですよ。ヒデさんいらっしゃいませ」
院長先生が門に向かって歩いてきた。
「「院長先生」」
驚いた声のシャーリー先生と、安堵した俺の声が重なった。
「え?この方がヒデ兄ちゃま!?」
シャーリー先生は院長先生の顔を見てから、俺の方にビックリした顔を向ける。
うっ、子供達に聞いたんだろうなー、大人の女性にヒデ兄ちゃまとか言われるのは流石に恥ずかしい。
そんな空気を読み取ったのかシャーリー先生が急いで謝罪してきた。
「ス、スイマセン。子供達からヒデさんのお話をたくさん聞いていたので‥‥‥」
最後の方は聞こえないほどの小さい声になっていった。
「いえ、気にしていないですから、ハハ‥‥‥」
「ホホホ、失礼しましたわ。それよりヒデさん今日はどの様な御用でいらしたのですか?」
二人のやり取りを楽しそうに見ていた院長先生が話を進めてきた。
「あ、はい、今日はですねー、子供達に使ってもらおうと思ってボールを作ってもらって持って来たんです」
そう話しながら大きな袋の口を解き中からボールを取り出す。
「まあ、子供達の為に?いつもありがとうございます」
院長先生がいつもの柔和な笑みを浮かべてお礼を言う。
「いえ、似たようなボールはありますが、なんか硬くて危なかったので気になっていたんですよ」
シャーリー先生が驚いた顔をしてこちらをジーっと見ながら話し出した。
「あの?ボールを子供達の為にわざわざ作ったのですか?」
「へ?いえ、実際作ったのは俺じゃないですけどね。作ってくれと頼んだのは俺ですけど‥‥‥」
何を驚いているのかがわからなかったが聞かれた質問に答えた。
「ホホホ、シャーリー先生ヒデさんはこういう方なんですよ。何よりも子供の事を一番に考えてくれる方なんです」
「話には聞いてましたが本当にそんな人がいるのかと疑問に思ってました。子供の為に安全な遊具を考えてくれる人がいるとは信じられなくて」
えっと?そこまでの事してないと思うんだけど??
「ホホホ、そんな驚かれるほどので事はしてないって思っているでしょヒデさん。まったく貴方といいあの人といいそっくりですわね‥‥‥みなさん自分が生きていくので精いっぱいですからね。仕方ない事ですわ。権力やお金を持っている貴族達も余裕が有り余っているわけではありませんし。いざという時の備えも必要ですしね」
「私は、難しい事はわかりません。ただ、私が子供の頃そんな事を考えてくれていた人はいませんでした。そして私自身もここで雇ってもらうまでそんな事を考えもしませんでした」
これも最後の方は声が小さくなっていった。
「さっきも言ったように仕方ない事です。そう考えられる人の方が珍しいのですよ」
これ以上二人の話を聞いていたら恥ずかしくてここにはこれなくなりそうだったので話を進める事にした。
「そ、そんな事よりこのボールはあのビッグスライムの皮で出来てるんですよ。まあ、改良してもっと柔らかくしたり弾力を付けたりしてますけどね」
「この感触がビッグスライム?凄くやわらかな感じですね?」
シャーリー先生はビッグスライムの事を知ってるのかな?ボールの表面を触りながら話す。
「フフ、これなら子供達も怪我しないでしょ?それに今度やるお祭りの時にこれを使って的当てとかやろうと思ってるんですよ」
「大きい子たちは投げられるでしょうが小さな子たちは無理そうですね」
シャーリー先生はボールの弾力が気にいったのか、ずっと手にもってギュギュっとしながら話している。
「あ、小さい子はボウリングじゃなくて、少し離したところに棒を立ててボールを転がしてもらって棒が倒れた数を競うみたいなのを考えてますよ」
「ホホ、ヒデさんの考える遊びはとても楽しそうですね。子供達の喜ぶ顔が目に浮かびますわ」
また、さっきの話しの流れみたいになりそうだったので先手を打って話をそらした。
「えっと、そういえばシャーリー先生とは初めてお会いしましたよね?今更ですがヒデといいます。冒険者ギルドで診療所を開いています。何かあれば直ぐに来てくださいね」
いつもの自己紹介のテンプレを言う。
「あ、はい、私はシャーリーといいます。三日前からここで働かせてもらってます」
やっぱり最近か、って事はブルースさんに言われてきたとかかな?こないだブルースさん人を入れるだ何だってブツブツ言ってたし。ブルースさんの事だから院長先生に気付かれたくないだろうしな、今は聞かないでおこう。
などと考えていたら、院の方から子供達がワンサカやって来た。
「あ、ヒデ兄ちゃまだ。ヒデ兄ちゃまこんにちは!」
「「「こんにちは!」」」
「はい、こんにちはー。今日はねー、みんなにボールを持って来たんだ」
「え?でも、ボールって硬いから小さい子がいる時は危ないからダメって先生に言われてるよ?」
子供達の中で年長の男の子が教えてくれる。
「フフ、はい、どうぞ、触ってみて」
そう言って袋の中のボールを渡す。
「わっわっ、なにこれ?硬くない。それなのにぺっちゃんこにならない」
ボールの周りに集まってみんなでペチペチ叩いている。
ボールに近づけない小さな子達にも一つ渡してあげる。目の前に出されたボールに驚いていた様子だが、オズオズと手を伸ばしてくる。そこにも小さな子共達が集まって来る。
そんな様子をいつもの笑顔で見ていた院長先生は子共達に向かって声をかける。
「みなさん、ヒデさんにお礼を言いましょう」
「あ、そうだ。ヒデ兄ちゃまありがとうございます」
「「「ありがとーヒデ兄ちゃま」」」
「「「「「ありがとーー」」」」
「あいあとー」
袋に入っているボールを全部出して皆に渡してあげる。
喧嘩しない様になど言わなくてもここの子達は小さな子の面倒をよく見るのは知っているのだが、一応付け加えて渡していく。
案の定、大きな子達は小さな子達に使い方や気を付ける事を話しながら遊んでいる。
今度来た時にはドッチボールやろくむしとか教えてあげようかな。
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