112 / 185
2章
お祭りの準備 閑話その2
しおりを挟む投稿が遅くなってしまいすいません。
_(_^_)_
+++++++++++++++++++++
ゲンの指さす方を見てみると木の周りをなんか黒い物が飛んでいた。
隣にいたハルナちゃんが素早く背中の弓を取り出して構える。
「いやいや、ハルナ街中で飛び道具はダメだよ」
トランが慌ててハルナちゃんを止めていた。
「なによー、この距離なら絶対にはずさないのに」
ブツブツと文句を言いながら弓を背中に戻す。
「そもそも、退治する必要ないでしょ、人襲わないし‥‥‥」
トランがハルナちゃんと話していた時フライングバッドを観察していたゲンが声を上げた。
「あ、木の上になにかいる。子ネコかな?」
その言葉でハルナちゃんがまた弓を取り出した。
「待てって、僕が行くから。とにかく弓はしまっておけよ」
そういうと、トランがあっという間に木の下に着くとスイスイと木に登っていく。
突然現れた人間に驚いたのか、フライングバッドはどこかに飛んで行った。
戻って来たトランが大事そうに両手の上に乗せているのはゲンの言った通り黒い子ネコだった。
「あ、この子怪我してる」
トランの両手の上でぐったりとしている子ネコに急いでスキルを発動する。身体の色んな場所にフライングバッドに受けただろう傷があった。
「ちょっと待っててね。ヒール」
子ネコの周りに暖かい光が生まれ包み込む。
「ニャ、ニャーンン」
苦し気な息がおちついた正常な息に代わっていった。
トランの手の上からジャンプして私の肩に飛びついてきた。驚いて固まっていると頬をペロペロと舐めだした。
そんな子ネコを、もう一度スキルを発動してみてみる。痛い所は無くなっていた。だけどこの子のオーラは少しだけ大きくなっただけでなんだか弱弱しかった。
「この子お腹空いてるのかな?」
ニャンニャンと身体を摺り寄せている子ネコを見る。
「あ、ママさんがお弁当に作ってくれたスープのが少し残ってるはずだから」
ハルナちゃんがそう言いながら鞄の中を探し出す。
「あったあった、ちょっと待っててねー、容器の蓋に入れてあげるからね」
八ルナちゃんが容器の蓋を開けると子ネコが鼻をスンスンとさせている。そんな様子を見ながら笑顔でテキパキと用意をしていく。
蓋を地面に置くと匂いを嗅いでから小さな舌でペロリと一回舐めた後は無我夢中で舐めていた。
オーラも普通の大きさに戻っていった。
「この子ネコどうする?院長先生に相談してみようか」
「うーん、院に連れて行くのはどうかなー?弟妹達にもみくちゃにされそうで」
「確かに、かまい過ぎてこの子が大変そう」
「でもここに置いていったらまた襲われちゃうよ?」
四人で首をかしげながら考えていると後ろから声をかけられた。
「みんなそんな所でなにやってるの?」
*****
sideヒデ
さてと、祭りの準備も大詰めに入って来たな。どうしようかな?まだ時間ありそうだし商人ギルドに行って‥‥‥
そこで俺の思考はとぎれた。いつもならこの時間に居ないはずの四人組を見つけたからだ。何やら広場で集まって話している様子だった。
「みんなそんな所でなにやってるの?」
四人のいる方に歩きながら話しかける。
よく見ると四人の中心に小動物が容器の蓋を凄い勢いで舐めていた。
「あ、そうだヒデ兄がいた」
「そうだよ、ヒデ兄がいるじゃん」
「私は今言おうと思ってたよ」
「ヒデ兄師匠お願い」
は?は?なに?何の話?
四人から事情を聴き、子ネコに目を向けスキルを発動する
【診断】
『かなり衰弱してます。病気などはないですが、右の前足を以前に骨折して少し曲がってついてしまってます』
≪そう、じゃあ治してあげよう。頼むよ≫
『了解です』
《ヒール》
目の前の蓋に顔を突っ込んで舐めている子ネコがヒールの光に包まれていく。子ネコは一瞬顔を上げたがまた食事に没頭し始めた。
そんな子ネコの頭を撫でると邪魔するなと抗議の鳴き声を上げてまた食事に戻っていった。
「うん、事情はわかった。一旦診療所で預かるよ」
「よかった、連れて帰ったらどうなるか想像出来るからさ」
トランがみんなの代表で答える。他の三人もウンウンと頷いていた。
「ハハ、そうだな、じゃあ後は任せて早く院に帰ってあげな。弟妹が待っているんだろ?」
ミラが思い出したように話し出した。
「あ、そうだった。それで早く上がらせてもらったんだった」
四人が子ネコの頭を撫でてから少し速足で院に向かって歩いていった。
その後ろ姿を見送りながら容器の蓋を綺麗に舐め、満足げにしている子ネコに目を向ける。子ネコはお腹がいっぱいになったのか丸まって寝てしまった。
「よっぽど疲れてたのかね?」
そう独り言を言いながら子ネコを起こさない様に、ゆっくり両腕に抱え込むと診療所に向かって歩き始めた。
冒険者ギルドに着くとこの時間にしては珍しく騒がしくなっていた。
「ゲンの言った通りだな」
そんな独り言をついていると横からいつもの声がかかった。
「あら、ヒデちゃんお帰りなさい。今日は早いのね。でもおチビちゃん達はもう帰っちゃったわよ」
ママさんがカウンターの中からくねくねと身体を動かしながら話しかけてくる。
「ただいま。ゲンやミラ達には帰り道で合いましたよ。ついでに頼まれ事もされましたけど」
話ながら酒場の中に入って行きママさんに子ネコを見せる。
「あら?子ネコ?頼まれごとってこの子の事?」
「そうです。なんかフライングバッドに襲われてたんだって、それでこの子一人みたいだったからほっとけなかったみたい」
「フフ、可愛いわねー。なんか安心しきってぐっすり寝ちゃってるわ」
「空腹と疲労がピークだったんじゃないかな?ハルナがスープ飲ませたら凄い勢いで食べていて、お腹いっぱいになったらコテンって感じで寝ちゃったし」
「フフ、それだけじゃないわよ。きっとこの子は本能的にこの人たちは悪い人じゃないって判断したからその場で寝ちゃったのよ」
「そうなんですかね?」
ぐっすり寝込んでいる子ネコをのぞき込む。
「そうよ、襲われてたって事は怪我してたんでしょ?ヒデちゃんとミラちゃんがそんな子を見て治さない訳ないじゃない。しかもご飯まで上げたんだから気も緩むわよ」
なるほど、自分に置き換えてみればなんか納得してしまった。
31
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。