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2章

お祭り開催 その9

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こういうのってある程度下準備をしていた方が良い気がしたので、アダムさんから参加者の資料を貰って急いで目を通していく。

男性陣は大体、街で働いてる人だね。職人とか店を持っているような人もいる。モブも店持ってるに入るのか。

フムフム、それで女の子の方は‥‥‥

ヒール通りの人はあまりいないな。まあ、最初だから若い人中心でやりたいって言ってたし、次回にしてもらったのかな?アダムさん勇気あるな。あの勢いで迫られて断るとか凄いな。
そう言いながら俺がこの企画を口にした時の状況を思い出して背中がゾワッとした。

首を強く振って寒気を払拭して、まずは女性陣の待合室に向かった。

待合室のドアをノックして声をかける。
「スタッフの者です。始まる前に少しお話があるんですけどいいですか?」
しばらく間をおいてからドアが開いた。
中はそんなに広くはないがスタッフの休憩所も兼ねているので10名いても少し余裕があった。

「おはようございます。みなさん今日は頑張って彼氏作っちゃいましょうねー」
緊張させないように、少しテンションを上げておどけて話す。

「みなさんの胸の所に番号とお名前や興味のある事、得意なことなど書いてもらいました。男性の方達ももちろん書いてもらっています。もちろん第一印象みたいなのはあるでしょうが、話しかけやすいように細かな情報を個別にお知らせしますので、頭の隅にでも置いておいてください」

そう言いながらみんなの顔を見て話す。少し緊張している人もいるが大半はリラックスしている感じだ。

「では、お名前と番号をお呼びしますのでこちらに来て下さい」
と言いても椅子一つくらいしか離れてないので大体はみんなに聞こえている。それにそんなに大事なことは話していない。何番の方は同じ様な事に関心があるみたいですとか。そんな感じだ。

ドンドン進めていくと見知った顔に出会った。まあ、部屋に入った時に気がついてはいたんだけどね。

冒険者ギルドの酒場でよく見る顔、一緒に飲んだこともある、三人組の女の子だけのPTだ。この子達名前覚えやすいんだよね。ラン、スー、ミキ、って偶然なのだろうけど

彼女達もわかっていて俺が一人の番号を読んだら三人同時に来た。
「ヒデさんこんなとこで何やってるの?」
ランさんが不思議そうな顔をして訊いてきた。
「ヒデさんはここの通りの相談役とかやってるんだから、いても不思議じゃないでしょ?」
スーさんがランさんの隣に来て俺の代わりに答える。
ミキさんは眠そうな顔をしながらスーさんの後ろからついてきていた。

「スーさん当たりです。ここのお手伝いをしてるんですよ」
他の人達とあまり口調を変えない様に話す。

その答えに納得いったのか三人は頷いた。
「それより三人こそ耳が早いですね。この店の事どこで聞いたんですか?」
椅子に腰かけているランさんが少し自慢顔で答える。
「フフフ、私達よくこのヒール通りに買い物やご飯食べに来てるのよ。その時丁度募集中だったの」
その後を引き継ぐようにスーさんが話す。
「まあ、楽しいそうっていうのが強いかな?でも、街の家持の男性とお知り合いになれるのは美味しいわね」
その言葉にランさんとミキさんまで頷いていた。

少し興味がわいたので訊いてみた
「ん?そうなの?」
スーさんが俺の短い問いにため息交じりで答える。
「そりゃそうよー、冒険者なんてそんなに長くは出来ないし、冒険者辞めた後に故郷に帰ったって居場所なんかないし、いまさら田舎暮らしも退屈しそうだし」

今度はランさんが付け足す。
「かといって街で商売するにしたって難しいでしょ?早い話街で旦那探しが一番楽なのよねー」

 こういう時に変な対応をすると大変な事になるのでさりげなくスルーして話を進める。

それに冒険者ならモブの仕事にもかかわっているし、モブにはもったいないけど話だけはしておいてやるか。真面目に働けばなかなか出来る奴だし。

三人にモブの話をする。他にも商売をやっている人を教えるがモンスターの素材買取でモンスターの事に詳しい事などを話すと結構興味を持ってくれたようだ。

そんな感じで全員に話し終えてから男性達の方に向かった。

 場所が無かったので男性陣は店の中に一部を囲っているだけの簡単なものだった。
声をかけて中に入る。

こちらは、さっきの女性陣と違って何というか、ピリピリしていた。みんな緊張してるのか?

「おはようございます。みなさん肩に力が入り過ぎですよー。もっとこうー力を抜いて」
そう言いながら肩を落とすジェスチャーをする。さらに続ける。

「今日絶対に彼女になってもらうとかそんなに力まないで、最初はお食事や買い物なんかにお誘いして、段々仲良くなっていけばいいのですからね。逆に気負い過ぎていると女性たちに引かれちゃいますよ」
にこやかに少しおどけた感じで話す。

その言葉に少しだけ緊張が解けたようだが、隅の方で座っていて一番緊張していそうな人が立ち上がって話してきた。

「そ、そんなこと言っても私は仕事以外では女性とあまり話した事が無くて‥‥‥」

そんな彼を見ながら頷いてから話す。
「はい、そんなあなたの為に女性たちと話しやすいように、女性陣の情報を少しお話しますので、この後お役に立ててください」

その一言にみんなの顔つきが変わって一斉に俺の顔に視線が集まって来た。
「フフ、それでは順々にお話しますねー」

 あまり時間も無いので個別にだが簡単に話す。

最後にモブを呼んで話した。
「モブ、準備はできたか?」
少し不満そうにこちらを睨む。
「準備も何もこれから何が起こるかもわかんねえんだけど?」

そう言えばこいつ母ちゃんに引っ張られてきただけだったな。時間もないしめんどい。
「‥‥‥女の子の中に冒険者の子達がいるから、その子達ならお前のモンスター話を聞いてくれるから必ず話してみろ。ランさんとスーさん、ミキさんだ。わかったな」

「え?あ、ああ、わかった。その子達がお前が紹介するって言っていた子なのか?」

「そういう訳じゃないけど、今日の参加者の中ならこの人達がお前の話を理解できる。と思う」
「そ、そうなのか?なんか少し緊張してきたぜ。女の人と話すのなんか仕事以外なら母ちゃんとリンダ姉だけだからな。でも、モンスターの話をしていいなら話せそうだぜ」

母ちゃんカウントに入れるなよ、悲しくなってくる。

モブだけではなく他のみんなも話しやすい話題を持っている。その情報を手にいれたので何となく落ち着いてきた感じだ。

よし、もう一息だな。

俺はみんなに声をかける。

「みなさま、今日だけでいいです。少しの勇気だけでいいです。一言声をかける事さえできればきっかけが出来ます。相手の話を聞いて合わせて話す。難しいですが今の貴方達なら必ず出来ます。健闘を祈ります」

そう言ってみんなにサムズアップしてニヤリと笑顔を向ける。
それを見た男性陣が同じ様にサムズアップをしてニヤリとする。

俺はその光景に目を細める。

だって、みんなの歯がキラリと光っているからさーーーー。



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