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2章
お祭り開催 その17
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「フム、このスライムゴムは完成するのに後どれぐらいかかる?」
ケネスさんは回転している車輪を見つめながらストレートに質問してきた。
「えーっとですね。このスライムゴムの実験自体はこの耐久実験で終わりですけど‥‥‥実はですねー。これと対で研究している物がありまして。この開発がまだ全然進んでないんですよ」
ケネスさんは車輪から目をおれに移して話を続ける。
「ん?このスライムゴムだけではダメなのか?」
「あー、ダメではないのですけど、これだけだと条件がありまして。まず、道がなるべく平坦である事、速度をあまり出さない事これらに気をつければ」
ケネスさんは右手で顎をさすりながら目瞑って思案してから質問してきた。
「フム、今条件に合うのなら使えるのか?」
「使えます。従来の馬車よりは乗りごごちは良いと思いますよ」
「フム、では、もう一つの研究が終われば速度が出せて乗り心地が良くなるのか?」
「はい、出来るはずです。それでですね。そちらの開発をエル商会にお任せしようかと考えてます」
ケネスさんは俺の話にまた思案顔になると話の先を続ける様に手で合図をして話す。
「フム、続けてくれ」
「はい、もう一つの研究はサスペンションというものです。簡単に言うと車輪を支える車軸と馬車本体をつなげる所にバネと呼ばれるものを設置するのです」
「フム、そのサスペンションというものを開発すれば早く、乗り心地の良い馬車が完成するのだな?」
俺はその問いに頷いて答える。
「はい、ただそのサスペンションは硬すぎず柔らかすぎずといった感じの物で作らないとイケナイので、その辺はケネスさんの方が詳しいでしょうからお任せしたいと思いまして」
鉄や鋼の良しあしもわかんないし、実際サスペンションの構造も詳しくはわかんないからこんな感じでと言って、専門家に丸投げした方がきっと良い物が出来るだろう。
後、研究費用がバカにならない。鉱石とか高くて早々手が出ないよ。
そんな都合の良い事を考えていたらケネスさんが話しをしてきた。
「フム、ちと大変そうだが、これは成功すれば間違いなく巨万の金が動く。今回の中にこういった話が出来る者を連れていない。王都に急ぎ連絡してこちらに向かわせる。その者に今の話を詳しくしてやってくれ」
あっさりとこちらの話に乗ってくれて逆にこっちが肩透かしを食らったような感じだ。なので俺の方からケネスさんに訊いてみた。
「はい、わかりました。でもいいのですか?俺の思いつきに付き合ってもらって」
「ハハハ、ヒデ君はこれの完成形を知っているんだろ?」
この質問に一瞬驚いたが素直に頷いておいた。
ケネスさんは俺を鋭い眼光で睨み付けて直ぐにいつもの顔に戻った。
「ハハ、そう言う事じゃよ。必ず完成させてくれるだろうからな」
そうだった。この人明言はしてないけどウソを見破る系のスキル持ってるんだった。まあ、おかげで信用してもらえたし良かった。
「フム、今日は色々と良い話し合いが出来た。細かい数字の話はいつも通りヒューイ君とすればいいのかな?」
俺の斜め後ろにいたヒューイさんがケネスさんの前にやって来て話す。
「はい、今回の新製品や発注数とか色々決めちゃいましょう」
ケネスさんが頷いてドアに向かいだした時、今まで黙ってやり取りを見ていたイアン様がケネスさんに話しかける。
「ああ、ケネスさんその交渉に僕もお邪魔して良いですか?勉強の一環として本物の商人同士の交渉というのを経験しておきたいです」
そんなことを言っているイアン様をケネスさんがジーと見てから答える。
「フム、私は構わないですが」
直ぐにヒューイさんが笑いながら答える。
「私も構いません。ケネスさんに一方的にあしらわれてしまっていますけど」
その答えにケネスさんも笑いながら答える。
「ハハハ、それは謙遜しすぎだよ。ヒューイ君ほどの商人となるとうちの商会でもかなり上位に入り込めるぞ」
ほほー、やっぱりヒューイさん優秀なんだな。
ケネスさんがこちらに向いて挨拶をしてきてくれた。
「もうしばらくこの街に滞在するからまた後で合おう」
そう言ってヒューイさん、ケネスさん、イアン様爺やさんが退出していった。
俺は残ったポールさんに話しかける。
「ポールさん今日はありがとうね。ケネスさんが言っていた専門家の人が来たらまたお願いしますね」
ポールさんはいつもの様ににこやかに顎髭をなでながら話す。
「フォフォ、構わんかまわん。しかし、鉱石とかは専門外じゃからな、一部薬に仕えるようなのを知っているぐらいじゃからあんまり役に立たんぞ?」
「良いんですよ。このスライムゴムを作ってくれたポールさんにしかわからない事があるんですから。それが上手く合わされば良い物が出来るはずですから」
「フォフォ、わかった。前にヒデ君の言っていたサスペンションを簡単に図面にしたのがあるから、これを本格的に書き直してみるかのう。明日からやるぞウィル手伝ってくれ」
突然名前を呼ばれたウィルさんが肩をすくめておどけたように答える。
「ハイハイ、親父殿の仰せのままに」
「フォフォ、頼んだぞ」
そんな親子の会話を聞きながら部屋の窓から外を見るとそろそろ夕方近くになってきていた。
結構時間経っちゃったなー急いで仮の診療所に戻らないと。
ケネスさんは回転している車輪を見つめながらストレートに質問してきた。
「えーっとですね。このスライムゴムの実験自体はこの耐久実験で終わりですけど‥‥‥実はですねー。これと対で研究している物がありまして。この開発がまだ全然進んでないんですよ」
ケネスさんは車輪から目をおれに移して話を続ける。
「ん?このスライムゴムだけではダメなのか?」
「あー、ダメではないのですけど、これだけだと条件がありまして。まず、道がなるべく平坦である事、速度をあまり出さない事これらに気をつければ」
ケネスさんは右手で顎をさすりながら目瞑って思案してから質問してきた。
「フム、今条件に合うのなら使えるのか?」
「使えます。従来の馬車よりは乗りごごちは良いと思いますよ」
「フム、では、もう一つの研究が終われば速度が出せて乗り心地が良くなるのか?」
「はい、出来るはずです。それでですね。そちらの開発をエル商会にお任せしようかと考えてます」
ケネスさんは俺の話にまた思案顔になると話の先を続ける様に手で合図をして話す。
「フム、続けてくれ」
「はい、もう一つの研究はサスペンションというものです。簡単に言うと車輪を支える車軸と馬車本体をつなげる所にバネと呼ばれるものを設置するのです」
「フム、そのサスペンションというものを開発すれば早く、乗り心地の良い馬車が完成するのだな?」
俺はその問いに頷いて答える。
「はい、ただそのサスペンションは硬すぎず柔らかすぎずといった感じの物で作らないとイケナイので、その辺はケネスさんの方が詳しいでしょうからお任せしたいと思いまして」
鉄や鋼の良しあしもわかんないし、実際サスペンションの構造も詳しくはわかんないからこんな感じでと言って、専門家に丸投げした方がきっと良い物が出来るだろう。
後、研究費用がバカにならない。鉱石とか高くて早々手が出ないよ。
そんな都合の良い事を考えていたらケネスさんが話しをしてきた。
「フム、ちと大変そうだが、これは成功すれば間違いなく巨万の金が動く。今回の中にこういった話が出来る者を連れていない。王都に急ぎ連絡してこちらに向かわせる。その者に今の話を詳しくしてやってくれ」
あっさりとこちらの話に乗ってくれて逆にこっちが肩透かしを食らったような感じだ。なので俺の方からケネスさんに訊いてみた。
「はい、わかりました。でもいいのですか?俺の思いつきに付き合ってもらって」
「ハハハ、ヒデ君はこれの完成形を知っているんだろ?」
この質問に一瞬驚いたが素直に頷いておいた。
ケネスさんは俺を鋭い眼光で睨み付けて直ぐにいつもの顔に戻った。
「ハハ、そう言う事じゃよ。必ず完成させてくれるだろうからな」
そうだった。この人明言はしてないけどウソを見破る系のスキル持ってるんだった。まあ、おかげで信用してもらえたし良かった。
「フム、今日は色々と良い話し合いが出来た。細かい数字の話はいつも通りヒューイ君とすればいいのかな?」
俺の斜め後ろにいたヒューイさんがケネスさんの前にやって来て話す。
「はい、今回の新製品や発注数とか色々決めちゃいましょう」
ケネスさんが頷いてドアに向かいだした時、今まで黙ってやり取りを見ていたイアン様がケネスさんに話しかける。
「ああ、ケネスさんその交渉に僕もお邪魔して良いですか?勉強の一環として本物の商人同士の交渉というのを経験しておきたいです」
そんなことを言っているイアン様をケネスさんがジーと見てから答える。
「フム、私は構わないですが」
直ぐにヒューイさんが笑いながら答える。
「私も構いません。ケネスさんに一方的にあしらわれてしまっていますけど」
その答えにケネスさんも笑いながら答える。
「ハハハ、それは謙遜しすぎだよ。ヒューイ君ほどの商人となるとうちの商会でもかなり上位に入り込めるぞ」
ほほー、やっぱりヒューイさん優秀なんだな。
ケネスさんがこちらに向いて挨拶をしてきてくれた。
「もうしばらくこの街に滞在するからまた後で合おう」
そう言ってヒューイさん、ケネスさん、イアン様爺やさんが退出していった。
俺は残ったポールさんに話しかける。
「ポールさん今日はありがとうね。ケネスさんが言っていた専門家の人が来たらまたお願いしますね」
ポールさんはいつもの様ににこやかに顎髭をなでながら話す。
「フォフォ、構わんかまわん。しかし、鉱石とかは専門外じゃからな、一部薬に仕えるようなのを知っているぐらいじゃからあんまり役に立たんぞ?」
「良いんですよ。このスライムゴムを作ってくれたポールさんにしかわからない事があるんですから。それが上手く合わされば良い物が出来るはずですから」
「フォフォ、わかった。前にヒデ君の言っていたサスペンションを簡単に図面にしたのがあるから、これを本格的に書き直してみるかのう。明日からやるぞウィル手伝ってくれ」
突然名前を呼ばれたウィルさんが肩をすくめておどけたように答える。
「ハイハイ、親父殿の仰せのままに」
「フォフォ、頼んだぞ」
そんな親子の会話を聞きながら部屋の窓から外を見るとそろそろ夕方近くになってきていた。
結構時間経っちゃったなー急いで仮の診療所に戻らないと。
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