この世界の平均寿命を頑張って伸ばします。

2章

お祭り開催 その18

　
挨拶もそこそこに工場を飛び出して孤児院に向かった。

ヒール通りの人通りは夕方になってからまた一段と多くなってきたようだ。
人にぶつからない様になるべく早足で歩く。

　そう言えば地球にいた頃はいつもこんな歩き方をしていたなー。などとくだらない事を考えていたら孤児院の入り口が見えてきた。

　急いで開けっ放しの門から入って、旧孤児院を使用している仮の診療所に向かう。仮の診療所の入り口で息を整えてからドアを開ける。

奥の診察室にいると思ったキャリーさんが、ドアの近くに立って患者さんと話をしていた。
　キャリーさんはドアから入って来た俺に気付いて笑顔になって話しかけてきた。

「あ、お師匠様おかえりなさいませ。丁度良かったですわ。こちらの方がお師匠様にお会いしたいと言って来られたのですが」

そう言われてキャリーさんの前にいる人達を見る。
あ、午前中にヒールをしてあげたおばあちゃんとお孫さんだ。

俺が声をかける前におばあちゃんの方が声をかけてきた。
「朝は悪かったね。あの後色んな人からアンタの噂を聞いたよ。あんなに悪態をついたのにキチンとケガを治してくれてありがとう。どうしてもそれが言いたくてね」

朝とは違って穏やかな顔と口調になっていた。
「いえいえ、そんな気にしないでください。怪我した時や病気の時は気が立ったり落ち込んだり、情緒が不安定になりますからね」

俺がそう言うとおばあちゃんは笑いながら続ける。
「若いのになかなか度量が広いし、それによく見るとなかなかいい男じゃないか。どうだい？この子の婿にならないかい？」

　おばあちゃんは、カッカッカッと笑いながら俺の腰辺りをバンバン叩く。

　まあ、お年寄りの特有の冗談だろうから合わせて笑っておく。
「ハハ、そんな勝手に決めたらお孫さんが可哀想ですよ。ねえ」
と言っておばあちゃんの隣にいるお孫さんを見ると、顔を真っ赤にして下を向いてしまっている。

あれ？と思って俺も固まっていたら横から素早い動きでキャリーさんが割って入って来た。

「ホホ、お師匠様患者さんが待っていますのでお話が終わりましたら診察室の方にお願いしますわ」
結構離れていた所にいたはずのキャリーさんがいきなり表れて、ビックリしていたら手を引かれて診察室の方に誘導された。

引っ張られながらおばあちゃん達の方に向いてあいさつをした。
「すいません。まだ診察が残ってますのでこれで失礼します。もし何かあれば冒険者ギルドにある診療所に来て下さいねー。いつもはそこにいますので」

「カッカッカッ、ああ、わかったよ。本当にありがとうね。何かあったらお願いに行くよ」
そう言いっておばあちゃんは楽しそうに笑いながら話す。お孫さんは深くお辞儀をしていたのでよく見えなかった。

キャリーさんに押し込まれる様に入った診察室にはいつもの四人と孤児院の子が二人いた。
あれ？患者さんは？？

そう尋ねようとキャリーさんの方を見ると真っ赤な顔をして目線を合わせないようにそっぽを向いていた。

一瞬の無言の後孤児院の狐の獣人の子供が俺に声をかけてきた。

「あ、ヒデにいちゃまだ。見てー転んでケガしたけど泣かなかったんだよ」
そう言いながら俺に駆け寄って来る。

それを両手で受け止めてそのまま高い高いをする。

「おお、凄いぞー。転んで出来た傷にちゃんと洗浄の魔法をかけたかい？」
「キャハハハ、うん、いつも言われてるもん。ちゃんと洗浄をかけてからここに来たんだよ」
そう言いながら狐の尻尾をバサバサ振りながら笑っている。
ああ、癒されるー。

ほっこりしていたらミラが声をかけてきた。
「ヒデ兄師匠おかえりなさい。今日の患者さんは転んでケガとかいつもの様に冒険者さんが数人来ただけだったよ」

「おお、そうか。今日は任せっきりでゴメンな。ゲンにトラン、ハルナもありがとう。キャリーさんもありがとうございました」

キャリーさんは突然名前を呼ばれてビクッとして少しひきつった様な笑顔で答えてくれる。

「ホーホホホ、大した事ではないですわ。弟子が師匠のお手伝いをするのは当然ですから」

もう一人の孤児院の子がオズオズと前に出てきた。
「ぼ、僕も高い高いしてほしい」

そう言われて即座にもう一人も高い高いをする。
「あははは、すごいー」
大喜びではしゃぐ。子供の笑い声って癒されるー。

そんな感じで楽しそうな子供達と比例して俺も癒されていると、孤児院夕飯の時間なったので二人は孤児院に戻っていった。ミラとゲン、トラン、ハルナも片付けが終わってから院に戻っていった。孤児院のひろばに並んだお菓子の出店やゲームの出店などはほとんどしまっている。

そんな様子を見ていたら商工会の人が連絡に来てくれた。
「ひでさん、もし手が空いていたら広場で反省会をやるので来て下さいとの事です」

へ？広場で反省会？何それ？確かに今日店じまいが終わったら反省会という名目で飲み会が入ってたよな？そんな事を考えていたら察してこう続けた。

「ああ、ヒューイさんが広場のただ酒の客が広がっちゃって収拾がつかないから、監視も兼ねて広場で集まってやるそうです」

なるほど、収集つけるのめんどくさくなったんだなヒューイさん。

「わかった。こっちも片付け終わったら向かいます」

商工会の人はお願いしますと言って戻っていった。