この世界の平均寿命を頑張って伸ばします。

まさちち

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2章

お祭り開催 その21

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 俺が冒険者ギルドに着くともう第一陣は出た後だった。
ギルドに入るとギルマスが直ぐに近づいてくる。
「おお、ヒデ来てくれたか、お前の魔法でこの酔っ払いどもをシャキッとさせてやってくれ」

 そう言われてギルマスが指さす方向を見ると、長椅子にだらしなく転がっている冒険者たちが数十人いた。

「わかった」

 短く答えてから急いで酔っ払い達に近づこうとした時遠くの方からドーンと音が聞こえてきた。
つい立ち止まってキョロキョロして近くにいるギルマスに聞く。

「え?今の音何?そもそも何が起こってるの?」
「今話すから先にそいつらを頼む」
そう言われて思い出したように魔法をかける。

プットアウト(広範囲版)

光りが酔っ払いたちを包む。
元気になったったみんなは首を回したり身体をほぐしている。
「ああ、ありがとよ。さすがに酔っぱらったまま戦場に行くのはまずかったからな」
「まったくだ。さて行くか」
「ああー、ちょっと先に水くれ―」

 魔法が効いた途端みんな準備に取り掛かった。


 戦場?何どういう事?いやな言葉を聞いて急いでギルマスの顔を見る。
ギルマスは少し渋い顔をして話し始める。
「あー、実はなオークの群れがこの街に向かってきている。確認できたので百体以上だ」

「え?え??百?そんなに?えっと、ギルマスの見立てだとどうなの?」

 俺には想像が出来なかったので専門家の意見を訊いてみた。
「んー、時間はかかるが何とかなるだろ。街には衛兵もいるし。何と言っても、今はキャロラインもいるしな」
ギルマスの言葉を聞いて改めてランクBの凄さがわかる。

「そんなに凄いのランクBって?」
さっき自分で街の人に凄いんですよーとか言っておきながらなんだが、再度聞いてみた。

「ああ、大体はPT評価で認められる奴がほとんどなんだけどな、キャロラインは単独でランクBをもぎ取ってるんだよ。こんな事できる奴は世界でも少数なんだぞ」

なんかスゴイ人だったんだねキャリーさん

そんな話している最中もたまにドーン、ドーンと聞こえてくる。

何か心配だな、もう戦ってるのかな?

「ギルマスもう戦っているなら俺ももう少し近くに行った方が良いと思うんだけど?」

「うーん、まあ、待て今報告が入るはずだからなそれから動こう」

ムー、電話どころか無線すらないもんな。こういう時は少しやきもきしちゃうよなー。

そんな事を考えていたら余裕見せて優雅に椅子に腰かけている若様が目に入った。

「若様流石の貫禄ですね。ぜんぜんあわててないですね?」
この状況に少し楽しんでいる余裕さえ感じ取れた。

「ハハ、まあ、そんなに心配してないしね。オークの群れぐらいじゃなんの障害にもならないよ。‥‥‥あのシオンを怒らせたんだからね」

いつものスマイルで淡々と話す。最後の方は小声で話していてよく聞こえなかった。

何を言ったのか聞き直そうとした時ギルドの扉が勢いよく開いた。
ギルマスが入って来た人に待っていたぞと言って近づいて行った。どうやら報告の日が戻ってきたようだ。

「ほ、報告します。あ、あの、信じられないのですが‥‥‥」
なんかシドロモドロな感じで話している。
ギルマスが少し大きな声を出して活を入れる。
「シャッキリ話さんかー」
怒鳴られた若い報告の人は背筋を伸ばして反射的に大声で報告をした。

「ハイ、何も居ませんでした。もっと正確にいますと、生きているオークは居ませんでした」

ギルマスは見た事もないキョトンとした顔で訊き直す。
「へ?最初のオークが迫ってきているというのが誤報だったのか?」

「いえ、そうではなくて我々第一陣が到着した時にはそこら中にオークと思われる死体が転がっていました。さらに戦場に近づく前に悪魔的な嘲笑が響き渡り地面を揺るがすほどの爆音が聞こえてきました。一旦それらが収まるの待ってから近づいたところ先ほど報告した状況でした」

ギルマスとサブギルマスのオファンさんがが話している。
「仲間割れでもあったのでしょうか?」
「解らん、だがオークが居なくなったのは確かのようだ。もう一度確認をして何もないようなら放送で無事済んだことを報せよう」

 二人がそんな話をしている中若様一人がなにか笑いを堪えているような感じで肩を震わせていた。
その後久し振りに見たアオさんが若様に報告をしていた。

「若様、隊長が家に来ています。出来れば迎えに来てほしいそうです。それと、ヒデ様、シオン様が少し用事が出来ましたので今日の所はお暇させてもらうそうです」

後半の方は俺の方に顔を向けて教えてくれた。
「わかりました。またいつでも遊びに来て下さいねっとお伝えください」
俺がそう言うと無言で頷く、次の瞬間アオさんが掻き消えた。

俺が驚いていると若様が席を勢いよく立ち上がる。
「さて、今日はあまり話せなくて残念だったね。また近いうちにお邪魔するよ」
「あ、ハイ、いつでも来て下さい。お待ちしてますから」

 別れの挨拶をすると颯爽とギルドの出入り口に向かって行く若様。

ハァーーーッ、しかしなんだったんだろ?なんか壮大に何も始まらない感じだったな?



まあ、この後大量のオークの素材が街に流出してオークの肉が安く買えたおかげで、お祭りの最後の宴会をやり直しみたいな感じになった。

ああ、それからあの日の翌日のキャリーさんがなんかスッキリした顔で診療所に現れたのが凄く印象的でした。




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