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第二十一話 約束
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竜化したフレディに乗った俺たちは、俺が竜人の里で世話になっていた頃によく通っていた鍾乳洞に来ていた。
夕暮れ時ではあったが、鍾乳洞内部に点在している発光する天然の魔石と、その光を反射する河川がある関係で、内部は白昼と変わらない明るさを保っていた。
「雑精霊も多いし、空気も澄んでて居心地良いですね!」
鍾乳洞に着地したフレディから飛び降りたオリビアが、そう言って魔素を補給するように大きく深呼吸をする。
「綺麗……」
フレディの上から見える鍾乳洞の風景に目を奪われていたレオナが、うっとりとした声でそう漏らした。
「イチャついてないで、早く降りてくれないか」
少し不機嫌そうなフレディが、早く降りるように急かしてくる。
「悪い。レオナ、降りるぞ」
「うん」
レオナの手を取り、フレディから飛び降りる。着地の際には、風魔法を行使して衝撃を緩和させた。
「……これって、全部天然の魔石なの?」
「あぁ、竜人の里は周囲の魔素に影響を与えるレベルの竜種が何体もいるから、その竜種たちの魔力に当てられた鉱物の一部が魔石になっている」
「そうなんだ」
「ルシェフは、ここに通って錬金術の練習してたんだ」
「そう、なんですね……」
先程までオリビアの方にいたアメリアがそう言うと、レオナの表情が少しだけ曇る。
何とか表情を圧し殺そうとしていたレオナを宥めるように彼女の頭を軽く撫でた。
「ありがと」
俺が手を離すと、レオナは小さく笑みを浮かべてそう呟いた。
「ルシェフ、ちょっと来い」
「おう」
フレディに呼ばれたので、仕方なく彼についていくことにする。
「ごめんね。昔のルシェフこと教えようとしてただけなんだけど、少し嫉妬させちゃったかな……」
「いえ、大丈夫です……嫉妬はしますけど、信じてるので」
「それ、真金剛石でしょ?真系統の鉱石って、ルシェフが中々上手くいかないって嘆いてたやつなんだけど、作れるようになってたんだ」
「そうみたいですね」
遠目からレオナが笑みを浮かべているのが見える。二人の会話の内容までは分からないが、あの様子なら問題ないだろう。
「それで、何かあったのか?」
「……竜人の里は窮屈だったか?」
俺が尋ねると、フレディはポツリとそう呟いた。
「まさか、そんなわけないだろ」
「そうか……ならいい。ルシェフ、今度は逃げるなよ?」
「……わかった」
多少怒気を含むフレディの言葉に、頷いて返す。
フレディとはある約束をしていたわけだが、なし崩し的にそれを反故にしてしまっていた。
今度は逃げられないようにと、事前に釘を刺したかったようだ。
思い思いに過ごしていた俺たちが竜人の里に戻ると、無事に竜人の里まで着いたということで、その日は簡単な宴会を開くことになる。
まぁ、早い話が飲みたかっただけだろう。
各人がジョッキに注がれたエールを思い思いに煽るなか、サイドをオリビアとレオナに挟まれた俺はひたすら《饒舌の魔女》の相手をさせられていた。
「……」
レオナはエールを一杯煽った後、俺に抱きついてそのまま眠ってしまっている。
「ルシェフさん、聞いてるんですか!」
「聞いてるよ……悪いな、一回レオナを寝かせてくる」
レオナも特に起きる様子がないので、そのまま彼女の部屋へ連れていくことにする。
アメリアがついてくると言っていたが、距離も近いからと断った。
「……ルシェフさん?」
部屋のベッドにレオナを下ろすときに彼女を起こしてしまったようで、レオナが寝ぼけ眼を擦っている。
「もう遅いから、そのまま寝てろ。俺も向こうに戻るしな」
「待って……!」
「──レオナ?」
俺が部屋から立ち去ろうとすると、ベッドから降りたレオナが後ろから腕を掴んでくる。
レオナの声色から彼女の状態を察した俺が振り返ると、案の定レオナの頬を涙が伝っていた。
怖い夢でも見たのだろうか?
「もう少し、一緒にいよ?」
「あぁ」
今の状態のレオナに弱い俺は、彼女の意のままにレオナと二人、ベッドに腰かける。
「落ち着いたか?」
「……うん」
暫くしてレオナに声をかけてみるが、彼女はそう言いながらも、俺の腕を掴む手の力を一向に緩めない。
「じゃあ、俺はそろそろ……」
「……」
向こうに戻ろうとすると、俺を見上げるレオナの目尻にじんわりと涙が溜まり始める。
「わかった、降参だよ」
俺がやれやれといった感じにそう言うと、レオナは目尻に涙を溜めたまま軽く微笑んだ。
「皆は?」
「君もすぐに目を覚ましたから、皆はまだ飲んでるよ」
「そっか……このまま一緒に寝よ?」
まだ酔いが残っているのか、レオナがほんのりと頬を赤く染めながらそう言った。
「……」
「……ダメ?」
レオナが捨てられた子犬のような表情で見つめてくる。
「いや……」
「ルシェフ~!」
遠くから、アメリアの呼ぶ声が聞こえる。
「また今度な」
「……うん」
レオナは渋々頷いてくれたが、手を離す気はないようだ。
「俺は戻るけど、君は休んでた方が良くないか?」
「一緒にいる」
「そうか」
レオナの意志は固そうなので、諦めて彼女を連れだって部屋を出る。
「どうかしたのか?」
部屋を出た後、こちらに向かってきていたアメリアに声をかける。
「いや、帰りが遅かったから、何かあったのかなって」
「大したことはないよ。寝かしにきたレオナが起きただけだ」
「そう」
俺がなるべく平静を装ってそう言うと、アメリアは何でもない顔でそう答えた。
「金糸雀ちゃんも待ってたし、早く行こう」
「それは、何て言うか……光栄だな……」
今から気が重いな……。
「ブラウンさん、遅いですよ!」
俺たちが宴の席に戻ると、上機嫌に笑いながらジャックさんの背中をバシバシと叩いていた《饒舌の魔女》が、ジョッキを振りながら俺の名を叫んでいる。
「悪い、待たせた!」
俺のいない間、ずっと《饒舌の魔女》の相手をさせられていたと見られるジャックさんが、俺に少し迷惑そうな視線を送ってきていたので、慌てて席に戻ってオリビアに声をかけた。
「本当ですよ!待たされすぎて、四本も開けちゃったんですからね!」
それは自業自得だろう。
「お姉ちゃん、また会ったな!」
席に座るなり、さっきレオナと話していた竜人の子供がジョッキ片手に話しかけてきた。
五歳児にしか見えないような子供がジョッキを煽るのは絵面的にキツいので勘弁してもらいたいのだが、竜人の子供は、そんな俺の考えなど露も知らずに、ジョッキに並々と注がれていたエールを一思いに煽る。
「ブラウンさん、聞いてるんですか!!」
「お、おう。聞いてる聞いてる」
子供の方に目を盗られていると、俺の反応がないことに気づいた《饒舌の魔女》が頬を膨らませてしまった。
その後も、愚痴気味に騒ぐオリビアの相手をしながら夜は更けていった。
翌朝、昨日も遅かった為に、重いまぶたを開いて目を覚ます。腕時計を見ると既に八時を回っていた。
どうやら、少し起きるのが遅くなってしまったようだ。
「失礼、します……あ、起きてた、んですね……おはよう、ございます……」
ギィ……とゆっくり扉の開く音が聞こえ、かなりやつれた様子のオリビアが、死人のようなふらついた足取りで部屋に入ってくる。
「どうかしたのか?」
「……あの、酔い止め、は、ありませんか……?」
何となく予想はできていたが、少し青い顔をしたオリビアが、案の定酔い止めを求めてきた。
「ちょっと待っててくれ」
ベッドから這い出ると、自身のバッグの中に手を入れ、【四次元空間】から酔い止めを取り出す。
「ありがとう、ございます……」
「先行ってるからな」
「はい……」
急いで身支度をしてダイニングへと向かうと、俺が起きるのが遅かったこともあり、ダイニングには既に俺とオリビア以外のメンバーが揃っていた。
夕暮れ時ではあったが、鍾乳洞内部に点在している発光する天然の魔石と、その光を反射する河川がある関係で、内部は白昼と変わらない明るさを保っていた。
「雑精霊も多いし、空気も澄んでて居心地良いですね!」
鍾乳洞に着地したフレディから飛び降りたオリビアが、そう言って魔素を補給するように大きく深呼吸をする。
「綺麗……」
フレディの上から見える鍾乳洞の風景に目を奪われていたレオナが、うっとりとした声でそう漏らした。
「イチャついてないで、早く降りてくれないか」
少し不機嫌そうなフレディが、早く降りるように急かしてくる。
「悪い。レオナ、降りるぞ」
「うん」
レオナの手を取り、フレディから飛び降りる。着地の際には、風魔法を行使して衝撃を緩和させた。
「……これって、全部天然の魔石なの?」
「あぁ、竜人の里は周囲の魔素に影響を与えるレベルの竜種が何体もいるから、その竜種たちの魔力に当てられた鉱物の一部が魔石になっている」
「そうなんだ」
「ルシェフは、ここに通って錬金術の練習してたんだ」
「そう、なんですね……」
先程までオリビアの方にいたアメリアがそう言うと、レオナの表情が少しだけ曇る。
何とか表情を圧し殺そうとしていたレオナを宥めるように彼女の頭を軽く撫でた。
「ありがと」
俺が手を離すと、レオナは小さく笑みを浮かべてそう呟いた。
「ルシェフ、ちょっと来い」
「おう」
フレディに呼ばれたので、仕方なく彼についていくことにする。
「ごめんね。昔のルシェフこと教えようとしてただけなんだけど、少し嫉妬させちゃったかな……」
「いえ、大丈夫です……嫉妬はしますけど、信じてるので」
「それ、真金剛石でしょ?真系統の鉱石って、ルシェフが中々上手くいかないって嘆いてたやつなんだけど、作れるようになってたんだ」
「そうみたいですね」
遠目からレオナが笑みを浮かべているのが見える。二人の会話の内容までは分からないが、あの様子なら問題ないだろう。
「それで、何かあったのか?」
「……竜人の里は窮屈だったか?」
俺が尋ねると、フレディはポツリとそう呟いた。
「まさか、そんなわけないだろ」
「そうか……ならいい。ルシェフ、今度は逃げるなよ?」
「……わかった」
多少怒気を含むフレディの言葉に、頷いて返す。
フレディとはある約束をしていたわけだが、なし崩し的にそれを反故にしてしまっていた。
今度は逃げられないようにと、事前に釘を刺したかったようだ。
思い思いに過ごしていた俺たちが竜人の里に戻ると、無事に竜人の里まで着いたということで、その日は簡単な宴会を開くことになる。
まぁ、早い話が飲みたかっただけだろう。
各人がジョッキに注がれたエールを思い思いに煽るなか、サイドをオリビアとレオナに挟まれた俺はひたすら《饒舌の魔女》の相手をさせられていた。
「……」
レオナはエールを一杯煽った後、俺に抱きついてそのまま眠ってしまっている。
「ルシェフさん、聞いてるんですか!」
「聞いてるよ……悪いな、一回レオナを寝かせてくる」
レオナも特に起きる様子がないので、そのまま彼女の部屋へ連れていくことにする。
アメリアがついてくると言っていたが、距離も近いからと断った。
「……ルシェフさん?」
部屋のベッドにレオナを下ろすときに彼女を起こしてしまったようで、レオナが寝ぼけ眼を擦っている。
「もう遅いから、そのまま寝てろ。俺も向こうに戻るしな」
「待って……!」
「──レオナ?」
俺が部屋から立ち去ろうとすると、ベッドから降りたレオナが後ろから腕を掴んでくる。
レオナの声色から彼女の状態を察した俺が振り返ると、案の定レオナの頬を涙が伝っていた。
怖い夢でも見たのだろうか?
「もう少し、一緒にいよ?」
「あぁ」
今の状態のレオナに弱い俺は、彼女の意のままにレオナと二人、ベッドに腰かける。
「落ち着いたか?」
「……うん」
暫くしてレオナに声をかけてみるが、彼女はそう言いながらも、俺の腕を掴む手の力を一向に緩めない。
「じゃあ、俺はそろそろ……」
「……」
向こうに戻ろうとすると、俺を見上げるレオナの目尻にじんわりと涙が溜まり始める。
「わかった、降参だよ」
俺がやれやれといった感じにそう言うと、レオナは目尻に涙を溜めたまま軽く微笑んだ。
「皆は?」
「君もすぐに目を覚ましたから、皆はまだ飲んでるよ」
「そっか……このまま一緒に寝よ?」
まだ酔いが残っているのか、レオナがほんのりと頬を赤く染めながらそう言った。
「……」
「……ダメ?」
レオナが捨てられた子犬のような表情で見つめてくる。
「いや……」
「ルシェフ~!」
遠くから、アメリアの呼ぶ声が聞こえる。
「また今度な」
「……うん」
レオナは渋々頷いてくれたが、手を離す気はないようだ。
「俺は戻るけど、君は休んでた方が良くないか?」
「一緒にいる」
「そうか」
レオナの意志は固そうなので、諦めて彼女を連れだって部屋を出る。
「どうかしたのか?」
部屋を出た後、こちらに向かってきていたアメリアに声をかける。
「いや、帰りが遅かったから、何かあったのかなって」
「大したことはないよ。寝かしにきたレオナが起きただけだ」
「そう」
俺がなるべく平静を装ってそう言うと、アメリアは何でもない顔でそう答えた。
「金糸雀ちゃんも待ってたし、早く行こう」
「それは、何て言うか……光栄だな……」
今から気が重いな……。
「ブラウンさん、遅いですよ!」
俺たちが宴の席に戻ると、上機嫌に笑いながらジャックさんの背中をバシバシと叩いていた《饒舌の魔女》が、ジョッキを振りながら俺の名を叫んでいる。
「悪い、待たせた!」
俺のいない間、ずっと《饒舌の魔女》の相手をさせられていたと見られるジャックさんが、俺に少し迷惑そうな視線を送ってきていたので、慌てて席に戻ってオリビアに声をかけた。
「本当ですよ!待たされすぎて、四本も開けちゃったんですからね!」
それは自業自得だろう。
「お姉ちゃん、また会ったな!」
席に座るなり、さっきレオナと話していた竜人の子供がジョッキ片手に話しかけてきた。
五歳児にしか見えないような子供がジョッキを煽るのは絵面的にキツいので勘弁してもらいたいのだが、竜人の子供は、そんな俺の考えなど露も知らずに、ジョッキに並々と注がれていたエールを一思いに煽る。
「ブラウンさん、聞いてるんですか!!」
「お、おう。聞いてる聞いてる」
子供の方に目を盗られていると、俺の反応がないことに気づいた《饒舌の魔女》が頬を膨らませてしまった。
その後も、愚痴気味に騒ぐオリビアの相手をしながら夜は更けていった。
翌朝、昨日も遅かった為に、重いまぶたを開いて目を覚ます。腕時計を見ると既に八時を回っていた。
どうやら、少し起きるのが遅くなってしまったようだ。
「失礼、します……あ、起きてた、んですね……おはよう、ございます……」
ギィ……とゆっくり扉の開く音が聞こえ、かなりやつれた様子のオリビアが、死人のようなふらついた足取りで部屋に入ってくる。
「どうかしたのか?」
「……あの、酔い止め、は、ありませんか……?」
何となく予想はできていたが、少し青い顔をしたオリビアが、案の定酔い止めを求めてきた。
「ちょっと待っててくれ」
ベッドから這い出ると、自身のバッグの中に手を入れ、【四次元空間】から酔い止めを取り出す。
「ありがとう、ございます……」
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「はい……」
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