Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

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第三十八話 件の魔物

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 オリビアが俺から離れなさすぎてレオナの機嫌が過去一に悪くなる問題などはあったものの、あれから三日、俺たちは無事に件の森まで辿り着いていた。

「アメリア、わかりそうか?」
「ううん。特に気配もない」
「そうか……」
 前回もゴーレムのような魔物の奇襲に気づかなかった時点で予想はしていたが、オリビアの仇である魔物を含めて、あの二匹は気配を絶つことに長けた種であるようだった。

 件の魔物はギルドの冒険者でもあまり遭遇したケースはなく、噂程度でしかなかったが、特徴の一つとして魔力の高い人間を狙うらしい。

 まだこれといった個体名称も登録されておらず、なんらかの突然変異種とも言われていたが、詳細はわからなかった。

 アメリアが駄目となると、長期戦は覚悟した方が良さそうだ。
 最悪、遭遇すらできない可能性もあったが、一瞬でも奴がオリビアに姿を見せたことを考えるに、探していれば向こうから出てきてくれることにも期待ができそうだ。

「オリビア──は大丈夫そうだな」
 自身の杖を握りしめている彼女は真っ直ぐに森の先を見つめている。かなり集中しているのか、俺の声にも振り返ることすらしなかった。

「馬車を進めてくれ」
「かしこまりました」
 今回のために御者として雇った冒険者の男、カールは俺の言葉にそう返し、馬車を進める。
 彼と共に過ごす数日の間でわかったことは、彼が自身のことをあまり語る人間でないということと、仕事には忠実であることの二つだ。

 彼がアメリアの正体に気づいてしまった為に口封じも兼ねて雇ったのもあるが、今回は少し危険な伴う旅になるため、彼のような人間を雇うことができたのは幸いだった。

「……」
 馬車が森を進む中、俺たちの間にこれといった会話がない。相手に姿を消す能力があり尚且つ気配すら消せる以上、周りの警戒に気が回るのは自明の理だった。

 馬車が進み始めてから数十分が経った頃、意外な人間が沈黙を破った。

「そんなに警戒されなくても、まだ件の魔物は近くにおりません」
「──どうしてそう言いきれる?」
 カールにも奴の特徴は話していた。多少上乗せ分があるとはいえ、それを知った上で彼も同行していた筈だが。

「あまり私のことを詮索しない、という条件を飲めるのでしたら説明させていただきます」
「わかった。君のことは詮索しないと約束しよう」

「ありがとうございます」
 こちらを振り返ることもなく、カールはゆったりと頭を下げた。所々の立居振る舞いから、彼が本当に生粋の冒険者なのか怪しくもなったが、その詮索はしないことにする。

「まず、情報のおさらいをしましょう。件の姿を消す魔物ですが、あの魔物にはマーキングの習性があります」
「マーキング?」
 森に入った時に見つけた死体や傷つけられた木々のことを言っているのだろうか。

「はい。気配まで消えるとなると、あの魔物は他の魔物からも認知されなくなります。あの過度なマーキングは、自身の存在を知らせる為に敢えて大袈裟に作られたものでしょう」
「言葉を選ばずに言わせていただければ、あれは目立ちたがりである上に、美食家にして自信家。そして狡猾です」

「──根拠は?」
「現に、貴方方はこうして再び森を訪れてきております。恐らく、件の魔物にとって前回よりも良い条件下で」

「恐らくは彼女の憎悪すら、件の魔物は利用したのでしょう」
「待て。いつオリビアの話を聞いた?」
 それは俺ですら数日前に聞いたばかりの話だ。勿論、彼の前でその話はしていない。

「おっと、少しお喋りが過ぎました。──まぁ、いいでしょう。結論から言えば、件の魔物はマーキングを残すことによって自身の存在を他者に知らせます。恐らくはそこまで索敵能力に長けた個体ではないために、見つけるよりかはことによって狩りをしているのでしょう」
 彼の話を聞く限りだと、確かにあの魔物がオリビアだけに姿を見せたことにも頷ける。
 ただ、オリビアがあの魔物を見た時に、他の乗員が奴に気づかなかった理由がわからない。

「あのゴーレムは、囮だったってこと?」
 ニコの呟きが聞こえ、ドクンと心臓が大きく鳴る音が聞こえた。
 ──まさか、魔物同士で協力をしているのか?

「可能性としてはありそうだな……」
 ダンジョン以外で他種族同士の魔物が協力するなど聞いたことすらなかったが、流石にあれはタイミングが良過ぎた。
 知識も決して低い訳ではないことを加味すれば、何か共通の理由で共闘することもあるのかもしれない。

「少し道も荒れております。馬の消耗も激しいので、一度昼食を挟みませんか?」
「……そうだな」
 カールの言葉に同意し、一度馬車を止めて休憩を取ることにする。
 初めて扱う馬にも関わらず、馬もカールによく懐いていた。カールは御者としても優秀な人間のようだ。

「サンクレイア」
 全員で食前の挨拶を済ませたところで、カールが口を開いた。

「先程の話の続きになりますが、あのゴーレムとは何のことでしょうか?事前にお話を伺っていなかったのですが」
「件の魔物と同じく気配の読めない魔物だ。一定の場所への侵入者へ攻撃するような指示が出ているんだと思う。無闇にちょっかいを出さない限りは大丈夫だ」
 と思いたい。実際、本当にあの二匹の魔物が共闘関係にあるのなら戦闘に介入してくる可能性は高いからな。

 昼食後も探索を続けるも、未だに件の魔物は見つからず二日目を迎え、遂に件の魔物のマーキングと思われる木につけられた傷跡を発見した。

「少し馬のペースを落とします」
「わかった」
 魔物の襲撃に警戒し、馬車はゆったりと森を徘徊する。

 時間にして十数分程か。全員が集中して周囲を警戒する中、遂に奴が姿を現した。
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