Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

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第三十九話 乱戦

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「لا أعلم لا أعلم!」
 姿の見えない何者かが轟音と共に土飛沫を撒き散らし、木々に己が爪痕を残しながらこちらへと向かってきた。

 各人が馬車から飛び降り、初めに俺が奴の突進を止めるべく前に出る。
 この場所でコイツに会えてよかった。あと半日も探索を続けていたら、あの気配のないゴーレムのテリトリーに侵入してしまっていたかもしれないからな。

「では、手筈通り私は逃げさせていただきます」
 あの魔物の狙いがオリビアであることがわかっているからか、カールは別段取り乱している様子もなく、予定通りこの場を離脱し始めた。

 【四次元空間】から【アクワグラシェリア】を取り出し、自身に【リズスワデ・スマアベル】をかける。
 見えない相手だ。視覚も必要ないだろう。
 深呼吸と共に瞳を閉じて、迫り来る魔物の音に集中する。

「──っ!」
 加減もなく魔力を乗せた会心の一振りは、硬い何かへ打ちつけられた。流石にあの巨体を弾き飛ばすとはいかないものの、奴の突進を食い止めることは出来た。

「عربي!」
 流石に突進を止められるとは思わなかったのか、魔物から声が漏れる。

「魔物である貴方に懺悔など望みません。なので──今から殺しますが、恨まないで下さいね」
 遅れて、背後から焼けるような熱気に襲われる。見なくても後ろで何が起きているのかがわかった。

「ブラウンさん!」
 俺が咄嗟に回避をすると、背後から巨大な火の鳥アトラフェニクスが放たれた。
 【アトラフェニクス】は行き場のないオリビアの激情を代弁するかのように周囲の木々に火をつけ、大地を焦がす。
 あの大きさなら、姿が見えようと見えまいと関係はないだろう。

 炎は荒々しく燃え広がるが、何処か悲しげにも見えた。

「عمل جيد!」
 突然周囲に火の手が回り、取り乱す魔物が木々に体をぶつけながら暴れている。あの魔物はしっかり火が苦手なようだ。

 奴が暴れる中、理由はわからないが奴の姿を消す能力が解け、巨大な焦茶色の大蛇が姿を表した。

「──!」
 姿を見せた大蛇に向かってニコは駆け抜け、目印とばかりに奴の肌を切り刻む。恐らく、そこが堅い鱗に覆われた奴の脆い部分なのだろう。

「レオナ、拘束を──!」
「うん……!」
 レオナが頷いたのを確認し、アメリアと合流する。ハルバードを構える彼女には、彼女が普段使うことのない多量の魔力が流れていた。

「アメリア!」
「もう少し……!」
 魔力を練る彼女の手をとり、魔力のコントロールを手伝う。半竜人であるアメリアは人間とは比べ物にならない程の魔力を持っていたが、それ故にその魔力を扱う術を持っていなかった。

 ──だから、それを俺がコントロールする。今回使うのは、擬似吐息ブレスのような一撃だ。
 アメリアが魔力を貯めている間に、彼女にも【リズスワデ・スマアベル】をかける。
 この一撃を放った後は俺も暫く戦えなくなるため、念のために他のメンバーには【ロニギスメイシュ】をかけておいた。

「もうあんな悲劇は繰り返させない──!」
 オリビアの【四重詠唱カルテット】によって放たれた【無数のスフィアスフィア・パーティー】が、ニコによって付けられた傷跡を的確に抉り、一部の光球体スフィアは大蛇付近で炎を纏い、断続的な小爆発を引き起こす。

「──今っ!」
 レオナが【エルロン・スフィア】に弱った蛇を閉じ込めた。

「──っ!」
 【エルロン・スフィア】の中で蛇が暴れ回っているが、レオナも何とか奴を食い止めてくれている。

「衝撃に備えろ!」
 そう叫ぶ俺の言葉を皮切りに、アメリアがハルバードを振るった。

 視界は白一色に染まる。

 遅れて鼓膜が破れるかのような爆音。

 地面を抉りながら放たれた一撃は、確実に大蛇を捉えていた。

 土煙が止み、軽い船酔いのような感覚に襲われる。

「──な⁉︎」
 段々と煙が晴れる中、そこには倒れる大蛇の姿はなく、傷だらけになりながらもハルバードを構えて立ち塞がる、悪魔を模したゴーレムような魔物の姿が見えた。

 ──瞬間、ゴーレムが俺たちの元へと駆け出してくる。

「くそっ!」
 なりふり構わず、三人の俺で特攻してくるゴーレムの相手をする。

 吐きそうになりながらも、【四次元空間】から酔い止めを二つ取り出し、その片方をアメリアに手渡した。

「──ニコ!」
「わかってる……!」
 ゴーレムに構うことなく、ニコは目で追うのがやっとの速度で真っ直ぐに大蛇の元へと駆ける。
 俺が酔い止めの入った瓶を飲み干すのと、ニコが大蛇に斬りかかるのはほぼ同時だった。

「オリビアも、そっちは任せた!」
「──任されました!」
 オリビアの周囲には既に無数の光球体が展開し、大蛇を睨む。

「行けるか?」
「勿論!」
 まだ違和感は残るものの、酔い止めが効き始めたあたりで一度三人の俺は消し、アメリアと共にゴーレムの相手をする。

 火が弱点だとわかっているからか、レオナも【炎の矢フレイムアロー】で大蛇の目を潰しにかかっていた。

 アメリアと交代で何度もゴーレムと打ち合う。
 その最中、視界の端に映る黒い影に気がついた。

「──アメリア!」
「ルシェ──」
 状況を理解するよりも早く、彼女を突き飛ばす。
 その直後、俺のいる位置に突っ込んできた黒い大蛇と衝突し、そこで意識が途絶えた。
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