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第六十八話 アーカム
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「あぁ。来てはいるが、あまり詮索しないでやってくれ。向こうも協力してくれなくなるからな」
「そうなのか……」
理由はわからないが、あまり詮索しない方が良さそうだ。
手早く昼食を済ませ、剛から食料や武器などの物資を受けとる。魔剣クラスの武器ならともかく、普通の武器は使えば消耗するので、長期のダンジョン探索では武器の補充は必須だった。
何故、王女が俺たちの使う武器を正確に知っていたのかまではわからなかったが、ニコが使うナイフの補充まで出来たのは大きい。
「さて、そろそろ次の階層に進もうか」
剛たちと別れ、十分な休息を取った後、もう一階層分だけ進むことにした。
塔型のダンジョンなので、開幕戦闘なんて事態になることはないが、念のために武器は取り出しておき、戦闘体制を整えてから全員で門を潜る。
勿論、無事に移動をすませたものの、道の突き当たりで、塔型ではありえない別れ道を発見した。
「リディア」
俺の言葉に、リディアが首を横に振る。
「……前みたいに、何かギミックがあるみたいね」
「そうか……一先ずマッピングだけでも進めよう」
考えていても仕方がないので、二手に別れて進む。
二日後には再び剛が物資を届けに来るので、それまでには次の階層の門を見つけて、この階層の地図を渡しておきたかった。
「ブラウンさん、あれは何ですかね?」
オリビアが、前方に見えている一部分だけ光った床を指す。
「……」
ここまで露骨な罠はまずないだろうが、念のために小石を投げ込んでみると、小石の重さに光る床が崩れた。
見てわかる程度の罠だし問題はないと思うが、向こうは大丈夫だろうか?
何度か分岐があったが、その全てを右に進み、夕食前にはこちらへと転移してきたアドルフたちと合流する。
聞いた話だと、ここから町までの転移は出来ないようだったが、この階層内の転移くらいは出来るようだった。
──やはり、転移出来ないのは距離的な問題なのだろうか?
「……なぁ、この×印って」
合流した彼らと地図の情報を擦り合わせようとしたところで、疎らに×印がされていることに気づく。
「……」
問いには沈黙で返された。それでも、何があったのかわかってしまう自分が怖い。
念のために怪我がないかの確認はしたが、それは大丈夫そうだった。
夕食を済ませ、その日は少しだけ地図の空白を埋めてから休むことにした。
「目を覚ましたか?」
「……あぁ、おはよう。アドルフ」
翌朝目を覚ますと、剣を構えているアドルフが目に入る。彼の回りには敵の姿はなく、単に修練でもしていただけなのだろう。
「どうだ、起きたのならちょっ──」
「やらねぇよ」
彼独特のニヒルな笑みを浮かべるアドルフに、間髪いれずにそう返す。
「……」
寝起き特有の動悸が治まったところで、隣で寝息をたてているレオナの頭をくしゃりと撫でてから起き上がる。
「そうだ。この階層は魔物が出ないようだから、三組に別れるぞ」
真金剛石を生成する準備をしながら、何とはなしにそう呟く。
編成は、アドルフ、アルマ、レオナと、俺、リディア、ゴラン、最後はアメリア、ニコ、オリビアにする予定だった。
「そうか」
一つずつ型を確かめるようにしながら剣を振るうアドルフにどこか既知感を覚えるものの、それがいつの記憶だったが思い出すことは出来ない。
少なくても、俺の周りはここまでストイックな奴はいなかったはずだからな。
「……ぉはよう」
「あぁ、おはよう」
言いながら、レオナの頭を軽く撫でると、そっと抱きついてきたレオナが俺の胸に顔を埋めてくる。
少し耳が赤いが、風邪なんて引いたりしてないよな……?
全員が起き出したところで、朝食を済ませてから三組に別れて探索を進める。朝食中に三組に別れて探索することを話しておき、剛が物資と共に置いていった焼き菓子は朝食後に頂いた。
個人的には、相性的にアドルフのパーティーが少し心配であったが、以外にも、レオナとアドルフの話している姿を見る機会が多く、パーティーの連携等はレオナの手腕に期待したいところだ。
因みに、以前レオナにアドルフと何を話しているのか聞いたこともあったが、内容は教えてもらえなかった。
二人だけの共通の秘密だということなのだろうか?
「なぁ、リディア。【天啓】の付与って、俺にも出来るのか?」
「出来るよ。──何なら試してみる?」
道すがら、ダンジョン探索や私的なことで少し試したいことがあったので聞いてみると、リディアは不思議そうに首を傾げながらもそう言ってくれた。
「頼む」
少し気になることがあったので、彼女が快諾してくれて助かった。
『おや、誰かと思ったらウィリアムか』
リディアが祈りを捧げ、少し経つと俺の脳内に聞き覚えのない声が響く。アルトボイスとでも称そうか、少し中性的な声だが、相手が男であることが雰囲気から窺えた。
【天啓】の付与は未来を見通す力の一部を下賜するものと聞いていたから、彼からコンタクトがあることに少なからず動揺する。
そして、俺をウィリアムと呼ぶ辺り、あの女神とも関係がありそうだ。
『やっぱり、俺のことも知っているんだな』
『あぁ、君は“彼女のお気に入り”だからね』
俺の言葉に、先のアルトボイスが返ってくる。彼女というのは、あの女神のことだろう。
そしてどうやら、口に出さなくても俺の思考を読めるようだ。
『単刀直入に聞くぞ。俺たちと同じ世界から呼ばれた奴らは何処にいる?』
『時が来ればわかる』
アーカムが、アドルフと同じ台詞で返す。自身の口から答える気はないようだ。
『……ゴラン──ゲオルギオスは信用できるのか?』
少し質問を変えてみる。彼はリディアとマメに連絡を取っているみたいだし、【天啓】を下賜している時点でゲオルギオスのことに気づいていない筈がないからな。
『それに関しては、君が見たままのことを信じればいいさ。ここで僕が何を言おうと君の考えが変わることはないのだから』
なんとも歯に付く言い回しだ。それでも、この言葉から悪意などは感じられなかった。
『──それで、君にはもっと他に聞きたいことがあるのではないかな?』
アーカムの言葉に、目的の一つを思い出す。この世界に来ているであろう彼らの話を聞ければそれが一番良かったが、アーカムからそれを聞き出すのは手間取りそうだ。
『このダンジョン既存のものに比べて明らかに異質だ。ダンジョンの発見時期も含めて、ここは新参の神が管理しているものなんじゃないのか?』
そして恐らく、このダンジョンを管理する神とやらはアーカムと敵対しているのだろう。
そう邪推してしまうくらいには、このダンジョンは異質なものだった。
『中々どうして、聡いじゃないか』
俺の言葉に、アーカムは小さく笑い声を漏らす。
『──ところで、ウィリアム。フィオナ・アリオンのことを知りたくはないか?』
先までの笑い声とは打って代わり、アーカムの声にどこか影の落ちたように感じた。
『どういうつもりだ?』
さっきまでは、時を待てば分かると言っていたはずだ。
何故、今この話を切り出してきたのだろうか?
『何、少し褒美をくれてやろうと思っただけだ。君は今まで通りにダンジョン探索に励んでくれればいい。このダンジョンを踏破したときには、彼女のことを話そうじゃないか』
どうやら、アーカム的にもこのダンジョンには何か執着する理由があるようだ。
『それで、君が今聞きたいことは何かな?』
『このダンジョンについてだ。この階層内に、門はあるのか?』
『ある』
俺の言葉に、アーカムが力強く答える。それだけ聞ければ十分だった。
『ありがとう』
それだけ伝え、無意識に閉じていた目を開く。アーカムがあるというのなら、いくらでもやりようはありそうだ。
それに、アーカムの管理下にあるダンジョンでないのなら、このダンジョンがどうなっても構わないのだろうしな。
「そうなのか……」
理由はわからないが、あまり詮索しない方が良さそうだ。
手早く昼食を済ませ、剛から食料や武器などの物資を受けとる。魔剣クラスの武器ならともかく、普通の武器は使えば消耗するので、長期のダンジョン探索では武器の補充は必須だった。
何故、王女が俺たちの使う武器を正確に知っていたのかまではわからなかったが、ニコが使うナイフの補充まで出来たのは大きい。
「さて、そろそろ次の階層に進もうか」
剛たちと別れ、十分な休息を取った後、もう一階層分だけ進むことにした。
塔型のダンジョンなので、開幕戦闘なんて事態になることはないが、念のために武器は取り出しておき、戦闘体制を整えてから全員で門を潜る。
勿論、無事に移動をすませたものの、道の突き当たりで、塔型ではありえない別れ道を発見した。
「リディア」
俺の言葉に、リディアが首を横に振る。
「……前みたいに、何かギミックがあるみたいね」
「そうか……一先ずマッピングだけでも進めよう」
考えていても仕方がないので、二手に別れて進む。
二日後には再び剛が物資を届けに来るので、それまでには次の階層の門を見つけて、この階層の地図を渡しておきたかった。
「ブラウンさん、あれは何ですかね?」
オリビアが、前方に見えている一部分だけ光った床を指す。
「……」
ここまで露骨な罠はまずないだろうが、念のために小石を投げ込んでみると、小石の重さに光る床が崩れた。
見てわかる程度の罠だし問題はないと思うが、向こうは大丈夫だろうか?
何度か分岐があったが、その全てを右に進み、夕食前にはこちらへと転移してきたアドルフたちと合流する。
聞いた話だと、ここから町までの転移は出来ないようだったが、この階層内の転移くらいは出来るようだった。
──やはり、転移出来ないのは距離的な問題なのだろうか?
「……なぁ、この×印って」
合流した彼らと地図の情報を擦り合わせようとしたところで、疎らに×印がされていることに気づく。
「……」
問いには沈黙で返された。それでも、何があったのかわかってしまう自分が怖い。
念のために怪我がないかの確認はしたが、それは大丈夫そうだった。
夕食を済ませ、その日は少しだけ地図の空白を埋めてから休むことにした。
「目を覚ましたか?」
「……あぁ、おはよう。アドルフ」
翌朝目を覚ますと、剣を構えているアドルフが目に入る。彼の回りには敵の姿はなく、単に修練でもしていただけなのだろう。
「どうだ、起きたのならちょっ──」
「やらねぇよ」
彼独特のニヒルな笑みを浮かべるアドルフに、間髪いれずにそう返す。
「……」
寝起き特有の動悸が治まったところで、隣で寝息をたてているレオナの頭をくしゃりと撫でてから起き上がる。
「そうだ。この階層は魔物が出ないようだから、三組に別れるぞ」
真金剛石を生成する準備をしながら、何とはなしにそう呟く。
編成は、アドルフ、アルマ、レオナと、俺、リディア、ゴラン、最後はアメリア、ニコ、オリビアにする予定だった。
「そうか」
一つずつ型を確かめるようにしながら剣を振るうアドルフにどこか既知感を覚えるものの、それがいつの記憶だったが思い出すことは出来ない。
少なくても、俺の周りはここまでストイックな奴はいなかったはずだからな。
「……ぉはよう」
「あぁ、おはよう」
言いながら、レオナの頭を軽く撫でると、そっと抱きついてきたレオナが俺の胸に顔を埋めてくる。
少し耳が赤いが、風邪なんて引いたりしてないよな……?
全員が起き出したところで、朝食を済ませてから三組に別れて探索を進める。朝食中に三組に別れて探索することを話しておき、剛が物資と共に置いていった焼き菓子は朝食後に頂いた。
個人的には、相性的にアドルフのパーティーが少し心配であったが、以外にも、レオナとアドルフの話している姿を見る機会が多く、パーティーの連携等はレオナの手腕に期待したいところだ。
因みに、以前レオナにアドルフと何を話しているのか聞いたこともあったが、内容は教えてもらえなかった。
二人だけの共通の秘密だということなのだろうか?
「なぁ、リディア。【天啓】の付与って、俺にも出来るのか?」
「出来るよ。──何なら試してみる?」
道すがら、ダンジョン探索や私的なことで少し試したいことがあったので聞いてみると、リディアは不思議そうに首を傾げながらもそう言ってくれた。
「頼む」
少し気になることがあったので、彼女が快諾してくれて助かった。
『おや、誰かと思ったらウィリアムか』
リディアが祈りを捧げ、少し経つと俺の脳内に聞き覚えのない声が響く。アルトボイスとでも称そうか、少し中性的な声だが、相手が男であることが雰囲気から窺えた。
【天啓】の付与は未来を見通す力の一部を下賜するものと聞いていたから、彼からコンタクトがあることに少なからず動揺する。
そして、俺をウィリアムと呼ぶ辺り、あの女神とも関係がありそうだ。
『やっぱり、俺のことも知っているんだな』
『あぁ、君は“彼女のお気に入り”だからね』
俺の言葉に、先のアルトボイスが返ってくる。彼女というのは、あの女神のことだろう。
そしてどうやら、口に出さなくても俺の思考を読めるようだ。
『単刀直入に聞くぞ。俺たちと同じ世界から呼ばれた奴らは何処にいる?』
『時が来ればわかる』
アーカムが、アドルフと同じ台詞で返す。自身の口から答える気はないようだ。
『……ゴラン──ゲオルギオスは信用できるのか?』
少し質問を変えてみる。彼はリディアとマメに連絡を取っているみたいだし、【天啓】を下賜している時点でゲオルギオスのことに気づいていない筈がないからな。
『それに関しては、君が見たままのことを信じればいいさ。ここで僕が何を言おうと君の考えが変わることはないのだから』
なんとも歯に付く言い回しだ。それでも、この言葉から悪意などは感じられなかった。
『──それで、君にはもっと他に聞きたいことがあるのではないかな?』
アーカムの言葉に、目的の一つを思い出す。この世界に来ているであろう彼らの話を聞ければそれが一番良かったが、アーカムからそれを聞き出すのは手間取りそうだ。
『このダンジョン既存のものに比べて明らかに異質だ。ダンジョンの発見時期も含めて、ここは新参の神が管理しているものなんじゃないのか?』
そして恐らく、このダンジョンを管理する神とやらはアーカムと敵対しているのだろう。
そう邪推してしまうくらいには、このダンジョンは異質なものだった。
『中々どうして、聡いじゃないか』
俺の言葉に、アーカムは小さく笑い声を漏らす。
『──ところで、ウィリアム。フィオナ・アリオンのことを知りたくはないか?』
先までの笑い声とは打って代わり、アーカムの声にどこか影の落ちたように感じた。
『どういうつもりだ?』
さっきまでは、時を待てば分かると言っていたはずだ。
何故、今この話を切り出してきたのだろうか?
『何、少し褒美をくれてやろうと思っただけだ。君は今まで通りにダンジョン探索に励んでくれればいい。このダンジョンを踏破したときには、彼女のことを話そうじゃないか』
どうやら、アーカム的にもこのダンジョンには何か執着する理由があるようだ。
『それで、君が今聞きたいことは何かな?』
『このダンジョンについてだ。この階層内に、門はあるのか?』
『ある』
俺の言葉に、アーカムが力強く答える。それだけ聞ければ十分だった。
『ありがとう』
それだけ伝え、無意識に閉じていた目を開く。アーカムがあるというのなら、いくらでもやりようはありそうだ。
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