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Echo27:余光と再会
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帰りの小道には、夕映えの余光がまだ静かに残っていた。
日中に蓄えたぬくもりをわずかに宿した草を踏みしめるたび、乾きかけた葉がかすかな音を立てる。
陽はすでに傾き、木立のすき間から斜めに注ぎ込んでは、枝葉を淡く金に染め上げていた。
デイジーは無言のまま前を歩いていた。
背筋を伸ばし、ひとつひとつの所作は相変わらず優雅だったが、その横顔には笑みのかけらもなく、不機嫌さを隠しもしない。ルネに対する、礼儀正しく洗練された微笑とはまるで別人のようだった。
アリセルは数歩後ろから、その背中をそっと見つめていた。
自分に対する数々の暴言を思い出すと苛立ちが湧き上がる。
しかしルネに対して、デイジーは終始丁寧な態度を崩さず、言葉の端々にも敬意がにじんでいた。
その事が分かっただけでも、ほんの少し肩の力が抜ける思いだった。
アリセルは歩を速め、並ぶようにして口を開いた。
「デイジー。さっきは、ごめんなさい。それと、ルネ様にちゃんと……」
「許したなんて、一言も言ってないけど?」
氷のように冷ややかな声が、遮るように返ってきた。
デイジーは前を向いたまま、見遣りもせずにそう言った。アリセルは思わず口をつぐみ、視線を足元へ落とした。
そんな中、前方から蹄の音が近づいてきた。
乾いた草を踏みしめ、一定の間隔で鳴るその響きは、ふたりの間に漂っていた沈黙を切り裂いていく。
やがて木々の間から、黒馬が現れた。
しなやかな四肢と引き締まった躯体。流れるようなたてがみは西日を受けてわずかにきらめき、草の上を滑るように優雅に進んでくる。
そして、その鞍の上にはユーグの姿があった。
背筋をまっすぐに伸ばし、軽やかに手綱を握っている。馬の動きと完全に息が合っていて、一つひとつの動作に無駄がない。
視線の先に彼を捉えたとたん、アリセルの表情にはみるみるうちに明るさが戻っていった。
「ユーグだ!」
アリセルは立ち止まり、思わず声を弾ませる。
デイジーの視線を背に感じながらも、荷を引いていたロバの手綱を地面に置き、こちらへ向かってくる馬へと駆け出した。
アリセルが駆け寄ってくるのを認めると、ユーグは軽く手綱を引いて馬を緩めた。
馬はすぐに速度を落とし、主の意を汲んで歩き始めると、そのまま静かに足を止める。彼は鞍上から身を起こすと、片足を鐙から外し、軽やかに地面へと降り立った。
再会の喜びに、思わず抱き着こうとするアリセルだが、いつものように手で制されて、ぴたりと動きを止めた。
ユーグに向かって両腕を差し出したままの姿勢で固まる。
数秒遅れて、自分の格好に気づき、はっとして手を引っ込めた。気まずさを覚えながらも、アリセルは久々の再会に喜びを隠しきれなかった。
「おかえりなさいっ、ユーグ!」
「ただいま」
ユーグの声は、どこか懐かしさを滲ませながら、いつもより穏やかだった。
アリセルは満面の笑みを浮かべたまま、彼をみつめる。
久し振りに顔を合わせたという実感が、胸の奥で静かに膨らんでいった。
「ちゃんと、ごはん食べてた?」
アリセルが少し背伸びするようにしながら尋ねると、ユーグはわずかに目を細めた。
「ああ。……それなりに」
「お財布とられなかった?」
「当たり前だろ」
「綺麗で悪いお姉さんに、ついて行かなかった?」
「…………」
沈黙が少し長く続いた。アリセルはきょとんとした後、目を丸くした。
「……え? えっ、ほんとに……行ったの?」
「さあね。そういうのは記憶に残らないってよく言うだろ」
「それ、行ったってことじゃないの!?」
アリセルが思わず声を上げると、ユーグは前髪をかき上げながら苦笑した。
「冗談だよ。……たぶん」
「また、たぶんって言って誤魔化している!」
あっさりとはぐらかされて、アリセルはむくれたように唇を尖らせた。
だが、彼に会えたことが嬉しくて、その顔もすぐにほどけてゆく。
ふと視線を移し、ユーグの背後にいる馬に目を留める。
「この子、すごくきれいな馬だね。名前、あるの?」
興味津々といった様子でアリセルは馬に近づき、そっと鼻先に手を伸ばす。
馬はぴくりと耳を動かしたが、おとなしくその手の匂いを嗅いだ。
アリセルが嬉しそうに頬をゆるめた、そのとき。
「また人を置き去りにしておいて、ずいぶん余裕ね」
冷えた声が背後から投げかけられ、ひやりとした感覚が走った。
声を聞いた瞬間に、すっかり忘れていた存在を思い出したのだ。
「ご、ごめんなさい。ユーグに会えたのが嬉しくて、デイジーのこと忘れちゃった、えへ」
「『えへ』とか言って、かわい子ぶってるんじゃないわよっ!」
吐き捨てるような声音に、空気がぴんと張り詰めた。
わずかな沈黙の後、やがてデイジーは気持ちを切り替えるように、軽く頭を左右に振ってから、ユーグの前に進み出る。
「ご挨拶が遅れました。わたくし、デイジー・マレと申します。ルネ様の教育係として、しばらくこちらに滞在させていただくことになりました」
先ほどとは一変し、抑えられた声には、澄んだ美しさとほのかな艶が宿っていた。
その気配に、ユーグは左手を胸に添えて、流れるように会釈を返した。
「ユーグ・アージュと申します。……あなたが、デイジー・マレ嬢ですね。お名前は以前より耳にしておりました。拝顔できて光栄です」
ユーグの返礼に、デイジーはほんのわずか瞳を見開いた。
値踏みするような眼差しで彼を見つめる。
「ずいぶんと立ち居振る舞いが洗練されていらっしゃるのですね。差し支えなければ、ご職業をうかがっても?」
「何でも屋のようなことを、少々」
「まあ、それはご謙遜。鞍の上でも、見事なお姿でしたわ」
「それはどうも。馬の方が優秀でして」
アリセルは交互に二人を見比べた。
澄んだ言葉と洗練された所作のやりとりには踏み込む隙がなく、足元がふわりと浮くような心地がした。
……大人だ。そんな言葉が、ぽつんと胸の奥に浮かんだ。
デイジーは、ふと視線を馬へと移し、それから何気ないようにユーグを見上げた。
「……なんて美しい毛並み。ずいぶんとお利口そうな馬ですね。もし、ご迷惑でなければ……ご一緒させていただけたりしませんか?」
声は穏やかで、どこかに祈るような響きがあった。
胸の前で手を組み、デイジーは言葉を重ねる。
「無理を申しているのは承知しております。けれど……あの背に揺られてみたら、どんな気分かしらと、思わず……」
ユーグの視線がアリセルに向けられた。
説明を求めるような眼差しに、アリセルは小さく肩を竦めてみせる。
「デイジーの靴、とっても綺麗だけど、ここまで来るのに大変だったと思うの。だから、よかったら乗せてってあげて?」
その瞬間、デイジーの顔がぴたりとこちらに向いた。
目が合った瞬間、空気が固まる。彼女の双眸には「余計なことを言うな」と書かれていた。また怒らせてしまったと、アリセルは目線を逸らす。
「そういう事でしたら、どうぞ」
ユーグは馬を寄せ、鞍の脇で静かに立ち止まった。
左手を差し出すと、デイジーが指を添える。その手を支えに、腰へもう片方の手を添えると、彼は彼女の身体を軽々と抱き上げ、横向きに鞍へと乗せた。
デイジーは両膝を揃えたまま横座りになり、スカートを整える。
「まぁ……こんなに高いと、景色って、ぜんぜん違って見えるのね。風が気持ちいいわ」
デイジーの弾んだ声は、どこか無邪気さを帯びていた。
彼女らしからぬその調子に、アリセルはふと目を細める。
馬に乗ったことは、まだ一度もない。あの背に揺られてみたいという憧れが、胸をかすめた。
「いいなぁ……」
思わず漏れた呟きだったが、ユーグは聞き逃さなかったらしい。
「いつか、乗せてやるよ」
囁くように低く告げると、彼もまた鞍にまたがった。
デイジーのすぐ後ろに腰を下ろし、手綱を取った腕が彼女を囲う。
風に揺れるドレスの裾に夕陽を受けてきらめく髪、そしてその背に控える青年の姿は、ひとつの静かな情景を形づくっていた。
目を奪うほど整ったその佇まいに、アリセルは息を呑んだ。
ユーグが軽く手綱を引くと、馬は前脚を高く掲げ、地を蹴り、風を裂くように駆け出した。
瞬く間に遠ざかっていくふたりの背を、アリセルはただひとり、じっと見つめていた。
日中に蓄えたぬくもりをわずかに宿した草を踏みしめるたび、乾きかけた葉がかすかな音を立てる。
陽はすでに傾き、木立のすき間から斜めに注ぎ込んでは、枝葉を淡く金に染め上げていた。
デイジーは無言のまま前を歩いていた。
背筋を伸ばし、ひとつひとつの所作は相変わらず優雅だったが、その横顔には笑みのかけらもなく、不機嫌さを隠しもしない。ルネに対する、礼儀正しく洗練された微笑とはまるで別人のようだった。
アリセルは数歩後ろから、その背中をそっと見つめていた。
自分に対する数々の暴言を思い出すと苛立ちが湧き上がる。
しかしルネに対して、デイジーは終始丁寧な態度を崩さず、言葉の端々にも敬意がにじんでいた。
その事が分かっただけでも、ほんの少し肩の力が抜ける思いだった。
アリセルは歩を速め、並ぶようにして口を開いた。
「デイジー。さっきは、ごめんなさい。それと、ルネ様にちゃんと……」
「許したなんて、一言も言ってないけど?」
氷のように冷ややかな声が、遮るように返ってきた。
デイジーは前を向いたまま、見遣りもせずにそう言った。アリセルは思わず口をつぐみ、視線を足元へ落とした。
そんな中、前方から蹄の音が近づいてきた。
乾いた草を踏みしめ、一定の間隔で鳴るその響きは、ふたりの間に漂っていた沈黙を切り裂いていく。
やがて木々の間から、黒馬が現れた。
しなやかな四肢と引き締まった躯体。流れるようなたてがみは西日を受けてわずかにきらめき、草の上を滑るように優雅に進んでくる。
そして、その鞍の上にはユーグの姿があった。
背筋をまっすぐに伸ばし、軽やかに手綱を握っている。馬の動きと完全に息が合っていて、一つひとつの動作に無駄がない。
視線の先に彼を捉えたとたん、アリセルの表情にはみるみるうちに明るさが戻っていった。
「ユーグだ!」
アリセルは立ち止まり、思わず声を弾ませる。
デイジーの視線を背に感じながらも、荷を引いていたロバの手綱を地面に置き、こちらへ向かってくる馬へと駆け出した。
アリセルが駆け寄ってくるのを認めると、ユーグは軽く手綱を引いて馬を緩めた。
馬はすぐに速度を落とし、主の意を汲んで歩き始めると、そのまま静かに足を止める。彼は鞍上から身を起こすと、片足を鐙から外し、軽やかに地面へと降り立った。
再会の喜びに、思わず抱き着こうとするアリセルだが、いつものように手で制されて、ぴたりと動きを止めた。
ユーグに向かって両腕を差し出したままの姿勢で固まる。
数秒遅れて、自分の格好に気づき、はっとして手を引っ込めた。気まずさを覚えながらも、アリセルは久々の再会に喜びを隠しきれなかった。
「おかえりなさいっ、ユーグ!」
「ただいま」
ユーグの声は、どこか懐かしさを滲ませながら、いつもより穏やかだった。
アリセルは満面の笑みを浮かべたまま、彼をみつめる。
久し振りに顔を合わせたという実感が、胸の奥で静かに膨らんでいった。
「ちゃんと、ごはん食べてた?」
アリセルが少し背伸びするようにしながら尋ねると、ユーグはわずかに目を細めた。
「ああ。……それなりに」
「お財布とられなかった?」
「当たり前だろ」
「綺麗で悪いお姉さんに、ついて行かなかった?」
「…………」
沈黙が少し長く続いた。アリセルはきょとんとした後、目を丸くした。
「……え? えっ、ほんとに……行ったの?」
「さあね。そういうのは記憶に残らないってよく言うだろ」
「それ、行ったってことじゃないの!?」
アリセルが思わず声を上げると、ユーグは前髪をかき上げながら苦笑した。
「冗談だよ。……たぶん」
「また、たぶんって言って誤魔化している!」
あっさりとはぐらかされて、アリセルはむくれたように唇を尖らせた。
だが、彼に会えたことが嬉しくて、その顔もすぐにほどけてゆく。
ふと視線を移し、ユーグの背後にいる馬に目を留める。
「この子、すごくきれいな馬だね。名前、あるの?」
興味津々といった様子でアリセルは馬に近づき、そっと鼻先に手を伸ばす。
馬はぴくりと耳を動かしたが、おとなしくその手の匂いを嗅いだ。
アリセルが嬉しそうに頬をゆるめた、そのとき。
「また人を置き去りにしておいて、ずいぶん余裕ね」
冷えた声が背後から投げかけられ、ひやりとした感覚が走った。
声を聞いた瞬間に、すっかり忘れていた存在を思い出したのだ。
「ご、ごめんなさい。ユーグに会えたのが嬉しくて、デイジーのこと忘れちゃった、えへ」
「『えへ』とか言って、かわい子ぶってるんじゃないわよっ!」
吐き捨てるような声音に、空気がぴんと張り詰めた。
わずかな沈黙の後、やがてデイジーは気持ちを切り替えるように、軽く頭を左右に振ってから、ユーグの前に進み出る。
「ご挨拶が遅れました。わたくし、デイジー・マレと申します。ルネ様の教育係として、しばらくこちらに滞在させていただくことになりました」
先ほどとは一変し、抑えられた声には、澄んだ美しさとほのかな艶が宿っていた。
その気配に、ユーグは左手を胸に添えて、流れるように会釈を返した。
「ユーグ・アージュと申します。……あなたが、デイジー・マレ嬢ですね。お名前は以前より耳にしておりました。拝顔できて光栄です」
ユーグの返礼に、デイジーはほんのわずか瞳を見開いた。
値踏みするような眼差しで彼を見つめる。
「ずいぶんと立ち居振る舞いが洗練されていらっしゃるのですね。差し支えなければ、ご職業をうかがっても?」
「何でも屋のようなことを、少々」
「まあ、それはご謙遜。鞍の上でも、見事なお姿でしたわ」
「それはどうも。馬の方が優秀でして」
アリセルは交互に二人を見比べた。
澄んだ言葉と洗練された所作のやりとりには踏み込む隙がなく、足元がふわりと浮くような心地がした。
……大人だ。そんな言葉が、ぽつんと胸の奥に浮かんだ。
デイジーは、ふと視線を馬へと移し、それから何気ないようにユーグを見上げた。
「……なんて美しい毛並み。ずいぶんとお利口そうな馬ですね。もし、ご迷惑でなければ……ご一緒させていただけたりしませんか?」
声は穏やかで、どこかに祈るような響きがあった。
胸の前で手を組み、デイジーは言葉を重ねる。
「無理を申しているのは承知しております。けれど……あの背に揺られてみたら、どんな気分かしらと、思わず……」
ユーグの視線がアリセルに向けられた。
説明を求めるような眼差しに、アリセルは小さく肩を竦めてみせる。
「デイジーの靴、とっても綺麗だけど、ここまで来るのに大変だったと思うの。だから、よかったら乗せてってあげて?」
その瞬間、デイジーの顔がぴたりとこちらに向いた。
目が合った瞬間、空気が固まる。彼女の双眸には「余計なことを言うな」と書かれていた。また怒らせてしまったと、アリセルは目線を逸らす。
「そういう事でしたら、どうぞ」
ユーグは馬を寄せ、鞍の脇で静かに立ち止まった。
左手を差し出すと、デイジーが指を添える。その手を支えに、腰へもう片方の手を添えると、彼は彼女の身体を軽々と抱き上げ、横向きに鞍へと乗せた。
デイジーは両膝を揃えたまま横座りになり、スカートを整える。
「まぁ……こんなに高いと、景色って、ぜんぜん違って見えるのね。風が気持ちいいわ」
デイジーの弾んだ声は、どこか無邪気さを帯びていた。
彼女らしからぬその調子に、アリセルはふと目を細める。
馬に乗ったことは、まだ一度もない。あの背に揺られてみたいという憧れが、胸をかすめた。
「いいなぁ……」
思わず漏れた呟きだったが、ユーグは聞き逃さなかったらしい。
「いつか、乗せてやるよ」
囁くように低く告げると、彼もまた鞍にまたがった。
デイジーのすぐ後ろに腰を下ろし、手綱を取った腕が彼女を囲う。
風に揺れるドレスの裾に夕陽を受けてきらめく髪、そしてその背に控える青年の姿は、ひとつの静かな情景を形づくっていた。
目を奪うほど整ったその佇まいに、アリセルは息を呑んだ。
ユーグが軽く手綱を引くと、馬は前脚を高く掲げ、地を蹴り、風を裂くように駆け出した。
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