【完結】獅子は鳥籠を砕く

真大(mahiro)

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第4章

花開く声

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 そしてその数日後。ついに医師の判断で、ユリウスの喉から呼吸器が外されることになった。

 慎重に管が抜かれ、ユリウスが小さく咳き込む。だが、すぐに呼吸は安定した。
 胸が規則正しく上下し、問題なく自発呼吸ができている。
 その様子を見届け、レオナルドはユリウスの順調な回復に、改めて心の底から安堵の息を吐いた。

 医師たちが退出し、病室には再び二人きりの時間が訪れた。
 レオナルドはいつものように、ユリウスのベッドのそばにある椅子に腰を下ろした。
 そして、点滴の管が外れ、身軽になったユリウスの手をそっと握りしめた。

 温かい手。
だが、レオナルドの胸中には、目覚めた時からずっと消えない不安の塊があった。
 呼吸器が外された今、ユリウスは話してくれるのだろうか。
 十年もの間、心を閉ざし、演技を続けてきた彼が、本当の言葉を紡いでくれるのだろうか。
 あるいは、後遺症や精神的なショックで、声を失ってはいないだろうか。

 レオナルドはその不安に押しつぶされそうで、ベッドに横たわるユリウスの顔を直視することができず、握った手を見つめたまま俯いてしまった。

 沈黙が落ちる。
 だが、その重苦しい緊張が手から伝わったのだろうか。
 ふと、空気が緩み、ユリウスが笑う気配がした。
 はっとして、レオナルドが顔を上げる。

 すると、そこには美しい碧眼が、真っ直ぐにレオナルドを見つめていた。
 そして、久しく使われていなかった唇が、ゆっくりと動いた。

「……レオ」

 少し掠れた、けれど優しく響く声。
 花が綻ぶように笑う美しい人が、レオナルドがずっと、十年もの間呼んでほしいと願い続けていた愛称で、呼んでくれた。

「……っ、ユーリ……」

 そのたった二文字を聞いた瞬間、感極まってしまい、レオナルドは目を潤ませた。
 視界が滲む。
 ユリウスが奇跡的に目覚めて号泣したあの日以来、どうにも涙腺がおかしくなってしまったようだ。

 レオナルドは潤んだ瞳を拭うこともせず、愛しい人の瞳を見つめ返した。

「ユーリ、君に……話したいことがたくさんあるんだ。……聞いてくれるか?」

 十年分の空白と、隠されていた真実、そしてこれからのこと。

 レオナルドがそう問いかけると、ユリウスは穏やかな瞳のまま、ゆっくりと頷いてくれた。
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