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第5章
献身に溶ける氷
しおりを挟むレオナルドとは、ユリウスが思っていたよりも早く再会することになった。
屋敷の正門を抜け、馬車寄せに到着した時には、すでにレオナルドが玄関の外に立ち、今か今かと待っていたからだ。
御者が扉を開け、ユリウスが馬車を降りようとステップに足をかけた瞬間、レオナルドの手が伸びてきた。
エスコートかと思いきや、そのままユリウスの身体をひょいと軽々と抱き上げた。
「……っ、一人で降りられる」
「いいから。俺に任せてくれ」
レオナルドは有無を言わさない様子だった。
そのまま地面に降ろしてくれるのかと思ったが、レオナルドはそのまま腕の中にユリウスを大事な宝物のように抱え込み、屋敷の中へと入ろうとする。
「レ、レオ……っ、どこまでこの状態で行くつもりだ?」
「俺たちの寝室まで」
レオナルドは端的に答えて、そのままスタスタと歩き出した。
本当に、屋敷の玄関を通り過ぎ、階段を上がり、二人の寝室まで抱っこしたままで帰るつもりのようだ。
明らかなセックスの疲労で二日もダウンした姿を見られたのも恥ずかしいのに、宰相としての初仕事を終えて帰宅した直後に、使用人たちにこんな甘やかされた姿まで見られるなんて。
すれ違う使用人たちが、微笑ましそうに頭を下げる中、ユリウスは真っ赤な顔でレオナルドの胸に顔を埋めた。
恥ずかしいが、レオナルドの腕の中にいることへの抵抗感はないため、暴れることなく大人しく従った。
レオナルドは寝室に着くと、扉を閉め、そのままユリウスを優しくベッドへ腰掛けさせた。
そして、その場に片膝をついて跪き、下から覗き込むようにユリウスと向き合った。
「……すまない。過保護と言われるのは分かっているんだが、どうしても……初日から君が嫌な思いをしなかったか、心配で」
黒曜石の瞳が、不安げに揺れている。
ユリウスが王宮で冷遇されていないか、傷ついていないか、気が気じゃなかったのだろう。
「ふふ、……大丈夫だ。本当に」
ユリウスはレオナルドの頬に手を添え、微笑んだ。
「実際見て分かったが、すでにカイエン様の手で、王宮内のかなり腐敗は一掃されていたよ。
私に対し、無用に反発するような者は一人もいなかった」
「そうか……良かった……」
レオナルドは心底安堵した顔で、ふぅと息を吐いた。
ユリウスはあまり、自分が傷ついたり、悲しい思いをしたことを他人に明かさない。
平気なふりをして、隠すのが上手い。
だからこそレオナルドは、こうして目線を合わせ、ユリウスの細かな表情の機微を見ながら、本当のことを話しているか確認したかったのだろう。
その不器用な優しさに、ユリウスはまたふふと笑みが溢れた。
あの勇猛な獅子騎士団の騎士たちが、戦場では鬼神の如き強さを誇る団長が、こうして伴侶に対して心配性で、甘い姿を見せていると知ったら驚くだろう。
この姿は、そしてこの深い献身も、愛も。
すべてユリウスだけのものだ。
かつて、自分の幸せすら考えたことがなく、心を凍らせて生きてきたユリウス。
だが今は確信している。凍りついた心はレオナルドの熱によって溶かされ、今はもう温かい愛で満たされていると。
そう感じ、ユリウスは跪いたままのレオナルドの唇に、優しく自分の唇を重ねた。
触れるだけの、感謝と愛を込めたキス。
すると、スイッチが入ったようにレオナルドが動いた。
唇を離そうとするユリウスを追いかけるように、深くキスをしてくる。
そして跪いた体勢から立ち上がり、ベッドに腰掛けているユリウスの肩を押してゆっくりと押し倒し、覆い被さってきた。
「んっ……レオ……」
「……ユーリ、おかえり」
「ただいま……ふふ、待ってくれ、着替えもまだ……それに、夕食に遅れるとハニスに怒られるぞ」
「あと少しだけ……ハニスには後で俺が怒られておく」
キスの合間に、二人は子供のように笑い合った。
それでも、久しぶりに重なった体温が心地よくて、しばらく甘いキスをやめられず、二人はベッドの上で身を寄せ合い、求め合った。
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