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3章 異世界技能編

第44話 アクシデント

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 スーと休憩室で語り合った日から、さらに二ヶ月ほど経過し、暑さも落ち着きを見せる頃には、徐々に体力も付き始めてきていた。

 週五で仕事をして、週二は訓練漬け、さらに仕事の日の夜も家の庭で基礎トレを続けるいう、なかなかハードな二ヶ月間であった。

 それもこれも、全ては睡眠スキルとお布団のおかけである。
 どんなに疲れていても次の日には完全復活している。

 さらには、先月からお布団を紐で縛って訓練所に持っていき、休憩中に仮眠を取ることで、幾らか回復するという荒業を使い始めてから、かなり効果的に訓練で体を酷使できるようになった。

 訓練終わりにもお布団で一時間ほど仮眠を取ってから帰り、また寝る前に軽く運動をする。
 この繰り返しだ。

 仕事も、肉体労働スキルのレベルがカンストし、十レベルに到達したことで、ほとんど疲れなくなっていた。

 こんな事をしているものたから、周りの人……特にキリーカからはかなり心配されたが、元気に仕事をして見せることでしか、良い言い訳が思いつかなかったので、少し申し訳なさを感じていた。

 スキルの事を知っているルリアからですら一度、ホントに大丈夫かと聞かれた程であった。

 まぁ、よくよく考えれば、かなり無茶をした気がするが、都度疲れが癒えてしまうので、実感はあまり無かった。

 今現在、スキルのレベルはそれぞれ、投擲レベル五、弩レベル三、魔法操作レベル一《いち》、肉体労働レベル十、清掃レベル五となっていた。

 投擲レベルに関してはは、昨日レベル四から上がったばかりである。

 また、翻訳と睡眠は変わらずカンストしており、レベル十のままである。

 このことから分かるだろうが、これだけやっても、未だに魔法が発動出来ないでいた。

 魔法操作スキルが、完全に宝の持ち腐れとなっている。

 デグも、どうしたものかと頭を悩ませていたので、俺自身もどうすべきか分からないでいた。

 このまま自力修得を諦めてしまうべきだろうか……。

 そんな事を考えながら道を歩いていると、何かに正面からぶつかってしまい、そのまま転げてしまい、尻もちをついてしまう。

「いてて、なんだよ……あ」

 悪態をつきながら顔を上げると、なんとも大きな壁……のような大男が不機嫌そうに立っていた。
 横にはヒョロっとした取り巻きも一人添えている。

「おい、どこ見て歩いてやがる」

 ドスの聞いた低く響く声で、拳をパキパキと鳴らしながら見下され、思わず腰が引けてしまう。

 取り巻きも何やらギャーギャーと喚いていたが、中央から押し寄せる重圧のせいで、うまく聞き取れずにいた。

「あ、その、す、すみません……。考え事をしていて……。ほんと、すみませんでした、でわ」

 なんとも情のない弱々しい返答である。
 俺は背中に背負っていた布団を担ぎ直して、早々に立ち去ろうとすると、背中の布団をがしりと掴まれてしまう。

「おいてめぇ、何勝手に行こうとしてやがる。もう少しお話しようぜ、なぁ?」
「キキキ、ほら、こっちこいよ」

 俺はそのままズルズルと、路地裏に連れ去られたかと思えば、大男は布団ごと俺を地面に放り投げた。

 ズシャッと擦れる音が聞こえ、すぐに熱をもった痛みが、地面と接した箇所に走る。

「迷惑料として、有り金全部置いてきな。その荷物も一緒にだ」

 大男は、腕を組みこちらを見下ろしながら言う。

「身ぐるみ剥がさないだけ、ありがたいと思いやがれ」
 取り巻きは、大男の斜め後ろに立って、ポケットに手を突っ込みながら、俺を見下ろしている。

 俺はというと、二人を見上げながらも、なんともテンプレートのようなチンピラだなと、不思議と冷静でいられた。
 有り金程度で許してもらえるのなら、この場はそれでも良いと思っていた。
 しかし、お布団を取られてしまうのは問題である。

「……その、有り金だけで、なんとか許してもらえないですかね」

「駄目だ。荷物も置いていけ」

「そこをなんとか……」

「おめぇに選ぶ権利はねぇーんだよ。バァーカ。キキキキ」
 取り巻きが俺の足をグリグリと踏みつけ、舌を出して煽るように言う。

「そんなに大事な荷物ってこたぁ、高価なもんってことですぜ、アニキィ」

「そのようだな。ほら、さっさと置いていけ。さもないと、力づくで奪うことになるぞ」

 どうやら話し合いで解決できそうには無いようだ。
 誰かが先程の表での騒ぎを見て、衛兵か何かを呼んでくれているのであれば、助けが来るかも知れないが、時間稼ぎをしたところでその補償は無い。

 それに、露骨な時間稼ぎは結果的により酷い目に合わされる可能性も孕んでいる。
 であればどうするか……。

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