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2章 異世界就活編
第13話 異世界の朝
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すーっと、まどろみの中から、意識が這い出してくる。
見慣れぬ天井を、薄目でボーっと眺めていると、ようやく意識がはっきりとしてくる。
「そういやぁ…異世界、来たんだっけ」
頭が回っていない為、不用心な台詞を呟いてしまう。
しばらくしてその事に気がつき、ベッドの方を見ればスヤスヤと気持ちよさそうに眠るルリアがいた。
寝ているときにまで女装を辞めないとはなんとも恐れ入った。
寝間着も随分とフリフリもこもことしていた。
この世界では結構良いお値段がするのではないかと、下世話な発想になってしまう。
この世界の発展レベルはまだはっきりとしていないが、俺の知る限りのファンタジー世界の中ではわりかし進んでいるのではないかと感じた。
少なくとも製本技術や、石壁を綺麗にするような技術、それに衣服に至っても、デザインと機能性を両立させたものが作り出せるレベルには至っているのだ。
もしかすると、これもスキルに関係しているのかもしれない。
また何処かで調べてみるとしよう。
そう考えながら、ぐーっと背伸びをして起き上がる。
窓の外を見ると、既に明るくなっていた。
俺は、外の空気を吸いに家をそーっと出る。
両手を広げて深呼吸をする。少し顔を見上げるかたちになり、朝日が少し眩しく感じた。
ふと気づくが、なんだか体の調子が良いように感じる。
異世界に来て、体が変わったからだろうか。日本にいた頃は、朝は苦手で寝ても覚めても体のどこかしらが痛かったのが記憶に新しい。
試しにウデをグルングルンと回したりしてみるが、節々の痛みもなく、至って健康的だ。
理由は不明だが、体が若返りでもしたのだろうと今は納得することにした。
「おはよう、ペリっていうんだって? しばらくここに世話になるから、仲良くしてくれよな」
小屋からひょっこりと顔を出していた仔馬に話しかける。名前は昨日、寝る前にルリアに教えて貰っていた。
ペリは、フンッと鼻息を鳴らすと、ゆっくりと尾を向けて干し草を噛み始めた。
返事をしているのか、相手にされていないのかは分からないが、可愛いので許すことにする。
ルリアが起きるまですることもない俺は、のんびりとペリの一挙一動を観察することにした。
こうしてのんびり過ごしていると、時間の流れが緩やかに感じる。
日本にいた頃には味わうことのできなかった感覚だ。
俺はここにきてようやく、異世界に来てよかったと思うことができた。
「ふぁぁ…、おはよー、レイちゃ…起きるの早いねぇ…」
「おはよう。たまたま目が覚めたからな」
たまたま、というのは嘘である。
徹底された体内時計によって、だいたい5~6時間経つと起きてしまう、社会人の悲しい性である。
「そんなのんびりしていて、仕事、大丈夫なのか?」
「きょーはやすみだから…だいじょぉぶ…」
「ならいいのか」
どうやら朝は弱いらしい。
かなりふらふらとしている。
そしてそのままこちらに近づいてくると、俺の腹元に飛び込み顔をうずめた。
「んー…ねむいぃ……ぐぅ…」
「おい、寝るならベッドで…って、あ」
道をゆく、ヒョロっとした男性と目が合う。
男性は、親指を立ててにこやかな笑みを浮かべると、そそくさとその場を去っていった。何か誤解された気がする。
「ほんとに起きろ。近所の人に誤解の種を撒くんじゃねぇ」
「んむぅ…はこんでぇ…」
「自分で立てって…ったく、何で出てきたんだよ」
「ペリに、あさごはん、あげなきゃだし…」
「分かった分かった、俺があげとくから。もう一眠りしてこい」
「うい…」
日ごろはどうしていたのかと甚だ疑問だが、多分溶けながらも無理やりこなしていたのだろうと推測した。
俺はルリアをベッドまで届けてから、馬小屋の端にあった干し草を何回かに分けてペリのいる小屋に投げ入れた。
正しいやり方か不安はあったが、一応新しい干し草も食べてくれていたので、多分大丈夫だったのだろうと思うことにした。
馬小屋内のボロ掃除までやり終えて、家に戻ると、ベッドの上にはルリアの姿が無い。
代わりに、先程まで来ていたであろう寝間着が無造作に置いてある。
なんとなく嫌な予感がしたが、足音がしたので思わずそのまま視線をやってしまう。
視線をやった先には、濡れた髪をタオルで拭きながら歩いてくるバスローブ姿のルリアが立っていた。
「あ、おはよぉー。水浴びしたからやっと目が覚めたよぉー。にへへ」
ルリアの長い髪から雫が滴り落ちる。
しかし、コレは男である。
だが、視覚は、なかなかコレを男と認識してくれない。
俺は念仏のように、コレは男コレは男…と繰り返し、今すぐ無の境地のスキルが発動するように願う。
「レイちゃんも浴びてきたらぁ? すっきりするよぉー。出てくるまでに朝御飯つくっとくよー」
バスローブとの境にある、浮き出た鎖骨が目に入ってくる。
「あぁ、…そうするよ」
ルリアに、部屋の奥の水浴び場へと案内される。
俺はそこで、頭を冷やすことにした。
見慣れぬ天井を、薄目でボーっと眺めていると、ようやく意識がはっきりとしてくる。
「そういやぁ…異世界、来たんだっけ」
頭が回っていない為、不用心な台詞を呟いてしまう。
しばらくしてその事に気がつき、ベッドの方を見ればスヤスヤと気持ちよさそうに眠るルリアがいた。
寝ているときにまで女装を辞めないとはなんとも恐れ入った。
寝間着も随分とフリフリもこもことしていた。
この世界では結構良いお値段がするのではないかと、下世話な発想になってしまう。
この世界の発展レベルはまだはっきりとしていないが、俺の知る限りのファンタジー世界の中ではわりかし進んでいるのではないかと感じた。
少なくとも製本技術や、石壁を綺麗にするような技術、それに衣服に至っても、デザインと機能性を両立させたものが作り出せるレベルには至っているのだ。
もしかすると、これもスキルに関係しているのかもしれない。
また何処かで調べてみるとしよう。
そう考えながら、ぐーっと背伸びをして起き上がる。
窓の外を見ると、既に明るくなっていた。
俺は、外の空気を吸いに家をそーっと出る。
両手を広げて深呼吸をする。少し顔を見上げるかたちになり、朝日が少し眩しく感じた。
ふと気づくが、なんだか体の調子が良いように感じる。
異世界に来て、体が変わったからだろうか。日本にいた頃は、朝は苦手で寝ても覚めても体のどこかしらが痛かったのが記憶に新しい。
試しにウデをグルングルンと回したりしてみるが、節々の痛みもなく、至って健康的だ。
理由は不明だが、体が若返りでもしたのだろうと今は納得することにした。
「おはよう、ペリっていうんだって? しばらくここに世話になるから、仲良くしてくれよな」
小屋からひょっこりと顔を出していた仔馬に話しかける。名前は昨日、寝る前にルリアに教えて貰っていた。
ペリは、フンッと鼻息を鳴らすと、ゆっくりと尾を向けて干し草を噛み始めた。
返事をしているのか、相手にされていないのかは分からないが、可愛いので許すことにする。
ルリアが起きるまですることもない俺は、のんびりとペリの一挙一動を観察することにした。
こうしてのんびり過ごしていると、時間の流れが緩やかに感じる。
日本にいた頃には味わうことのできなかった感覚だ。
俺はここにきてようやく、異世界に来てよかったと思うことができた。
「ふぁぁ…、おはよー、レイちゃ…起きるの早いねぇ…」
「おはよう。たまたま目が覚めたからな」
たまたま、というのは嘘である。
徹底された体内時計によって、だいたい5~6時間経つと起きてしまう、社会人の悲しい性である。
「そんなのんびりしていて、仕事、大丈夫なのか?」
「きょーはやすみだから…だいじょぉぶ…」
「ならいいのか」
どうやら朝は弱いらしい。
かなりふらふらとしている。
そしてそのままこちらに近づいてくると、俺の腹元に飛び込み顔をうずめた。
「んー…ねむいぃ……ぐぅ…」
「おい、寝るならベッドで…って、あ」
道をゆく、ヒョロっとした男性と目が合う。
男性は、親指を立ててにこやかな笑みを浮かべると、そそくさとその場を去っていった。何か誤解された気がする。
「ほんとに起きろ。近所の人に誤解の種を撒くんじゃねぇ」
「んむぅ…はこんでぇ…」
「自分で立てって…ったく、何で出てきたんだよ」
「ペリに、あさごはん、あげなきゃだし…」
「分かった分かった、俺があげとくから。もう一眠りしてこい」
「うい…」
日ごろはどうしていたのかと甚だ疑問だが、多分溶けながらも無理やりこなしていたのだろうと推測した。
俺はルリアをベッドまで届けてから、馬小屋の端にあった干し草を何回かに分けてペリのいる小屋に投げ入れた。
正しいやり方か不安はあったが、一応新しい干し草も食べてくれていたので、多分大丈夫だったのだろうと思うことにした。
馬小屋内のボロ掃除までやり終えて、家に戻ると、ベッドの上にはルリアの姿が無い。
代わりに、先程まで来ていたであろう寝間着が無造作に置いてある。
なんとなく嫌な予感がしたが、足音がしたので思わずそのまま視線をやってしまう。
視線をやった先には、濡れた髪をタオルで拭きながら歩いてくるバスローブ姿のルリアが立っていた。
「あ、おはよぉー。水浴びしたからやっと目が覚めたよぉー。にへへ」
ルリアの長い髪から雫が滴り落ちる。
しかし、コレは男である。
だが、視覚は、なかなかコレを男と認識してくれない。
俺は念仏のように、コレは男コレは男…と繰り返し、今すぐ無の境地のスキルが発動するように願う。
「レイちゃんも浴びてきたらぁ? すっきりするよぉー。出てくるまでに朝御飯つくっとくよー」
バスローブとの境にある、浮き出た鎖骨が目に入ってくる。
「あぁ、…そうするよ」
ルリアに、部屋の奥の水浴び場へと案内される。
俺はそこで、頭を冷やすことにした。
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