悪役令嬢とドラゴン王子

杏仁豆腐

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第4章 束の間の休息

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ルクの眼力に怯えて2人は公爵の待つ屋敷に案内した。
この街でもルクの事を高貴な存在として扱われている。
でも私がいた帝国には確かに『ドラゴン』の存在すら語られていなかった。

なぜこのような辺境の地にはルクの事が知られているのだろう。
私はそれが不思議だった。
門番達の後ろを歩いていると大きな屋敷の前で立ち止まった。
ここが公爵の屋敷と言うのだ。


「ルク様、我らはこれにて失礼いたします。あとは屋敷の者がご案内することになっております」
「ああ、ご苦労であった」


道案内してくれた門番達に礼を言うと屋敷の門を潜り立派いな扉の前で立ち止まった。
私はずっと手を握られたままルクについて歩いている。
なんだか本当に恋人のような、他人からしたらそう見えるのかしら、と妄想してしまっていた。


「誰か、誰かおらぬか。私はルクと申す。誰かっ」


門の前でルクが大きな声でそう言うと扉がゆっくりと開いた。
出てきたのはメイド服を着た女性が1人お辞儀をしていた。


「ルク様。お待ちしておりました。ご当主がお待ちで御座います。此方へ……」


女性の案内で屋敷の中に入るルクとずっと手を握られたままの私は応接間に通された。
女性は暫くこちらでお待ちくださいと言い残し部屋を出て行ってしまった。
ルクと私は部屋の真ん中にあった立派な赤いソファに腰を掛けて屋敷の主を待つことにした。
暫くすると先程屋敷を案内してくれた女性が紅茶を持ってやって来た。


「粗茶ですが…どうぞ」
「有難う」


女性がルクと私の前にカップを置くと茶を注いでいると部屋の扉が開いた。


「おお、ルク様。お久しゅう御座います。立派になられて」
「久しぶりだな。公爵」


ルクがそう言って会釈する男性、この人がこの屋敷の主『ジャスワン公爵』その人だった。
大きな体と立派な貴族服を纏い黒髭を生やし、オールバックの金髪姿。
私はその姿に驚いてしまった。
公爵の黒い瞳が私を捕らえる。


「此方の方が……エリーザ様ですか」
「ああ。そうだ」


公爵はルクと私の目の前に腰かけると笑顔で私に会釈した。
私は小さくこくりと頷いた。
此処にもはやり手配書が出回っているのだ。
先ほどの門番達のような考えで私を見ているのだろう。
私はそう思いながら俯いた。


「エリーザ様。御国の事、さぞ大変な事に巻き込まれたのでしょうな。私はガーディニア国王から文を頂いております。決して貴女様の敵ではございませんぞ。ゆるりと楽になさって下され」
「あ、有難う御座います」
「良かったな、エリーザ」
「はい……ルク様」


ルクは笑顔で私の事を見つめた。
それを見ていた公爵が大きな声で笑った。
ルクが此処に来たのは公爵に挨拶する事、そしてこの国を治める王に接見することだった。
この街の中央に立派なお城があるらしい。
そこに国王がいるそうだ。



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