悪役令嬢とドラゴン王子

杏仁豆腐

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第8章 婚約

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ヨ―ルリアン帝国に戻りルクとの婚約を認めて貰う事、これが国王が出した条件だった。
私としても国に一度戻りちゃんと報告したいと思っていたのだが、いざ帝国へ戻るとなると足が動かなかった。
何日も時間を使うのは勿体と判断した私はルクの元へ向かった。


侍女にルクの居る部屋まで案内して貰い、ノックをした。


「はい、どうぞ」
「エリーザで御座います。失礼いたします」


私は扉を開けて中に入ると、机に向かっていたルクの姿があった。
何かあったのか、と訊かれ私は気持ちの整理をした上で話をした。


「一刻も早く帝国へ戻り私たちの事をお話しなければと思いまして。ルク様にも同行して貰いたいのです。差し出がましいとは思うのですが……どうにもわたくしの気持ちが焦っているいまして」


私は自分の言いたいことをルクにぶつけた。
するとルクは私の手を取りソファに座るよう言った。
私はソファに腰かけ隣で微笑むルクの顔を見つめた。
あの緑の瞳に吸い込まれそうになる。


「時期がある。直ぐに事は運ばない。私たちドラギウス国と其方の国には昔から色々な事が生じているのだ。深く説明は出来ぬが、私なりに考えている。焦る必要はないぞ」
「ですが…わたくしとしては早めにした方が良いのではないかと思っているのです」
「どうしてそう思う?」
「それは……」


ルクの問いかけに言葉が詰まった。
どうして早く事を進めたかったのか、考えが浮かばなかったからだ。
黙ってルクの事を見つめているとルクが再び話し出した。


「其方はゆっくりここに居ればいいのだよ。父は帝国との仲たがいが収まることをこの縁談で臨んでいるのは確かだ。しかしそれとこれは別物だと私は思っている。タイミングが重要なのだ。次期に其方の国の使者が此処へ来ることになっている。私が文を出した。そこからでも遅くはあるまい?」
「そんなことまで……」


していたのだ、と言いたかったが口にすることが出来なかった。
私は自分の考えの浅はかさを恨んだ。
ルクは着々と色々な事をしてくれていたのに気が付かなかったからだ。


「では、私は待っていれば良いのですね」


ルクにそう訊ねると、ルクはゆっくりと頷いた。
私はそれを信じてルクの手をぎゅっと握りしめて部屋を後にした。


「エリーザ様。大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。ご心配をお掛けしてすみません」
「私たちはルク王子の命令エリーザ様をご奉仕するよう言われております。何かございましたら何なりとお申し付けください」
「有難う」
「いえ……」


私は自室へ戻りルクの事を信じて待つことにした。
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