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「早く起きないと遅刻するわよっ!!」

大きな声が家中に響き渡った。
私は目覚まし時計に手を伸ばし虚ろな状態で目を擦りながら見ると既に起きる時間を20分以上経過していた。


「何で!? 目覚ましセットし忘れてるしっ!」
「あんたが夜中まで起きてるのが悪いと思うのだけれど。それより早くご飯食べちゃって。母さん今日は夜遅くなるから。此処にお金置いておくから何か買って帰ってくるのよ」
「は~い。今日は夜一人か……って、そんな事より着替え、着替えっ!!」


朝からバタバタだ。
着ているTシャツを脱ぐブラジャーを付けてシャツを袖に通す。
短パンをベッドの上に置いてハンガーにかけてあったスカートを履いて黒のニーソを履いた。
学校指定のカバンの中に教科書たちをしまい込むとリビングに向かった。


「パン食べながら行くわ。急がないと遅刻しちゃうから」
「あ、お金。持ってってよ」
「は~い。行ってきまーす」
「車に気を付けるのよ~」


子供か……私は黙ったまま扉を閉めた。
最近変な夢を見る。
自分自身が何処かの伯爵か、男爵家の令嬢で、あることが切欠で断罪され火炙りの刑になるところで王子様に救われて…嫌にリアルな夢だと思ってしまった。


「はぁはぁ……急がないと」


私はパンを加えながら小走りで坂道を登った。
すると私の後ろの方から私の名前を叫ぶ声が聞こえた。
立ち止まって振り返ると灯里が大手を振って走って来た。


「絵里ぃ~!! 待ってぇ~」
「灯里ぃ~!! 早くしないと遅刻するわよぉ~」
「分かってるぅ~」


女子高生の全力走行はなんてのろいのだろう、それとも灯里だからあんなにのろく見えるのかしら。
顔を真っ赤にして息を切らしている。


「最近さ~、なんか私ゲームの世界にいる夢を見るんだけど」
「相当ヤバいね、ソレ」
「やっぱそう思う?」
「やり過ぎだと思うよ」
「だよねぇ~」


私と灯里は小走りしながらなんとか校舎について下駄箱で予鈴を聞くことに成功した。
この学校は予鈴までに校舎内に入っていれば遅刻カウントをしないというよく分からないシステムを導入している。
教室の中に入るとクラスメイト達がそれぞれのグループに分かれるようにして朝から大きな声で話をしていた。


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