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次の日の朝。
私は起き上がって鏡に映る自分を見つめていた。
前世の私と同じ顔、それに少し癖のある髪質、肌色、黒色の瞳。
それもあの夢に出てくる少女そっくりだ。

前世の記憶だと分かった以上、この後の事も予測できるのではないか、いやしかしそんな都合がいいわけがない。
そんなことを考えていると扉をノックする音が部屋に響き渡る。
私が返事をすると城の侍女が扉を開けて部屋の中へ入って来た。


「おはようございます。エリス様。ご機嫌はいかがですか?」


侍女にそう言われ私は挨拶を交わした。
特に頭の痛みも感じなくなり体も正常だということを伝えるとにこやかに笑顔を振り撒いた。
侍女はお召替えをと、ドレスを抱えてソファの背もたれにそっと置いた。
私はそのドレスに着替えようとソファに近寄ると侍女が着替えの手伝いをしてくれた。


「朝食のご用意が出来ております。エリクソン様もお待ちですよ」
「有難う御座います。直ぐにお伺いします」
「私にはお気遣いなく……エリクソン様よりご令嬢として扱うよう言いつけられております故

「令嬢だなんて……私は既に国を追われた身。そのような身分ではありませんよ」


ふふふ、と私が笑うと侍女も笑いながら着替えを手伝ってくれた。
私は全てを知って清々しい気持ちでいた。

夢に出てくる乙女ゲームとこの世界が例え一緒だとしても私は私。
前世では冴えない女子高生だったとしてもここでは一人の貴族の女として生きている。
今は貴族でもないんでもないが……。
しかしそんな当たり前の事が嬉しかったのだ。


侍女に連れられ食堂に向かうと既に国王とエリクソンが話をしながら朝食を食べていた。
私は席に着いて挨拶をすると国王が私に話しかけてきた。


「エリス、急な話なのだがな、グランブル王国からイングラル国へ使者が参ってな。其方を一度グランブル王国へ戻るようとのことだったのだ。其方を一度祖国へ戻すことをグランブル王国の使者に伝えたそうだ」
「……そうなのですね。仕方が在りません。一度祖国へ戻ることにします」


私がそう言うとエリクソンが話し出した。


「良いのか? 戻ってまたあのような事が無いとは限らぬのだぞ?」
「しかし、一度戻らねばならないとなれば仕方がない事だと思います」


私の決意は変わらない。
私はしっかりと祖国へ戻りパレッド王子に話をしないとと思っていた。
魔女ではない、私は無実なのだと。
嫌がらせなんてしたことはない……。
濡れ衣を着せたパドラ―令嬢、彼女に話を付ける必要がある。
ただ暴力を振るうわけではない。
ちゃんと私が無実だということを証明して貰うだけでよかった。


「では、早速で申し訳ないが、祖国へ戻る手配をいたす。エリクソン、それでよいな?」
「…はい、父上。エリス、何かあったら言うのだぞ?」
「分かりました。有難う御座います。エリクソン様」


せめてこやつらを連れて行け、とエリクソンが直属の近衛隊を同行させるように言われた。
私は朝食を済ませ、エリクソン王子直属の近衛隊と共に祖国へ戻ることになった。

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