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ふと、目が覚めた。
すると天蓋が付いたベッドの上に寝ころんでいる自分がいる。
そうか、また前世の記憶が夢として現れたんだわ。
それにしてもガサツな女だったのね、私って。
現実に引き戻れた私は起き上がって周りを見回した。
私が使っている机や部屋に置いてある家具。
ソファ、そして窓の外。まだ日が昇り切っていない薄暗い朝の空。
暫くぼっとしていると侍女のリンが部屋をノックしてやって来た。
「おはようございます。お嬢様」
「おはよう、リン」
「お召替えを此処に置いておきますので。朝食のご用意が出来ております」
「もうそんな時間?」
「ええ。旦那様は既に食堂においでですよ」
そう、と私はベッドから起き上がって用意してくれた豪奢なドレスに袖を通した。
食堂に向かうと既にお父様は朝食を済ませて何やら書類に目を通していた。
私は挨拶を済ませ席に着いてカップを持ち口に運ぶとお父様が話し出した。
「エリス。王太子との婚約についてだが、あれはなしになったという事なのか?」
あの話か、私はカップを受皿に置いて口を開いた。
「ええ。一応そのようになっております」
「何ゆえだ? 王太子との婚約は既に幼き頃から決まっておっただろうに」
「ですが…あの事があってから私の周りで色々な変化がありました。助けて頂いた方や幼少の頃に出会っていた方にここに居ない間良くしてくれたのです。その方々を無視するわけにはいきません」
そうか、とお父様は唸った。
今の私の境遇を理解してかそれ以上この話には触れずにそのまま席を立って執務室へ向かって行った。
私は今後の事を考えながら食事を済ませ、自室へと向かった。
朝食を澄ませてからまた暫くするとリンが私の所へやって来て私に客人が来たことを告げた。
私は誰だろうとリンに訊ねた。
「隣国のイングラル国第一王太子マラス様です」
「ええ……っ?? マラス様がお見えなのですか?」
「はい……お嬢様に会いたいと」
「お父様は今どちらへ?」
「旦那様は朝そのままお城へ向かわれました」
私は直ぐに用意するのでそれまで客間で待ってもらうようリンに告げた。
私の予想より早くマラス王太子が動いたのだ。
まだどうするか選べずにいる私。
心が揺れ動いてしまうのは何故だろう。
そんな自分勝手な思いをマラス様に向けていいものだろうか。
こういう展開ってゲームの世界でもあったような気が……。
私はそう思いながら櫛で髪をとかし身なりを整え自室から客間へと向かったのだった。
ふと、目が覚めた。
すると天蓋が付いたベッドの上に寝ころんでいる自分がいる。
そうか、また前世の記憶が夢として現れたんだわ。
それにしてもガサツな女だったのね、私って。
現実に引き戻れた私は起き上がって周りを見回した。
私が使っている机や部屋に置いてある家具。
ソファ、そして窓の外。まだ日が昇り切っていない薄暗い朝の空。
暫くぼっとしていると侍女のリンが部屋をノックしてやって来た。
「おはようございます。お嬢様」
「おはよう、リン」
「お召替えを此処に置いておきますので。朝食のご用意が出来ております」
「もうそんな時間?」
「ええ。旦那様は既に食堂においでですよ」
そう、と私はベッドから起き上がって用意してくれた豪奢なドレスに袖を通した。
食堂に向かうと既にお父様は朝食を済ませて何やら書類に目を通していた。
私は挨拶を済ませ席に着いてカップを持ち口に運ぶとお父様が話し出した。
「エリス。王太子との婚約についてだが、あれはなしになったという事なのか?」
あの話か、私はカップを受皿に置いて口を開いた。
「ええ。一応そのようになっております」
「何ゆえだ? 王太子との婚約は既に幼き頃から決まっておっただろうに」
「ですが…あの事があってから私の周りで色々な変化がありました。助けて頂いた方や幼少の頃に出会っていた方にここに居ない間良くしてくれたのです。その方々を無視するわけにはいきません」
そうか、とお父様は唸った。
今の私の境遇を理解してかそれ以上この話には触れずにそのまま席を立って執務室へ向かって行った。
私は今後の事を考えながら食事を済ませ、自室へと向かった。
朝食を澄ませてからまた暫くするとリンが私の所へやって来て私に客人が来たことを告げた。
私は誰だろうとリンに訊ねた。
「隣国のイングラル国第一王太子マラス様です」
「ええ……っ?? マラス様がお見えなのですか?」
「はい……お嬢様に会いたいと」
「お父様は今どちらへ?」
「旦那様は朝そのままお城へ向かわれました」
私は直ぐに用意するのでそれまで客間で待ってもらうようリンに告げた。
私の予想より早くマラス王太子が動いたのだ。
まだどうするか選べずにいる私。
心が揺れ動いてしまうのは何故だろう。
そんな自分勝手な思いをマラス様に向けていいものだろうか。
こういう展開ってゲームの世界でもあったような気が……。
私はそう思いながら櫛で髪をとかし身なりを整え自室から客間へと向かったのだった。
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