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犯人探求編
47.編入生現る
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「おお~雪や~。学園の建物に白い化粧は、よお似合うわ~」
アバラは窓の外に広がる雪を楽しそうに眺めていた。
時期は12月。もうすぐマラカイの二か月の地固めが終わり、アウレリウスの星辰魔導議会の日が来る。三年生たちの晴れ舞台に、下級生たちも浮足立っていた。なんといっても本格的な魔法バトルを安全な場所から見られる機会というのは貴重なのだ。寮の出入り口では生徒たちが集い、互いのハンカチの出来を見せあっていた。
「おチビも意中の人に刺繍を送るつもりなんやろ?その紙袋に入っとるん?」
「意中の人じゃないよ。これはその、義理だよ」
バレンタインでも、親から子へ私のは義理に入るため、これもまた義理と言えるのだ。
「義理~?それにしては優しい顔やった気がするけどなあ~?」
グリグリと肘で私をつつくアバラは無視するに限る。
私は裁縫初心者のため、一度ハウツー本を街に行って購入してきた。しかし。まず図案の見方が分からず、次に材料の違いが分からず、そして糸端の処理が分からず。結果的に産業廃棄物が出来上がった。なお、私の手は大量の刺し傷が出来たため、しばらくアウレリウスに見つからないように手袋をしていた。
しかしアバラには見つかった。なんでも、故郷でも刺繍の風習があるようで、特定の時期になると手袋をする人間がたまにいるらしい。
『一応うちの村は狩りやっとったから、道具整備のために裁縫は俺も出来るんよ~』
とのことで見本を見せてくれたが、豪語するだけはあった。普段あんな雑な戦いをしているのに、裁縫だけはめちゃくちゃ丁寧だった。刺繍も出来るようで、あっという間に草ウサギを布に表現する。
『あかんて~。刺繍枠に張る布がたるんどるよ。ピンと張ってや』
『このサテンステッチ・・・とはなんだろう?』
『面を埋めるこというんやで。隙間を埋めるように、こう・・・』
というようにかなりレクチャーしてくれた。お礼にテストのヤマを教えたら、大層喜んでいた。
そして現段階で出来たのがこれだ。赤い羽根をモチーフにした刺繍。とはいえ、アバラに見せたら「おチビから見た三日月って赤いんやな」と言われた。シンプルな図案のはずだが、全然羽根だと伝わらないという。故に、まだ日にちはあるため羽根に近づけていきたい。この後でまたアバラにアドバイスをもらうつもりで持ってきたのだ。
出来ればアウレリウス本人にはこっそり渡したい。とはいえアウレリウスは立場も実力も、どちらも過去に例がないほど最上級の立場だ。令息令嬢からのハンカチは山のように貰えるだろう。私とあの子は仲がいいから特別扱いはしてくれるだろうが、それでも私の下手糞なハンカチが埋もれることを考えると少し安心する。
あの喧嘩の一件以来、アウレリウスは一度も血を流していない。けれど私はキスをしようとするアウレリウスからは顔を遠ざけていた。結果。滅茶苦茶抱かれた。
『これ?子作りの練習だよ。アリオンは練習には付き合ってくれるんだよね?』
とニコニコしながら何度も何度も揺さぶられた。
『ず、随分、上手だから、私からも太鼓判を、押すよ。だから、もう・・・・ッ!!』
『あ、ごめん。アリオンのイくタイミングを調整できなかったね。本当に僕は未熟だ。じゃあもう一回頑張るよ』
何度も何度も中に出された。そのたびに私の魔力は回復していくため、何ら文句を言えない。
『このよがり様で父親名乗るって無理があると思うんだけどね。でもそのプライドをへし折るのも楽しいから、せいぜい頑張ってねアリオン』
言葉は酷いが、常にこちらに気を遣うようにゆっくり腰を動かし、同時に弱いところを確実に抑えてきていた。私の指に自分の指を絡ませ、まるで恋人のようにしてくるのは本当にやめてほしい。
けれど、行為が終わるといつもアウレリウスは安心しきったように深い眠りについた。私のことを抱き枕のように抱きしめ、その睡眠は頬をぺちぺちと叩いても起きないほどの熟睡なのだ。普段睡眠時間が短かそうなアウレリウスが赤子のように眠りにつくのを見て、つい安心してしまう。
「おチビ、その顔、やっぱり渡す相手に懸想・・・」
「してない!!」
そうやってアバラと会話を交わしていると、前方からレオがやってきた。
「あ、アリオン、アバラ!ここにいたんだ」
「レオ。どうかしたの?」
「聞いた?この時期に編入生が来るんだって。今日からなんだけど、おかげであっちの方は人だかりが出来ているから避けた方がいいよ」
「へえ、編入生か~。まあ俺らには関係ないか」
編入生。あのすさまじい難関を潜り抜けて入ってこられる猛者。クリアできたものというのは学園史上でも珍しいとされており、本当なら伝説を刻むことになる。
「学園史上最高点数を刻んだアリオンと、編入試験をクリアした第二王子。まさか一学年に伝説が集うなんて、嬉しいやら、正直別の学年に生まれたかったやらだよ」
「あはは・・・」
編入試験をクリアした第二王子?そういえば数か月前、なんか勝手に約束されたような・・・。
「あ、いた!!アリオン!!待たせたな!!無事編入試験をクリアしてきてやったぜ!!」
第二王子ロギルジョー。臙脂色のくせ毛を揺らし、私の前にやってくる。周囲には彼に続く人だかりがいたが、それを引きはがすようにして私の前にやって来た。
「え、アリオン。第二王子殿下と知り合いなの!?」
「なんかおチビ、やたら顔広くない?」
「違うんだ、前に授業さぼってたら絡まれたんだよ。そこから勝手に名前を憶えられたの」
編入試験合格なんて言う、まさか本当に有言実行をしてくるとは。私が魔塔主時代にも編入試験を申し込んでくる者はいたが、他国の貴賓だろうと難易度は一切下げなかった。そんなテストを余裕な顔で越えてくるとは。アウレリウスのためにこいつの優秀さは邪魔になるな。早めに蹴落としておきたい。
「数か月ぶりだなアリオン。約束を果たしに来たぜ。べ、別にお前との約束はついでであって、俺は元からこの学園に入るつもりではあったんだけどな?勘違いはするなよ?」
こいつ、元からこの学園に入るつもりだったって、絶対アウレリウスの寝首をかくのが狙いなんだろ!!あの子には絶対に近づけさせないし、こんないじめっ子野郎は私が成績でしばいてやる。
「聞いたぜ、お前は学年一位なんだって?歯ごたえのあるライバルがいて、俺も嬉しいぞ。まあ、お前が望むならライバルよりも先に親友になってやらんこともないが!!」
ちらちらとこちらを見てくるのも腹が立つが、調子に乗っていられるのもここまでだ!!お前程度の魔法、私に太刀打ちできると思うなよ!!自信喪失させて、王位争いからリタイアさせてやる。
やがてロギルジョーの後ろから、我が元婚約者のジェルドもやってきた。おそらくは編入の付き添いだろう。さすがに適当な人物を案内に任せるわけにはいかないので、信頼されていそうな人物が担っているわけだ。
「おい、勝手に先走るな。ただでさえ貴様は注目を浴びているんだ」
凄いなジェルド。王子相手に貴様って言ったぞ。ロギルジョーはたいして無礼と気にはしてないものの、面倒そうにはしていた。
やがて、そのまま私の抱えている紙袋に気が付き、目を見開く。
「・・・それ、まさか、俺への編入祝い・・・?」
違うわ!!お前が編入するなんてさっき知ったばかりだ!!
しかしロギルジョーは頬を染めて喜んでいる。周囲には、人だかりができており、「編入生と一年主席がなにかしてるぞ」と注目を集めている。まずい、この状態でこいつの期待を裏切るのは後々面倒くさい。
くそ、どうせ失敗作だ。完成品じゃないからここで手渡すのもいい手段かもしれない。ごみ処理代わりになる。
アバラは私の迷いを察したのか庇おうとするものの、こいつの喋り方は下手をすれば不敬になりかねない。察したレオはアバラに制止をかけた。
ロギルジョーはまだかとソワソワしている一方で、ちょうどギャラリーの一方向がモーセのように割れていく。
「人だかりができていると思ったら、アリオンがいたんだね」
これは、今一番会いたくない人間があらわれた。アウレリウスの目はまっすぐ、私の手元の紙袋に向けられている。
この場に第一王子、第二王子、元婚約者って、こんな最悪な光景あるだろうか・・・。
アバラは窓の外に広がる雪を楽しそうに眺めていた。
時期は12月。もうすぐマラカイの二か月の地固めが終わり、アウレリウスの星辰魔導議会の日が来る。三年生たちの晴れ舞台に、下級生たちも浮足立っていた。なんといっても本格的な魔法バトルを安全な場所から見られる機会というのは貴重なのだ。寮の出入り口では生徒たちが集い、互いのハンカチの出来を見せあっていた。
「おチビも意中の人に刺繍を送るつもりなんやろ?その紙袋に入っとるん?」
「意中の人じゃないよ。これはその、義理だよ」
バレンタインでも、親から子へ私のは義理に入るため、これもまた義理と言えるのだ。
「義理~?それにしては優しい顔やった気がするけどなあ~?」
グリグリと肘で私をつつくアバラは無視するに限る。
私は裁縫初心者のため、一度ハウツー本を街に行って購入してきた。しかし。まず図案の見方が分からず、次に材料の違いが分からず、そして糸端の処理が分からず。結果的に産業廃棄物が出来上がった。なお、私の手は大量の刺し傷が出来たため、しばらくアウレリウスに見つからないように手袋をしていた。
しかしアバラには見つかった。なんでも、故郷でも刺繍の風習があるようで、特定の時期になると手袋をする人間がたまにいるらしい。
『一応うちの村は狩りやっとったから、道具整備のために裁縫は俺も出来るんよ~』
とのことで見本を見せてくれたが、豪語するだけはあった。普段あんな雑な戦いをしているのに、裁縫だけはめちゃくちゃ丁寧だった。刺繍も出来るようで、あっという間に草ウサギを布に表現する。
『あかんて~。刺繍枠に張る布がたるんどるよ。ピンと張ってや』
『このサテンステッチ・・・とはなんだろう?』
『面を埋めるこというんやで。隙間を埋めるように、こう・・・』
というようにかなりレクチャーしてくれた。お礼にテストのヤマを教えたら、大層喜んでいた。
そして現段階で出来たのがこれだ。赤い羽根をモチーフにした刺繍。とはいえ、アバラに見せたら「おチビから見た三日月って赤いんやな」と言われた。シンプルな図案のはずだが、全然羽根だと伝わらないという。故に、まだ日にちはあるため羽根に近づけていきたい。この後でまたアバラにアドバイスをもらうつもりで持ってきたのだ。
出来ればアウレリウス本人にはこっそり渡したい。とはいえアウレリウスは立場も実力も、どちらも過去に例がないほど最上級の立場だ。令息令嬢からのハンカチは山のように貰えるだろう。私とあの子は仲がいいから特別扱いはしてくれるだろうが、それでも私の下手糞なハンカチが埋もれることを考えると少し安心する。
あの喧嘩の一件以来、アウレリウスは一度も血を流していない。けれど私はキスをしようとするアウレリウスからは顔を遠ざけていた。結果。滅茶苦茶抱かれた。
『これ?子作りの練習だよ。アリオンは練習には付き合ってくれるんだよね?』
とニコニコしながら何度も何度も揺さぶられた。
『ず、随分、上手だから、私からも太鼓判を、押すよ。だから、もう・・・・ッ!!』
『あ、ごめん。アリオンのイくタイミングを調整できなかったね。本当に僕は未熟だ。じゃあもう一回頑張るよ』
何度も何度も中に出された。そのたびに私の魔力は回復していくため、何ら文句を言えない。
『このよがり様で父親名乗るって無理があると思うんだけどね。でもそのプライドをへし折るのも楽しいから、せいぜい頑張ってねアリオン』
言葉は酷いが、常にこちらに気を遣うようにゆっくり腰を動かし、同時に弱いところを確実に抑えてきていた。私の指に自分の指を絡ませ、まるで恋人のようにしてくるのは本当にやめてほしい。
けれど、行為が終わるといつもアウレリウスは安心しきったように深い眠りについた。私のことを抱き枕のように抱きしめ、その睡眠は頬をぺちぺちと叩いても起きないほどの熟睡なのだ。普段睡眠時間が短かそうなアウレリウスが赤子のように眠りにつくのを見て、つい安心してしまう。
「おチビ、その顔、やっぱり渡す相手に懸想・・・」
「してない!!」
そうやってアバラと会話を交わしていると、前方からレオがやってきた。
「あ、アリオン、アバラ!ここにいたんだ」
「レオ。どうかしたの?」
「聞いた?この時期に編入生が来るんだって。今日からなんだけど、おかげであっちの方は人だかりが出来ているから避けた方がいいよ」
「へえ、編入生か~。まあ俺らには関係ないか」
編入生。あのすさまじい難関を潜り抜けて入ってこられる猛者。クリアできたものというのは学園史上でも珍しいとされており、本当なら伝説を刻むことになる。
「学園史上最高点数を刻んだアリオンと、編入試験をクリアした第二王子。まさか一学年に伝説が集うなんて、嬉しいやら、正直別の学年に生まれたかったやらだよ」
「あはは・・・」
編入試験をクリアした第二王子?そういえば数か月前、なんか勝手に約束されたような・・・。
「あ、いた!!アリオン!!待たせたな!!無事編入試験をクリアしてきてやったぜ!!」
第二王子ロギルジョー。臙脂色のくせ毛を揺らし、私の前にやってくる。周囲には彼に続く人だかりがいたが、それを引きはがすようにして私の前にやって来た。
「え、アリオン。第二王子殿下と知り合いなの!?」
「なんかおチビ、やたら顔広くない?」
「違うんだ、前に授業さぼってたら絡まれたんだよ。そこから勝手に名前を憶えられたの」
編入試験合格なんて言う、まさか本当に有言実行をしてくるとは。私が魔塔主時代にも編入試験を申し込んでくる者はいたが、他国の貴賓だろうと難易度は一切下げなかった。そんなテストを余裕な顔で越えてくるとは。アウレリウスのためにこいつの優秀さは邪魔になるな。早めに蹴落としておきたい。
「数か月ぶりだなアリオン。約束を果たしに来たぜ。べ、別にお前との約束はついでであって、俺は元からこの学園に入るつもりではあったんだけどな?勘違いはするなよ?」
こいつ、元からこの学園に入るつもりだったって、絶対アウレリウスの寝首をかくのが狙いなんだろ!!あの子には絶対に近づけさせないし、こんないじめっ子野郎は私が成績でしばいてやる。
「聞いたぜ、お前は学年一位なんだって?歯ごたえのあるライバルがいて、俺も嬉しいぞ。まあ、お前が望むならライバルよりも先に親友になってやらんこともないが!!」
ちらちらとこちらを見てくるのも腹が立つが、調子に乗っていられるのもここまでだ!!お前程度の魔法、私に太刀打ちできると思うなよ!!自信喪失させて、王位争いからリタイアさせてやる。
やがてロギルジョーの後ろから、我が元婚約者のジェルドもやってきた。おそらくは編入の付き添いだろう。さすがに適当な人物を案内に任せるわけにはいかないので、信頼されていそうな人物が担っているわけだ。
「おい、勝手に先走るな。ただでさえ貴様は注目を浴びているんだ」
凄いなジェルド。王子相手に貴様って言ったぞ。ロギルジョーはたいして無礼と気にはしてないものの、面倒そうにはしていた。
やがて、そのまま私の抱えている紙袋に気が付き、目を見開く。
「・・・それ、まさか、俺への編入祝い・・・?」
違うわ!!お前が編入するなんてさっき知ったばかりだ!!
しかしロギルジョーは頬を染めて喜んでいる。周囲には、人だかりができており、「編入生と一年主席がなにかしてるぞ」と注目を集めている。まずい、この状態でこいつの期待を裏切るのは後々面倒くさい。
くそ、どうせ失敗作だ。完成品じゃないからここで手渡すのもいい手段かもしれない。ごみ処理代わりになる。
アバラは私の迷いを察したのか庇おうとするものの、こいつの喋り方は下手をすれば不敬になりかねない。察したレオはアバラに制止をかけた。
ロギルジョーはまだかとソワソワしている一方で、ちょうどギャラリーの一方向がモーセのように割れていく。
「人だかりができていると思ったら、アリオンがいたんだね」
これは、今一番会いたくない人間があらわれた。アウレリウスの目はまっすぐ、私の手元の紙袋に向けられている。
この場に第一王子、第二王子、元婚約者って、こんな最悪な光景あるだろうか・・・。
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