紡ぐ者

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【第1章 幼馴染み】

第6節 魔纏《まてん》

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 ロビンとアリスは男にお礼を言う。
「助かったぜ。ありがとう。」
「ありがとうございます。」
「いやいや、先輩としての責務を全うしただけさ。」
男は謙虚する。
「そういえばまだ名前を言ってなかったね。僕の名前は村崎 樫茂《むらさき かしも》。階級は仙級だ。よろしく頼むよ。」
「俺はロビン・アポローヌだ。」
「私はアリス・クローヴァーです。」
「いい名前だね。君たちは幼馴染みかい?」
「まあ、そういうところですね。」
樫茂の質問にアリスが答える。
「それじゃ状況を教えてくれないかい?」
「たしか、1時過ぎくらいに観測員から連絡が入りました。」
「私が駅についたのはだいたい15分後ですね。」
「そこから少し持ちこたえてロビンに救援を頼んだのは1時40分くらいですね。」
「なるほど。」
樫茂は顎に手を当てる。
「後のことは僕に任せてくれ。君たちは帰って休むといい。」
「いえ、仕事なので最後までやりますよ。」
「でも君たちは負傷している。先輩として負傷した後輩に仕事を任せるわけにはいかない。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「ありがとう。」
2人はお礼を言い、その場を離れた。

 家に帰る途中、スマホにメールが届く。送り主は昨日の人物だ。
「どうやら今日、東京駅に魔獣が現れたみたいだね。悪いが集合場所を本部の集会所に返させてもらう。時間は前と同じ18時だよ。」
「もし疲れているのなら少し遅れても構わない。」
まるでこちらの行動を知っているようなメッセージだ。
「なんで昼のことを知ってるんだ?」
疑問に思うロビンだが昼間の疲れで帰ることしか考えていない。ロビンは足を引きずりながら家へと向かった。

帰宅後…
 ロビンはシャワーを浴びている。肋骨を骨折したがアリスの治療魔法ですぐに回復した。特に違和感はない。

シャワーを終え部屋に戻りソファに寝転ぶ。現在の時間は2時半を過ぎたくらいだ。
「疲れたーーー。」
ロビンは気づいたら眠ってしまっていた。


「ロビン。」
「ロビン。」
「起きなさい、ロビン。」

「!!!」
ロビンは目を覚ます。時間は5時を過ぎていた。
「やべっ、寝坊するとこだった。」
ロビンは急いで着替え集会所へと向かう。

大魔統制会集会所……
 ロビンは集会所で飲み物を飲みながら待っていた。疲れた体に染み渡る。
「君がロビン君かな?」
突然後ろから声をかけられた。見るとそこには1人の男が立っていた。
「ん?そうだけど。」
「君がそうか、会えて嬉しいよ。」
「僕は神宮寺 春蘭《じんぐうじ しゅん》。気軽に春蘭と呼んでくれ。」
「ロビン・アポローヌだ。よろしく、春蘭。」
2人は握手をする。
「さて、会ってそうそうだが食事にしよう。着いてきて。」
「何処でも食べるんだ?」
「君の要望に答えて寿司を食べに行くよ。」
ロビンはそんなやりとりを思い出した。

寿司屋前……
「なぁ。」
「ん?なんだい?まさか不満だった?」
「いや、別に不満はないけど……ここって街一番の高級寿司店だよな?」
「うん、そうだよ。それがどうかしたかい?」
「人に奢るために来るような場所じゃない気が…。」
「遠慮しなくていい。お金ならいくらでもある。」
「お前は金持ちのお坊ちゃまか。」
「まあ、そんなところかな。」
ロビンのツッコミに即座に返答する春蘭。

店内に入るとこの店のシャリの独特な匂いがする。
「へいらっしゃい。」
「大将。予約した神宮寺だ。」
「あいよ。あちらの席だ。」
2人は大将が指さした席に座る。
「何を注文する?」
「そうだな。大将、おすすめは?」
「今日は大トロとウニだな。」
「んじゃ、この海鮮まとめ1を1つ。」
「僕も同じもの。」
「あいよ。」
注文し終えると春蘭がロビンに話しかける。
「さて、寿司が来るまで話をしよう。」
「その前にお前が何者か教えてくれよ。」
「君は冷静だね。」
「改めて自己紹介しよう。僕は神宮寺 春蘭。君と同じ魔道士だ。階級は伏せさせてもらう。」
「なんで?」
「僕の階級を公にすると少々面倒なんだ。」
「なるほど。俺はロビン・アポローヌ。階級は中級。」
「自己紹介も終わったし本題に…」
「へい、おまち。」
大将が寿司を持ってきた。
「お、きたきた。ありがとう。」
大将は調理場に戻る。
「本題に入ろう。」
「君を呼んだのには理由がある。」
「そりゃ理由もなきゃ呼ばねえだろ。」
「それもそうか。」
ロビンに指摘され頭をかく。
「1つ質問させてもらう。君は魔纏を知ってるかい?」
「魔…纏?」
「体の一部やものに魔力を纏わせることだ。駅前での戦いで君は使用したはずだ。」
「聞いた感じたそれっぽいことをした気が…ってなんでそのこと知ってんだよ!?」
「本部でそのことが耳に入ってね。」
「君は魔纏を知らないということは意図して使ったわけではないか。戦闘中何かしたかい?」
ロビンは考え込む。
「確か……魔獣を攻撃するとき、"拳に魔力を集中させた"気がする。」
「君はどこで魔力を一点に集中させる方法を知ったんだ?」
「いや、感覚でやった。」
「何?」
春蘭は顎に手を当てる。
「それは今日初めて出来たことか?」
「そうだな、今日が初めてだ。」
「なるほど。この件は僕にはわからない。」
「え?」
「君の話を聞く限り矛盾がある。」
「矛盾?」
ロビンは首を傾げる。
「まず魔力を集中させること。君はこれを感覚で行った。」
「君は魔道士になってからそれほど年月は経ってないはずだ。」
「因みに魔道士なって何年経った?」
「2年。」
「そのぐらいか。僕の知る限りでは2年で魔纏を使えるようになった魔道士はいない。」
「僕は魔纏を使えるようになるまで6年かかった。」
「そんなに?!」
ロビンは驚く。
「こんなものさ平均で5~7年。遅くて10年だ。」
「大分話が脱線したね。君を呼んだ理由は君の武器を見させてもらうためだ。」
「いやさっきの本題じゃねえのかよ。」
「さっきのは今日知ったことだからね。」
「はいはい。これが俺の武器だ。」
ロビンは春蘭に自分の手袋を見せる。
「これか。これは確か入団した際に支給されるものだったはず。」
「そうだ。自分に何があってるのかわかんねえからずっと使ってる。」
「よくこれで上級と戦ってたね。」
「でもこの感じ…君にはあっていないようだ。」
「やっぱそうか。」
ロビンは頷く。
「よし、決まった。明日、君の新しい武器を決めに行こう。」
「どこに?」
「僕の故郷さ。」
春蘭は口角を上げる。
「今更言うけど……この話ここでして大丈夫だった?」
「さあ。わからない。」
ロビンは唖然とする。

「あー美味かった。」
「やっぱりここの寿司はいつ食べても美味しいね。」
2人は店をあとにする。

「悪いな、着いてきてもらって。」
「別に問題ないよ。それじゃ、明日迎えに来るから。」
「わかった。また明日。」
「うん。また明日。」
春蘭は夜闇へと消えていった。
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