紡ぐ者

haruyama81@gmail.com

文字の大きさ
9 / 117
【第2章 山岳に眠る秘郷】

第2節 主を選ぶ刀

しおりを挟む
 木々の間から木漏れ日が差し込んでくる。眩しさに手で光を遮る。
「いいだろう。木漏れ日は。都会じゃ中々見れないだろう。」
「確かにな。………少し休ませてくれ。」
ロビンは階段に腰掛ける。
「だめだ。最近階段を登ることがなかったから結構きついな。」
「その割には上級と戦えるてるけどね。」
「本当、なんでなんだろう。」
ロビンは自分のことが不思議になった。
「因みに神社はどんくらいの場所にあるんだ。」
「山の中腹ぐらいにあるよ。あと少しだね。」
「よし、もういけるぞ。」
ロビンと春蘭は再び階段を進む。

「見えたよ。」
「やっと…着いた。」
神社の境内に入ると1人の女性が掃除をしていた。
「来たわね。」
女性がこちらに気づく。
「紹介しよう。彼女は…。」
「結構。自分でできるから。」
「私は神宮寺 美桜《じんぐうじ みお》。美桜でいいわ。あなたは?」
「ロビン・アポローヌだ。ロビンでいいぜ。」
「そう。よろしくロビン。」
「ああ、よろしく。」
「早速で悪いけど自分の武器を身に着けてみて。」
ロビンは言われた通り手袋を着ける。
「なるほどね。兄上、ロビンは魔纏を使えるはずよね?」
「ああ、使えるよ。」
美桜は顎に手を当てしばらく考え込む。
「ロビンはかなりの力を無駄にしている状態ね。魔纏込みで本来の状態みたい。」
「因みにどれぐらいだ?」
「ざっと半分。もう少し計算したらもっとあるかも。」
「もしかして俺……相当強い?」
「その可能性は十分にあると思うよ。」
ロビンの疑問に春蘭が答える。
「おそらく上級相当の実力を持っているはずだ。」
「まじ…かよ…。」
ロビンは驚きのあまり声が出ない。
「はいはい、そんなことは置いといてあんたの武器を変えなきゃだめでしょ。準備するから拝殿で待ってなさい。」
2人は拝殿に押し込まれた。
「なんかお前とは全然似てないな。」
「美桜は僕と比べて真面目だからね。真面目すぎるけどね。」
ロビンは拝殿の中を見渡す。大きな板絵が目に入る。それには1人の女性が描かれている。
「春蘭。この人は誰だ?」
「この人は神宮寺 椿《じんぐうじ つばき》。200年前にこの地に存在していた女性だ。神宮寺家の初代当主でもある。」
「彼女は不思議な力を持っていたらしくその力を使い、妖魔を祓い僕たちの故郷を作ったとされている。」
「ん?」
ロビンは板絵の下にある封筒を拾う。
「なんだこれ?」
「それは確か椿が死に際に言ったことをメモした紙が入っていたはず。」
「見ていいか?」
「いいよ。」
ロビンは封筒から紙を取り出した。

 私に猶予は残されていない。この先の未来に伝えておけ。私はいずれ再びこの地に舞い降りる。そのときを待ちわびるがいいと。

「なんか…捨て台詞みたいだな。」
「彼女はかなり若くして逝去したみたいだからね。そう感じるのも無理はない。」
「まぁ最近になって捨て台詞ではないことがわかったんだけど。」
ロビンは首を傾げる。
「生き返ったのか?」
「まさか。人が生き返ったら大事件だ。彼女は転生したんだ。」
「転生先は僕の妹。美桜だ。」
「外見が同じとか?」
「いや、そんな単純なことじゃない。魔力の量と才能さ。」
「魔力の量はわかるが、才能?」
「まず魔力の量だが、まぁ以上だね。少なくとも僕の2倍以上はあるね。」
「お前の階級がわからんからなんとも言えんが。」
「そして美桜は10歳のときに神降ろしを完璧に習得。ただで際習得の難しい神降ろしを子供のときに習得したものは歴史上ほぼ存在しない。」
「僕も神降ろしはできない。練習はしたんだけど難し過ぎたね。」
「もしかしてあいつ……滅茶苦茶強いの?」
ロビンは春蘭に聞く。
「強いよ。ただ……。」
「ただ?」
「強すぎるんだよね。椿が早死したのも強すぎるが故にと言われている。」
「力の代償ってやつか。」
「そうなるね。」
「さっ、そろそろ準備が終わったはずだ。外に出よう。」
2人は外に出る。

「ナイスタイミング。」
美桜は親指を立てる。境内には大きな魔法陣が書かれていた。
「ロビン。あの魔法陣の真ん中に立って瞑想しなさい。私が魔力を使ってあなたの適性を調べるから。」
美桜に背中を押される。
「余計なことを考えないように。あと目も開けない。」
(めっちゃ念を押すな。)
「こら。」
ロビンは頭を叩かれる。どうやら心を読まれているようだ。ロビンは瞑想する。数分ほど沈黙が続いた。
「はい終わり。わかったから。」
ロビンは瞑想を解く。
「少し休んでなさい。」
美桜はロビンに伝えると春蘭の方に向かい小声で話す。
「ロビンにはこれといって適性の高い武器がない。だけど相性が悪いものもない。1番相性がいいのは剣か刀あたり。」
「わかった。すぐにとってくる。」
「いやいい。既に用意してある。」
「流石。仕事が速い。」
2人はロビンのもとに歩み寄る。
「ロビン。あなたの適性がわかった。私についてきなさい。」
2人は美桜についていき神社の裏へと向かう。

 神社の裏には様々な武器が置いてあった。剣から槍、斧や杖など種類豊富だ。
「俺の適性はなんだ?」
「あなたの適性武器は剣か刀よ。」
美桜と春蘭は剣と刀を持ってきた。
「この中から選ぶといい。」
ロビンは剣と刀の前に立つ。
(右のは日本刀か?なんかシンプルだな。)
(左は西洋の剣だな。扱うのはちょっと難しいかも。)
(真ん中のは……ん?なんだこれ?)
ロビンは真ん中の刀を手に取る。春蘭と美桜は少し驚く。
「これ…なんだ?なんか魔力を感じるんだが。」
「それは妖刀だよ。」
春蘭が答える。
「妖刀?」
「妖刀は妖魔や妖怪を封印した刀だ。常人が持つと狂気に侵されただ人を殺す殺人鬼になってしまう。」
「なんでそんなもんがここにあるんだよ!」
ロビンが問い詰める。
「面白そうだったから。」
美桜が一言。
「なんで~?」
ロビンは美桜の一言に呆れる。
「因みに妖刀には3つの役割がある。」
「役割?刀なのに?」
「そ。攻撃、防御、反撃の3つだ。」
「いや、前2つはわかるんだが、反撃ってなんだ?」
「カウンター。」
「なるほど。」
美桜の一言に納得する。
「それは攻撃の妖刀だね。どうやら君は前衛にむいているようだ。」
「まぁ今までそうだったしな。」
「一応聞くがこの妖刀には何が封印されているんだ?」
「知らない。」
「は?美桜は?」
「知らない。」
「うそ~ん。」
ロビンは情けない声を出す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...