紡ぐ者

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【第5章 八岐大蛇討伐戦線】

第2節 正体不明のワーウルフ

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夜……
ロビンは布団に入るが中々眠れない。
「眠れないの?」
アリスがズカズカと布団に入ってくる。
「ちょっ、お前なんで入ってくんの?!」
「だって寝れないんでしょ?子守唄を聞かせてあげるわ。」
「俺は子供じゃねえよ!」
ロビンの声など気にせず、アリスは子守唄を歌う。
「~♪~♪~♪」
(あれ?なんか眠くなってきた…)
「グゥ…」
ロビンは眠った。眠ったのを確認するとアリスも布団に潜り、眠りにつく。


ドンドンドン
「あ…?」
ロビンは廊下の足音で目が覚める。時計を見るとまだ7時だ。
「なんだ?」
ロビンは障子の隙間から外を覗く。
バァン!
美桜が血眼になって勢いよく障子を開ける。
「よ、よお美桜、久しぶりだな、元気にしてたか?」
ロビンは声を震わせながら美桜に声をかける。
「…っぱり…」
「え?」
「やっぱりアリスとやましいことをしてるじゃない!この変態!浮気者!ろくでなし!」
「俺そんなに言われることした?!」
「したでしょ!」
美桜からビンタを受ける。その威力にロビンは吹っ飛ぶ。
「痛っっっっってえぇぇぇぇ!」
ロビンはあまりの威力に悶絶する。アリスが起きて枕を持つ。
「うるさい!」
枕をロビンに投げつける。
「えぇ酷い。」
ロビンは頬を抑えながら小声で言う。
「何?」
美桜の言葉にとんでもない威圧感を感じる。
「あ、すいません……」
ロビンは撃沈する。
「美桜は何を怒ってるの?」
「あんた、こいつにやらしいことをされたんでしょ?!」
「え?何もしてないよ。」
「え?」
美桜は拍子抜けした顔をする。
「本当に何もされてないの?」
「私が無理やり布団に入ったくらいだよ。」
美桜はアリスに冷たい視線を向ける。
「ごめんロビン………」
美桜は先程の勢いが一気になくなる。
(直結ふざけようかな。)
ロビンは美桜を抱える。
「え?!ちょっ!何するつもり?!」
美桜は珍しく驚く。ロビンは表情を変えずに「仕返しだ。」と1言呟き、布団に運ぶ。
「本当に何する気?!」
美桜は頬を赤くして喚き散らす。
「お前のビンタが痛すぎたんだよ。ちょっとぐらいいいだろ?」
「うっ……」
美桜は何も言い返せない。
「そんじゃ罰として………くすぐりの型だ。」
「へ?」
ロビンは美桜の脇腹に手を当ててくすぐりだす。
「ちょ、ま、タイム、タイムゥ~!」
美桜は10分程脇腹をくすぐられた。

午前10時 山中にて……
「暑っっっつ……」
ロビンたちは真夏の山中で周波数の発生源を探していた。
「やみくもに探しても効率が悪い。二手に分かれよう。」
琉の意見にロビンたちは賛成する。ロビンとアリス、琉と凛の二手に分かれて探索を再開する。
数分前 早世屋敷にて……
「来たぞ、リーダー。」
春蘭が玄関に向かうとサークルメンバー達が到着していた。
「ちょうどいいところに来てくれた。凛と琉はいるか?」
「どうかしましたか?」
玖羽の後ろから凛と琉が出てくる。
「2人は謎の周波数について知ってるかい?」
「はい。知っています。確かこの近くの山の中で観測されたと。」
「なら話が早い。君たち2人にはロビンとアリスとともに山の中で周波数の発生源を探してもらいたい。やってくれるか?」
「リーダーの頼み事だ。それに、今の状態なら自分にできる最善の行動をとるよ。」
「私も同じです。」
「2人とも、ありがとう。水分補給を忘れないようにね。」

「まさかあいつらが来てくれるとはな。」
「私たち2人で探すのはいくら魔道士とはいえ、流石に骨が折れますからね。」
しかし4人に増えたからといってけして楽なものではない。真夏の暑さが体力を奪う。
 気づけば時計は11時半を指していた。
「一旦戻るぞ。」
「すぐ行くわ。」
アリスはロビンの後を追う。

「帰ってきたか。」
屋敷の前で疾風が待っていた。後ろから美桜と雫が顔をだす。同タイミングに琉たちも帰って来る。
「何か進展はあったか?俺たちは何もなかった。」
「僕たちのほうは1つだけ見つけることができた。食事のときに共有するよ。」
7人は屋敷に入り宴会場に向かう。宴会場には大勢の人が食事をしていた。ロビンたちも座布団に腰掛けて食事を始める。
「何を見つけたんだ?」
「これを見てくれ。」
琉は凛のパソコンを立ち上げ、写真を見せる。
「これは、足跡?」
「ああ、まだ新しいものだ。これも見てくれ。」
琉はもう1枚の写真も見せる。
「これは足跡の近くで撮ったものなんだが…」
写真を見ると木が折れていたり、不自然に曲がったり、穴が空いたりしていた。
「なんだこれ?誰かがやったとしか思えないだろ。」
木の変形具合からして相当な力が加わったのがわかる。
「人の力でここまでのものになるとは思えない。でも人以外がいた証拠がない。」
琉は頭を悩ませる。凛もこのことが不思議で仕方ないようだ。
「他の人にも見てもらうか?」
「確かに、他の人の意見を聞くのもありだ。」
4人は写真を他の団員たちに見せてまわった。
数分後…
春蘭と疾風が宴会場に入ってくる。どうやら昼食を撮りに来たようだ。2人の後ろから団長のアーロンドの姿が見えた途端、宴会場の中がざわつき始める。
「団長も来たか。いよいよ本番って感じだね。」
琉の言葉にロビンたちは緊張が走る。琉は席を外す。春蘭と疾風はロビンたちの隣に座る。
「何か進展はあったかい?」
「これだ。琉と凛が見つけた。」
ロビンは2人に足跡と木の写真を見せる。
「こっちは人の足跡だ。だけどこっちは……不自然だな。」
「琉によるとこの2つはかなり近くで見つけたみたいだ。」
疾風は木の写真をじっと見つめる。
「これ……人の力でこうなるものなのか?」
「もし人がやったとしたら、そいつはとんでもない怪力の持ち主になるぞ。」
疾風は「流石にないか」と首を横に振る。
「でも他の生き物がいたという証拠がない。それに今回も観測のときと同じで動物や虫を一切見なかった。凛たちのほうはどうだった?」
「私たちのほうも見なかったです。」
春蘭は顎に手を当てる。少しして口を開く。
「生物は自分より格上の相手を見つけると本能的に姿を隠す習性がある。もしかしたら動物や虫を一切見なかったのは姿を隠してるからかもしれない。」
「となると怪しいのは、やっぱり足跡の主か。」
疾風は写真から目を離し、4人のほうを向く。
「お前ら、昼からも散策を行うだろ?その場合は細心の注意を払え。これは忠告ではなく命令だ。」
疾風は強い口調で言う。
「ああ、わかってる。」
ロビンは少し低い声で答える。
「行くぞ。時間が勿体ない。」
ロビンたちは屋敷を出て山に向かう。アーロンドは4人を視界の隅で見ていた。
「彼らだけで大丈夫でしょうか?」
「問題ありません。万が一のことがあれば撤退しろと伝えてありますので。」
「ふむ…」
アーロンドは春蘭の言葉を聞くと黙り込む。
「近辺の魔獣は?」
アーロンドが観測員に聞く。
「こちらです。現在近隣に魔獣の姿は確認されておりません。」
「奴らがいつ現れるか分からない。今はいないからといって油断していると痛い目を見ることを忘れないように。」
観測員は部屋を出る。
「観測隊がいるなら彼らに任せればいいんじゃないか?」
「観測隊の実力は確かだが、戦闘面においてはかなり乏しい。魔獣に遭遇した際に負傷して帰って来ることになる。」
疾風の疑問に春蘭が簡潔に答える。

「ここだ。」
4人は琉と凛が見つけた痕跡のもとに辿り着いた。
「足跡……俺ぐらいの大きさか。そんなに大きくないな。」
「でも俺はあの木を折れる気がしないんだが…」
足跡の横にはロビンの何倍も大きい木が倒れていた。何者かによって根本から折られている。
「もしあれを折ったのが俺と同じくらいの大きさなら、とんでもない化物だぞ。」
ロビンは大木を折ったのが足跡の主だと考えたくなかった。足跡がまだ新しいことを考えると足跡の主はまだこの近くにいる可能性が高い。
「日が暮れて来たな。そろそろ戻ろう。」
琉に言われて初めて辺りが薄暗くなっているのに気づく。

「昼は特に成果なしか。」
「わかったことと言えば、足跡の主が俺ぐらいってことだな。」
ロビンは春蘭に昼の成果を伝える。先程から客間で休憩をしているが、外が妙に騒がしい。
「さっきからこの騒ぎはなんだ?」
「僕にも分からない。少し行ってみよう。」
2人は外に出る。

「どういうことだ?何が起こっているんだ…」
観測隊とアーロンド、多数の魔道士が外で何かを見ていた。
「何があった?」
春蘭は状況を確認しようとする。アーロンドが「注目!」と大きな声で言う。屋敷の中から声を聞いた魔道士が出てくる。
「市内に大量の魔獣が出没した。どこからか来たのかは不明。」
「観測隊の話によると突如として出没したようです。上級の魔道士は直ちに現場に向かい、村崎 樫茂と合流せよ!」
「「了解!」」
上級の魔道士は現場に向かう。
「ロビン君たちに任務を言い渡します。」
アーロンドはロビンたちを集める。
「日中、君たちが散策した山で大きな周波数を先程検知しました。直ちに調査に向かってもらいたい。」
「市内のほうはどうするんだ?」
「上級たちで足りることを願いたいですね。足りなければ応援を送りますが。」
「その必要はない。」
アーロンドの後ろから男の声が聞こえる。暗闇から1人の男が現れる。
「…!」
春蘭は驚いた様子を見せる。ロビンたちは?となる。
「やっと来ましたか。何か見つけたのですね。」
「ああ。八岐大蛇の討伐に重要な手がかりだ。」
「えっと~、団長。そちらの人は?」
ロビンが弱気に聞く。男から凄まじい威圧感を感じるからだ。
「彼は…」
「自分で言える。俺は天垣 時雨だ。」
ロビンたちは?となる。春蘭は先程から喋らなかったが口を開く。
「彼は天垣 時雨。世界に3人のみ存在する神級魔道士の1人だ。僕から言えるのはこれくらいだ。」
再び黙り込む春蘭。ロビンたちはしばらく間が空くが、すぐに驚いた表情をする。
「「し、神級魔道士?!」」
ロビンとアリスは声を出して驚く。
「驚いている暇はない。今は時間がないのだから。」
「本題に戻る。俺は文献を漁った末に八岐大蛇の弱点を見つけた。」
「ほう?それは一体?」
アーロンドが珍しく不思議そうに聞く。
「八岐大蛇は名前通り、8つの頭を持つ大蛇だ。その8つの頭のどれかの首元にある"逆鱗"を貫くこと。これが奴を倒す唯一の方法だ。」
「これ以外の討伐方法はないと思っていい。」
「ふむ…」
アーロンドは顎に手を当てる。ロビンたちは戸惑いの表情をする。
「八岐大蛇の大きさにもよるけど、それって勝ち目があるのか?」
ロビンは焦りを感じる。
「俺が参加できれば問題ないが……野暮用がある。」
天垣はロビンの近くに行く。
「お前、名前は?」
「え、ロビン・アポローヌ。」
「そうか、お前が…」
天垣は意味深な発言をする。
「今の発言は忘れてくれ。俺はもう行く。」
「市民の奴は任せておけ。健闘を祈る。」
天垣は1言残し、暗闇に姿を消す。
「行こう。」
ロビンは3人に声をかけ、山に向かう。

「暗っ…」
「こんなものじゃない?」
ロビンの言葉に琉は冷静に返答する。
「何がいるか分からない。気を付けて行きましょう。」
アリスが珍しく全員を鼓舞する。
「二手に分かれよう。何かあったらすぐに連絡するように。」
ロビンは頷き、琉と凛と分かれる。
「気を引き締めろよ、アリス。」
「わかってるわ。」
2人は山の奥に向かって歩き出す。
 しばらく歩いたが何も見当たらない。
「周波数はこっちから出てるんだよな?」
「そのはずですけど…」
2人の目の前には分かれ道があった。
「周波数は左に近いですね。」
「なら俺が左に行く。アリスは右に行ってくれ。」
「……わかったわ。」
アリスが小さい声で返事をする。
「どうした?元気がないぞ。」
ロビンが足を止めアリスに声をかける。
「1人で大丈夫なの?」
「俺を心配するより自分の心配をしろよ…」
「でも……」
アリスは心配そうな顔をしながら小声で喋る。ロビンはアリスに歩み寄る。
「俺は大丈夫だ。戦闘が苦手な自分を守ることだけ考えろよな。」
「いや、そうじゃなくて…」
アリス唇を震わせながら、ロビン蛾行こうとしていた方向を指差す。
「何か……嫌な予感がするの。あなたをこのまま行かせると取り返しのつかないことになりそうで……」
「………。」
ロビンは後ろを振り返る。
(特に何も感じないが……)
アリスのほうを見る。
(アリスは何かを感じた。俺が大変な目に遭う。)
「ふっ、問題ねぇよ。最悪逃げればいいからな。」
ロビンは後ろを振り返り山の奥に向かって走り出す。
「あ、ちょっと!」
アリスはロビンを追いかけようとするが足がすくんで動けない。
「なんで、こんな時に…」
アリスは不安になる。
「絶対に失ったりしない!」
自分の頬を叩いて鼓舞し、走り出す。

ロビンは暗闇を走り続ける。
「こっちか?」
進行方向を変える。途中から何者かの気配を感じたからだ。
(この先にいる。今回の異変の元凶が。)
走り続けていると少し開けた場所が見えた。そこに1人の男が立っていた。ロビンは木の後ろに身を隠す。
(誰だ?)
ロビンは木の陰から男を見る。男とはパーカーを身に着けており顔が見えない。
(連絡するか…)
ロビンは通信機を使いアーロンドに連絡する。

「ツーツー」
「おや?ロビン君ですか。どうしました?」
「山の中で不審な男を見つけました。場所からして周波数の発生源と同じだと思われます。」
「特徴は?」
「パーカーで身を包んでて詳しいことは分か………」
「ロビン君?」
「ツーツー」
「切れた?」
アーロンドは疑問に思う。
「ロビン君の身に何かあったのか?」

「ハァ……ハァ…。」
「ちっ、外したか。直撃してたらどうだったか……」
「まあいいどの道殺すんだ。」
ロビンは男に気づかれた。先程、攻撃を受けるがギリギリで躱す。
「誰だお前は?!」
「死ぬやつに名前を教えてなんになる?」
男は拳に魔力を込めて殴りかかる。ロビンが躱し、男の拳が木に当たると、木が根本から折れてしまう。
「お前が木を折ったやつか!」
「木を折る?ああ、気晴らしにへし折ったな。一本あったでかいやつは中々に手応えがあったが…」
男は折った木に座る。
「何が目的だ?」
「知りたいのか?まあ冥土の土産に聞かせてやるよ。」
男は上から目線で目的を聞かせる。
「俺はここで八岐大蛇を復活させている。ただそれだけだ。」
「…!お前がか!」
「まあ姉御からの命令だからな。」
「姉御?」
「おっと、これ以上は聞かせられねぇ。そんじゃ約束通り、死んでもらうぜ!」
男は飛び上がり、ロビンに向かって飛びかかる。
「くっ!」
ロビンは横に避ける。男が着地したところを中心に大きな窪みができる。
「逃げてばっかりじゃつまんねえ!とっととかかってこいよ!」
男は大きな声で挑発する。
「こいつ……狂ってる。」
男の目は戦うこと以外を考えていないように見えた。
「おらおらおらぁ!とっとくたばりやがれぇ!」
男はへし折った木を投げつける。
「やられてばっかだと……思うなよ!」
ロビンは刀を抜き、投げつけられた木を斬り捨てる。
「おっと?」
男はさらに大きな木を投げつける。ロビンは刀を振るい、4つに斬り伏せる。男が隙を見せた途端、一気に間合いを詰める。
「そこ!」
ザシュッ!  ボトッ!
ロビンの視界の左端に斬り飛ばした男の右腕が落ちる。
「ん?」
男は右腕を見る。ロビンは隙を見て距離をとる。
「………。多少はやるようだな。」
「だが、所詮は多少だ。」
男の視線にロビンの背筋が凍りつく。ロビンの呼吸が荒くなる。
「ハァ……ハァ……ハァ…」
(なんだ?背筋が凍る!それにこの感じは……恐怖?)
ロビンは刀を構える。
「調子が良くなってきたか?良くなったのならそれをぶっ壊してやるよ。」
男は空を見上げると、突然狼のようなうめき声をあげた。
「うぐおおぉぉぉ!」
「貴様、何をしている!」
男の頭に角のようなものが生え、爪が獣のように鋭くなる。
「お前……本当に何者だ?」
ロビンの声に恐怖が滲み出る。
「さて……遊びは終わりだ。」
男の雰囲気が先程とは打って変わる。右腕を横に伸ばす。
「その腕はもう使えない。お前の左腕もすぐに斬り落とす。」
「そうか。お前にはもう使えないように見えるのか。」
「そりゃそうだろ。切られた体は元には戻らない。」
「なら、これでもか?」
男の右腕が再生する。
「ッッッ!」
「どうした?この程度で驚くとはな。」
(いや普通そうだろ。腕が再生するってどういうことだよ…)
ロビンは一瞬恐怖に呑まれかけるが、気合で踏みとどまる。
(ふうぅぅ…落ち着け、姿が変わったけどさっきと同じだ。そう同じだ。そう、同じ………)
男はいつの間にかロビンの真横に立っていた。男の拳がロビンの脇腹に当たる。
ドンッッッ!!
ロビンはふっとばされ木に叩きつけられる。その衝撃で木が折れる。
「あれ?呆気ねえな、これを使う必要もなかったか。」
「もう少し楽しめると思ったが……残念だ。」
男はロビンに近づきトドメを刺そうとする。
「死ね。」
拳がロビン向かって振り下ろされる。
「ロビンいるの?」
「…!」
男は声に反応して拳を止める。
「仲間か、運が良かったな。次会うときは必ず殺す。覚えておけ。」
「まあ、お前が八岐大蛇に殺されなかったらの話だが……」
男は暗闇へと消えていった。

「ロビンいる?ロビ…、ロビン?!」
アリスが重症を負ったロビンを見つける。
「大丈夫なの?ねえ?」
ロビンは返事をしない。
「この感じ…気を失ってる。それに出血も酷い。早く治療しないとロビンが……」
アリスは鞄から医療箱を取り出すと、止血を行い傷口にテーピングをする。
「後は肋骨が折れてる可能性があるわね。治療魔法……効くといいけど。」
アリスは通信機を取り出す。それと同時にロビンに治療魔法をかける。
「凛!聞こえる?」
「アリスさん!どうしたんですか?」
「ロビンが重症を負ったの。凛は本部に戻って状況を伝えるのを、琉にはロビンを運ぶのを手伝って欲しいの。」
「わかった。すぐそっちに行く。何か目印になるものは?」
「私が今治療魔法を使ってるから、微々たる量だけど魔力を感じる場所に来てほしいの。」
琉は意識を集中させる。西側に微かだが魔力を感じた。
「君たちの場所がわかったかもしれない。すぐに向かう。」
琉は凛から離れてアリスたちのもとに向かう。凛は山を下りながら通信機を使い、団長に連絡を入れる。

日本支部……
「ツーツー」
「はい、アーロンドです。」
「団長さん。すぐに治療の準備はできますか?」
「……ロビン君が負傷したのてすか?」
「はいそうです。でもなんでそれを?」
「先程、ロビン君から連絡があった際、不自然に通信が切れたのですよ。もしかしたらと思いましたが……」
「すぐに治療の準備に取りかかります。あなたも厳重な警戒を怠らないよう、気をつけることですよ。」
「はい!」
「ツーツー」
アーロンドは屋敷に入り、事情を説明する。
「ロビンが重症?!何があったの?!」
「それは本人の口から聞くしかありません。」
美桜の質問にアーロンドは首を横に振る。屋敷のドアが開き、凛が戻ってくる。
「ハァ、ハァ。」
顔を赤くして呼吸を整えている。かなり急いでいたようだ。
「アリスさんと琉さんがロビンさんを連れて帰って来ました。」
外からアリスたちが帰って来る。ロビンの意識は未だに戻る気配がない。
「容態は?」
「止血はできましたが、おそらく肋骨が数本折れているかと。」
「治療の準備はできています。こちらへ。」
アリスたちはアーロンドについていき、治療室へと向かう。

出雲市内……
出雲市内には大量の魔獣と戦った痕跡が残っていた。
「ふう、かなりの数だ。しかしこうしてまた4人揃うことになるとはね。」
「それはこっちの台詞だ。」
「しかしまあ、再開にしてはかなり環境が劣悪みたいだけど?」
「それは今の僕たちには関係ない。僕たちが揃えば、敵などいないからな!」
春蘭、純連、疾風、樫茂は互いに背中を預けている。
「この4人でもう一度戦えることになるとはな。」
「そのおかげで魔獣は一掃できた。」
「1人でも余裕な気がしたのは俺だけか?」
「全員考えは同じだと思うよ。」
((((このくらいなら1人で十分だ。))))
4人は同じことを心の中で口にする。
「しかし、なんで魔獣共は突然市内に現れたんだ?」
純連が魔獣の死体を漁る。
「みんな、これを見て。」
純連が何かを見つけたようだ。
「これ、なんだと思う?」
「紐か?」
「縄?」
「これは、封印の紐?」
「そう。なんでこいつが持ってるの……」
純連は疑問に思う。
「待てよ……この紐はは"何を封印していた"んだ?」
春蘭の言葉に3人の中に嫌な予感が込み上げてくる。
「おい、怖いことゆうなよ。」
ドオォーーン!
山のほうから凄まじい爆音が聞こえた。振り返ると立ち昇る煙の中に巨大な蛇の姿が見えた。
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