47 / 117
【第8章 生贄と約束】
第4節 未来への約束
しおりを挟む
「あいつの代わりにお前を喰らうだと?なぜ椿のようなことを言い始める?」
ロビンは衝撃で開いた口が塞がらない。
「お前も椿と同類か。それとも何か別の理由があるのか?」
「決まってるだろ。美桜を守るためさ。これでいいかな?」
「あいつは、自分の命を犠牲にしてでも守るべきものなのか?」
龍は先程とは違い、落ち着いた様子を見せる。
「自分の妹を守るのに理由なんて必要ないだろう?」
「ふっ、ハッハッハッハッハッ!お前、見直したぞ。」
龍は高らかに笑う。
「今は気分がいい。お前を食う前にいくつか質問に答えてやろう。気になることが山程ある顔をしていたからな。」
龍はロビンに美桜を渡す。ロビンは本殿に入って美桜の体調を確かめる。
「早速聞こう。君の対はどこに行ったんだ?」
「あいつのことは知らんな。」
「知らない?対じゃないのか?」
春蘭は不思議そうに聞き返す。
「椿を食う日の前日まではいたんだが、次の日にはもういなかったな。」
「それどころか、200年間あいつの気配を全く感じない。」
春蘭は顎に手を当てる。
(200年も気配がないのか。流石に変だな。)
「今思い出したが、俺は椿に"青"と呼ばれていたな。」
「青?それが君の名前か。」
「あいつは"赤"と呼ばれていたな。理由は確か……体色からとったとか言っていたな。」
(そのままなのか。)
春蘭はメモをする。
「他にないのか?」
「君はなぜ美桜に食べようとしたんだ?服従させられたなら、人を食うことは許されなかったはずだ。」
「あいつを食おうとした理由か。椿に"命令"されたからだ。「神宮寺 美桜を食らえ。」とな。」
春蘭は目を丸くする。
(椿の命令?なぜそんな命令を?そもそも、なんで美桜のことを知ってるんだ?)
「その命令を受けたのはいつだ?」
「椿を食う直前だから、200年前だな。」
春蘭の頭の中は、ますますこんがらがってきた。
(マズイな……頭がパンクしそうだ。)
「我自身、あの命令を聞いたときはかなり驚いたな。常日頃から人を食うなとしつけられていた。椿は何を考えていたのかが分からなかったな。」
春蘭は龍が話すことをメモする。
「最後に聞きたいことがある。」
「ロビンと模擬戦をしていいかい?」
「構わないが。むしろそれでいいのか?」
「最後に今のロビンの実力がどれほどなのか知りたくてね。」
春蘭はロビンを呼ぶ。
「本気でかかってこいって……俺魔力消費しまくったぞ。」
「今の状態で出せる分だけでいい。」
2人は刀を構える。
ガキインッ!
2人の刀がぶつかり合う。
(速いな。初めて会った時からここまで強くなるとは……僕が見込んだだけある。)
(やっぱり春蘭は強いな。でも、俺も追いつけている。)
2人の模擬戦は夜明けまで続いた。
「んっ……ふあぁぁうぁ……もう朝か…」
ロビンが起き上がるとそこは本殿の前だった。
「起きたか。」
春蘭がいない。近くに刀だけが落ちていた。
(そうか……あいつは……)
本殿から美桜が出てくる。
「……どういう状態?」
とぐろを巻いている龍と地べたに座っているロビンを見て、美桜は戸惑っている。
「やっと目覚めたか。おい小僧。」
「え?俺?」
「いい勝負だったぞ。我はしばらくあいつの中にいる。何かあったらあいつに召喚してもらえ。」
「そういえば、あの男が伝言を残していったぞ。《妹のことを任せる》、とな。」
龍は美桜の中に戻る。美桜は何が起きたのか分からない顔をしている。
「今のは?」
「龍だ。椿が昔使役していたらしい。」
「その刀は……兄上はどこに?」
「春蘭は……」
美桜は何かを思い出した。
「そうだ……私はここに来るように……誰かに呼ばれたんだ。」
「確か、それが私の宿命って……」
美桜は状況を察した。
「……帰るわよ。みんなに伝えないといけない。」
「全部理解しちゃったか……」
ロビンは美桜の背中を追いながら、屋敷へと戻る。美桜の後ろ姿は、悲しいようで前向きに見えた。
「ただいま……って、何してんだ?!」
雫が玄関の前で正座をして待っていた。
「急にどこかに行くんですから。心配しましたよ。ところで旦那様は何処に?」
「春蘭は……いや、この話は4人揃ってからにしよう。」
3人はリビングに行く。凜は座ってパソコンを見ている。
「あ、おかえりなさい。ずいぶん遅かったですね。雫さんも爪を噛んでかなり苛立ってましたよ。」
(笑顔が眩しい。そんなことをそんな笑顔で言わないでくれ。)
「お前が言うか?」
「ロビンが言って。」
ロビンは咳をする。
「落ち着いて聞けよ。…春蘭は……龍に食われた。美桜をかばってな。」
「え……?」
「嘘……」
「やっぱり……」
3人は別々の反応をする。美桜はわかっていたかのような口振りだ。
「そんな予感がしたのよ。はぁ……まさかその予感が的中するとわ。ここまで嬉しくない的中は今まで無いわ。」
「そんな……何かの悪い冗談ですよね?そうですよね?」
「………。」
雫が乗り出してロビンに聞く。
「冗談じゃない。全て事実だ。これを見ろ。」
ロビンは春蘭のメモ帳を見せる。雫宛の文章が書かれている。
「雫へ 君がこの文章を見ているときには、僕はもう屋敷にはいないだろう。これからは君が自由に暮らすといい。」
「そんな……こんなの、あんまりですよ……」
雫の目から涙が溢れる。
(親しい存在が突然いなくなる。悲しいよな。俺も先日経験したからその気持ち、すっげーわかる。)
ロビンは心の中で呟く。美桜はずっと右腕を気にしている。
「なんでさっきから自分の右腕を見てるんだ?」
「何かいる。」
「へ?」
青が美桜の右腕から顔を出す。
「呼んだか?」
「呼んでねよ。」
「そうか。言い忘れたが、俺の名前は青だ。」
青は顔を引っ込める。
(あいつ暇なの?悲しい雰囲気をぶち壊していったんだけど。)
「えっと……さっきのは一体?」
「あれが春蘭を食った龍だ。元々は椿が使役していたらしいが。」
美桜はメモ帳を見ていると、春蘭と青の会話の内容を見つける。
「青には対がいるんだ。」
「そうだ。どこにいるかは知らんが。」
プルルル♪
電話がなる。雫が受話器をとる。
「はい。はい。え?!今すぐにですか?わかりました。」
雫はロビンと美桜のもとに来る。
「鶴城さんから御三方が拠点に来るようにと連絡がありました。」
「まじか……ここ最近、ロクに休めてないのに。」
「すぐに出発の準備をします。」
雫は外に出る。
「絶対何か面倒なことになるって。」
ロビンは気が乗らなかった。
ロビンは衝撃で開いた口が塞がらない。
「お前も椿と同類か。それとも何か別の理由があるのか?」
「決まってるだろ。美桜を守るためさ。これでいいかな?」
「あいつは、自分の命を犠牲にしてでも守るべきものなのか?」
龍は先程とは違い、落ち着いた様子を見せる。
「自分の妹を守るのに理由なんて必要ないだろう?」
「ふっ、ハッハッハッハッハッ!お前、見直したぞ。」
龍は高らかに笑う。
「今は気分がいい。お前を食う前にいくつか質問に答えてやろう。気になることが山程ある顔をしていたからな。」
龍はロビンに美桜を渡す。ロビンは本殿に入って美桜の体調を確かめる。
「早速聞こう。君の対はどこに行ったんだ?」
「あいつのことは知らんな。」
「知らない?対じゃないのか?」
春蘭は不思議そうに聞き返す。
「椿を食う日の前日まではいたんだが、次の日にはもういなかったな。」
「それどころか、200年間あいつの気配を全く感じない。」
春蘭は顎に手を当てる。
(200年も気配がないのか。流石に変だな。)
「今思い出したが、俺は椿に"青"と呼ばれていたな。」
「青?それが君の名前か。」
「あいつは"赤"と呼ばれていたな。理由は確か……体色からとったとか言っていたな。」
(そのままなのか。)
春蘭はメモをする。
「他にないのか?」
「君はなぜ美桜に食べようとしたんだ?服従させられたなら、人を食うことは許されなかったはずだ。」
「あいつを食おうとした理由か。椿に"命令"されたからだ。「神宮寺 美桜を食らえ。」とな。」
春蘭は目を丸くする。
(椿の命令?なぜそんな命令を?そもそも、なんで美桜のことを知ってるんだ?)
「その命令を受けたのはいつだ?」
「椿を食う直前だから、200年前だな。」
春蘭の頭の中は、ますますこんがらがってきた。
(マズイな……頭がパンクしそうだ。)
「我自身、あの命令を聞いたときはかなり驚いたな。常日頃から人を食うなとしつけられていた。椿は何を考えていたのかが分からなかったな。」
春蘭は龍が話すことをメモする。
「最後に聞きたいことがある。」
「ロビンと模擬戦をしていいかい?」
「構わないが。むしろそれでいいのか?」
「最後に今のロビンの実力がどれほどなのか知りたくてね。」
春蘭はロビンを呼ぶ。
「本気でかかってこいって……俺魔力消費しまくったぞ。」
「今の状態で出せる分だけでいい。」
2人は刀を構える。
ガキインッ!
2人の刀がぶつかり合う。
(速いな。初めて会った時からここまで強くなるとは……僕が見込んだだけある。)
(やっぱり春蘭は強いな。でも、俺も追いつけている。)
2人の模擬戦は夜明けまで続いた。
「んっ……ふあぁぁうぁ……もう朝か…」
ロビンが起き上がるとそこは本殿の前だった。
「起きたか。」
春蘭がいない。近くに刀だけが落ちていた。
(そうか……あいつは……)
本殿から美桜が出てくる。
「……どういう状態?」
とぐろを巻いている龍と地べたに座っているロビンを見て、美桜は戸惑っている。
「やっと目覚めたか。おい小僧。」
「え?俺?」
「いい勝負だったぞ。我はしばらくあいつの中にいる。何かあったらあいつに召喚してもらえ。」
「そういえば、あの男が伝言を残していったぞ。《妹のことを任せる》、とな。」
龍は美桜の中に戻る。美桜は何が起きたのか分からない顔をしている。
「今のは?」
「龍だ。椿が昔使役していたらしい。」
「その刀は……兄上はどこに?」
「春蘭は……」
美桜は何かを思い出した。
「そうだ……私はここに来るように……誰かに呼ばれたんだ。」
「確か、それが私の宿命って……」
美桜は状況を察した。
「……帰るわよ。みんなに伝えないといけない。」
「全部理解しちゃったか……」
ロビンは美桜の背中を追いながら、屋敷へと戻る。美桜の後ろ姿は、悲しいようで前向きに見えた。
「ただいま……って、何してんだ?!」
雫が玄関の前で正座をして待っていた。
「急にどこかに行くんですから。心配しましたよ。ところで旦那様は何処に?」
「春蘭は……いや、この話は4人揃ってからにしよう。」
3人はリビングに行く。凜は座ってパソコンを見ている。
「あ、おかえりなさい。ずいぶん遅かったですね。雫さんも爪を噛んでかなり苛立ってましたよ。」
(笑顔が眩しい。そんなことをそんな笑顔で言わないでくれ。)
「お前が言うか?」
「ロビンが言って。」
ロビンは咳をする。
「落ち着いて聞けよ。…春蘭は……龍に食われた。美桜をかばってな。」
「え……?」
「嘘……」
「やっぱり……」
3人は別々の反応をする。美桜はわかっていたかのような口振りだ。
「そんな予感がしたのよ。はぁ……まさかその予感が的中するとわ。ここまで嬉しくない的中は今まで無いわ。」
「そんな……何かの悪い冗談ですよね?そうですよね?」
「………。」
雫が乗り出してロビンに聞く。
「冗談じゃない。全て事実だ。これを見ろ。」
ロビンは春蘭のメモ帳を見せる。雫宛の文章が書かれている。
「雫へ 君がこの文章を見ているときには、僕はもう屋敷にはいないだろう。これからは君が自由に暮らすといい。」
「そんな……こんなの、あんまりですよ……」
雫の目から涙が溢れる。
(親しい存在が突然いなくなる。悲しいよな。俺も先日経験したからその気持ち、すっげーわかる。)
ロビンは心の中で呟く。美桜はずっと右腕を気にしている。
「なんでさっきから自分の右腕を見てるんだ?」
「何かいる。」
「へ?」
青が美桜の右腕から顔を出す。
「呼んだか?」
「呼んでねよ。」
「そうか。言い忘れたが、俺の名前は青だ。」
青は顔を引っ込める。
(あいつ暇なの?悲しい雰囲気をぶち壊していったんだけど。)
「えっと……さっきのは一体?」
「あれが春蘭を食った龍だ。元々は椿が使役していたらしいが。」
美桜はメモ帳を見ていると、春蘭と青の会話の内容を見つける。
「青には対がいるんだ。」
「そうだ。どこにいるかは知らんが。」
プルルル♪
電話がなる。雫が受話器をとる。
「はい。はい。え?!今すぐにですか?わかりました。」
雫はロビンと美桜のもとに来る。
「鶴城さんから御三方が拠点に来るようにと連絡がありました。」
「まじか……ここ最近、ロクに休めてないのに。」
「すぐに出発の準備をします。」
雫は外に出る。
「絶対何か面倒なことになるって。」
ロビンは気が乗らなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる