紡ぐ者

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【第9章 自由の国】

第1節 不穏な空気

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ポーン
エレベーターが拠点の階につく。
「来たか。座る必要はない。すぐにここを出る。ロビンと美桜は俺に着いてこい。」
「奏美。凜と拠点を任せるぞ。」
玖羽はピリついた雰囲気を放っている。2人は急いで着いていく。
「どこに行くんだ?なんか慌ててる感じだけど。」
「ニューヨークだ。」
「はぁ?!急に何いってんだ?!」
玖羽はロビンに1枚の紙を見せる。
「カーリス・クレイツ。ようやく君を殺せる時がきた。大人しく日本で首を洗って待っているといい。」
「脅迫状?というか、カーリス・クレイツって、お前の本名じゃ?」
玖羽は手紙を奪い取る。
「俺の本名を知っているやつからの手紙だ。相手がどんなやつかは予想つくだろ?」
「殺し屋か。」
「それと、もう1つ面倒事がある。お前はイギリスで聞いたかもしれないが、アメリカでは異常事態が起きている。それの調査に呼ばれたんだ。」
ロビンはあの日のことを思い出した。
(ガーネットもアメリカに行くとか言ってたな。でもあいつは今療養中だな。)
ポーン
エレベーターが地上に着く。
「ニューヨークに行くんなら飛行機に乗る必要があるぞ。」
「その必要はない。今から向かうのは本部だ。」
「なんで本部に?」
ロビンは不思議そうに聞き返す。
「実は、本部とアメリカは繋がってるんだ。入国の手続きも本部で済ませられる。」
「まじかよ。」
「他の国でも検討中らしい。今できるのはアメリカだけだが。」
3人はビルからの出る。外には雪が積もっているが、空は雲一つない。
「拠点に向かう。俺の手をとれ。」
「「は?」」
「早くしろ。時間の無駄だ。」
2人は玖羽の手を握る。次の瞬間には目の前に拠点が広がっていた。
「え?え?えぇー?!」
「そんなに驚く必要あるか?転移魔法を使っただけだ。」
驚くロビンに玖羽は冷たい対応をする。3人は1人の審査員のもとに行く。
「鶴城 玖羽。天級魔道士だ。」
玖羽は証明証を見せる。
「お前らも見せろ。俺は先に行ってるぞ。」
2人も証明証を見せる。
「お前天級になったのか?」
「あぁ。なんか天級にされた。」
「二段階上がるなんてかなり珍しいな。」
3人が話しながら歩いていると、本部から出て街に着いた。
「着いたぞ。ニューヨークシティだ。」
2人は街の雰囲気に圧倒される。
「ここからは二手に分かれる。俺は私用を済ませてくる。お前らはアメリカ支部に向かってくれ。お前に位置情報を送っておく。」
「お前はどこに行くんだ。」
「ほい、登録できたぞ。」
玖羽はロビンのスマホにアメリカ支部の場所を登録する。手紙も一緒に手渡された。
「俺のことを聞かれたらこの手紙を見せるんだ。それじゃ、また後で。」
「あ、おい場所ぐらい……」
玖羽は風のようにその場を離れる。
「どうする?」
「支部に行きましょう。」
2人はアメリカ支部へと向かって歩き出す。



「ここ……だよな?」
「おそらく。ここで合ってるはず。」
2人はアメリカ支部の前に着く。
ギィ……
ロビンはドアを開けて中に入る。中は静まり返っている。
「誰かいるかー?」
ロビンは声を出して人を探す。
カンッ!
階段の上から物音がする。2階から1人の女性が顔を出す。
「おやおやぁ?その顔立ち、その妖刀、そしてこの魔力!君はロビン・アポローヌ君だねぇ?」
女性は2階から飛び降りてロビンに近づいて問いかける。
「そう…だけど?あんたは?」
「そして後ろにいるのが神宮寺家のお嬢様、
神宮寺 美桜ちゃんだねぇ?」
「え、えぇ。」
女性にはロビンの声が聞こえなかった。
「自己紹介が遅れたねぇ。私はマールド・アルザーク。気軽にマールドさんと呼び給え。」
マールドは声を高らかにして自己紹介をする。
「君たちの自己紹介は不要さ。」
(なんだこいつ?)
ロビンはジト目になる。
「ちなみに私の階級は仙級だから、君たちより1段上だよぉ。」
2人はキョトンとする。
「すまない。マールドが迷惑をかけたな。」
2階から男性が降りてくる。
「あ、支部長お疲れ様でーす。」
「全く、お前の尻拭いに来てやったというのに。まずは自己紹介をしよう。」
男性は名刺を取り出す。
「私はソール・ベルーダン。アメリカ支部の最高管理者を務めている。君たちのことはすでに耳にしている。こちらへ。」
ソールは2人を客室へ案内する。
ガチャ…
「「あ…」」
ドアを開けたらガーネットが座ってケーキを食べていた。
「あれ?お前療養中じゃ?」
「あぁ、治ったよ。」
「早っ!」
ロビンはガーネットの回復の早さに驚く。
「2人は知り合いなのか?」
「前にイギリスで出会ったんだ。そのときは協力してヴァンパイアを倒したな。」
2人はソファに座る。ロビンはガーネットと美桜に挟まれる。
「君のその状態、まさに両手に花だね!」
「お前は黙ってろ。」
ソールはマールドを部屋から追い出す。
「失礼。マールドはふざけているように見えるが、仕事のときは誰よりも真剣なんだ。大目に見てやってくれ。」
「私は気にしてませんよ。彼女の活躍は知っています。最近は複雑な爆弾を解除して、街が大惨事になるのを防いだとか。」
「あぁ、その通りだ。」
「それより、鶴城殿はどこに?」
「鶴城なら……」
ロビンは例の手紙を見せる。
「これは玖羽に宛に送られた手紙だ。」
「カーリス・クレイツ宛か。了解した。」
「カーリス・クレイツって、確か世界的な大量殺人鬼のはずでは?」
「その通りだ。だが今は、鶴城 玖羽と名前を変えて魔道士として生きている。魔道士になったあとの彼は、大魔統制会に多大な貢献をしてくれた。彼がいなければ困難を極めた事例は幾つもある。」
「今となっては、我々に必要不可欠な存在だ。」
ソールは玖羽のことを高く評価している。
(玖羽ってそんなにすごいやつなのか……)
「彼がどこへ行くかは聞いているか?」
「そういえば教えてくれなかったな。」
「何か理由があるのかしら?」
ソールは顎に手を当てる。
「おそらく、君たちを巻き込みたくないのだろう。それほど危険ということか。」
「なら、尚の事人が多いほうがいいはずだろ?」
ソールはロビンに的確な理由を言いつける。
「おそらく彼が相手にするのは、暗殺者のような者たちだろう。魔獣とは違い、人間には知能がある。よって、危険と判断した可能性が高い。」
「確かにそうですね。私たちのような魔道士はあくまで魔獣を倒すのにむいているだけ。逆に言えば、人と戦う術をさほど持ち合わせていないということなので、暗殺者などと対峙する場合は必然的にこちらが不利になりますね。」
ロビンは納得する。
「でもあいつ1人で大丈夫なのか?」
「君は知らないようだな。彼の二つ名を。」
「二つ名?」
「彼は指名手配されているとき……」





「"無敵の暗殺者《アサシン》"と呼ばれていた。」
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