紡ぐ者

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【第11章 災禍は未だ予兆に過ぎず】

第2節 総力戦

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コンッ……
アーロンドは遺跡の中に入る。遺跡は石材で出来ている。
「この石……魔力が込められている?」
魔力はどこかへと集まっている。流れを目で追ってみると遺跡の上部へと続いていた。
「何が魔力を集めている?」
アーロンドは上へと向かう。
「これは?!」
目の前には祭壇のようなものがあった。祭壇には魔力が集まっている。
「なんだ、お前が先か。」
後ろからディファラスが現れる。
「魔力が集まっているな。そうか……これが……」
「何をブツブツと。あなたが何かを企んでいるのは分かっている。この祭壇には近づけさせない。」
「お前はそのつもりか。ならば……」


「排除させてもらう。」
ディファラスは槍に魔力を纏う。
「魔纏か!」
ガンッ!
槍が地面に突き刺さる。
「ふむ……団長というだけはあるか。」
ディファラスは槍を引き抜くと、アーロンドに向けて投げつける。槍は壁に突き刺さる。
ガンッ!
「全く、槍の扱い方を知らないのですか?」
アーロンドは槍を引き抜く。
「では大魔統制会 団長の槍さばきを見せてもらおうではないか。」
(やれやれ、槍を手にしたのは……)
「何年ぶりでしょうか……」
アーロンドは槍に魔力を込める。
「これはお返しします。私に槍は相応しくない。」
左右から刀の柄が出てくる。
「私に相応しいのは、」

「この一対の刀だけです。」
アーロンドは二本の刀を手にとる。刀は赤紫色の禍々しい光を放つ。
「……妖刀か。しかも一対。」
「この刀にはとんでもなく強力な奴が封印されています。今までは片方ずつ解放して使ってきましたが、今回は両方同時に解放します。」
「どうなるかは私にも分かりません。」
妖刀から禍々しい気配を感じる。
「どうやらこいつも暴れたいようですね。」
アーロンドは妖刀を構える。
「憑依か。」
「我が力となれ、阿修羅!」
アーロンドは体に阿修羅を憑依させる。
「ぐっ……ふふふっ……やはり、体に大きな負担がかかる。」
「だが、昔とは違う。ロクに制御できなかったあの時とは違う。今は完全な制御が可能となっている。」
ディファラスはアーロンドから阿修羅の威光を感じる。
「素晴らしい、これが阿修羅の力。実に惜しいな。」
ディファラスは不敵な笑みを浮かべる。
「ずいぶん余裕そうですね。後悔しても知りませんよ?」
アーロンドは真っ直ぐディファラスに向かう。
ガキインッ!



「って、こんにゃろぉ……」
コンパルゴは地面に手をついて、体勢を整える。
「しぶといわね。早く倒れてくれない?」
「そう安安と殺られるわけねえだろ、って何回言えばわかる!」
ガーネットはコンパルゴを上空からひたすら魔法で攻撃していた。
「とっとと……降りてこい!」
コンパルゴは砂を巻き上げる。
「ぶわっ?!」
「これで前が見えねえだろ?こっから俺のターンだ!」
コンパルゴはガーネットを地面に叩きつける。
ボフゥッ!
衝撃で大量の砂が巻き上がる。
「うわぁ……髪に砂が入った。最悪~。」
「そんなん言ってる場合か?ここは戦場だぞ!」
コンパルゴはガーネットに向かって蹴りつける。
「これを待ってたよ!」
ガーネットは自身の上空に向かって強風を起こす。砂が風にあおられて、上空に散らばる。
「てめっ……これが狙いか?!」
空中に舞う砂には魔力が込められていた。砂が当たったところが針に刺されたように痛む。
「やっぱりあんたって単純ね。ヴァンパイアとは違って。」
コンパルゴは砂の雨を堪えながら地面に降りる。
「てめぇ……本当に人間か?ただの人間ではないだろう?」
ガーネットはしばらく黙り込む。
「……人間よ。」
「ちっ、……しらを切るか……」
コンパルゴはその場に座り込む。
「ん?観念した?」
「あいつは……太陽の野郎はどこだ?」
「教えると思ってる?」
「はぁ~……だろうな。」
コンパルゴは立ち上がる。一定のリズムで呼吸をしている。
「てめえは、俺が最も苦手な相手だ。だから…」
コンパルゴの雰囲気が急変する。
「本気で潰す!」
(こいつ?!まだ力を隠してたの?!)
「はぁ……全く、底が知れない奴ね。」




「暇過ぎる……」
玖羽は床に寝転がっていた。
「流石に起きなさい。」
「誰もいないから別にいいだろ?」
「それ以前に汚いでしょ。」
「俺は昔、地下道で過ごしてた時もあったんだ。こんぐらいなんともねえ。」
美桜は溜息をついて話をやめる。
「うん?なんでお前床で寝てるんだ?汚えぞ。」
「うるせえ、徹夜野郎には言われたくねえ。」
美桜は2人の言い争いを見ていた。
(男の人っていつまでも子供なの?)
美桜は頭痛がして頭を抱えていた。
「でも実力は確かだから何も言えない。」
「なら代わりに言ってやろうか?」
「その必要はないわ。どうせすぐ終わるから。」
数分後には2人はいつも通りに過ごしていた。
「ほらね?」
「何がほらね?だ。」
「「………。」」
「ねえ青。この会話、必要あった?」
「ない。」
「……だよね。」



「こっ………の!」
天垣の渾身の一撃が命中するも、シアンの水流を破ることができない。
「どうだ私の水流は?とても頑丈で強力だろう?羨ましいか?」
(確かに頑丈で強力だが……)
「羨ましいわけないだろう!この剣があれば十分だ!」
天垣は強く言い返す。
「それには俺も同意見だ。強大過ぎる力はやがて身を滅ぼす。」
「貴様ら……これだから人間は……」
シアンはブチ切れる寸前だ。
「強ければ簡単に守れるというのに……なぜ力を欲さない?貴様らの行動には、度々矛盾が生じている。」
「矛盾だと?人々を守るために戦うことに矛盾などないはずだ!」
「分かっていないか。知られては面倒だ、さっさと始末する。」
「跳べ!天垣!」
ドゴォォォォン!
ガレジストは地面に魔力を放つ。地面を衝撃波が走り、シアンの水流を打ち消す。
「これでお前の水流は封じた。」
「それで勝ったつもりか?こちらには……」
シアンを魔力砲を放つ。
「まだこれがある。」
バチイィィィ!
天垣は結界で魔力砲を防ぐ。
「流石はイザナミの結界、傷1つつかない。」
「これが本気だとでも思っているのか?」
「何?!」
シアンは魔力砲の威力を更に強める。その威力に、シアンは少し後ろに押される。
「くっっっっうぅぅ!」
天垣は必死に結界を維持する。
「どれぐらい保ちそうだ?」
「5分くらいだ。」
「十分だな。奴の隙を作る。隙ができたらトドメをさせ!」
ガレジストは結界から飛び出す。
「うおぉぉぉぉおっ!」
「捨て身か?まあいい、死にたいなら殺してやる。」
シアンは水流をガレジストに向けて放つ。
「今だ、天垣!」
天垣は大剣をシアンに向けて滑走する。
「しまっ……」
シアンは水流を放とうとするが、体が思うように動かない。
「そこだぁ!」
ザンッ!
天垣の大剣がシアンに傷をつける。



「ハア……ハア……やはり……体が負担に耐えられない……か。」
アーロンドは憑依を解除する。
「俺が戦ってきたやつの中では1番強かったぞ。それでも俺の足下にも及ばないがな。」
ディファラスは余裕そうな表情を浮かべる。
「今は気分がいい。俺がここに来た目的を教えてやろう。」
ディファラスは槍を消す。アーロンドは立ち上がる。
「俺はこの遺跡に封印されている、《魔獣の王》の封印を解きに来た。古文書では《王》と記されている。」
「《王》……だと?」
ディファラスは驚いたような表情をする。
「知っているのは予想外だな。」
ディファラスは両手を広げる。
「アーロンド。取引をしないか?」
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