紡ぐ者

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【第12章 人狼の遠吠え】

第1節 決死の覚悟

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ドオォン!ドオォン!
「くそっ!上からばかすか撃ちやがって!」
コンパルゴは上空から魔法を連打するガーネットを見上げる。
「最初からこうやればよかったわね。」
ガーネットはコンパルゴ向けて、貫通魔法の雨を降らせる。
「ざっ……けんな!」
コンパルゴは空(くう)を殴って魔法をかき消す。
「お前がそうくるなら……俺も奥の手を使うか。」
ガーネットは警戒する。
「う……おぉぉぉお!」
コンパルゴは、魔力を自身の真上に集めている。
「魔力弾……何をする気?!」
「何も特別なことはしねえよ!ただ……」
コンパルゴは集めた魔力を地面へと叩きつける。
「へ??!」
ドンッ!
ガーネットは地面に引っ張られる。
「重力を強くするだけだ!」
「くうっ……体が重い……」
「この結界内は、外よりも重力が10~15倍ほど強くなっている。普通の人間は立つことすらできない…」
「ぜっ……」
ガーネットはゆっくりと立ち上がる。
「はぁ?!おまっ………ほんとに人間か?!」 
「それは普通の人間の場合でしょ?特別な人間が立てることに違和感はないと思うけど?」
「特別な人間……お前、本当に何者だ?」
ガーネットはコンパルゴの質問に口を閉ざす。
「なんで教えてくれねえのかな………まあいい…」
「これで対等に戦えるぜ!」
コンパルゴは拳をぶつけ合う。
(さて……どうやって倒そう。近接戦は……流石に無理かな……この重力だと飛行魔法も使えない。攻撃を避けながら魔法で攻撃する……かなりきつそうね。)
ガーネットは槍を構える。コンパルゴは正面から勢いよく突っ込んでくる。
「おらおらどうしたぁ!さっきの勢いはどこにいった!」
ガーネットはコンパルゴの攻撃を槍でいなすので手一杯だ。
(ヤバい……思ったより重力が強い。避けることすらできないなんて……)
ガーネットは歯を食いしばって攻撃をいなすことしかできない。魔法で反撃する余裕はない。
(このままだと……押される!)
ガキインッ!
ガーネットの槍が弾き飛ばされる。
「しまっ……」
ドゴン!
コンパルゴの一撃がガーネットの腹部に命中する。
「がっ……?!」
「おら!」
ガーネットは吹き飛ばされる。
「くっ………ふぅ……」
(マズイ……近接戦じゃあ、勝てない……魔法を使っても……当たらない……けど……倒せないわけではないはず。)
ガーネットは立ち上がる。
「ほぅ………闘志は消えてないか。ほらよ。」
コンパルゴはガーネットに槍を投げる。
「なんで?私は敵なのに。」
「お前が少しでも弱くなるとつまらんからな。俺は強者と戦いたいんだ。だから……」
コンパルゴは両手を構える。
「死ぬ前に、俺を楽しませろ。わかったか?」
(まったく……この戦闘狂は……)
ガーネットは魔力を解き放つ。飛行魔法でコンパルゴに近づく。
(飛べる。動ける。いける!)
ガンッ!
「お前から接近してくるとはな!望み通り、相手にしてやるよ!」
コンパルゴは強烈な一撃を息つく暇もないほど、連続で放つ。
(魔法が当たらない、残されたのは近接戦だけ。苦手だけど……今の状態なら太刀打ちできる。)
ガーネットは飛行魔法を使用して位置取りをする。
(飛行魔法……"移動にも"使えるのか。厄介だな。)
「こいつはどうだ?!」
コンパルゴは砂を巻き上げる。中には石も混ざっている。重力が強いため、落下してくる速度が速い。
「はっ!」
ガーネットは咄嗟に防御魔法を張る。
「けほっ、けほっ、砂埃が……」
「こっちだ、ぜ!」
コンパルゴは横からガーネットに接近する。
(いつの間に??!)
ガーネットは槍で間一髪で防ぐ。
「あーあ、当たれば即死だったのにな。」
(あ、危なかった……なんとか反応できたけど…)
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ
ガーネットは自分の心臓が鳴っていることに気づく。
「まだ終わんねえよ!」
コンパルゴは殴るのをやめない。続け様に攻撃を行う。
「あんた……疲れてないの?」
「当たり前だろ。そういうお前も、魔力が尽きないのか?」
「まだまだ、有り余ってるわよ。」
「そうかいそうかい。なら、これぐらい耐えれるよなぁ?!」
ドッッッドォォォン!
コンパルゴは今まで以上の一撃を放つ。ガーネットは耐えられずに吹き飛ばされる。
「うっ……あぁぁ……」
ガーネットの口から血が垂れる。
(うぇ……気持ち悪い……)
「どうした、その程度か?」
コンパルゴはガーネットの頬を指でつつく。
(勝て………ない………どうすれば………)
ガーネットの意識が遠のいていく。





「何してるの?」
1人の少女がガーネットに話しかける。
「こんなところで寝てたら死んじゃうよ。早く起きなさい。」
「無理よ。体に力が入らない。」
ガーネットは弱音を吐く。
「それは自分がそう思い込んでるだけよ。あなたは自分で思っているより強いんだから。」
「そんなこと言っても、無理なものは無理よ。」
「はぁ……」
少女は溜息をつく。
「所詮は人間、その程度ね。失望したわ。」
少女はその場を立ち去る。
(そう……こんな私……失望されて当たり前よ………こんなことにも……耐えられないなんて……)
ガーネットの目から光が失われていく。
(この修業を受けたのは私……こうなったのも私の責任……自業自得ね……)
しかし、何かが胸に宿る。
(諦めるの?強くなるために修業を受けたんじゃないの?強くなって………アリスを守るんじゃないの?)
ガーネットは体を起こす。
「そう……強くなって……アリスを……守る……自分で決めたじゃない。茨の道ってわかって決めた。諦めて……たまるものか!」
ガーネットは立ち上がってどこかに向かう。





「ッ?!」
コンパルゴはガーネットから距離をとる。
「おいおい、勘弁してくれよ。」
ガーネットは光に包まれていた。
「まだ力を隠してやがったか。」
「これは力じゃない。私の覚悟。強い意志は強い力に変わる。今なら、あんたに勝てる!」
ガーネットは槍をコンパルゴに向けて、そう宣言する。
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