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【第13章 竜女の怒り】
第3節 魔竜シアン
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水泡から放たれた光線は地面を大きく削り、地形を変えてしまう。
「なんて威力だ……。」
天垣はその光景に圧倒される。シアンは地上に降り立つと狂ったように暴れ出す。
「この………」
天垣は大剣で攻撃を防ぐが、圧倒的な体格差の前ではなんの意味もない。そのまま吹き飛ばされてしまう。
「目を覚ませえ!」
コンパルゴがシアンの足に攻撃を仕掛けるがびくともしない。シアンはコンパルゴを手で抑え込む。
「ぐっ………うおぉぉぉ!」
コンパルゴは地面に押し潰される。
「はぁっ!」
ソールはシアンに無数の光線を放つ。しかし、頑丈な鱗の前には全く効果がない。
「これでどうだーっ!」
天垣は上空からシアンの頭部に大剣を振り下ろす。シアンは一瞬ぐらつくが、すぐに振り払い天垣に向けて口から光線を放つ。天垣は光線に巻き込まれて地面に落下する。
「天垣!」
「大丈夫だ……イザナミの加護がなければ死んでいたが。」
負傷した天垣にガレジストが声をかける。
「竜を倒すには逆鱗を攻撃するしかない。俺が体勢を崩す。その隙を攻めてくれ。」
「いくらお前でも、あの巨体を足止めするのは無理がある。」
「しかし、それ以外の方法があるのか!?」
2人が言い争いをしている間にもシアンは暴れまわる。
「しゃあぁぁらあぁぁ!」
コンパルゴが地面から飛び出してきてシアンの下顎にアッパーをお見舞いする。その一撃で、シアンの巨体が大きくのけぞる。
「ぶっ倒れろぉ!」
コンパルゴはシアンの胸部を本気で踏みつけて押し倒す。
「殺れ、魔道士!」
天垣はすかさずシアンの逆鱗を大剣で斬りつける。
「ぐぅ……斬れ……ない?!」
シアンの逆鱗は大剣で斬れないほど頑丈にできていた。胸部に魔力が集まっている。
「どうした早くしろ!」
「今やっている!」
天垣は更に力を込めるがびくともしない。
「お前たち!そこから離れろ!」
ガレジストの警告が聞こえたすぐ後に、シアンの胸部から魔力砲が放たれる。
「なっ………」
ソールが2人を魔力砲から守る。
「離れろと聞こえたはずだ。」
「うるせえ!まだ終わってねえよ!」
「一度作戦を立て直せ。それまでは私が足止めする。」
ソールは2人をつれて下に降りるとシアンのほうを見る。シアンは起き上がって身震いをするとソールに向かって雄叫びをあげる。
(凄まじい威圧感、まさに"魔竜"といったところか。)
ソールは空中に魔法陣を描き始める。
「なんだ?何が起こってるんだ?」
「このような魔法陣……今まで見たことがない。相当な実力を持っていることは知っていたが、これほどとはな。」
ソールは後ろに視線を向ける。
「時は保って10分だ。その間に体勢を立て直せ。」
そう言い残すと、ソールは上空に勢いよく飛び立つ。
(目には目を、歯には歯をという言葉があるように、竜には竜を!)
ソールの背中には翼が、頭部には二本の角が生成させる。どちらも魔力で顕現されている。同時に上空に描かれた魔法陣が弾け、ソールとシアンを囲むように結界が生成させる。
「ふむふむ、お前の力は保って10分だな。ちなみにどれぐらい生きてる?」
「90年ほどだ。」
「ふ~ん、なるほどね。」
少女は顎に手を当てて考え込む。
「あと10年くらいしたら、力を使える者は生まれなくなるってわけかぁ。だいぶ減ったねぇ。」
少女は岩の上に寝転がる。
「一応聞こう。10分を越えたらどうなる?」
「ふっ、よくぞ聞いた!教えてやろう!」
少女は鼻を鳴らす。
「知らん!」
「……もう1つ聞きたいことがある。時間ギリギリまで使った場合はどうなる?」
ソールは呆れたように聞く。
「時間ギリギリまでならまだ助かるが、かなり危険だということは憶えておきな。私も試したことあるけど、死ぬかと思ったわ~。二度やらんって感じ。」
「そうか。それがわかっただけで十分だ。感謝する。」
ソールは少女に背を向けてその場から立ち去る。
(私はギリギリまで力を使う。下手をすれば、二度と君と会うことはないだろう。)
ソールはシアンのほうを見る。
(後悔するくらいなら、思いっきりやりな。心が破裂するくらいに!そんぐらいやっても死にやしないから!)
少女の鼓舞する顔が頭に浮かぶ。
「そうだな……"彼女"の言う通りだ。私は竜の血統。少し越えたとしても問題はないはずだ!」
ソールはシアンに向かって一直線に突っ込むと、胸部に手を当てて魔力砲を放つ。衝撃でシアンが後退する。その隙に背後に回り込み、シアンに向けてドーム状に無数の光線を放つ。
「魔法での攻撃は有効打にならないか。ならば、ありったけを放つまでだ!」
ソールの通信機に音声が流れる。
「作戦は練り終わった。いつでも動けるぞ!」
「予想よりも早いが丁度いい。絶対に結界の内側に入るな。」
ソールは魔力をシアンの真上に集める。シアンはソールの攻撃に怯んでいる。
「我が魔力、我が内にて生ける竜よ。その力で、全を滅せよ!」
ソールが頭上から手を振り下ろすと、魔力が一点に集中して光の柱となりシアンを包み込む。光の柱の中に、シアンの影のみが残された。
「これが………竜の力なのか?」
その場にいる者は全員立ち尽くしていた。目の前にはとてつもない大きさの穴ができていたのだから。
「シアンはどうなった?」
「まだ生きている。が、深手を負わせることはできた。」
ソールはアーロンドに支えられながら話す。
「あなたは安静にしておきなさい。あとは私たちでなんとかします。」
「もとよりそのつもりだ。では、まかそ……た。」
ソールはそう言い残すと、その場に気絶するように倒れ込む。
「ソールを頼む。」
「承知しました。」
天垣は医療班にソールを引き渡すと大穴のほうを見る。地面から振動を感じる。
「来るぞ!総員位置につけ!」
天垣が指示を出してすぐに、大穴から水が溢れてくる。そして瞬きする間もないまま、複数の水流が大穴から飛び出してくる。水流に囲われるようにしてシアンも羽ばたいている。
「プランA決行!」
天垣の叫び声で団員たちは一斉に行動を始める。天垣、コンパルゴ、ガレジストの3人は真っ向から勝負を仕掛ける。アーロンドとその他全ての魔道士は後方からの支援に徹する。
「あ~、くそ。俺も突っ込みてえ!」
白兎が悔しそうに声をあげる。
「お前では実力不足だろう。」
新沙が鋭い指摘をする。
「そういう隊長の実力はあいつに通じるんすか?」
「いいや、全くだ。」
「まあいいや。脇役らしく、脇役らしい成果を残してやりますよ。」
そう言うと、白兎は大剣をかついで前線に赴く。
(俺ができるのは、後方部隊への流れ弾を防ぐことくらいだな。)
「お前だけには行かせないぞ。隊長としての責務もあるしな。」
「へいへい。」
2人が前線に飛び出した瞬間、背後から1つの水流が襲いかかる。
(しまった!背中をとられ…)
「動くな。」
1人の男性の声が聞こえる。横を見ると1人の男性が立っていた。
「お前は、早世 疾風?!」
疾風が刀を納めると水流は細切れになる。
「気を抜くな。戦地での死因の大半は油断によるものだ。」
「あんた怪我してねえか?」
疾風には体中に包帯が巻かれている。
「下級30体、中級40体、上級10体を相手にしただけだ。このくらいなんともねえ。」
「いや問題ありだろ!左腕とか動くのか?!包帯めちゃくちゃ巻いてあるけど?!」
「刀を扱うなんて片手で十分だ。」
疾風は新沙を睨むようにして話す。
「まあいい、だが無理はするな。同じ階級だからこそ言えることだがな。」
「まあまあ、そうかっかするな2人共。戦力が多いに越したことはないよ。」
後ろから笑顔で樫茂が歩いてくる。
「なんだお前も来たのか。でも、戦力としては十分すぎる。腕はなまってないだろうな?」
「もちろん。先程まで散々魔獣を相手にしてたからね。いつもより腕がなるよ。」
2人は先頭に立つ。
(これが天級の威厳なのか?でも隊長からはこんなの感じねえ。)
白兎は新沙と2人を見比べる。
「どうした?そんなにジロジロ見て。」
「なんでも。それより早く行こうぜ。」
目の前に複数の水流が現れて行く手を塞ぐ。
「どうやらそう簡単にはいかないか。」
疾風が刀を抜いた瞬間、水流が破裂する。
「ちょっと遅くなったわね。」
空からガーネットが降りてくる。
「誰だ?」
「ガーネットよ。階級はあなたと同じ。」
「君は確か戦闘で負傷したはずだ。前線に立って大丈夫なのかい?」
「大丈夫よ。治療魔法使えるし。あと、話してる時間はないわよ。」
ガーネットの背後から大量の水流が現れる。
「シアンを倒さねえと無限に出てきやがるか。」
水流がこちらに襲いかかってくる。
「ふっ!」
樫茂が刀を振ると、水流が綺麗に真っ二つになる。
「くそっ!斬っても斬ってもキリがねえ!」
白兎は大剣を豪快に振り回して、ひたすら水流を斬り続ける。
「手を休めるなよ!休めたら死ぬぞ!」
4人は戦い続けているため疲労が溜まっているが、それでもひたすら戦い続ける。突然水流が全て地面に引っ込む。
「始まっわね。」
ガーネットはシアンのほうを見る。
「おらおらあ!」
コンパルゴはシアンの足に連続で攻撃をする。シアンは足を動かして、コンパルゴを踏み潰そうとする。
「へっ!そんなの当たるわけねえだろ!」
コンパルゴは足と尻尾の隙間を素早く走り抜ける。
「天垣、跳べ!」
ガレジストは天垣に向かって叫ぶ。天垣が上空に向かって跳ぶと、ガレジストは地面を殴りつけて地盤を隆起させる。隆起した地盤が天垣を更に上空へと打ち上げる。
「これでも喰らえ!」
天垣は上空から逆鱗目掛けて大剣を振り下ろす。シアンは腕で逆鱗をかばう。
「傷すらつかないか……うおっ?!」
天垣を踏み台にしてコンパルゴがシアンの頭上に飛び上がる。
「すまねえ、な!」
コンパルゴはシアンの頭頂部に全体重を乗せた一撃をお見舞いする。シアンの体が大きくぐらつく。
「皆さん、離れてくださ~い。」
アーロンドが上空から魔法を放つ。アーロンドの魔法はシアンの動きを封じる。
「シアンを倒す方法を考えていたのですが、剣で斬れないなら砕けばいいのでは?」
「まだ試していなかったな。誰が砕くんだ?」
「それはコンパルゴが適任だろう。この中では唯一、シアンに決定打を与えることができる。」
「なるほど。よろしいですか?」
「姉御を討つ覚悟はできている。」
コンパルゴは砂を払いながら話す。
「決まりですね。あの者たちにも手伝ってもらいましょう。」
アーロンドはガーネットたちのほうを見る。指を鳴らすと、ガーネットたちが目の前に現れる。
「こいつかよ……」
コンパルゴはガーネットを見ると、顔を手で押さえる。
「時間がないので簡潔に話します。私はコンパルゴを連れて上空に向かいます。隙ができ次第、コンパルゴをシアンに向けて飛ばします。」
「誰が隙を作るんだ?俺は地盤を隆起させるくらいだぞ。」
「天垣とガーネット君の2人に隙を作ってもらいます。逆鱗が上空から見えるようにしてもらいたいのです。」
「それはいいが、俺たち2人で足りるのか?パワー不足な気がするが?」
「それは俺の魔法があれば解決するだろう。先程のことを2人分行えば足りるはずだ。」
ガレジストは自身の胸を叩く。
「団長~。俺らは~?」
白兎があぐらをかきながら聞く。
「君たちはそうですね、弾除けにでもなってもらえばいいです。」
「嘘~ん。」
白兎は間抜けな声をあげる。
「ほんとにこいつは使えるのか?ふざけてるようにしか見えないが?」
コンパルゴが白兎を指差しながらアーロンドに聞く。
「俺はこいつじゃねえ。伊馬真木 白兎だ。」
「ふざけているように見えますが実力は本物です。」
「私の実力でも足りるのですか?」
ガーネットがアーロンドに聞く。
「あなたの階級は天級ですが、実力は神級レベルです。戦力としては最高レベルですよ~。ですが、武器がありませんね。これを贈呈しましょう。丁度いいものがあるんですよ~。」
そう言うと、アーロンドは三叉の神々しい槍を取り出した。ガーネットは槍を手に取ると、まじまじと見つめる。
「三叉、この装飾、この重厚感。まさか……トライデント?!」
「そうです。海の神ポセイドンが使っていたとされる神槍です。神を使役しているあなたにはピッタリでしょう。」
「気前が良すぎて怖いけど、ありがたく使わせてもらうわ。」
後ろを向くと、アーロンドの魔法が解けそうだ。
「準備はいいですか?プランB決行です!」
アーロンドの掛け声で全員が一斉に動く。シアンは魔法を解いた瞬間、辺りに無数の水流を作り出す。天候が荒れてきて、雨風が吹いてきた。
「ぬおぉぉぉ!」
ガレジストが地面を殴りつけて隆起させる。天垣とガーネットは地面で上空に打ち上げられる。その2人を狙って、水流が襲いかかる。
「「させるか!」」
疾風と白兎は2人を水流からかばう。天垣は2人のほうに目が行く。
「俺のことは気にすんな!目の前の敵だけに集中しろ!」
「こいつの言う通りだ!実力はあるんだからいくらでも助かる方法はある!だから俺たちには構うな!」
2人は水流に呑み込まれながら天垣に向かって叫ぶ。
「……行くぞ。」
「えぇ。」
2人は魔力を解き放つ。天垣の後ろにはイザナミが、ガーネットには死神が現れる。
「「はあぁぁぁ!」」
2人の攻撃が1つに交わり、シアンの顎に向かって突撃する。衝撃でシアンの頭部が大きく上空に反る。
「今だ!」
天垣は上空に向かって叫ぶ。ガーネットは力を使い果たして地面に向かって落下する。
「マズイ!」
天垣はガーネットを回収する。
「いきますよ。」
「こい!」
アーロンドはコンパルゴをシアンに向かって突き飛ばす。コンパルゴはあらかじめ、拳に全ての力を集中させている。
(姉御………安らかに、眠ってくれ。)
コンパルゴの拳が逆鱗に触れると、逆鱗に亀裂が入り粉々に砕け散る。拳が最後まで振り下ろされた瞬間、辺りに凄まじい衝撃が走る。
「ぐうぅぅ!」
天垣は体勢を崩して地面に落下する。ガレジストはすかさず地面を隆起させる。
「大丈夫か?!」
「ああ!なんとか!」
2人はシアンのほうを見る。シアンの首元から魔力が溢れ出している。シアンは苦しそうに悶えている。
(痛い……痛い……痛い!やめろ!………これ以上、私から……奪うな!)
コンパルゴはシアンの頭部によじ登ると、角に手を当てて語りかける。
「俺は大丈夫だ。姉御のお陰で、1人で生きる希望を得た。だから、ゆっくり休んでくれ。」
コンパルゴは額を角に当てる。シアンは少しずつ大人しくなる。シアンの動きが止まると、体の先端から塵になっていく。
「やっと………終わった……」
「いえ、まだです。」
アーロンドは地上に降り立つと険しい顔で話す。
「まだ《王》が残っている。すぐに向かわなければ。」
アーロンドが話していると、遺跡から黒い光が上空に向かって伸びる。
「な、なんだあれは!!」
その光は、この世のものとは思えないほど禍々しかった。
「なんて威力だ……。」
天垣はその光景に圧倒される。シアンは地上に降り立つと狂ったように暴れ出す。
「この………」
天垣は大剣で攻撃を防ぐが、圧倒的な体格差の前ではなんの意味もない。そのまま吹き飛ばされてしまう。
「目を覚ませえ!」
コンパルゴがシアンの足に攻撃を仕掛けるがびくともしない。シアンはコンパルゴを手で抑え込む。
「ぐっ………うおぉぉぉ!」
コンパルゴは地面に押し潰される。
「はぁっ!」
ソールはシアンに無数の光線を放つ。しかし、頑丈な鱗の前には全く効果がない。
「これでどうだーっ!」
天垣は上空からシアンの頭部に大剣を振り下ろす。シアンは一瞬ぐらつくが、すぐに振り払い天垣に向けて口から光線を放つ。天垣は光線に巻き込まれて地面に落下する。
「天垣!」
「大丈夫だ……イザナミの加護がなければ死んでいたが。」
負傷した天垣にガレジストが声をかける。
「竜を倒すには逆鱗を攻撃するしかない。俺が体勢を崩す。その隙を攻めてくれ。」
「いくらお前でも、あの巨体を足止めするのは無理がある。」
「しかし、それ以外の方法があるのか!?」
2人が言い争いをしている間にもシアンは暴れまわる。
「しゃあぁぁらあぁぁ!」
コンパルゴが地面から飛び出してきてシアンの下顎にアッパーをお見舞いする。その一撃で、シアンの巨体が大きくのけぞる。
「ぶっ倒れろぉ!」
コンパルゴはシアンの胸部を本気で踏みつけて押し倒す。
「殺れ、魔道士!」
天垣はすかさずシアンの逆鱗を大剣で斬りつける。
「ぐぅ……斬れ……ない?!」
シアンの逆鱗は大剣で斬れないほど頑丈にできていた。胸部に魔力が集まっている。
「どうした早くしろ!」
「今やっている!」
天垣は更に力を込めるがびくともしない。
「お前たち!そこから離れろ!」
ガレジストの警告が聞こえたすぐ後に、シアンの胸部から魔力砲が放たれる。
「なっ………」
ソールが2人を魔力砲から守る。
「離れろと聞こえたはずだ。」
「うるせえ!まだ終わってねえよ!」
「一度作戦を立て直せ。それまでは私が足止めする。」
ソールは2人をつれて下に降りるとシアンのほうを見る。シアンは起き上がって身震いをするとソールに向かって雄叫びをあげる。
(凄まじい威圧感、まさに"魔竜"といったところか。)
ソールは空中に魔法陣を描き始める。
「なんだ?何が起こってるんだ?」
「このような魔法陣……今まで見たことがない。相当な実力を持っていることは知っていたが、これほどとはな。」
ソールは後ろに視線を向ける。
「時は保って10分だ。その間に体勢を立て直せ。」
そう言い残すと、ソールは上空に勢いよく飛び立つ。
(目には目を、歯には歯をという言葉があるように、竜には竜を!)
ソールの背中には翼が、頭部には二本の角が生成させる。どちらも魔力で顕現されている。同時に上空に描かれた魔法陣が弾け、ソールとシアンを囲むように結界が生成させる。
「ふむふむ、お前の力は保って10分だな。ちなみにどれぐらい生きてる?」
「90年ほどだ。」
「ふ~ん、なるほどね。」
少女は顎に手を当てて考え込む。
「あと10年くらいしたら、力を使える者は生まれなくなるってわけかぁ。だいぶ減ったねぇ。」
少女は岩の上に寝転がる。
「一応聞こう。10分を越えたらどうなる?」
「ふっ、よくぞ聞いた!教えてやろう!」
少女は鼻を鳴らす。
「知らん!」
「……もう1つ聞きたいことがある。時間ギリギリまで使った場合はどうなる?」
ソールは呆れたように聞く。
「時間ギリギリまでならまだ助かるが、かなり危険だということは憶えておきな。私も試したことあるけど、死ぬかと思ったわ~。二度やらんって感じ。」
「そうか。それがわかっただけで十分だ。感謝する。」
ソールは少女に背を向けてその場から立ち去る。
(私はギリギリまで力を使う。下手をすれば、二度と君と会うことはないだろう。)
ソールはシアンのほうを見る。
(後悔するくらいなら、思いっきりやりな。心が破裂するくらいに!そんぐらいやっても死にやしないから!)
少女の鼓舞する顔が頭に浮かぶ。
「そうだな……"彼女"の言う通りだ。私は竜の血統。少し越えたとしても問題はないはずだ!」
ソールはシアンに向かって一直線に突っ込むと、胸部に手を当てて魔力砲を放つ。衝撃でシアンが後退する。その隙に背後に回り込み、シアンに向けてドーム状に無数の光線を放つ。
「魔法での攻撃は有効打にならないか。ならば、ありったけを放つまでだ!」
ソールの通信機に音声が流れる。
「作戦は練り終わった。いつでも動けるぞ!」
「予想よりも早いが丁度いい。絶対に結界の内側に入るな。」
ソールは魔力をシアンの真上に集める。シアンはソールの攻撃に怯んでいる。
「我が魔力、我が内にて生ける竜よ。その力で、全を滅せよ!」
ソールが頭上から手を振り下ろすと、魔力が一点に集中して光の柱となりシアンを包み込む。光の柱の中に、シアンの影のみが残された。
「これが………竜の力なのか?」
その場にいる者は全員立ち尽くしていた。目の前にはとてつもない大きさの穴ができていたのだから。
「シアンはどうなった?」
「まだ生きている。が、深手を負わせることはできた。」
ソールはアーロンドに支えられながら話す。
「あなたは安静にしておきなさい。あとは私たちでなんとかします。」
「もとよりそのつもりだ。では、まかそ……た。」
ソールはそう言い残すと、その場に気絶するように倒れ込む。
「ソールを頼む。」
「承知しました。」
天垣は医療班にソールを引き渡すと大穴のほうを見る。地面から振動を感じる。
「来るぞ!総員位置につけ!」
天垣が指示を出してすぐに、大穴から水が溢れてくる。そして瞬きする間もないまま、複数の水流が大穴から飛び出してくる。水流に囲われるようにしてシアンも羽ばたいている。
「プランA決行!」
天垣の叫び声で団員たちは一斉に行動を始める。天垣、コンパルゴ、ガレジストの3人は真っ向から勝負を仕掛ける。アーロンドとその他全ての魔道士は後方からの支援に徹する。
「あ~、くそ。俺も突っ込みてえ!」
白兎が悔しそうに声をあげる。
「お前では実力不足だろう。」
新沙が鋭い指摘をする。
「そういう隊長の実力はあいつに通じるんすか?」
「いいや、全くだ。」
「まあいいや。脇役らしく、脇役らしい成果を残してやりますよ。」
そう言うと、白兎は大剣をかついで前線に赴く。
(俺ができるのは、後方部隊への流れ弾を防ぐことくらいだな。)
「お前だけには行かせないぞ。隊長としての責務もあるしな。」
「へいへい。」
2人が前線に飛び出した瞬間、背後から1つの水流が襲いかかる。
(しまった!背中をとられ…)
「動くな。」
1人の男性の声が聞こえる。横を見ると1人の男性が立っていた。
「お前は、早世 疾風?!」
疾風が刀を納めると水流は細切れになる。
「気を抜くな。戦地での死因の大半は油断によるものだ。」
「あんた怪我してねえか?」
疾風には体中に包帯が巻かれている。
「下級30体、中級40体、上級10体を相手にしただけだ。このくらいなんともねえ。」
「いや問題ありだろ!左腕とか動くのか?!包帯めちゃくちゃ巻いてあるけど?!」
「刀を扱うなんて片手で十分だ。」
疾風は新沙を睨むようにして話す。
「まあいい、だが無理はするな。同じ階級だからこそ言えることだがな。」
「まあまあ、そうかっかするな2人共。戦力が多いに越したことはないよ。」
後ろから笑顔で樫茂が歩いてくる。
「なんだお前も来たのか。でも、戦力としては十分すぎる。腕はなまってないだろうな?」
「もちろん。先程まで散々魔獣を相手にしてたからね。いつもより腕がなるよ。」
2人は先頭に立つ。
(これが天級の威厳なのか?でも隊長からはこんなの感じねえ。)
白兎は新沙と2人を見比べる。
「どうした?そんなにジロジロ見て。」
「なんでも。それより早く行こうぜ。」
目の前に複数の水流が現れて行く手を塞ぐ。
「どうやらそう簡単にはいかないか。」
疾風が刀を抜いた瞬間、水流が破裂する。
「ちょっと遅くなったわね。」
空からガーネットが降りてくる。
「誰だ?」
「ガーネットよ。階級はあなたと同じ。」
「君は確か戦闘で負傷したはずだ。前線に立って大丈夫なのかい?」
「大丈夫よ。治療魔法使えるし。あと、話してる時間はないわよ。」
ガーネットの背後から大量の水流が現れる。
「シアンを倒さねえと無限に出てきやがるか。」
水流がこちらに襲いかかってくる。
「ふっ!」
樫茂が刀を振ると、水流が綺麗に真っ二つになる。
「くそっ!斬っても斬ってもキリがねえ!」
白兎は大剣を豪快に振り回して、ひたすら水流を斬り続ける。
「手を休めるなよ!休めたら死ぬぞ!」
4人は戦い続けているため疲労が溜まっているが、それでもひたすら戦い続ける。突然水流が全て地面に引っ込む。
「始まっわね。」
ガーネットはシアンのほうを見る。
「おらおらあ!」
コンパルゴはシアンの足に連続で攻撃をする。シアンは足を動かして、コンパルゴを踏み潰そうとする。
「へっ!そんなの当たるわけねえだろ!」
コンパルゴは足と尻尾の隙間を素早く走り抜ける。
「天垣、跳べ!」
ガレジストは天垣に向かって叫ぶ。天垣が上空に向かって跳ぶと、ガレジストは地面を殴りつけて地盤を隆起させる。隆起した地盤が天垣を更に上空へと打ち上げる。
「これでも喰らえ!」
天垣は上空から逆鱗目掛けて大剣を振り下ろす。シアンは腕で逆鱗をかばう。
「傷すらつかないか……うおっ?!」
天垣を踏み台にしてコンパルゴがシアンの頭上に飛び上がる。
「すまねえ、な!」
コンパルゴはシアンの頭頂部に全体重を乗せた一撃をお見舞いする。シアンの体が大きくぐらつく。
「皆さん、離れてくださ~い。」
アーロンドが上空から魔法を放つ。アーロンドの魔法はシアンの動きを封じる。
「シアンを倒す方法を考えていたのですが、剣で斬れないなら砕けばいいのでは?」
「まだ試していなかったな。誰が砕くんだ?」
「それはコンパルゴが適任だろう。この中では唯一、シアンに決定打を与えることができる。」
「なるほど。よろしいですか?」
「姉御を討つ覚悟はできている。」
コンパルゴは砂を払いながら話す。
「決まりですね。あの者たちにも手伝ってもらいましょう。」
アーロンドはガーネットたちのほうを見る。指を鳴らすと、ガーネットたちが目の前に現れる。
「こいつかよ……」
コンパルゴはガーネットを見ると、顔を手で押さえる。
「時間がないので簡潔に話します。私はコンパルゴを連れて上空に向かいます。隙ができ次第、コンパルゴをシアンに向けて飛ばします。」
「誰が隙を作るんだ?俺は地盤を隆起させるくらいだぞ。」
「天垣とガーネット君の2人に隙を作ってもらいます。逆鱗が上空から見えるようにしてもらいたいのです。」
「それはいいが、俺たち2人で足りるのか?パワー不足な気がするが?」
「それは俺の魔法があれば解決するだろう。先程のことを2人分行えば足りるはずだ。」
ガレジストは自身の胸を叩く。
「団長~。俺らは~?」
白兎があぐらをかきながら聞く。
「君たちはそうですね、弾除けにでもなってもらえばいいです。」
「嘘~ん。」
白兎は間抜けな声をあげる。
「ほんとにこいつは使えるのか?ふざけてるようにしか見えないが?」
コンパルゴが白兎を指差しながらアーロンドに聞く。
「俺はこいつじゃねえ。伊馬真木 白兎だ。」
「ふざけているように見えますが実力は本物です。」
「私の実力でも足りるのですか?」
ガーネットがアーロンドに聞く。
「あなたの階級は天級ですが、実力は神級レベルです。戦力としては最高レベルですよ~。ですが、武器がありませんね。これを贈呈しましょう。丁度いいものがあるんですよ~。」
そう言うと、アーロンドは三叉の神々しい槍を取り出した。ガーネットは槍を手に取ると、まじまじと見つめる。
「三叉、この装飾、この重厚感。まさか……トライデント?!」
「そうです。海の神ポセイドンが使っていたとされる神槍です。神を使役しているあなたにはピッタリでしょう。」
「気前が良すぎて怖いけど、ありがたく使わせてもらうわ。」
後ろを向くと、アーロンドの魔法が解けそうだ。
「準備はいいですか?プランB決行です!」
アーロンドの掛け声で全員が一斉に動く。シアンは魔法を解いた瞬間、辺りに無数の水流を作り出す。天候が荒れてきて、雨風が吹いてきた。
「ぬおぉぉぉ!」
ガレジストが地面を殴りつけて隆起させる。天垣とガーネットは地面で上空に打ち上げられる。その2人を狙って、水流が襲いかかる。
「「させるか!」」
疾風と白兎は2人を水流からかばう。天垣は2人のほうに目が行く。
「俺のことは気にすんな!目の前の敵だけに集中しろ!」
「こいつの言う通りだ!実力はあるんだからいくらでも助かる方法はある!だから俺たちには構うな!」
2人は水流に呑み込まれながら天垣に向かって叫ぶ。
「……行くぞ。」
「えぇ。」
2人は魔力を解き放つ。天垣の後ろにはイザナミが、ガーネットには死神が現れる。
「「はあぁぁぁ!」」
2人の攻撃が1つに交わり、シアンの顎に向かって突撃する。衝撃でシアンの頭部が大きく上空に反る。
「今だ!」
天垣は上空に向かって叫ぶ。ガーネットは力を使い果たして地面に向かって落下する。
「マズイ!」
天垣はガーネットを回収する。
「いきますよ。」
「こい!」
アーロンドはコンパルゴをシアンに向かって突き飛ばす。コンパルゴはあらかじめ、拳に全ての力を集中させている。
(姉御………安らかに、眠ってくれ。)
コンパルゴの拳が逆鱗に触れると、逆鱗に亀裂が入り粉々に砕け散る。拳が最後まで振り下ろされた瞬間、辺りに凄まじい衝撃が走る。
「ぐうぅぅ!」
天垣は体勢を崩して地面に落下する。ガレジストはすかさず地面を隆起させる。
「大丈夫か?!」
「ああ!なんとか!」
2人はシアンのほうを見る。シアンの首元から魔力が溢れ出している。シアンは苦しそうに悶えている。
(痛い……痛い……痛い!やめろ!………これ以上、私から……奪うな!)
コンパルゴはシアンの頭部によじ登ると、角に手を当てて語りかける。
「俺は大丈夫だ。姉御のお陰で、1人で生きる希望を得た。だから、ゆっくり休んでくれ。」
コンパルゴは額を角に当てる。シアンは少しずつ大人しくなる。シアンの動きが止まると、体の先端から塵になっていく。
「やっと………終わった……」
「いえ、まだです。」
アーロンドは地上に降り立つと険しい顔で話す。
「まだ《王》が残っている。すぐに向かわなければ。」
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