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【第16章 災いに蝕まれて】
第1節 尽きぬ思い
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「………。」
玖羽はとある部屋で目を覚ます。最初に部屋の天井が目に映る。
「どこだ…痛っ!」
玖羽は頭痛で頭を押さえる。
「ようやく目を覚ましましたか。ここがどこだかわかりますか?」
アーロンドが部屋の入口から声をかける。玖羽は瞬きをしながら部屋を見渡す。
「本部の医務室か?」
「ふむ…特に問題はないようですね。」
玖羽は部屋のカレンダーを見る。
「ん?んんっ??」
「驚いてしまうのは仕方ありません。私たちはあの日、ニグレードとの戦いに敗れました。そしてその日から2年の歳月が過ぎました。こちらを。」
玖羽はアーロンドから資料を受け取る。そこには2年間の魔獣による被害報告が記されていた。
「どうなってんだ……これ?今までの比じゃねえ。」
そこには目を疑うような被害の量が記されていた。
「ニグレードが復活したことにより、魔獣共の活動が活発になりました。世界は変わってしまったのですよ。」
アーロンドは玖羽に背を向ける。
「これから緊急会議があるので、私はこれで失礼させてもらいます。」
「……は…」
「ん?」
「美桜は?ロビンはどうなった?」
「彼女なら大丈夫です。すでに前線へと復帰しています。」
「しかし、ロビン君はニグレードに体を乗っ取られました。今はどこにいるかさえ分かりません。」
アーロンドはドアを閉めて医務室をあとにする。玖羽はベッドから降りて窓の外を見る。
「……くそっ……」
玖羽は歯を食いしばる。
「全員揃いましたか?」
「いいえ、美桜がまだ。」
「神宮寺 美桜様が到着致しました。」
従者が報告した直後に、部屋の扉が開いて美桜が入ってくる。
「これで全員ですね。では、緊急会議を始めます。まずは手元の資料をご確認下さい。」
「はぁ………またか。」
天垣はため息をついて、額に手を当てる。
「どうした天垣?お前らしくないぞ。」
「すまんな、場を悪くして。」
「魔獣による被害は増加傾向にある、か。まだ収集はついているが、遅かれ早かれ取り返しのつかないことになるな。イギリスはどうなんだ?」
疾風はガーネットに聞く。
「中級だけではなく上級の出没頻度が例年よりも増加しているわ。応援を要請したいのだけれど、本部の様子を見る限りそんな余裕はないみたいね。」
「………。」
美桜は資料に目を通すが、一言も発さない。
「アーロンド。ニグレードの場所はわかったか?」
「全くです。」
天垣は立ち上がと、アーロンドのほうを見る。
「もっと範囲を広げろ。」
「ガーネット君も言っていたでしょう。人手が足りないのですよ。その上、これ以上広げても有力な手がかりは見つけられそうにないのです。」
「そんなもの、やってみないと分からないだろ!すでに100名以上の団員が殉職しているんだぞ!一般人の死者数も数千人を越えている!俺たちがなんとかしない限り、被害は広がる一方だぞ!それなのに……指を咥えて待っていろと言うのかお前は!?」
天垣はアーロンドに怒りをぶつける。
「わかっていますよ。このままだとマズイということは。しかし、今下手に動けばどうなるかが分からない。隙を見せてしまいニグレードにその隙を突かれる可能性も十分にある。今は耐えるしかないのです。」
天垣はアーロンドの言葉に納得しないが、仕方なく受け入れる。
「くそっ……椿は何をしているんだ?」
「むっ?そうか、すぐに向かう。」
ガレジストはその場に立ち上がる。
「魔獣が現れたようだ。俺は現場に向かうため席を外させてもらう。」
ガレジストは部屋を出る。
「うえっ……」
突然、青が美桜から出てくる。何故か気分が悪そうな様子だ。
「どうしたの?」
美桜が口を開く。
「なんか……吐き気が……」
「なんで?龍神が吐き気なんて起こすの?」
青はフラフラとしている。
「あっ、ヤバい。」
青は咳をしながら床に何かを吐き出す。
「痛たた……ここは?会議室か。」
吐き出した場所には春蘭の姿があった。
「え?」
「え?」
「は?」
「なっ?!」
「ほぅ。」
その場の全員は目を丸くする。
「やっと出られたって訳か。」
「お前……どうやって出たんだ?」
「あぁ、それは彼女のおかげだよ。」
春蘭は自身の後ろを指差す。春蘭の後ろには1人の女性がいた。紅色の髪に紅色の瞳をしている。
「まさか……椿か?」
「そうだ。お前の知っている神宮寺 椿だ。」
天垣はその光景に目を疑う。気配や魔力が200年前の神宮寺 椿本人と全く同じなのだ。
「ど……どうやって、200年も生きていたんだ?」
「簡単だ。こいつの腹の中にいた。」
椿は青を指差す。
「じゃあ、なんでもう1人入ってるんだ?」
「それはぁ……私の計画の一部だ。本来ならば美桜を食わせるつもりだったが、何かの手違いでこいつが自分から食われたからな。まあ、私の計画に支障はない。」
椿は腰に手を当てながら話す。
「お前の計画とはなんだ?その計画は一体いつから考えていた?」
「この計画は200年前から練ってある。そして、遂行のためのピースは徐々に埋まりつつある。」
椿はアーロンドを引っ張って立たせると、椅子に座る。
「計画の内容はお前たちの今の目的と同じ、ニグレードの討伐だ。今のままいけば確実に奴を討つことができるはずだ。」
「ロビンはどうするんだ?ニグレードに乗っ取られてるぞ。」
天垣が横から腕を組んで疑問をぶつける。
「それを加味した上での計画だ。事は順調に動いている。」
「本当にそうなのか?いくらお前の言うことであっても、今回ばかりは鵜呑みにできない。」
「この計画は自分でも完璧だと言い張れる。唯一の欠点をあげるとすれば、予想外の事が起きた場合、この計画の大部分が破綻することぐらいだ。もしそうなったら私がなんとかしよう。」
椿は自身有りげに答える。
「ふむ………赤、外を見てこい。」
椿の中から赤い龍が出てくる。
「何を探せばいい?」
「これ。」
椿は懐からタンザナイトを取り出す。
「この匂いか。ふむふむ……」
赤はタンザナイトの匂いを嗅ぐと外に飛び出す。
「タンザナイト、どこでそれを?」
凛が扉の隙間から覗きながら質問する。
「僕が渡したんだ。君から受け取っただろう?」
かな~り前……
「凛、タンザナイトはどこだい?」
「ここにありますよ。」
春蘭はタンザナイトを手に取る。
「少し用ができた。これも使わなければならない。」
「あなたの物なので勝手に使っても何も言いませんよ。」
「そういえば……そんなこともありましたね。確か夜が明けたくらいだったはず。」
「………。悪いが美桜以外は部屋から出てくれないか。少し2人になりたい。」
「承知しました。行きましょう。」
「え?」
ガーネットはアーロンドの反応に目を疑う。
「団長である私が容易く従うことに驚いてるようですね。その事は外で話します。今は着いてきて下さい。」
「同感だ。」
天垣はアーロンドのあとに部屋から出る。しばらくして、部屋の中は美桜と椿の2人だけになった。
「よし、これでやっと話ができる。」
椿は立ち上がると美桜に近づき、美桜の顎を指で上げる。
「やはり、私に似ているな。性格は全く違うようだが。それと……」
椿は美桜の中から青を引っ張り出す。
「何を隠れているんだ?私が怖いのか?」
「いや………」
「そうか。春蘭を食ったからか?」
「ギクッ……」
「別に気にしてなどいない。むしろそのほうが良かったかもしれない。」
椿は美桜が背負っている包に視線を向ける。
「その中の物を見せてくれ。」
美桜は包を椿に手渡す。包の中からはロビンが使っていた妖刀が出てきた。
「おい、起きろ、狐。」
椿の声に反応して九尾が姿を現す。
「私が誰か分かるか?」
「えっと……誰だ?」
「そうか。なら封印は解かないでおこう。」
「封印……封印……あぁぁ!てめぇあの時の女か!よくも俺を縛ってくれたな!」
九尾は何かを思い出して激昂する。
「はい。」
椿は九尾を刀から分離する。
「は?お前……そんな物わかりがよかったか?」
「なんだ?封印されていたほうがよかったのか?」
「いや、そういうわけじゃ……」
九尾は美桜の後ろに隠れる。
「あんたら、なんでそんなに怖がってるの?」
「お前には分からんだろうな!あいつは化け物だ!あんなのが人間なわけないだろ!」
九尾は歯を食いしばって唸り後をあげながら警戒する。
「1つ聞いてもいい?」
「いいぞ。時間の許す限りな。」
「青の中で何をしていたの?」
椿は顎に手を当てる。
「どう説明すればいいのやら…………。お前は時空干渉魔法を知っているか?」
「なにそれ?」
「やはり知らないか。この魔法は遥か昔に生まれた魔法だ。今では禁術の一種として歴史から抹消された。強大過ぎる故に、悪用されないようにな。」
美桜はある記憶が引っかかる。
(時空……時間と空間…………まさかあいつは……)
「その魔法って、時間を止めたり、2つの地点を繋げることはできるの?」
「う~ん……私が調べた限りではそのような使い方は記されていなかったが、おそらく可能だろう。禁術と言われるほどだからできても違和感はない。」
美桜は唾を飲む。首筋を冷や汗がつたう。
「……あんたは、ディファラスを知ってる?」
「あぁ、知ってるぞ。そいつがどうした?」
「あいつは……多分、さっき言った禁術が使えると思うの。時間を止めたり、空間を繋げたりしてた。私たちは手も足も出なかった。」
「なるほど。ディファラスが何かを持っていることは知っていたが……まさか禁術のたぐいだったとは。戦の前にいい情報が聞けた。」
椿は椅子に座る。
「そういえば、青にお前を食えと命令した理由を言っていなかったな。今からそれを話そう。」
椿は不気味な笑みを浮かべながら話を始める。
玖羽はとある部屋で目を覚ます。最初に部屋の天井が目に映る。
「どこだ…痛っ!」
玖羽は頭痛で頭を押さえる。
「ようやく目を覚ましましたか。ここがどこだかわかりますか?」
アーロンドが部屋の入口から声をかける。玖羽は瞬きをしながら部屋を見渡す。
「本部の医務室か?」
「ふむ…特に問題はないようですね。」
玖羽は部屋のカレンダーを見る。
「ん?んんっ??」
「驚いてしまうのは仕方ありません。私たちはあの日、ニグレードとの戦いに敗れました。そしてその日から2年の歳月が過ぎました。こちらを。」
玖羽はアーロンドから資料を受け取る。そこには2年間の魔獣による被害報告が記されていた。
「どうなってんだ……これ?今までの比じゃねえ。」
そこには目を疑うような被害の量が記されていた。
「ニグレードが復活したことにより、魔獣共の活動が活発になりました。世界は変わってしまったのですよ。」
アーロンドは玖羽に背を向ける。
「これから緊急会議があるので、私はこれで失礼させてもらいます。」
「……は…」
「ん?」
「美桜は?ロビンはどうなった?」
「彼女なら大丈夫です。すでに前線へと復帰しています。」
「しかし、ロビン君はニグレードに体を乗っ取られました。今はどこにいるかさえ分かりません。」
アーロンドはドアを閉めて医務室をあとにする。玖羽はベッドから降りて窓の外を見る。
「……くそっ……」
玖羽は歯を食いしばる。
「全員揃いましたか?」
「いいえ、美桜がまだ。」
「神宮寺 美桜様が到着致しました。」
従者が報告した直後に、部屋の扉が開いて美桜が入ってくる。
「これで全員ですね。では、緊急会議を始めます。まずは手元の資料をご確認下さい。」
「はぁ………またか。」
天垣はため息をついて、額に手を当てる。
「どうした天垣?お前らしくないぞ。」
「すまんな、場を悪くして。」
「魔獣による被害は増加傾向にある、か。まだ収集はついているが、遅かれ早かれ取り返しのつかないことになるな。イギリスはどうなんだ?」
疾風はガーネットに聞く。
「中級だけではなく上級の出没頻度が例年よりも増加しているわ。応援を要請したいのだけれど、本部の様子を見る限りそんな余裕はないみたいね。」
「………。」
美桜は資料に目を通すが、一言も発さない。
「アーロンド。ニグレードの場所はわかったか?」
「全くです。」
天垣は立ち上がと、アーロンドのほうを見る。
「もっと範囲を広げろ。」
「ガーネット君も言っていたでしょう。人手が足りないのですよ。その上、これ以上広げても有力な手がかりは見つけられそうにないのです。」
「そんなもの、やってみないと分からないだろ!すでに100名以上の団員が殉職しているんだぞ!一般人の死者数も数千人を越えている!俺たちがなんとかしない限り、被害は広がる一方だぞ!それなのに……指を咥えて待っていろと言うのかお前は!?」
天垣はアーロンドに怒りをぶつける。
「わかっていますよ。このままだとマズイということは。しかし、今下手に動けばどうなるかが分からない。隙を見せてしまいニグレードにその隙を突かれる可能性も十分にある。今は耐えるしかないのです。」
天垣はアーロンドの言葉に納得しないが、仕方なく受け入れる。
「くそっ……椿は何をしているんだ?」
「むっ?そうか、すぐに向かう。」
ガレジストはその場に立ち上がる。
「魔獣が現れたようだ。俺は現場に向かうため席を外させてもらう。」
ガレジストは部屋を出る。
「うえっ……」
突然、青が美桜から出てくる。何故か気分が悪そうな様子だ。
「どうしたの?」
美桜が口を開く。
「なんか……吐き気が……」
「なんで?龍神が吐き気なんて起こすの?」
青はフラフラとしている。
「あっ、ヤバい。」
青は咳をしながら床に何かを吐き出す。
「痛たた……ここは?会議室か。」
吐き出した場所には春蘭の姿があった。
「え?」
「え?」
「は?」
「なっ?!」
「ほぅ。」
その場の全員は目を丸くする。
「やっと出られたって訳か。」
「お前……どうやって出たんだ?」
「あぁ、それは彼女のおかげだよ。」
春蘭は自身の後ろを指差す。春蘭の後ろには1人の女性がいた。紅色の髪に紅色の瞳をしている。
「まさか……椿か?」
「そうだ。お前の知っている神宮寺 椿だ。」
天垣はその光景に目を疑う。気配や魔力が200年前の神宮寺 椿本人と全く同じなのだ。
「ど……どうやって、200年も生きていたんだ?」
「簡単だ。こいつの腹の中にいた。」
椿は青を指差す。
「じゃあ、なんでもう1人入ってるんだ?」
「それはぁ……私の計画の一部だ。本来ならば美桜を食わせるつもりだったが、何かの手違いでこいつが自分から食われたからな。まあ、私の計画に支障はない。」
椿は腰に手を当てながら話す。
「お前の計画とはなんだ?その計画は一体いつから考えていた?」
「この計画は200年前から練ってある。そして、遂行のためのピースは徐々に埋まりつつある。」
椿はアーロンドを引っ張って立たせると、椅子に座る。
「計画の内容はお前たちの今の目的と同じ、ニグレードの討伐だ。今のままいけば確実に奴を討つことができるはずだ。」
「ロビンはどうするんだ?ニグレードに乗っ取られてるぞ。」
天垣が横から腕を組んで疑問をぶつける。
「それを加味した上での計画だ。事は順調に動いている。」
「本当にそうなのか?いくらお前の言うことであっても、今回ばかりは鵜呑みにできない。」
「この計画は自分でも完璧だと言い張れる。唯一の欠点をあげるとすれば、予想外の事が起きた場合、この計画の大部分が破綻することぐらいだ。もしそうなったら私がなんとかしよう。」
椿は自身有りげに答える。
「ふむ………赤、外を見てこい。」
椿の中から赤い龍が出てくる。
「何を探せばいい?」
「これ。」
椿は懐からタンザナイトを取り出す。
「この匂いか。ふむふむ……」
赤はタンザナイトの匂いを嗅ぐと外に飛び出す。
「タンザナイト、どこでそれを?」
凛が扉の隙間から覗きながら質問する。
「僕が渡したんだ。君から受け取っただろう?」
かな~り前……
「凛、タンザナイトはどこだい?」
「ここにありますよ。」
春蘭はタンザナイトを手に取る。
「少し用ができた。これも使わなければならない。」
「あなたの物なので勝手に使っても何も言いませんよ。」
「そういえば……そんなこともありましたね。確か夜が明けたくらいだったはず。」
「………。悪いが美桜以外は部屋から出てくれないか。少し2人になりたい。」
「承知しました。行きましょう。」
「え?」
ガーネットはアーロンドの反応に目を疑う。
「団長である私が容易く従うことに驚いてるようですね。その事は外で話します。今は着いてきて下さい。」
「同感だ。」
天垣はアーロンドのあとに部屋から出る。しばらくして、部屋の中は美桜と椿の2人だけになった。
「よし、これでやっと話ができる。」
椿は立ち上がると美桜に近づき、美桜の顎を指で上げる。
「やはり、私に似ているな。性格は全く違うようだが。それと……」
椿は美桜の中から青を引っ張り出す。
「何を隠れているんだ?私が怖いのか?」
「いや………」
「そうか。春蘭を食ったからか?」
「ギクッ……」
「別に気にしてなどいない。むしろそのほうが良かったかもしれない。」
椿は美桜が背負っている包に視線を向ける。
「その中の物を見せてくれ。」
美桜は包を椿に手渡す。包の中からはロビンが使っていた妖刀が出てきた。
「おい、起きろ、狐。」
椿の声に反応して九尾が姿を現す。
「私が誰か分かるか?」
「えっと……誰だ?」
「そうか。なら封印は解かないでおこう。」
「封印……封印……あぁぁ!てめぇあの時の女か!よくも俺を縛ってくれたな!」
九尾は何かを思い出して激昂する。
「はい。」
椿は九尾を刀から分離する。
「は?お前……そんな物わかりがよかったか?」
「なんだ?封印されていたほうがよかったのか?」
「いや、そういうわけじゃ……」
九尾は美桜の後ろに隠れる。
「あんたら、なんでそんなに怖がってるの?」
「お前には分からんだろうな!あいつは化け物だ!あんなのが人間なわけないだろ!」
九尾は歯を食いしばって唸り後をあげながら警戒する。
「1つ聞いてもいい?」
「いいぞ。時間の許す限りな。」
「青の中で何をしていたの?」
椿は顎に手を当てる。
「どう説明すればいいのやら…………。お前は時空干渉魔法を知っているか?」
「なにそれ?」
「やはり知らないか。この魔法は遥か昔に生まれた魔法だ。今では禁術の一種として歴史から抹消された。強大過ぎる故に、悪用されないようにな。」
美桜はある記憶が引っかかる。
(時空……時間と空間…………まさかあいつは……)
「その魔法って、時間を止めたり、2つの地点を繋げることはできるの?」
「う~ん……私が調べた限りではそのような使い方は記されていなかったが、おそらく可能だろう。禁術と言われるほどだからできても違和感はない。」
美桜は唾を飲む。首筋を冷や汗がつたう。
「……あんたは、ディファラスを知ってる?」
「あぁ、知ってるぞ。そいつがどうした?」
「あいつは……多分、さっき言った禁術が使えると思うの。時間を止めたり、空間を繋げたりしてた。私たちは手も足も出なかった。」
「なるほど。ディファラスが何かを持っていることは知っていたが……まさか禁術のたぐいだったとは。戦の前にいい情報が聞けた。」
椿は椅子に座る。
「そういえば、青にお前を食えと命令した理由を言っていなかったな。今からそれを話そう。」
椿は不気味な笑みを浮かべながら話を始める。
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