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【第17章 海上の闘争】
第4節 戦場 不穏
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「帰ってこない?椿に何をしたんですか?」
「俺は何もしてないぜ。あいつが勝手にそうなったんだ。」
ニグレードは欠伸をしながら言葉を返す。
「そうですか、返すつもりはないのですね。」
アーロンドが指を鳴らすと、周囲に無数の魔法陣が生成される。
「ちっ、お前の実力も大概だな。なぜこうも化け物じみた人間が多いんだ……」
ニグレードは黒い炎で魔法陣をかき消す。アーロンドはすぐさま魔法陣を修復する。
「魔法陣の修復にはかなりの魔力を消耗するはずだ。はたして、お前の魔力はいつまで保つのやら……」
「ふっふっふっ………攻撃は任せますよ。」
ニグレードの背後から玖羽が奇襲を仕掛ける。ニグレードは玖羽に気づいて黒い炎を手に集める。
(霊撃か。今の俺には通用しない。攻撃を終えたところに合わせてこいつを打つ。)
「おぉうらあぁぁ!」
ニグレードは玖羽の攻撃を体で受け止める。
「消し飛べ。」
ニグレードは手に集めた黒い炎を放とうとする。その直後、ニグレードを凄まじい衝撃が襲う。
「ぐっ?!」
「っらあぁぁ!」
ニグレードが怯んだ隙を逃さず、玖羽は腹部を殴りつける。
「今です!」
アーロンドはニグレードに向かって無数の魔法陣から光線を放つ。他の団員も合わせるように魔法で攻撃する。
「やったか?」
玖羽は立ち昇る煙幕の中からニグレードを探す。
「あれは……」
アーロンドが何かを言いかけた直後、煙幕を中心に広範囲が凄まじいに衝撃波に襲われる。
「ぐあぁっ?!」
「うおぉぉ?!」
衝撃波の影響でこちらは大きな痛手を負う。結界を張ったのにも関わらず、多くの団員が負傷する。
「くっ…うぅぅ……」
「美桜!大丈夫か?」
春蘭は美桜を庇うように立つ。
「まさか……まだ……生きているのか?」
赤は上空に向かい海面を見下ろす。海面には大きな穴が開いており海底を見下ろすことができる。
(一体どこにこれほどの力が?あいつの力に限界はないのか?)
海底にニグレードの姿を捉える。まだ生きている。
「負傷した者はすぐに治療を受けなさい。動ける者は前に。」
前にでてきたのはガーネット、春蘭、美桜、疾風コンパルゴの5人だけだ。
「おや?ガレジストが負傷したのは意外ですね。」
「あの人は私を庇って怪我をしたわ。ソールさんも他の団員を庇って……」
「わかりました。天垣はしばらくしたら復帰するかもしれません。」
「それより、あいつはどうするんだ?」
コンパルゴは海底にいるニグレードを指差す。
「水が流れてこない……あいつの結界の影響かしら。」
「しかし、まだ力を隠していたなんて……奴は相当底が知れないみたいだ。」
(彼の言う通りだ。奴はこれほどの力をまだ隠して持っていた。私たちを殺すことなど奴からすれば簡単なはず。何かが邪魔をしているのか?)
アーロンドは顎に手を当ててしばらく考える。しかし答えはでない。
「確かにそうだな。これ以上、何もないことを願うが。ちなみにお前の魔力はあとどれくらい保つ?」
疾風は魔纏を使いっぱなしの春蘭を気にかける。
「まだ保つね。具体的な時間は分からないけど。」
「皆さん行きますよ。腹は括りましたか?」
「とっくにできている。」
「あいつを殺せたから関係ねえ。」
「いつでもできてます。」
「僕は問題ないよ。」
「問題ないわ。」
5人は息を合わせるように返事をする。
「では、最後のあがきといきましょうか。」
アーロンドに続いて5人は穴に飛び込む。穴の底ではニグレードが1人で立ち尽くしていた。纏っていた黒い炎が消えている。
「はぁ………はぁ………ふぅ…」
ニグレードはこちらに気づくが手を出してこない。どこか苦しそうに胸を押さえている。
「……早く失せろ。いつまでそうやって抗うつもりだ?お前の意思はすでにこの肉体(からだ)に反映されていない。諦めろ。」
ニグレードがそう言うと、体が青い炎に包まれる。
「ぐっ…?!あ…ぁぁぁぁ!」
ニグレードは苦しそうに唸り声をあげる。
「あれは……どうなっているんだ?」
「おそらく、ロビン君の意思がニグレードの行動を阻害していると思われます。」
「なぜそう言い切れる?」
「ニグレードの力を持ってすれば私たちを全滅させるのは容易なはず。今この状況からこれは確定でしょう。しかし奴は中々殺そうとしなかった。いや、殺すことがでかなかったのですよ。あのように阻害されてね。」
ニグレードは青い炎を払おうと黒い炎を自身に浴びせる。しかし青い炎がそれを打ち消す。
「私たちがここまで戦えたのも、ロビン君の意思があったからだと私は思います。だからこそ、やるべきことは1つ。」
アーロンドは全員に防御魔法をかける。
「ここでニグレードを確実に仕留める。同時に、ロビン君を早急に救出する。」
6人はニグレードから黒い炎が消えた瞬間をついて一気に攻撃を仕掛ける。
「ちっ……まだ生きていたか。こいつと同じでしつこい奴らだ!」
ニグレードは地面から黒い炎を放つ。しかし、それをかき消すように青い炎が覆いかぶさる。
(そうか。黒い炎は水でも問題ないが、青い炎は水で消える。だが今は水がない。つまり、こいつに俺の全てを邪魔される!)
ニグレードの腕をガーネットの魔法が貫く。
「ちっ……妨害されていることを良いことに。調子に乗るな!」
ニグレードは地面を殴りつけて黒い炎を噴出させる。それに合わせるように青い炎がニグレードの周りを囲う。
「そこ!」
美桜が上から斬りつける。ニグレードは振り払おうとしたが、青い炎に阻まれて反応できない。
「くっ……」
薙刀がニグレードの胸に傷をつける。すかさず春蘭が背後から追撃を行う。
(ダメだ……青い炎に阻まれる。こうなったら仕方ない……)
「はぁ!」
ニグレードは自信の胸を思いっきり叩く。そして手からありったけの黒い炎を放つ。衝撃でニグレードの体がふらつく。
「何をしている?!」
「自分で隙を作るとはな!」
コンパルゴがニグレードに殴りかかる。
「待ちなさい!」
アーロンドはコンパルゴを止める。しかし、アーロンドの声が届く前にニグレードの拳がコンパルゴの腹部に命中する。
「がはっ?!」
コンパルゴは吹き飛ばされて地面に打ち付けられる。ニグレードは体に再び黒い炎を纏う。
「やっと大人しくなったか。だがこれで俺に敵はない。覚悟しろよ?」
ニグレードは勝ち誇ったような顔をする。
「これはマズイな。」
「ここから勝てる方法ってあるのか?」
ニグレードの体から青い炎が消える。それはロビンの意思が消えたことでもある。
「全員、消し炭となれ。」
ニグレードは黒い炎を辺りに蔓延らせる。
「ここは地獄なの?」
ガーネットは上から地面を見下ろす。
「立てるか?」
「平気。」
美桜は瓦礫をどかしてすぐに立ち上がる。
「俺に考えがある。俺の力をお前に貸す。それであいつに決定打を与えてくれ。」
「おい赤、こいつで大丈夫なのか?耐えれなくて死ぬんじゃねえのか?」
「大丈夫だろう。でなければ椿が探すはずがない。」
青は一本取られたと言っているような顔をする。美桜はガーネットの元に跳躍する。
「……援護して。」
ガーネットの耳元で美桜が言葉を残す。美桜はそのままニグレードに向かう。
「あ、ちょっと!」
ガーネットは美桜の後を追う。美桜の周りには赤と青が漂っている。
「一対の龍の加護を持っているのか。俺の炎が効きづらくなるが、特に問題はないな。」
美桜は黙ってニグレードに攻撃を仕掛ける。ニグレードは腕で攻撃を止める。しかし、赤に力を貸してもらった美桜の攻撃はニグレードを簡単に怯ませる。
「くっ……なんだ、この力は?!」
「どうだ、俺の力が加わったこいつの力は?」
赤は煽るようにニグレードの周りを一周する。
「すこし予想外なだけだ。すぐに殺してやる。」
ニグレードは反対の手で殴りかかる。美桜は軽やかに攻撃を避ける。
(体が軽い。いつもより動ける。)
そのままニグレードの背後から攻撃を行う。
「おのれ……こしゃくな!」
「っん?」
「やっと起きた。」
玖羽はベッドの上で目を覚ます。ベッドの端に奏美が座っている。
「あんたはニグレードの攻撃で負傷したの。その怪我では戦えないから私が監視してるわけ。あんたなら下手に動きかねないからね。」
玖羽は自分の体を見る。左腕の肘下から下がない。
「まじか……」
玖羽はため息をついて大人しい声で喋りだす。
「なんで俺、生きてんだろ。」
「急にどうしたの?」
「俺が昔、世界的に有名な殺人鬼ってこと知ってるだろ?そんな堕ちきった俺がなんで生還してるのかが疑問なんだ。」
玖羽は左腕に視線を落とす。
「失ったのは腕一本。こんなんじゃあ、俺が今まで奪ってきた命の償いにならないだろ……」
「……飲み物を取ってくる。動かないでよ。」
奏美は部屋から出る。玖羽は窓の外を見る。外には団員が少ない。それにこの部屋の場所はそれほど高くない。
(抜け出せるか?)
玖羽は立ち上がる。不思議なことに痛みはない。
「傷は完全に治ってるか。医療班の技術はやっぱ相当だな。」
玖羽は武器を腰に備えて窓を開ける。
「悪いな奏美。自殺行為だろうと、そんなことは関係ねえ。俺は俺の道を行く。正しければそれでいい。」
玖羽は窓から飛び降りて海面に開いた穴に向かう。その直後に部屋に3人ほど人が入ってくる。
「やっぱり逃げた。」
「大丈夫でしょうか……」
「彼のことだから大丈夫……とは言い切れない。流石に心配だ。」
奏美は飲み物を机に置いて外を見る。
「この戦いが終わったら四人で食べに行きましょうよ。」
凛が奏美を慰めるように声をかける。
「凛、その発言はやめといたほうがいいと思うよ。」
「え?どうしてですか?」
琉の言葉に凛は首を傾げる。
「ほらあれだよ、言ったら大変なことになるやつ。」
凛には理解できないようだ。頭上にハテナマークが見える。
「はぁ!」
「あまい!」
ニグレードは薙刀を掴んで美桜を引き寄せる。そのまま美桜を地面に押し倒す。
「くっ……青!」
青はニグレードに噛みつく。その隙に逃げ出すが、ニグレードは青を簡単に振り払いすぐに追いつく。
(やばい……赤の力が少なくなってきた。)
美桜はニグレードの攻撃を受け流すが、次の攻撃に対しての反応が遅くなりつつある。ニグレードの攻撃が頬をかする。
「そこだ!」
ニグレードの攻撃が美桜に迫る。
(しまった!これは避けられ……)
「うっ……?!」
春蘭が飛び出してきて美桜を庇う。そのまま吹き飛ばされる。
「兄さん!」
美桜は思わず素が表に出る。
「僕のことは……気にするな。……早く……そいつを…」
春蘭は意識を失ってしまう。
「まだ戦うのか?仲間がボロボロになってるっていうのに。」
「当たり前でしょ!あんたを倒すつもりでここにいるんだから。」
美桜はニグレードに勢いよく斬りかかる。
「はぁ……うっとおしい。」
ニグレードは美桜の攻撃をわざと受けると、美桜を殴り飛ばす。美桜は吐血しながらも体を起こす。青の加護で致命傷にはなっていない。
「解せない。なぜそこまで抗おうとする?瀕死になってまで戦おうとする?」
「私だって知らないわよ。というか、誰も知るわけないでしょ。」
「意味が分からない……知らなのになぜ行動できる?」
「さあ?本能じゃない?」
美桜は薙刀を手に取るが武器としては使えなくなってしまっている。
「武器はないぞ。それでもまだ戦うのか?」
「まだ……魔力が残ってる。」
美桜は怪我を治すと青を外に出す。
「まあいい……死にたいのなら、最後まで付き合ってやろう。」
「寝てるの?」
女性の声が聞こえる。ゆっくりと目蓋を開ける。目の前には1人の女性がいた。
「あ、起きた。手、動かせる?」
言われた通り手を動かす。女性に手を握られるが温もりを感じない。
「このまま休んでていいの?」
女性の言っていることが分からない。考えることができない。
「このままだと皆死んじゃうよ?私みたいに。」
女性の言葉に体がピクリと反応する。
「それどころか、世界も死んじゃうよ?住むところもなくなっちゃうよ?美味しいものだって、楽しいことだって。全部なくなっちゃうよ?それでいいの?」
口を動かす。しかし思うように声が出ない。
(失いたくない……だから、俺は……)
「俺は……あいつを……倒す!」
ニグレードは首に違和感を感じる。まさかと思い、恐る恐る視線を左に移動する。左手には自身の血が大量に付着していた。足元には血が垂れて水たまりのようになっている。ニグレードは全てを察する。
「こいつ?!……やりやがったな!」
それと同時にニグレードの体が青い炎に包まれる。
「ぐあぁぁぁ!」
(マズイ……このままだと、俺の魂が保たない!)
ニグレードはたまらずロビンの肉体(からだ)から抜け出す。ロビンは地面に手をついてゆっくりと目蓋を上げる。
「よくも散々暴れてくれたな。そこにいるんだろ?隠れてないで……とっとと出てこい!」
ロビンは岩陰に向かって青い炎を放つ。ニグレードの炎が岩陰が溢れる。ロビンはそれを確認すると美桜の元に歩いていく。
「ロビン……あんた、平気なの?」
「そんなこと言ってる時間はない気がするぜ。それに、お前の魔力が切れたら面倒な気がするんだ。」
ロビンは刀を受け取ると岩陰のほうを見る。ニグレードが岩陰から出てきて何かをしようとしている。
「青い炎の扱いにもかなり慣れた。しばらくは大丈夫だ。」
ロビンはそう言って駆け出す。
「ここはあいつに任せるしかない。不安しかないだろうが仕方ない。椿がどうなっているか分からんしな。」
「そうだった……うん、行こう。」
美桜は壁となっている海の中に入って赤について行く。
「俺は何もしてないぜ。あいつが勝手にそうなったんだ。」
ニグレードは欠伸をしながら言葉を返す。
「そうですか、返すつもりはないのですね。」
アーロンドが指を鳴らすと、周囲に無数の魔法陣が生成される。
「ちっ、お前の実力も大概だな。なぜこうも化け物じみた人間が多いんだ……」
ニグレードは黒い炎で魔法陣をかき消す。アーロンドはすぐさま魔法陣を修復する。
「魔法陣の修復にはかなりの魔力を消耗するはずだ。はたして、お前の魔力はいつまで保つのやら……」
「ふっふっふっ………攻撃は任せますよ。」
ニグレードの背後から玖羽が奇襲を仕掛ける。ニグレードは玖羽に気づいて黒い炎を手に集める。
(霊撃か。今の俺には通用しない。攻撃を終えたところに合わせてこいつを打つ。)
「おぉうらあぁぁ!」
ニグレードは玖羽の攻撃を体で受け止める。
「消し飛べ。」
ニグレードは手に集めた黒い炎を放とうとする。その直後、ニグレードを凄まじい衝撃が襲う。
「ぐっ?!」
「っらあぁぁ!」
ニグレードが怯んだ隙を逃さず、玖羽は腹部を殴りつける。
「今です!」
アーロンドはニグレードに向かって無数の魔法陣から光線を放つ。他の団員も合わせるように魔法で攻撃する。
「やったか?」
玖羽は立ち昇る煙幕の中からニグレードを探す。
「あれは……」
アーロンドが何かを言いかけた直後、煙幕を中心に広範囲が凄まじいに衝撃波に襲われる。
「ぐあぁっ?!」
「うおぉぉ?!」
衝撃波の影響でこちらは大きな痛手を負う。結界を張ったのにも関わらず、多くの団員が負傷する。
「くっ…うぅぅ……」
「美桜!大丈夫か?」
春蘭は美桜を庇うように立つ。
「まさか……まだ……生きているのか?」
赤は上空に向かい海面を見下ろす。海面には大きな穴が開いており海底を見下ろすことができる。
(一体どこにこれほどの力が?あいつの力に限界はないのか?)
海底にニグレードの姿を捉える。まだ生きている。
「負傷した者はすぐに治療を受けなさい。動ける者は前に。」
前にでてきたのはガーネット、春蘭、美桜、疾風コンパルゴの5人だけだ。
「おや?ガレジストが負傷したのは意外ですね。」
「あの人は私を庇って怪我をしたわ。ソールさんも他の団員を庇って……」
「わかりました。天垣はしばらくしたら復帰するかもしれません。」
「それより、あいつはどうするんだ?」
コンパルゴは海底にいるニグレードを指差す。
「水が流れてこない……あいつの結界の影響かしら。」
「しかし、まだ力を隠していたなんて……奴は相当底が知れないみたいだ。」
(彼の言う通りだ。奴はこれほどの力をまだ隠して持っていた。私たちを殺すことなど奴からすれば簡単なはず。何かが邪魔をしているのか?)
アーロンドは顎に手を当ててしばらく考える。しかし答えはでない。
「確かにそうだな。これ以上、何もないことを願うが。ちなみにお前の魔力はあとどれくらい保つ?」
疾風は魔纏を使いっぱなしの春蘭を気にかける。
「まだ保つね。具体的な時間は分からないけど。」
「皆さん行きますよ。腹は括りましたか?」
「とっくにできている。」
「あいつを殺せたから関係ねえ。」
「いつでもできてます。」
「僕は問題ないよ。」
「問題ないわ。」
5人は息を合わせるように返事をする。
「では、最後のあがきといきましょうか。」
アーロンドに続いて5人は穴に飛び込む。穴の底ではニグレードが1人で立ち尽くしていた。纏っていた黒い炎が消えている。
「はぁ………はぁ………ふぅ…」
ニグレードはこちらに気づくが手を出してこない。どこか苦しそうに胸を押さえている。
「……早く失せろ。いつまでそうやって抗うつもりだ?お前の意思はすでにこの肉体(からだ)に反映されていない。諦めろ。」
ニグレードがそう言うと、体が青い炎に包まれる。
「ぐっ…?!あ…ぁぁぁぁ!」
ニグレードは苦しそうに唸り声をあげる。
「あれは……どうなっているんだ?」
「おそらく、ロビン君の意思がニグレードの行動を阻害していると思われます。」
「なぜそう言い切れる?」
「ニグレードの力を持ってすれば私たちを全滅させるのは容易なはず。今この状況からこれは確定でしょう。しかし奴は中々殺そうとしなかった。いや、殺すことがでかなかったのですよ。あのように阻害されてね。」
ニグレードは青い炎を払おうと黒い炎を自身に浴びせる。しかし青い炎がそれを打ち消す。
「私たちがここまで戦えたのも、ロビン君の意思があったからだと私は思います。だからこそ、やるべきことは1つ。」
アーロンドは全員に防御魔法をかける。
「ここでニグレードを確実に仕留める。同時に、ロビン君を早急に救出する。」
6人はニグレードから黒い炎が消えた瞬間をついて一気に攻撃を仕掛ける。
「ちっ……まだ生きていたか。こいつと同じでしつこい奴らだ!」
ニグレードは地面から黒い炎を放つ。しかし、それをかき消すように青い炎が覆いかぶさる。
(そうか。黒い炎は水でも問題ないが、青い炎は水で消える。だが今は水がない。つまり、こいつに俺の全てを邪魔される!)
ニグレードの腕をガーネットの魔法が貫く。
「ちっ……妨害されていることを良いことに。調子に乗るな!」
ニグレードは地面を殴りつけて黒い炎を噴出させる。それに合わせるように青い炎がニグレードの周りを囲う。
「そこ!」
美桜が上から斬りつける。ニグレードは振り払おうとしたが、青い炎に阻まれて反応できない。
「くっ……」
薙刀がニグレードの胸に傷をつける。すかさず春蘭が背後から追撃を行う。
(ダメだ……青い炎に阻まれる。こうなったら仕方ない……)
「はぁ!」
ニグレードは自信の胸を思いっきり叩く。そして手からありったけの黒い炎を放つ。衝撃でニグレードの体がふらつく。
「何をしている?!」
「自分で隙を作るとはな!」
コンパルゴがニグレードに殴りかかる。
「待ちなさい!」
アーロンドはコンパルゴを止める。しかし、アーロンドの声が届く前にニグレードの拳がコンパルゴの腹部に命中する。
「がはっ?!」
コンパルゴは吹き飛ばされて地面に打ち付けられる。ニグレードは体に再び黒い炎を纏う。
「やっと大人しくなったか。だがこれで俺に敵はない。覚悟しろよ?」
ニグレードは勝ち誇ったような顔をする。
「これはマズイな。」
「ここから勝てる方法ってあるのか?」
ニグレードの体から青い炎が消える。それはロビンの意思が消えたことでもある。
「全員、消し炭となれ。」
ニグレードは黒い炎を辺りに蔓延らせる。
「ここは地獄なの?」
ガーネットは上から地面を見下ろす。
「立てるか?」
「平気。」
美桜は瓦礫をどかしてすぐに立ち上がる。
「俺に考えがある。俺の力をお前に貸す。それであいつに決定打を与えてくれ。」
「おい赤、こいつで大丈夫なのか?耐えれなくて死ぬんじゃねえのか?」
「大丈夫だろう。でなければ椿が探すはずがない。」
青は一本取られたと言っているような顔をする。美桜はガーネットの元に跳躍する。
「……援護して。」
ガーネットの耳元で美桜が言葉を残す。美桜はそのままニグレードに向かう。
「あ、ちょっと!」
ガーネットは美桜の後を追う。美桜の周りには赤と青が漂っている。
「一対の龍の加護を持っているのか。俺の炎が効きづらくなるが、特に問題はないな。」
美桜は黙ってニグレードに攻撃を仕掛ける。ニグレードは腕で攻撃を止める。しかし、赤に力を貸してもらった美桜の攻撃はニグレードを簡単に怯ませる。
「くっ……なんだ、この力は?!」
「どうだ、俺の力が加わったこいつの力は?」
赤は煽るようにニグレードの周りを一周する。
「すこし予想外なだけだ。すぐに殺してやる。」
ニグレードは反対の手で殴りかかる。美桜は軽やかに攻撃を避ける。
(体が軽い。いつもより動ける。)
そのままニグレードの背後から攻撃を行う。
「おのれ……こしゃくな!」
「っん?」
「やっと起きた。」
玖羽はベッドの上で目を覚ます。ベッドの端に奏美が座っている。
「あんたはニグレードの攻撃で負傷したの。その怪我では戦えないから私が監視してるわけ。あんたなら下手に動きかねないからね。」
玖羽は自分の体を見る。左腕の肘下から下がない。
「まじか……」
玖羽はため息をついて大人しい声で喋りだす。
「なんで俺、生きてんだろ。」
「急にどうしたの?」
「俺が昔、世界的に有名な殺人鬼ってこと知ってるだろ?そんな堕ちきった俺がなんで生還してるのかが疑問なんだ。」
玖羽は左腕に視線を落とす。
「失ったのは腕一本。こんなんじゃあ、俺が今まで奪ってきた命の償いにならないだろ……」
「……飲み物を取ってくる。動かないでよ。」
奏美は部屋から出る。玖羽は窓の外を見る。外には団員が少ない。それにこの部屋の場所はそれほど高くない。
(抜け出せるか?)
玖羽は立ち上がる。不思議なことに痛みはない。
「傷は完全に治ってるか。医療班の技術はやっぱ相当だな。」
玖羽は武器を腰に備えて窓を開ける。
「悪いな奏美。自殺行為だろうと、そんなことは関係ねえ。俺は俺の道を行く。正しければそれでいい。」
玖羽は窓から飛び降りて海面に開いた穴に向かう。その直後に部屋に3人ほど人が入ってくる。
「やっぱり逃げた。」
「大丈夫でしょうか……」
「彼のことだから大丈夫……とは言い切れない。流石に心配だ。」
奏美は飲み物を机に置いて外を見る。
「この戦いが終わったら四人で食べに行きましょうよ。」
凛が奏美を慰めるように声をかける。
「凛、その発言はやめといたほうがいいと思うよ。」
「え?どうしてですか?」
琉の言葉に凛は首を傾げる。
「ほらあれだよ、言ったら大変なことになるやつ。」
凛には理解できないようだ。頭上にハテナマークが見える。
「はぁ!」
「あまい!」
ニグレードは薙刀を掴んで美桜を引き寄せる。そのまま美桜を地面に押し倒す。
「くっ……青!」
青はニグレードに噛みつく。その隙に逃げ出すが、ニグレードは青を簡単に振り払いすぐに追いつく。
(やばい……赤の力が少なくなってきた。)
美桜はニグレードの攻撃を受け流すが、次の攻撃に対しての反応が遅くなりつつある。ニグレードの攻撃が頬をかする。
「そこだ!」
ニグレードの攻撃が美桜に迫る。
(しまった!これは避けられ……)
「うっ……?!」
春蘭が飛び出してきて美桜を庇う。そのまま吹き飛ばされる。
「兄さん!」
美桜は思わず素が表に出る。
「僕のことは……気にするな。……早く……そいつを…」
春蘭は意識を失ってしまう。
「まだ戦うのか?仲間がボロボロになってるっていうのに。」
「当たり前でしょ!あんたを倒すつもりでここにいるんだから。」
美桜はニグレードに勢いよく斬りかかる。
「はぁ……うっとおしい。」
ニグレードは美桜の攻撃をわざと受けると、美桜を殴り飛ばす。美桜は吐血しながらも体を起こす。青の加護で致命傷にはなっていない。
「解せない。なぜそこまで抗おうとする?瀕死になってまで戦おうとする?」
「私だって知らないわよ。というか、誰も知るわけないでしょ。」
「意味が分からない……知らなのになぜ行動できる?」
「さあ?本能じゃない?」
美桜は薙刀を手に取るが武器としては使えなくなってしまっている。
「武器はないぞ。それでもまだ戦うのか?」
「まだ……魔力が残ってる。」
美桜は怪我を治すと青を外に出す。
「まあいい……死にたいのなら、最後まで付き合ってやろう。」
「寝てるの?」
女性の声が聞こえる。ゆっくりと目蓋を開ける。目の前には1人の女性がいた。
「あ、起きた。手、動かせる?」
言われた通り手を動かす。女性に手を握られるが温もりを感じない。
「このまま休んでていいの?」
女性の言っていることが分からない。考えることができない。
「このままだと皆死んじゃうよ?私みたいに。」
女性の言葉に体がピクリと反応する。
「それどころか、世界も死んじゃうよ?住むところもなくなっちゃうよ?美味しいものだって、楽しいことだって。全部なくなっちゃうよ?それでいいの?」
口を動かす。しかし思うように声が出ない。
(失いたくない……だから、俺は……)
「俺は……あいつを……倒す!」
ニグレードは首に違和感を感じる。まさかと思い、恐る恐る視線を左に移動する。左手には自身の血が大量に付着していた。足元には血が垂れて水たまりのようになっている。ニグレードは全てを察する。
「こいつ?!……やりやがったな!」
それと同時にニグレードの体が青い炎に包まれる。
「ぐあぁぁぁ!」
(マズイ……このままだと、俺の魂が保たない!)
ニグレードはたまらずロビンの肉体(からだ)から抜け出す。ロビンは地面に手をついてゆっくりと目蓋を上げる。
「よくも散々暴れてくれたな。そこにいるんだろ?隠れてないで……とっとと出てこい!」
ロビンは岩陰に向かって青い炎を放つ。ニグレードの炎が岩陰が溢れる。ロビンはそれを確認すると美桜の元に歩いていく。
「ロビン……あんた、平気なの?」
「そんなこと言ってる時間はない気がするぜ。それに、お前の魔力が切れたら面倒な気がするんだ。」
ロビンは刀を受け取ると岩陰のほうを見る。ニグレードが岩陰から出てきて何かをしようとしている。
「青い炎の扱いにもかなり慣れた。しばらくは大丈夫だ。」
ロビンはそう言って駆け出す。
「ここはあいつに任せるしかない。不安しかないだろうが仕方ない。椿がどうなっているか分からんしな。」
「そうだった……うん、行こう。」
美桜は壁となっている海の中に入って赤について行く。
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線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。
だが、ある夜。
仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。
――勇者は、男ではなかった。
女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。
そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。
正体を隠す者と、真実を抱え込む者。
交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。
これは、
「勇者であること」と
「自分であること」のあいだで揺れる物語。
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