紡ぐ者

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【第23章 変革の時】

第1節 世界が変わる時

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「私はもう行く。せいぜい、お前たちの手段で足掻くと良い。こちらもそうさせてもらう。」
グレイ・ローズが指を鳴らすと、カーネリアと白兎も含めて姿を消す。
「世界が変わる……か。……行きましょ。」
椿は玖羽と美桜に歩み寄り、耳元で囁く。
「行くって……どこに?」
「決まってるでしょ。世界を守るのよ。」
「ちょっと待て。話の内容がでかすぎて追いつけねぇんだが……。」
「さっき起きた襲撃、あれはただの予兆に過ぎない。本当の戦いはこれから始まるのよ。」
「戦いって……っておい、待てよ!」
玖羽は椿を追って走り出す。
「おい、何ぼさっとしてんだ?」
美桜の後ろからコンパルゴが覗き込むように話しかける。
「置いてくぞ。」
コンパルゴは天井の穴から外に飛び出す。気づけば、裁判場内には美桜以外、誰もいなかった。
「行くぞ。」
美桜は青に背中を押されながら外に出る。外に出た瞬間、美桜は急に吐き気に襲われる。
「うっ……魔力が濃ゆい……。」
「それだけ大量の魔獣が現れているということか。かなり急いだほうがよさそうだな。」
「とは言っても……どこに向かえばいいの?」
「ひとまず、竜の小娘の所に向かうのはどうだ?」
「う~ん、確かに、行く宛がないもんね。」
青は美桜を背中に乗せ、セレストの居場所に向かって飛び立つ。



同時刻 ロンドンシティにて……
「くっ……数が……」
ガーネットは槍で魔獣を突き放した後、瓦礫の隙間に身を隠す。苦悶の表情を浮かべながら、腹部の傷を確認する。
(まずい……この量だと、血の匂いで気づかれるかも……。)
街の上空には、大量の魔獣がガーネットを見つけんとばかりに飛行している。
(死神の力で一掃するべき?でも、今の状態では迂闊に使いたくない。)
「大丈夫ですか?」
ガーネットが様子を伺っていると、瓦礫の下をくぐってサーミルとアメジストが現れる。
「どうしてここに?」
「市民の避難は完了しました。あとこちら、まずは怪我を治してください。」
アメジストはガーネットに医療キットを渡す。アメジストは少し怒っているように見える。
「ありがとう。治したいところだけど、外を見て。魔獣が私のことを探してる。遅かれ早かれ見つかると思うの。だから、少し時間を稼いでほしい。私が怪我を治すまででいいから。そうすれば死神の力で一掃できる。」
「わかりました。行きましょう、サーミル様。」
2人は瓦礫の陰を歩いて、反対側から魔獣を刺激する。
「にしても……流石に多すぎないか?!」
サーミルは剣を抜いて、襲いくる魔獣を斬り伏せる。アメジストは短剣と体術で魔獣を倒す。
「確実に減らしていきましょう。ガーネット様に近づけさえしなければ問題はありません。」
アメジストは淡々と魔獣を始末していく。突然、2人を何かの影が覆い尽くす。
「危ない!」
アメジストはサーミルを連れて影の外に出る。その直後、空から巨大な魔獣が地面に向かって急降下してくる。その魔獣は鷹の頭とライオンの体を持つ異形の姿をしていた。
「グリフォン……最上位の魔獣だ!」
グリフォンは空に向かって咆哮する。その声を聞きつけた他の団員が集まってくる。
「来るな!」
サーミルは団員を呼び止める。
「他の下級の相手をしろ!こいつは危険だ!」
サーミルが警告をしていると、グリフォンはサーミルに向かって鉤爪のついた前脚を振り下ろす。サーミルは間一髪のところで剣で受け止める。
「ぐっ………はぁっ!」
サーミルはグリフォンの前足を斬り落とす。グリフォンは怯んで距離をとる。その隙にアメジストは短剣でグリフォンの体を何度も切りつける。しかし、それでもグリフォンは倒れない。
「やっぱりタフだな。狙うなら首か?」
「いえ、それは現実的ではありません。狙うのであれば翼でしょう。飛ばれては手を足も出ません。」
「やっぱりそうなるのか……。」
「苦戦しているようだな。私が援護しよう。」
2人の前にカーザスが姿を現す。
「このグリフォンは私たちで対処します。あなた様は中心地に向かってください。」
「ハーベストなら、多少私がいなくとも対処できるだろう。それに、部下の手を煩わせるわけにはいかないからな。あと、私が担当していた東側は大方片付いた。」
「それなら任せる。」
サーミルはグリフォンに向かって走り出す。グリフォンはサーミルに向かって噛みつこうとするが、グリフォンの頭部が下がったところをカーザスは狙う。取り出した銃から弾丸が放たれる。銃声に反応したグリフォンは咄嗟に離れるが、弾丸はグリフォンの胴体に撃ち込まれる。グリフォンは悲鳴をあげて態勢を崩す。その隙に、サーミルとアメジストはグリフォンの翼を攻撃する。グリフォンは飛び立とうするが、翼を傷つけられてうまく飛ぶことができない。そのまま地面に落下する。落下してきたところに、サーミルは攻撃を合わせる。剣はグリフォンの首を斬り落とす。
「ふぅ……倒したぞ。」
「あら、意外と早かったわね。」
怪我を治したガーネットが瓦礫の下から這い出てくる。
「そんな所にいたのか……。それより、なぜあなたが負傷しているんだ?」
「ちょっと油断してね。……あなたちに言いいたことがあるの。」
ガーネットの真剣な表情に、辺りに緊張が走る。
「今すぐ街の中心地に向かって。とんでもない奴がそこに向かったの。」
突如、街の中心から爆音が発せられる。
「まずい……行くよカーザス。2人は残って!」
ガーネットは地面を蹴って浮遊すると、すぐに中心地に向かう。
「私たちは残れっ……」
「まぁ、下級の魔獣が蔓延ってますからね。」
アメジストがサーミルのほうを見ると、そこにはサーミルの姿がなかった。だが背後から、サーミルの気配を感じた。アメジストが恐る恐る振り返ると、サーミルはグリフォンの攻撃を体を張って防いでいた。
「サーミル様?!」
アメジストは咄嗟に周囲に煙幕を張り、サーミルを瓦礫の裏に運ぶ。
「大丈夫ですか?!」
「大丈夫なわけ………ないだろ……。」
サーミルはか細い声で喋る。体にはグリフォンの鉤爪で引き裂かれた跡が、痛々しく、くっきりと残っている。
「グリフォンの首を斬ったのではないのですか?」
「いや……斬ったさ。ただ……、生き返ったんだ。」
「生き……返った?」
「聞いただろ?……死んでも……再生する魔獣のことを……。あのグリフォンも……その例に当てはまる。だから……一切の魔力を使うな……。純粋な武器による攻撃が………あいつには有効……」
サーミルは意識を失ってアメジストの腕の中でぐったりと倒れ込む。アメジストは近くにいた団員にサーミルの治療を任せる。
「よくも……」
アメジストは短剣を強く握りしめる。瓦礫の向こう側では、他の団員がグリフォンと戦っている。
「よくも……サーミル様を……。」
アメジストは怒りを露わにし、グリフォンに向かって切りかかる。グリフォンは飛んできたアメジストを地面に叩きつける。
「かはっ……」
アメジストが起き上がろうとしたところを、グリフォンは前脚でアメジストを踏みつける。
「やめっ……」
アメジストは逃げ出そうとするが、グリフォンは押さえつける力を強くする。
「っっっ……?!」
アメジストは声を出すことができないほどの激痛に全身を襲われる。他の団員はグリフォンに向かって魔法を浴びせる。グリフォンの注意がそれ、押さえつける力が緩む。
(今……なら……)
アメジストは体を引きずり出し、グリフォンから距離をとる。その際、地面に落ちていたサーミルの剣を回収する。グリフォンはアメジストを睨むと、口を開いてアメジストに襲いかかる。アメジストはグリフォンの口を躱して、自身の短剣をグリフォンの喉に突き刺す。グリフォンは甲高い悲鳴をあげる。グリフォンの口からは血がこぼれ落ちる。
(動け……)
アメジストは自分に言い聞かせるように、心の中でひたすら連呼する。怒ったグリフォンは唸り声をあげながらアメジストに向かって突進してくる。
「動……けっ!」
アメジストは剣を振り下ろし、グリフォンの片目に傷をつける。グリフォンは一瞬怯むが、体を回転させて、尻尾でアメジストを吹き飛ばす。
「ぐっ……?!」
アメジストは勢いよく瓦礫の山に打ち付けられる。グリフォンは他の団員のほうを見ると、目の色を変えて襲いかかる。
(やめろ……これ以上……)
アメジストは剣を握りしめ、ゆっくりと立ち上がる。
(腕が上がらない………骨が折れた……。)
他の団員はグリフォンに応戦するが、なすすべなく吹き飛ばされる。
「なんだこいつ……攻撃するたびに……強くなってるぞ!」
グリフォンの前脚が団員に迫る。
「させるかっ!」
どこからか玖羽が現れ、グリフォンを遠くに蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたグリフォンは、瓦礫の山に頭部から突っ込む。
「大丈夫か?!」
「は、はい!」
負傷した団員は他の団員たちに運ばれる。玖羽は瓦礫のそばに佇むアメジストを見る。
「お前も退け。その怪我ではまともに戦えない。」
「わかっています。だけど、あいつだけは……あいつだけは、私が仕留めなければ……。」
アメジストはその場に膝をつく。
「本はと言えば、私が犯した失態。そのせいで、サーミル様は……。」
玖羽はアメジストに歩み寄り、アメジストの体を支える。
「何があったかは知らねぇが、少なくとも、お前が悪いってのはないだろ。今の状況じゃあ、何が起こるかなんて誰も分かんねぇんだ。」
玖羽はアメジストを他の団員に任せる。ちょうど、グリフォンが瓦礫から飛び出してくる。 「はぁ……お前の相手をしてる暇はないんだ。さっさとケリをつける!」
玖羽は剣を生成し、グリフォンに向かって飛び立つ。グリフォンは玖羽に向かって急降下してくる。玖羽はグリフォンを軽やかに避け、グリフォンに向かって剣を振る。剣はグリフォンの体を真っ二つにする。グリフォンは地面に落下して塵となって消えた。
「倒したのですか?」
団員に支えられながらアメジストは玖羽に問いかける。
「あぁ。………っ?!」
玖羽は表情を変えて辺りを見渡す。
「すぐに退け。他の団員にも知らせろ。」
「急にどうされたのですか?」
「何か来る。」
玖羽の首筋を一粒の汗がつたっている。それに気づいたアメジストは玖羽の指示通りに動く。団員たちが退避したあと、周囲から地鳴りのような音が聞こえてくる。
「下か!」
玖羽はすぐにその場から離脱する。その直後、巨大な生物が地面から口を開けて飛び出してくる。
「蛇?いや、龍か?!いや……どちらとも言えるか。」
玖羽にはそれがなんなのか、すぐに理解できた。
「蛇龍ウロボロス……。八岐大蛇、リヴァイアサンとならぶ伝説上の魔獣じゃねえか……。なんでこんなやつが街中にいるんだ……。」
ウロボロスは玖羽を見つけると、口を開けて覆いかぶさる。ウロボロスは瓦礫や地盤を飲み込みながら玖羽に接近する。
(ちっ……でかすぎるだろ……。ビルくらいなら丸呑みにできるだろ。その上、さっきからもう1つ妙な気配を感じるのはなんだ?まさか……まだ何かいるってのか?!)



数分前 ロンドンシティ中心地にて……
「バケモノめ……」
ハーベストは地面に膝をつき、上空に浮かぶ1人の少女に向けて言葉を放つ。
「なんとでも言いなさい。負け惜しみにしか聞こえないから。」
少女はハーベストを煽るように見下すような視線を送る。ガーネットは鎌を振り、少女に斬撃を放つ。
「さっきから……どれだけ私と遊んでほしいわけ?はっきり言って、構ってちゃんとは遊びたくないの。」
「誰が……構ってちゃんだ!」
ガーネットは槍を少女に向かって投げ、自身も少女に向かって鎌を振りかざす。
「ははっ!無駄だよ。全部無駄!」
少女は槍を弾き落とし、鎌を腕で受け止める。 「そうだ。頑張ってるあなたに良いことを教えてあげる。私の相手をするよりも、この後に起こることに備えたほうが身のためだよ?」
「何が起こるっていうわけ?!悪魔であるあんたを放置するほうがよっぽど危険よ!」
「あれれぇ?信じないのぉ?じゃーあー、もっっっと良いこと教えてあげる。私の力は、全てのドラゴンや龍を操ることができるの。今この街に私の下僕の龍が向かってるんだ。確かその子の名前は……ウロボロスだったかな?」
その名前を聞いたガーネットは無意識に少女の腕を掴む。
「あんた……大陸をひっくり返すつもり?!」
「うーん、そこまでは教えてあげない。」
ガーネットは目の色を変えて、少女に向かって槍を突き出す。
「もぉ、私知ーらない。警告はしたからね?」
少女は不穏な言葉を残して槍が命中する前に姿を消す。
「今……奴はなんと言った?ウロボロスがここに近づいているのか?」
「いや……もうすでに、この街にいるのだろう。」
ハーベストはカーザスの言葉に耳を疑う。その直後、遠くから地鳴りが聞こえてくる。
「まさか……そんなことが……」
次の瞬間、アメジストたちがいた場所にウロボロスが現れる。
「……行くぞ。」
3人はすぐにウロボロスのもとに向かう。その様子を少女は離れたところから見ていた。
「ふふっ、焦ってる焦ってる。私の狙いは、この街だけじゃないんだ。はぁ、あの子を下僕にすると、一体どういう気分になるんだろう?ふふふっ、想像しただけで興奮してきちゃった♪」
少女はロンドンから姿を消し、どこかへと向かう。



「くそっ、こんなのどうやって倒せばいいんだ?」
玖羽はひたすらウロボロスから逃げていた。ウロボロスは建物や地盤を破壊しながらゆっくりと玖羽に近づいている。玖羽は剣を生成し、ウロボロスが口を開けた瞬間を狙う。玖羽が直線の道に入った途端、ウロボロスは口を大きく開けて速度を上げる。
(くる!)
玖羽は生成した剣に魔力を込めて、ウロボロスの口内目掛けて思い切り投げる。剣はウロボロスの口内に深く突き刺さる。しかし、ウロボロスには効いているとは思えない。何事をなかったかのようにウロボロスは玖羽に近づいてくる。
「しゃあねぇ。覚悟を決めるか!」
玖羽はウロボロスの口の中目掛けて勢いよく突撃する。ウロボロスが雄叫びをあげた直後、ガーネット、カーザス、ハーベスト3人はようやくウロボロスのもとに辿り着く。
「大きすぎるでしょ……。こんな生物が存在していいの?というか、倒せるの?」
「生物である以上、必ず倒す方法はある。今は弱点を探すのが優先だ。」
カーザスは手始めにウロボロスに弾丸を撃ち込む。弾丸はウロボロスにはまったくと言っていいほど効いていない。
「やはり、銃では無意味のようだ。こうなると、武器ではダメージを蓄積させるのは不可能に思えるな。」
「内側からなら有効かも?」
「それは危険すぎる。」
「であれば、総攻撃で倒すまでだ!」
ハーベストは魔法を詠唱し始める。それに気づいたウロボロスはこちらに近づいてくる。ガーネットは鎌をウロボロスに振り下ろす。しかし、ウロボロスの動きが一瞬止まっただけだった。
「伏せて。」
ガーネットは鎌を構える。深呼吸をして鎌に魔力を集めだす。魔力が集まった鎌からは不気味なオーラが溢れている。ウロボロスの口がガーネットに迫った時、ハーベストはウロボロスに向かって詠唱した魔法を放つ。
「この一撃は……痛いよ?」
ウロボロスの頭部が仰け反った瞬間、ガーネットは鎌を思い切り振る。鎌からは空間を裂くような強烈な斬撃が放たれる。斬撃は広範囲の建物を切り崩し、ウロボロスの頭部から胴体を真っ二つにする。ガーネットは地面に座り込み、手から鎌が消える。
「ふぅ……久々に使ったかな。」
周囲広範囲には、空間を引き裂いたような歪な痕跡が残っている。
「なんという威力だ。」
「殆ど死神の力だけどね。」
「流石にこれを喰らえばウロボロスであっても無事ではすまないだろう。」
3人がウロボロスの様子を伺っていると、ウロボロスの目がギョロッと動き出す。そして頭部と胴体がゆっくりと繋がり、完全にもとに戻る。
「でしょうね。ウロボロスの生命力は他の生物を凌駕している。たった1回の攻撃で倒せるはずがない。」
「ではどうすれば……」
「一旦引きましょう。怒っている状態のウロボロスに近づくのは危険。」
3人は高台に避難する。ウロボロスは3人を探しているのか、その場から動かずにひたすら周囲を見渡している。
「中々警戒を解かないな。」
「ウロボロスは一度狙った獲物は絶対に逃さない。その上、ウロボロスにとって脅威となる一撃を与えているから尚更ね。」
「もう一度先程の攻撃を使えないのか?」
「使えないわけではないと思うけど、さっきよりも長い溜め時間が必要になる。」
「私たち2人ではウロボロスの注意を引くのは少々力不足だな。それに今の君の言葉からして、ウロボロスは君を集中的に狙ってくるように思える。」
「だったら、私が注意を引こうか?」
3人の背後からルアーザが杖を持って現れる。
「ルアーザ様?!お体のほうは大丈夫なのですか?」
「えぇ。呪いは神宮寺 椿に解いてもらった。いつでも戦える状態だ。」
「それなら心強い。」
ガーネットは鎌で支えにしてゆっくりと立ち上がる。
「じゃあ、お願いね。」
3人は迫りくるウロボロスの注意を引くべき、ウロボロスに魔法で攻撃を仕掛ける。しかしウロボロスは3人に目もくれない。
「奴の目を狙え。視界に入れば気がそれるはずだ。」
カーザスはウロボロスの目に向かって弾丸を放つ。弾丸がウロボロスの瞼に当たる。ウロボロスはカーザスのほうを見て、口を開けて威嚇する。
「隙ができた。いけるか?!」
「まだ……」
ガーネットは鎌に魔力を集めるが、消耗しているため、溜めるのに時間がかかる。
「お前の相手は私だ。」
ルアーザはウロボロスの周囲に魔法陣を生成し、一気に光線を放つ。ウロボロスはルアーザのいる場所に体当たりを仕掛ける。
「へぇ、多少の知能は備えているのか。だが、こちらも準備は整った。」
ガーネットは宙に跳び上がり、ウロボロス目掛けて鎌を振り下ろす。先程同様、鎌から放たれた斬撃はウロボロスの体に深い傷を与える。しかし、今回はウロボロスを気絶させることはできなかった。
「効いて……ない?」
ガーネットは愕然としながら地面に座り込んでしまう。ウロボロスはガーネットを見下ろし、口を開けてゆっくりと近づく。
「逃げろ!」
カーザスはガーネットに向かって叫ぶが、ガーネットは体の疲労のせいで動くことができない。ウロボロスが目の前に迫ったとき、ウロボロスの動きがピタリと止まる。その後、ウロボロスは体を反らして悶え苦しみ始める。
「……どうなってるの?一体、何に苦しんでるの?」
ウロボロスが断末魔をあげた途端、ウロボロスの体内から玖羽が何かを持って皮膚を突き破って飛び出してくる。
「もらったぜ、お前の心臓!」
玖羽は剣でウロボロスの心臓を斬り刻む。ウロボロスは空に吠えながら地面に倒れ込む。
「あ、あんた……どこにいたの?」
ルアーザは唖然として玖羽に問いかける。
「んなもん、あいつの中だ。文句あるか?」
玖羽はウロボロスを指差しながら平然と答える。玖羽の体には変な液体が絡みついている。
「それは……なんだ?」
カーザスは不審がりながら玖羽に聞く。
「そりゃあ、こいつの口から侵入したわけだから……まぁ、胃液だ。ちなみに少し溶けた。すぐ治るけどな。」
(いや……流石に狂ってるでしょ……。)
ガーネットは少し引き気味に玖羽の言葉に耳を傾ける。
「それより、お前たちに訃報がある。」
4人は表情を曇らせる。
「今回の襲撃で、25名の団員が息を引き取った。」
「………覚悟はしていたが、予想よりも多いな。」
ルアーザはペンダントを握りしめながら唇を噛みしめる。
「それに加えて、50名以上の団員が負傷した。そのうちの半数以上は大怪我だ。」
「……そうか。情報提供、感謝する。」
カーザスは暗い表情で礼をする。
「私たちは治療に取り掛かる。お前はどうするんだ?」
ハーベストは気持ちを切り替えて玖羽に問う。
「俺は他の国に向かう。他の場所でも、相当な被害が出ているはずだ。」
「わかった。………気をつけろよ。」
「あぁ、お前らもな。」
そう言って、玖羽は走り去る。


「サーミル様……。」
アメジストはサーミルの手を握る。しかし、サーミルの手からは生気が感じられない。だが、まだまだほのかに温かい。
「アメジスト……」
ガーネットは部屋に入るやいなや、サーミルに寄り添う。
「眠ってるの?」
「……えぇ、ぐっすりと。」
「……怪我の状態は?」
「私を庇って、グリフォンの鉤爪を受けました。」
「そう……。」
ガーネットが部屋から出ようとすると、サーミルはかすれた声を発する。
「ガ……ネット……様……。」
ガーネットは思わず振り向いて立ち止まる。
「私のこと……は……、心配……しない…で…くだ……さい。あなたは……やるべき……こと………を……。」
ガーネットはサーミルの近くに寄る。
「…わかったわ。あなたは、ゆっくり休んでちょうだい。」
ガーネットはサーミルの耳元で優しく囁く。それを聞いたサーミルは口角を少し上げ、再び眠ってしまう。部屋から出たガーネットは胸に手を当てる。手を伝って、心音が聞こえてくる。
「サーミル……あなたの言う通り、今は立ち止まってる場合じゃない私はやるべきことをやる。」
ガーネットは髪留めを外して髪を下ろす。



「ああくそっ!どんだけいるんだよ?!」
カトラリーはノコギリを振り回しながら魔獣の群れの中を突き進む。マールドはカトラリーの援護を行っている。
「前方500メートル先に強力な魔獣の反応有り。すぐに向かって!」
「言われなくても……わかってらぁ!」
カトラリーは速度を上げ、群れの中を勢いよく駆け抜ける。段差から勢いよく飛び出し、魔獣の群れの中心目掛けてノコギリを振り下ろす。
「目障りなんだよぉっ!」
カトラリーの周囲に強烈な突風が巻き起こり、魔獣は次々と蹴散らされる。群れの中に、一体だけいる巨大な魔獣の姿を捉える。
「はぁ……あいつが例の奴か?」
「すぐそっちに向かうから、少しだけ持ち堪えて。」
「まったく、私を誰だと思ってるんだ?」
カトラリーはノコギリを目の前の巨大な魔獣に向ける。それは蛇のように細長い体をしているが、頭部には複数の触手がうねうねと蠢いている。
「まるで寄生虫だな。」
魔獣は無数の触手を尖らせ、カトラリーに向かって放つ。カトラリーは触手をノコギリで弾く。弾いた触手は地面に突き刺さったり、街灯を破壊する。
「いちいちいちいち……気持ち悪いなっ!」
カトラリーは魔獣の体に切りかかるが、弾力質の体に跳ね返される。
(こいつっ……刃が通らねぇ?!)
カトラリーがバランスを崩したところに、魔獣は触手を伸ばしてカトラリーを拘束する。
(しくじった……)
カトラリーは逃れようと触手を切断しようとするが、体が痺れるような痛みに襲われる。
「がっ………毒か……。まさか……触手に毒素が……。」
カトラリーは焼けるような痛みと猛烈な吐き気に襲われる。
(やばい……意識が………消えっ……)
カトラリーが気を失いそうになる直後、1つの弾丸が魔獣の頭部を撃ち抜く。魔獣はカトラリーを解放する。
「やっと………来たか……。」
マールドはふらつくカトラリーの体を支える。
「てめぇは……あいつらを撃ち抜くこと……だけを考えろ。」
「そんなことできません。一旦安全な場所に…」
カトラリーはマールドの手を跳ね除ける。
「早く奴らを殺せ!もたもたしてると、大勢の人側が死ぬぞっ……?!」
カトラリーは体を押さえなが地面に膝をつく。
「私に構うな!」
カトラリーは、近づいてくるマールドを一蹴する。マールドは近づくのをやめて、カトラリーに一言言い残す。
「今日のあなたは……何か変です。」
マールドはその場から走り去る。しばらくして、何度も銃声が辺りに響き渡る。
(はぁ……結局、私は弱い人間だ。昔からだ…。)
カトラリーの脳裏に昔の記憶が蘇ってくる。そこにはスラム街で大きな男と喧嘩をする、子供の頃の自分の姿があった。
(そうだ……、私は元々、スラム街の出身だったな。喧嘩だけは誰よりも強かった、当時の私は、自分が最強だと思っていた。……あの時までは。)
カトラリーは地面に転がっている石を握る。
(15の頃だったか……。スラム街にあいつが現れたんだ。……ガレジスト……。当時はまだ仙級だったな。ガレジストは私を探していた。私を見つけるやいなや、「魔道士になる気はないか?」とスカウトしてきやがった。その後、私はあの男に無性にイラついたんだった。何が気に入らなかったんだ?あぁそうか……。純粋にイラついたんだ。……スラム街とは全く無縁と言えるような服を着て、おまけにご立派な道具まで持ってたんだな。私はすぐに拳を繰り出したが、あの男に片手で止められた。そのあと、すぐにあいつの首に蹴りを入れてやろうとしたが……、簡単に足をすくわれたんだったな。)
カトラリーは手に力を込める。握っていた石にヒビが入る。
(その後、私はアメリカ支部に連れて行かれ、半ば強制的に魔道士になったんだ……。当時、喧嘩だけは強かった私は、手始めに新米の魔道士と模擬戦をすることになったんだ。……まぁ、体術のみだったが……。その時、私は身を持って痛感したんだ。自分は弱いってな。喧嘩が強いくらいじゃ、魔道士には全く敵わない。大人にだって勝てたのにな……。ほんと……、あのときは惨めな気持ちになったな。それからは、ガレジストがマンツーマンで教えてくれたな。基礎的な体術から武器の扱いまで。だけど、私は魔法を扱うのだけは得意ではなかった。でもそれは、あいつも同じだったな。あのときお前が言っていた言葉の意味が、今になってようやく理解できた。)
「俺たちは似た者同士……か。……なんで、あの時はそうは思わなかったんだろうな。」
カトラリーはノコギリを掴もうとすると、手に何かが触れる。触れたものを見ると、そこには透明な筒に入った不思議な液体が落ちていた。
「これは……解毒剤か?はっ、マールドのやつ、私にこれを使って欲しいのか?」
カトラリーは筒を手に取り、中の液体を飲み干す。
「はぁ……、死ぬ気はねえからな。ありがたく飲ませてもらうぜ。」
(……やっぱり、私は弱い人間だ。マールドのように銃の扱いが上手いわけでもなく、ガレジストのように、特段、体術が強いわけじゃない。本当に……中途半端な人間だ。弱い私にできること……、それは……。)
カトラリーが壁を伝って立ち上がった時、通信機に1つの音声が入る。
「もう少しだけ耐えるんだ!ガレジスト様がもうすぐこちらに向かわれる!」
カトラリーはその言葉を聞いた瞬間、自分でも信じられないくらいの速度で戦場に飛び出す。
(あいつを……あいつを、こんなところで消耗させるわけにはいかねぇ!)
「え?!なんでここに?!」
マールドは飛び出してきたカトラリーに驚きながらも、冷静に魔獣を処理する。カトラリーは息を吸って、腹の底から大声を出す。
「聞けお前らぁっ!!!」
その声に全ての団員と魔獣が怯む。
「今からガレジストが来る前に、ここの魔獣を一掃するぞ!」
「あなたは……安静にしてしてなさい!」
マールドはカトラリーを叱る。しかしカトラリーは聞く耳を持たない。
「あいつをこんなところで消耗させるな!悪魔と渡り合える可能性があるのはあいつしかいない。だったら、弱い私たちにはできることはなんだ?それは、あいつの負担を減らすことだ!」
カトラリーは魔獣の前に立つ。他の団員たちも前線に立とうとするが、カトラリーはノコギリで行く手を阻む。
「言い忘れてたぜ。お前らも戦うな。戦うのは、私1人でいい!」
「いやいやいや!なんで毒を受けた人を戦わせなきゃいけないんですか?!」
「うるせぇ、私が決めたことだ。口答えすんじゃねえ!」
マールドはカトラリーの気迫に押される。
「もぉ……どうなっても知らないからね?!」
マールドは他の団員を退避させる。同時に、魔獣の群れはカトラリーに向かって進み出す。
「こいよ雑魚ども。てめぇらの相手は、私1人で十分だ!」
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クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

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