116 / 117
【第23章 変革の時】
第6節 闇よりも黒く……
しおりを挟む
「何があったの?」
ガーネットは団員たちに状況を聞く。ロンドン郊外の建物には、たくさんの団員が集まっている。
「どうやら地下室で火災が起きたとのことです。」
「地下室……。」
「どうされましたか?」
「いや、なんでもない。私1人で地下室に向かう。だから…、すぐに全員を退避させて。」
「ですが、あなたは……」
「私のことは気にしないで。一刻も早く……。」
団員はガーネットが焦っているように見える。
「……わかりました。ですが、無茶だけはしないでください。あなたは悪魔に対抗しうる、貴重な戦力なのですから。」
「えぇ、こんなところで死ぬつもりはない。」
ガーネットは1人で地下室に向かう。
「来たか。」
本部のロビーに、グレイ・ローズが幹部たちと共に待機していた。
「椿はいないのか……、意外だな。」
「それより、これからどこに向かうの?」
美桜は誰よりも先にグレイ・ローズに聞く。
「今からロビンのもとに向かう……、それが今までのプランだったが、少々予想外の事態が起きた。今お前たちのトップが取り合っている状態だ。」
「何が起きたの?」
「ロンドン郊外の建物で火災が起きたらしい。」
「それは初耳だな。」
玖羽は剣の状態を確認しながらグレイ・ローズを睨む。
「でも今は、そんなことに構っている場合じゃないと思うが?それに、その火災がロビンの蘇生となんの関係があるんだ?」
「その建物にロビンの肉体があると言ったら?」
その言葉に、全員の視線がグレイ・ローズに向く。
「おいおい、まじで言ってんのか?だったら、尚の事さっさと向かうべきだろ。」
「今ここで、私たちがそこに向かうとどうなるかわかるか?」
「どうなるんだ?」
「悪魔共が一斉に奇襲を仕掛けてくるぞ。そうなればこちらが全滅する可能性が高い。まだ状態がハッキリとしていないというのに……、おまけに大量の魔獣と4体の悪魔。手がつけられない状態になる。」
「つまり……、何か動きがあるまでここから動くなと?」
美桜は震えた声をしながらグレイ・ローズに聞く。
「そうなるな。」
「こんなときに椿は何をしているんだ……。」
春蘭は額に手をあてながらため息をつく。
「はぁ……、もういい。いくぞ樫茂、純連。」
疾風は2人を呼ぶ。
「どこに行く気だい?」
「決まってるんだろ。魔獣を減らす。」
「そうだね。指を咥えて待っているよりも、この時間に魔獣を処理したほうが成功率は上がる。」
2人は疾風について行く。
「春蘭、お前は残ってろ。」
「なん……」
「疑問に思うのは仕方ねぇ。だがな……、妹に手を貸さない兄なんて、この世にいないだろ?」
そう言って、疾風たちは本部から飛び出す。
「はぁ……。彼の言う通りなのかな…。」
春蘭は刀を握りしめる。
(熱い……。)
ガーネットは地下室の前に辿り着く。地下室の中から、魔力の波が押しかけてくる。
(魔力が濃ゆすぎる……。でも、行くしかない。)
ガーネットは恐る恐る地下室の中を覗き込む。しかし、地下室だの中には何もなかった。ガーネットはその状況に息を呑む。
「嘘でしょ……?」
ガーネットは地下室の中を観察する。床や壁、天井には激しく燃やされた跡がある。
「まさか……いや……、そんなわけ……。」
ガーネットは隣の部屋も観察する。
「……ない。」
ガーネットの手から槍が落ち、地面に音をたてて倒れる。
「いやいやそんなわけ…。連れ去ったってこと?なんのために?」
ガーネットが状況に困惑していると、建物の外から騒ぎ声が聞こえてくる。
(まずい……!)
ガーネットは地下室の天井を突き破って建物の外に飛び出す。
「……っ!……いた…。」
ガーネットは上空に佇む1つの人影を見つける。
「よぉ、久しぶりだな。」
男はガーネットに声をかける。男の体には黒い光が駆け巡っている。
「あんたは誰?……いや、だいたいわかるか……。久しぶりね。……ニグレード。」
「おいおい、なんでそいつの名前が出るんだ?俺のことを忘れたのか?俺はロビンだ。小さい頃からの仲だろ?」
「……違う。見た目ロビンだけど、中身が違う。ロビンそんな、闇に満ちた目をしていない!」
ガーネットはロビンに向かって魔力を込めた槍を投げる。ロビンは槍を躱す。槍は魔力を解き放ち、周囲に魔力の爆発を起こす。
「はぁ……、あっさりバレたな。まあいい。どちらにせよ、俺がやることは変わってねえからな。」
ニグレードが指を鳴らすと、ガーネットの周囲に無数の黒い球体が現れる。黒い球体は連鎖的に爆発を引き起こす。ガーネットは爆発を避け、ニグレードに向かって鎌を振る。
「はは、腕を上げたのか?だが、お前は負ける。」
ニグレードは鎌を掴む。
「死神の鎌がなんだ?こんもの……、ただのおもちゃなんだよ!」
鎌を辿り、ガーネットの体に黒い炎が迫る。ガーネットは鎌を手放して黒い炎から逃れる。ニグレードは鎌を手に取り、ガーネットに向ける。
「へぇ、中々使いやすいじゃねえか。」
ニグレードは試しに鎌を振り上げる。鎌から黒い炎が斬撃状に放たれる。ガーネットは斬撃を躱すが、斬撃は無数の剣となってガーネットに降り注ぐ。
「いつまで保つか試してやる。」
ガーネットの周囲を、黒い炎が覆い尽くす。
(しまっ……)
黒い炎はゆっくりと縮みだす。ガーネットは剣を躱すことで手一杯だ。
(一か八か……死神の防御力なら軽症で済むはず…。)
ガーネットは黒い炎に向かって勢いよく飛び込む。
(出てこねえな。これで終わりとは……もう少し骨のあるやつだと思っていたが……。)
ニグレードは黒い炎の中から近づいてくる気配に気づく。
「ふん、特攻か。その根性だけは認めてやるぜ。」
ニグレードは鎌に黒い炎を集め、ガーネットが出てくるタイミングを狙う。ガーネットが黒い炎から飛び出してくる。ニグレードは鎌を振り、ガーネットを容易に覆い尽くすほどの黒い炎を放つ。ガーネットは視界が黒いで塞がった瞬間、死神の力を解除する。ニグレードの手から鎌が消える。
「はぁっ?!」
ガーネットは地面に向かったの落下し始めるが、黒い炎の範囲から逃れる。ニグレードはすぐにガーネットを追う。
(来た……。)
ガーネットはニグレードが接近したタイミングで、死神の力を使う。ガーネットは鎌をニグレードに向かって振り下ろす。ニグレードは止まる事ができず、鎌の攻撃を受ける。
「……てめっ…」
「ふふっ、かかると思った……。あんたは私よりも遥かに強いけど、単純すぎるという弱点がある。」
ニグレードは空中で態勢を整える。
「だがよぉ、こんなもので俺が死ぬと思えるか?」
(問題はそこ。こんなのは一時凌ぎにしかならない。死神の解除と発動を連続でしたから体力が保たないかも……。)
ガーネットは鎌を落とさないよう、強く握りしめる。
(足止めできれば……)
ガーネットはニグレードに切りかかる。ニグレードは黒い炎を剣に変え、鎌を受け止める。
「武器の勝負で、俺に勝てると?面白い!」
ニグレードが剣を振るたびに、黒い炎が周囲に放たれる。ガーネットは剣を躱しつつ黒い炎を浴びないように立ち回る必要があったため、集中力を失わないように精神を研ぎ澄ます。
(もっと速く……もっと正確に……!)
ガーネットの鎌にヒビが入り始める。
(保って……お願いだから!)
ガーネットは鎌を思い切り振り下ろす。ニグレードの剣とぶつかった瞬間、剣と鎌は両方とも砕け散る。
(やばっ……魔力が。)
ニグレードが剣を破壊されたことに戸惑っている隙に、ガーネットはニグレードの背後に魔法陣を生成する。しかし魔法を放つ前に、ガーネットは地面に向かって吹き飛ばされる。
(えっ……?)
ガーネットは吹き飛ばされる直前、もう1つの人影を視界に捉えた。
「とりあえず団長に取り合ってなんとか来れたけど……」
美桜たちが到着した時、ガーネットは団員たちの治療を受けていた。
「あ……やっと来た。」
「何があったの?」
「……ニグレードが復活した。」
団員たちは驚いて言葉が詰まる。グレイ・ローズは冷静にガーネットに状況を聞く。
「ニグレードがロビンの体に憑依したの。それで、私は足止めしようとしたけど……。」
「逃げられたと。」
「この状況…。前と同じだな。」
「そういえば……、あの時もニグレードがロビンの体を乗っ取って……。」
玖羽と美桜は視線を合わせる。
「……それだけじゃない。」
ガーネットの言葉にその場の者は困惑する。 「復活したのはニグレードだけじゃないの?」
「ニグレードだけだと最初は思ってたんだが……、もう1体、ニグレードとは別に何か強大な存在がいた。」
「それも何かが憑依したやつなの?」
「分からない。でも、1つ確認したいことがあふんだ。……私を地下室まで連れて行ってほしい。」
美桜は無言でガーネットに肩を貸す。
「地下室はどこ?」
「私が案内する。」
ガーネットは美桜に支えられながらグレイ・ローズと玖羽を地下室に連れて行く。
「ここよ。」
4人は地下室に足を踏み入れる。地下室内には燃えた跡が残っている。中央には1つのケースが置いてあるだけだ。
「これは冷却装置か?」
「そう。ここは遺体安置所なの。」
「遺体安置所って……。まじで言ってんのか?」
「えぇ。この部屋には、ロビンの遺体が冷凍保存されていた。」
「えげつねえな……。」
美桜は部屋を見渡すと、壁に穴が開いていることに気づく。どうやら隣の部屋と区切る壁が破壊されているようだ。
「隣の部屋は何?」
「あぁ……、この部屋は……。」
隣の部屋の床には、ガラスの破片が散乱している。どうやらケースが破壊されたようだ。
「まさか……こうなるなんてね…。ロビンも予想外だったでしょうね。」
「この部屋にも遺体が置いてあったのか?」
グレイ・ローズは少し気まずそうにガーネットに聞く。
「えぇ……。置いてあったわ。私の一番大切な…」
「アリスの遺体が……。」
その事実を聞いた美桜は衝撃で凍りつく。
「それ……本当なの?」
「この状況で嘘なんかつけると思う?」
ガーネットは顔を下に向ける。
「私が思うに、もう1体の存在っていうのはアリスのことだと思うの。」
「いや……アリスが生き返ったって言うの?それだったら、あんたと敵対する理由がなくない?」
「でも何かが憑依したって考えても、何が憑依したかなんて分からない。」
グレイ・ローズは壁にもたれかかりながら考え事をしている。
「そのアリスという者は…、女性なのか?」
「うん……。」
ガーネットは暗い雰囲気を出しながら返答する。
「……そうか。」
(もしや……でもどうやって……?果たしてこれを伝えるべきか?)
グレイ・ローズの戸惑っている表情に玖羽は気づく。
「何か心当たりがあるのか?」
「あるにはあるが……、どうやったのかが分からない。」
「それでもいい。教えてくれ。」
「これはここで話すことじゃない。全員の前で話すべきだ。」
「わかった。行くぞお前ら。」
玖羽とグレイ・ローズは地下室をあとにする。
「歩ける?」
「流石に歩けるよ。……あ、ちゃんと支えてね。」
2人の後を追って外に向かう。
「やっと出てきたか。」
戻ると椿と天垣、各支部の面々が揃っていた。
「各支部のトップクラスの奴らが集まるとは……圧巻の光景だな。」
「その枠組みにあんたも入るけど?」
美桜は玖羽の脇腹をつつく。
「で、ニグレードが復活したって?」
椿はあまり驚いていないように見える。
「あぁ。奴はどこかへと逃亡した。」
「はぁ…、まんまと悪魔共にはめられた。あいつらはニグレードが復活するまでの時間を稼いでた。世界各地への襲撃も、ニグレードへの注目を避けるためだと思う。」
「まさかそんな意図があるなんて……。」
「今アーロンドにニグレードを追わせてる。」
「悪いな。それより、私から伝えたいことができた。まずは、お前の考えから話してくれ。」
ガーネットは状況を説明する。
「アリスが生き返った……?そんなことがあるのか?それに敵対なんて……」
「そう。私もあり得ないと思いたい。だけど、ロビンと一緒にアリスの遺体も消えた。私を吹き飛ばした人影がアリスじゃないとしたら誰になるって話。」
「それで、あんたは心当たりがあるわけね?」
「あぁ。ただ、これは物理的に不可能だと私は思っている。まずはアリス?に何が憑依したのかだが……、おそらく、"ノア"という女性だ。」
「それも昔戦ったの?」
「いや……当時、私はノアという名前しか聞いていない。アブルートがノアについて最も詳しかったが、ほとんどのことを教えてくれなかった。唯一教えてくれたのは、ノアの身に起きた悲劇が原因で、魔王が誕生し、終わりなき戦いが始まった、ということだけだ。」
「でも、ノアだと断定できない理由は何?」
「ニグレードが蘇生魔法を見つける前に封印されているからだ。……今思えば、こちらも蘇生魔法を探していれば、ニグレードとは和解できたかもしれない。それなのに……賊共の自分勝手な行動のせいでニグレードがブチギレたからな。」
「ニグレードがブチギレたって……何があったの?」
「賊共がノアの遺体を強奪したんだ。目的はネックレスだろう。そのせいで、地上には魔獣が蔓延り、世界各地で悪魔との紛争が起こった。」
「とりあえず、ノアがニグレードにとって大事な人間ということがわかった。それだけでも十分だ。」
「……ちょっといい?」
椿は美桜に呼ばれる。
「何?」
「憶えてる?ニグレードと戦ったとき、暗闇の中に隠れてた黒い炎を扱う少女のこと。」
「あぁ……。それならさっき、私もあんたと同じことを考えた。その可能性はある。」
すると、アーロンドが突然姿を現す。
「皆さんに朗報です。ニグレードの現在地を特定しました。」
「奴はどこに?」
「ニグレードは現在東京にいます。」
「はあっ?!」
「その隣にはアリス君の姿も確認しました。おそらく、今の状況に関してはあなたたちのほうが詳しいでしょう。」
そう言い残し、アーロンドは姿を消す。
「行くぞ。」
グレイ・ローズは幹部たちを連れて飛び立つ。
「青、お願い。」
「任せ……ろぉっ?!」
青の背中に美桜だけではなく、天垣、春蘭、玖羽、ガレジストが乗ってくる。
「定員オーバーだ!」
「だったら赤も。」
「まじかよ……。」
赤は潔く団員たちを乗せて飛び立つ。
「はっ……、やっと見つけたぜ…。まさかこんなとこにあるとはな。」
ニグレードは建物の瓦礫の中から透明な筒を拾う。中には何かの欠片が入っている。
「これさえあれば……」
ニグレードは筒の中から破片を取り出す。
「……来た。」
アリスはニグレードに人の気配が近づいてきたことを伝える。
「ようやくか。」
外に出ると、グレイ・ローズと幹部たちが戦闘態勢に入っていた。
「作戦はわかっているな?ニグレードをロビンの体から追い出す。」
「いつでもいいよ。」
「私も~。」
「いいぜ。」
「了解。」
「構わん。」
アリスが前に出ようとするが、ニグレードはアリスの前に腕を伸ばす。
「お前が行く必要はない。まだその体に馴染んでいないだろ?」
「わかった……。」
アリスはニグレードの後ろに隠れる。
(やっぱりお前が出てくるか。)
「さて……、始めようか。」
ロビンの体から黒い炎が溢れ出す。
「行くぞ……!」
グレイ・ローズの声で、幹部たちはニグレードに向かって総攻撃を仕掛ける。
ガーネットは団員たちに状況を聞く。ロンドン郊外の建物には、たくさんの団員が集まっている。
「どうやら地下室で火災が起きたとのことです。」
「地下室……。」
「どうされましたか?」
「いや、なんでもない。私1人で地下室に向かう。だから…、すぐに全員を退避させて。」
「ですが、あなたは……」
「私のことは気にしないで。一刻も早く……。」
団員はガーネットが焦っているように見える。
「……わかりました。ですが、無茶だけはしないでください。あなたは悪魔に対抗しうる、貴重な戦力なのですから。」
「えぇ、こんなところで死ぬつもりはない。」
ガーネットは1人で地下室に向かう。
「来たか。」
本部のロビーに、グレイ・ローズが幹部たちと共に待機していた。
「椿はいないのか……、意外だな。」
「それより、これからどこに向かうの?」
美桜は誰よりも先にグレイ・ローズに聞く。
「今からロビンのもとに向かう……、それが今までのプランだったが、少々予想外の事態が起きた。今お前たちのトップが取り合っている状態だ。」
「何が起きたの?」
「ロンドン郊外の建物で火災が起きたらしい。」
「それは初耳だな。」
玖羽は剣の状態を確認しながらグレイ・ローズを睨む。
「でも今は、そんなことに構っている場合じゃないと思うが?それに、その火災がロビンの蘇生となんの関係があるんだ?」
「その建物にロビンの肉体があると言ったら?」
その言葉に、全員の視線がグレイ・ローズに向く。
「おいおい、まじで言ってんのか?だったら、尚の事さっさと向かうべきだろ。」
「今ここで、私たちがそこに向かうとどうなるかわかるか?」
「どうなるんだ?」
「悪魔共が一斉に奇襲を仕掛けてくるぞ。そうなればこちらが全滅する可能性が高い。まだ状態がハッキリとしていないというのに……、おまけに大量の魔獣と4体の悪魔。手がつけられない状態になる。」
「つまり……、何か動きがあるまでここから動くなと?」
美桜は震えた声をしながらグレイ・ローズに聞く。
「そうなるな。」
「こんなときに椿は何をしているんだ……。」
春蘭は額に手をあてながらため息をつく。
「はぁ……、もういい。いくぞ樫茂、純連。」
疾風は2人を呼ぶ。
「どこに行く気だい?」
「決まってるんだろ。魔獣を減らす。」
「そうだね。指を咥えて待っているよりも、この時間に魔獣を処理したほうが成功率は上がる。」
2人は疾風について行く。
「春蘭、お前は残ってろ。」
「なん……」
「疑問に思うのは仕方ねぇ。だがな……、妹に手を貸さない兄なんて、この世にいないだろ?」
そう言って、疾風たちは本部から飛び出す。
「はぁ……。彼の言う通りなのかな…。」
春蘭は刀を握りしめる。
(熱い……。)
ガーネットは地下室の前に辿り着く。地下室の中から、魔力の波が押しかけてくる。
(魔力が濃ゆすぎる……。でも、行くしかない。)
ガーネットは恐る恐る地下室の中を覗き込む。しかし、地下室だの中には何もなかった。ガーネットはその状況に息を呑む。
「嘘でしょ……?」
ガーネットは地下室の中を観察する。床や壁、天井には激しく燃やされた跡がある。
「まさか……いや……、そんなわけ……。」
ガーネットは隣の部屋も観察する。
「……ない。」
ガーネットの手から槍が落ち、地面に音をたてて倒れる。
「いやいやそんなわけ…。連れ去ったってこと?なんのために?」
ガーネットが状況に困惑していると、建物の外から騒ぎ声が聞こえてくる。
(まずい……!)
ガーネットは地下室の天井を突き破って建物の外に飛び出す。
「……っ!……いた…。」
ガーネットは上空に佇む1つの人影を見つける。
「よぉ、久しぶりだな。」
男はガーネットに声をかける。男の体には黒い光が駆け巡っている。
「あんたは誰?……いや、だいたいわかるか……。久しぶりね。……ニグレード。」
「おいおい、なんでそいつの名前が出るんだ?俺のことを忘れたのか?俺はロビンだ。小さい頃からの仲だろ?」
「……違う。見た目ロビンだけど、中身が違う。ロビンそんな、闇に満ちた目をしていない!」
ガーネットはロビンに向かって魔力を込めた槍を投げる。ロビンは槍を躱す。槍は魔力を解き放ち、周囲に魔力の爆発を起こす。
「はぁ……、あっさりバレたな。まあいい。どちらにせよ、俺がやることは変わってねえからな。」
ニグレードが指を鳴らすと、ガーネットの周囲に無数の黒い球体が現れる。黒い球体は連鎖的に爆発を引き起こす。ガーネットは爆発を避け、ニグレードに向かって鎌を振る。
「はは、腕を上げたのか?だが、お前は負ける。」
ニグレードは鎌を掴む。
「死神の鎌がなんだ?こんもの……、ただのおもちゃなんだよ!」
鎌を辿り、ガーネットの体に黒い炎が迫る。ガーネットは鎌を手放して黒い炎から逃れる。ニグレードは鎌を手に取り、ガーネットに向ける。
「へぇ、中々使いやすいじゃねえか。」
ニグレードは試しに鎌を振り上げる。鎌から黒い炎が斬撃状に放たれる。ガーネットは斬撃を躱すが、斬撃は無数の剣となってガーネットに降り注ぐ。
「いつまで保つか試してやる。」
ガーネットの周囲を、黒い炎が覆い尽くす。
(しまっ……)
黒い炎はゆっくりと縮みだす。ガーネットは剣を躱すことで手一杯だ。
(一か八か……死神の防御力なら軽症で済むはず…。)
ガーネットは黒い炎に向かって勢いよく飛び込む。
(出てこねえな。これで終わりとは……もう少し骨のあるやつだと思っていたが……。)
ニグレードは黒い炎の中から近づいてくる気配に気づく。
「ふん、特攻か。その根性だけは認めてやるぜ。」
ニグレードは鎌に黒い炎を集め、ガーネットが出てくるタイミングを狙う。ガーネットが黒い炎から飛び出してくる。ニグレードは鎌を振り、ガーネットを容易に覆い尽くすほどの黒い炎を放つ。ガーネットは視界が黒いで塞がった瞬間、死神の力を解除する。ニグレードの手から鎌が消える。
「はぁっ?!」
ガーネットは地面に向かったの落下し始めるが、黒い炎の範囲から逃れる。ニグレードはすぐにガーネットを追う。
(来た……。)
ガーネットはニグレードが接近したタイミングで、死神の力を使う。ガーネットは鎌をニグレードに向かって振り下ろす。ニグレードは止まる事ができず、鎌の攻撃を受ける。
「……てめっ…」
「ふふっ、かかると思った……。あんたは私よりも遥かに強いけど、単純すぎるという弱点がある。」
ニグレードは空中で態勢を整える。
「だがよぉ、こんなもので俺が死ぬと思えるか?」
(問題はそこ。こんなのは一時凌ぎにしかならない。死神の解除と発動を連続でしたから体力が保たないかも……。)
ガーネットは鎌を落とさないよう、強く握りしめる。
(足止めできれば……)
ガーネットはニグレードに切りかかる。ニグレードは黒い炎を剣に変え、鎌を受け止める。
「武器の勝負で、俺に勝てると?面白い!」
ニグレードが剣を振るたびに、黒い炎が周囲に放たれる。ガーネットは剣を躱しつつ黒い炎を浴びないように立ち回る必要があったため、集中力を失わないように精神を研ぎ澄ます。
(もっと速く……もっと正確に……!)
ガーネットの鎌にヒビが入り始める。
(保って……お願いだから!)
ガーネットは鎌を思い切り振り下ろす。ニグレードの剣とぶつかった瞬間、剣と鎌は両方とも砕け散る。
(やばっ……魔力が。)
ニグレードが剣を破壊されたことに戸惑っている隙に、ガーネットはニグレードの背後に魔法陣を生成する。しかし魔法を放つ前に、ガーネットは地面に向かって吹き飛ばされる。
(えっ……?)
ガーネットは吹き飛ばされる直前、もう1つの人影を視界に捉えた。
「とりあえず団長に取り合ってなんとか来れたけど……」
美桜たちが到着した時、ガーネットは団員たちの治療を受けていた。
「あ……やっと来た。」
「何があったの?」
「……ニグレードが復活した。」
団員たちは驚いて言葉が詰まる。グレイ・ローズは冷静にガーネットに状況を聞く。
「ニグレードがロビンの体に憑依したの。それで、私は足止めしようとしたけど……。」
「逃げられたと。」
「この状況…。前と同じだな。」
「そういえば……、あの時もニグレードがロビンの体を乗っ取って……。」
玖羽と美桜は視線を合わせる。
「……それだけじゃない。」
ガーネットの言葉にその場の者は困惑する。 「復活したのはニグレードだけじゃないの?」
「ニグレードだけだと最初は思ってたんだが……、もう1体、ニグレードとは別に何か強大な存在がいた。」
「それも何かが憑依したやつなの?」
「分からない。でも、1つ確認したいことがあふんだ。……私を地下室まで連れて行ってほしい。」
美桜は無言でガーネットに肩を貸す。
「地下室はどこ?」
「私が案内する。」
ガーネットは美桜に支えられながらグレイ・ローズと玖羽を地下室に連れて行く。
「ここよ。」
4人は地下室に足を踏み入れる。地下室内には燃えた跡が残っている。中央には1つのケースが置いてあるだけだ。
「これは冷却装置か?」
「そう。ここは遺体安置所なの。」
「遺体安置所って……。まじで言ってんのか?」
「えぇ。この部屋には、ロビンの遺体が冷凍保存されていた。」
「えげつねえな……。」
美桜は部屋を見渡すと、壁に穴が開いていることに気づく。どうやら隣の部屋と区切る壁が破壊されているようだ。
「隣の部屋は何?」
「あぁ……、この部屋は……。」
隣の部屋の床には、ガラスの破片が散乱している。どうやらケースが破壊されたようだ。
「まさか……こうなるなんてね…。ロビンも予想外だったでしょうね。」
「この部屋にも遺体が置いてあったのか?」
グレイ・ローズは少し気まずそうにガーネットに聞く。
「えぇ……。置いてあったわ。私の一番大切な…」
「アリスの遺体が……。」
その事実を聞いた美桜は衝撃で凍りつく。
「それ……本当なの?」
「この状況で嘘なんかつけると思う?」
ガーネットは顔を下に向ける。
「私が思うに、もう1体の存在っていうのはアリスのことだと思うの。」
「いや……アリスが生き返ったって言うの?それだったら、あんたと敵対する理由がなくない?」
「でも何かが憑依したって考えても、何が憑依したかなんて分からない。」
グレイ・ローズは壁にもたれかかりながら考え事をしている。
「そのアリスという者は…、女性なのか?」
「うん……。」
ガーネットは暗い雰囲気を出しながら返答する。
「……そうか。」
(もしや……でもどうやって……?果たしてこれを伝えるべきか?)
グレイ・ローズの戸惑っている表情に玖羽は気づく。
「何か心当たりがあるのか?」
「あるにはあるが……、どうやったのかが分からない。」
「それでもいい。教えてくれ。」
「これはここで話すことじゃない。全員の前で話すべきだ。」
「わかった。行くぞお前ら。」
玖羽とグレイ・ローズは地下室をあとにする。
「歩ける?」
「流石に歩けるよ。……あ、ちゃんと支えてね。」
2人の後を追って外に向かう。
「やっと出てきたか。」
戻ると椿と天垣、各支部の面々が揃っていた。
「各支部のトップクラスの奴らが集まるとは……圧巻の光景だな。」
「その枠組みにあんたも入るけど?」
美桜は玖羽の脇腹をつつく。
「で、ニグレードが復活したって?」
椿はあまり驚いていないように見える。
「あぁ。奴はどこかへと逃亡した。」
「はぁ…、まんまと悪魔共にはめられた。あいつらはニグレードが復活するまでの時間を稼いでた。世界各地への襲撃も、ニグレードへの注目を避けるためだと思う。」
「まさかそんな意図があるなんて……。」
「今アーロンドにニグレードを追わせてる。」
「悪いな。それより、私から伝えたいことができた。まずは、お前の考えから話してくれ。」
ガーネットは状況を説明する。
「アリスが生き返った……?そんなことがあるのか?それに敵対なんて……」
「そう。私もあり得ないと思いたい。だけど、ロビンと一緒にアリスの遺体も消えた。私を吹き飛ばした人影がアリスじゃないとしたら誰になるって話。」
「それで、あんたは心当たりがあるわけね?」
「あぁ。ただ、これは物理的に不可能だと私は思っている。まずはアリス?に何が憑依したのかだが……、おそらく、"ノア"という女性だ。」
「それも昔戦ったの?」
「いや……当時、私はノアという名前しか聞いていない。アブルートがノアについて最も詳しかったが、ほとんどのことを教えてくれなかった。唯一教えてくれたのは、ノアの身に起きた悲劇が原因で、魔王が誕生し、終わりなき戦いが始まった、ということだけだ。」
「でも、ノアだと断定できない理由は何?」
「ニグレードが蘇生魔法を見つける前に封印されているからだ。……今思えば、こちらも蘇生魔法を探していれば、ニグレードとは和解できたかもしれない。それなのに……賊共の自分勝手な行動のせいでニグレードがブチギレたからな。」
「ニグレードがブチギレたって……何があったの?」
「賊共がノアの遺体を強奪したんだ。目的はネックレスだろう。そのせいで、地上には魔獣が蔓延り、世界各地で悪魔との紛争が起こった。」
「とりあえず、ノアがニグレードにとって大事な人間ということがわかった。それだけでも十分だ。」
「……ちょっといい?」
椿は美桜に呼ばれる。
「何?」
「憶えてる?ニグレードと戦ったとき、暗闇の中に隠れてた黒い炎を扱う少女のこと。」
「あぁ……。それならさっき、私もあんたと同じことを考えた。その可能性はある。」
すると、アーロンドが突然姿を現す。
「皆さんに朗報です。ニグレードの現在地を特定しました。」
「奴はどこに?」
「ニグレードは現在東京にいます。」
「はあっ?!」
「その隣にはアリス君の姿も確認しました。おそらく、今の状況に関してはあなたたちのほうが詳しいでしょう。」
そう言い残し、アーロンドは姿を消す。
「行くぞ。」
グレイ・ローズは幹部たちを連れて飛び立つ。
「青、お願い。」
「任せ……ろぉっ?!」
青の背中に美桜だけではなく、天垣、春蘭、玖羽、ガレジストが乗ってくる。
「定員オーバーだ!」
「だったら赤も。」
「まじかよ……。」
赤は潔く団員たちを乗せて飛び立つ。
「はっ……、やっと見つけたぜ…。まさかこんなとこにあるとはな。」
ニグレードは建物の瓦礫の中から透明な筒を拾う。中には何かの欠片が入っている。
「これさえあれば……」
ニグレードは筒の中から破片を取り出す。
「……来た。」
アリスはニグレードに人の気配が近づいてきたことを伝える。
「ようやくか。」
外に出ると、グレイ・ローズと幹部たちが戦闘態勢に入っていた。
「作戦はわかっているな?ニグレードをロビンの体から追い出す。」
「いつでもいいよ。」
「私も~。」
「いいぜ。」
「了解。」
「構わん。」
アリスが前に出ようとするが、ニグレードはアリスの前に腕を伸ばす。
「お前が行く必要はない。まだその体に馴染んでいないだろ?」
「わかった……。」
アリスはニグレードの後ろに隠れる。
(やっぱりお前が出てくるか。)
「さて……、始めようか。」
ロビンの体から黒い炎が溢れ出す。
「行くぞ……!」
グレイ・ローズの声で、幹部たちはニグレードに向かって総攻撃を仕掛ける。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる