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しおりを挟む「俺も学生時代の祐樹に会ってみたかったって思うよ」
孝弘がそんなことを言ったので、祐樹はちょっと意外に思った。いつも前向きな孝弘は過去を振り向いたりしない気がしていたのだ。
「おれ? …すごく平凡だったよ」
「そうなのか? でも俺、日本の大学行ってないから、学生生活ってどんなふうだろうってやっぱり思うよ。どんな授業なのかなとかサークルって何だろうとか」
「高校の部活みたいなもんだよ。他大学の学生も入るから、ちょっと規模は大きくなるけど。体育会系じゃなければ」
「そうなんだ。どんな学生だった?」
「ホント普通だった。ほどほど真面目に授業受けて、サークル行ってバイトして」
「ふーん。バイトって何してた?」
「引越し屋」
「え?」
「何?」
「引越し屋?」
「うん。こう見えても結構力はあるよ」
小学生から空手を続けていた祐樹は細身のわりに力が強い。男四人兄弟で育っているから、小さいころは取っ組み合いのケンカも日常だったのだ。
「知ってる。ちょっと意外だっただけ」
「兄貴の紹介だったんだよね。大学生になったら親から小遣いはなしって家だったから、引越し屋は手っ取り早く稼げてよかったんだ」
「そうなんだ。肉体労働のイメージはなかった」
「どんなイメージだった?」
「なんだろ? カフェ店員とか塾の講師とか?」
「そういう女子が多そうなバイトはパスしてた」
「…なるほど」
自分が女子にモテることはよくわかっていたから、無用なトラブルを避けようとしての選択だった。孝弘は祐樹の考えがわかったようだ。
「かなりモテた?」
「それなりに。でも女子にモテてもね…」
祐樹はさらっと認めて肩を竦めた。
孝弘は黙って微笑み、祐樹にもう一度口づけた。
「祐樹、シャワー浴びよう」
手早く服を脱いで、向い合せに立ってお互いを洗い合う。大連に赴任してからほぼ同棲状態の近距離で住んでいるので、こういうことも日常的にある。
でもホテルのバスルームだとやはりいつもと雰囲気が違っていた。いつもと違うシャンプーの香りやタイルの色が自分の部屋じゃないことを意識させる。
やわらかなオレンジがかった灯りに照らされた孝弘の体はやたら色気を出している気がする。温かい湯に打たれながら全身の泡を流したら、そのまま孝弘に腰を引き寄せられた。
「ここで、するの?」
腰が密着して孝弘がすでに昂ぶりはじめているのに気づく。孝弘がこめかみに口づけてかるく耳を甘噛みする。
「してもいい?」
「いいよ。…どうしたの?」
「祐樹がかわいいこと言うからじゃんか」
「かわいいこと?」
「同室になりたかったとか、勿体ない事したとか」
それで煽られてしまったらしい。
「だって、学生生活って何となく特別な感じがするからね。なんでかな?」
「うーん…。やっぱ期間限定だからじゃない?」
「そっか。そうかも」
「でも俺は祐樹と期間限定のつもりはないから」
はっきり言い切った孝弘に、祐樹はどうしようもなく嬉しくなる。どうしてこんなに素直に気持ちを言ってくれるんだろう。
「うん、おれもそうだよ」
軽く口づけあいながら互いの体を触りあった。手のひらから孝弘の体温が伝わって、祐樹の体温も上がっていく。
孝弘の舌が入ってきて敏感な口蓋を撫でられた。ぞくぞくと背筋を電流のように快感が駆けあがってくる。何度も小さなキスを繰り返し、浅く深く探り合った。
「…ん、…ふっ…」
息つぎの合い間に吐息がこぼれた。
大きな手の中に包まれて何度も擦られて、祐樹の腰が無意識に揺れる。ねだるように擦りつけてしまって自分でもはしたないと思うけれど、そんなふうに乱れる姿を見せたって構わない。
孝弘は楽しげに微笑んでいるだけで、揶揄することなく手を動かし続けている。祐樹の手も同じように孝弘を愛撫して、二人で一緒にテンションを上げていく。
「気持ちいい?」
「ん、気持ちいい。孝弘は?」
祐樹の手の中のものもさっきからぐっと質量を増していて、その反応が嬉しい。欲しがってくれていると思うと、とても嬉しい。大好きだと思う。
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