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祐樹の部屋のデスクの引き出しには孝弘の部屋の鍵がしまってある。
鍵には七宝焼きの亀のキーホルダーがついていた。孝弘とお揃いで香港で買ったものだが、誰かにお揃いだと見咎められると面倒だということで、持ち歩かずにそれぞれ部屋で保管している。
互いの部屋の鍵も自宅の鍵と一緒にしておくと、誰の部屋の鍵だと突っこまれかねないので別にしているのだ。
マンションの同フロアだから、一旦自分の部屋に寄るのは大した手間ではない。
祐樹は孝弘との関係にはとても注意を払っている。親しい同僚であることは隠していないが、必要以上に親しいと思われるのは避けたい。
孝弘が大事だからおかしな噂が立つのは困るし、それ以上に二人が警戒しているのは女性相手の対応だ。
一流企業勤めで見た目もよく独身の二人は結婚相手としては超優良物件だから、そういう視線には敏感にならざるを得ない。
好きな人がいると言ってもいいが、そうなると相手は誰だとか呼び寄せて結婚しろだとか面倒なことになるので、今のところ仕事が忙しくてそれどころじゃないという言い訳で通している。
実際、仕事は毎日忙しく、土日もなんだかんだと出勤したり、駐在員社会の交流イベントがあったりで丸々休むことはあまりない。
それでも祐樹にも孝弘にも果敢にチャレンジしてくる女性社員はいた。
現地採用の女性スタッフは優秀で、できれば揉め事にはなりたくない。祐樹は質問されたら「結婚相手は感覚の合う日本人がいいですね」ときっぱり言うことにしている。
日本人的にあいまいな言い方では通じないので、はっきり言う方がトラブルを起こさないともう学んでいる。
恋人を紹介しようというお節介を焼きたがる中国人が多いのが意外だったが、それにも「言葉や文化が違うと大変なのでつき合うなら日本人がいいです」と断っている。
祐樹の北京語は駐在員にしてはまあまあというレベルで、簡単な日常会話は不自由しないが込み入った話はできない。言葉が通じなくて家で寛げないのは嫌だと言うと「そうだな」とたいてい理解してくれる。
「上野くんも高橋もそうだけど、独身男性は何かと狙われるから身辺には気を付けろよ」
妻子とともに赴任して来た青木は笑うが、家庭持ちの駐在員が気楽かと言うとそうでもなく、駐在員妻社会、子供社会はまた別の意味で気苦労があるようだ。会社のステータスが妻子のステータスになり、人間関係に響いてくるのだ。
もちろんそんなことに関わることなく駐在生活を楽しんでいる家庭も多いが、現地スタッフと不倫だの単身赴任駐在者がメイドと偽って愛人を囲ったりすることもあり、会社はそういう方面でも気を遣う。
それは中国に限ったことではないが、いずれにしても祐樹と孝弘にとっては遠ざかっておきたい事柄だった。
以前、北京で研修を受けていた時の先輩同僚の鈴木はたいそうな遊び好きで、孝弘を女性のいる店に連れて行ったりした。
まだ学生の孝弘は女性がその手のサービスをしてくれる店に行ったのは初めてで、とても困ったらしい。と言うことを後から知って、当時の北京事務所の責任者の安藤が「未成年の留学生をそんなところに連れこむな」ときつく叱り飛ばしていたのを祐樹も目にした。
そう言えば、とても困ったという話は聞いたけれど、実際あの時孝弘はどうしたんだろう?と思い出したのは、接待用に女の子のいる店を探しておいてと頼まれているのを耳にしたからだ。
鍵には七宝焼きの亀のキーホルダーがついていた。孝弘とお揃いで香港で買ったものだが、誰かにお揃いだと見咎められると面倒だということで、持ち歩かずにそれぞれ部屋で保管している。
互いの部屋の鍵も自宅の鍵と一緒にしておくと、誰の部屋の鍵だと突っこまれかねないので別にしているのだ。
マンションの同フロアだから、一旦自分の部屋に寄るのは大した手間ではない。
祐樹は孝弘との関係にはとても注意を払っている。親しい同僚であることは隠していないが、必要以上に親しいと思われるのは避けたい。
孝弘が大事だからおかしな噂が立つのは困るし、それ以上に二人が警戒しているのは女性相手の対応だ。
一流企業勤めで見た目もよく独身の二人は結婚相手としては超優良物件だから、そういう視線には敏感にならざるを得ない。
好きな人がいると言ってもいいが、そうなると相手は誰だとか呼び寄せて結婚しろだとか面倒なことになるので、今のところ仕事が忙しくてそれどころじゃないという言い訳で通している。
実際、仕事は毎日忙しく、土日もなんだかんだと出勤したり、駐在員社会の交流イベントがあったりで丸々休むことはあまりない。
それでも祐樹にも孝弘にも果敢にチャレンジしてくる女性社員はいた。
現地採用の女性スタッフは優秀で、できれば揉め事にはなりたくない。祐樹は質問されたら「結婚相手は感覚の合う日本人がいいですね」ときっぱり言うことにしている。
日本人的にあいまいな言い方では通じないので、はっきり言う方がトラブルを起こさないともう学んでいる。
恋人を紹介しようというお節介を焼きたがる中国人が多いのが意外だったが、それにも「言葉や文化が違うと大変なのでつき合うなら日本人がいいです」と断っている。
祐樹の北京語は駐在員にしてはまあまあというレベルで、簡単な日常会話は不自由しないが込み入った話はできない。言葉が通じなくて家で寛げないのは嫌だと言うと「そうだな」とたいてい理解してくれる。
「上野くんも高橋もそうだけど、独身男性は何かと狙われるから身辺には気を付けろよ」
妻子とともに赴任して来た青木は笑うが、家庭持ちの駐在員が気楽かと言うとそうでもなく、駐在員妻社会、子供社会はまた別の意味で気苦労があるようだ。会社のステータスが妻子のステータスになり、人間関係に響いてくるのだ。
もちろんそんなことに関わることなく駐在生活を楽しんでいる家庭も多いが、現地スタッフと不倫だの単身赴任駐在者がメイドと偽って愛人を囲ったりすることもあり、会社はそういう方面でも気を遣う。
それは中国に限ったことではないが、いずれにしても祐樹と孝弘にとっては遠ざかっておきたい事柄だった。
以前、北京で研修を受けていた時の先輩同僚の鈴木はたいそうな遊び好きで、孝弘を女性のいる店に連れて行ったりした。
まだ学生の孝弘は女性がその手のサービスをしてくれる店に行ったのは初めてで、とても困ったらしい。と言うことを後から知って、当時の北京事務所の責任者の安藤が「未成年の留学生をそんなところに連れこむな」ときつく叱り飛ばしていたのを祐樹も目にした。
そう言えば、とても困ったという話は聞いたけれど、実際あの時孝弘はどうしたんだろう?と思い出したのは、接待用に女の子のいる店を探しておいてと頼まれているのを耳にしたからだ。
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